個人事業主必見!スモールビジネスを開業する際の届出手続きについて

何か新しく個人事業主としてビシネスを始める時に提出しないといけない開業届。事業開始から1ヶ月以内に提出することが義務付けられていますが、実は期限を過ぎても特に罰則があるわけではありません。その為、開業届を提出していないままビジネスをしている事業者の方も多いのではないでしょうか?今回はじゃあなんで法律で決まっているの?というような開業手続きについてまとめてみました。

開業届とは

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」と言います。個人が新たにビジネスを始める時に、まず最初に税務署に提出する書類がこの開業届になります。税務署に対して「新しく事業をスタートします」という宣言のようなもので、法人登記とは違い手続きに費用はかかりません。開業届を提出すると、確定申告の時期に申告書が送付されるようになります。

開業届を出すメリット

開業届を出すメリットは大きく分けて4つあります。

税金の控除が受けられる

以前、確定申告についての記事を書きました。確定申告には白色申告と青色申告という2種類の申告方法があります。青色申告をすると白色申告をした時に比べて税制上かなり有利になります。例えば青色申告のみに適用される最大64万円の特別控除など、節税対策の効果抜群です。

白色申告は開業届を出さなくても申告が可能ですが、青色申告については、開業届を提出していないと申告できません。

赤字を最大3年間繰り越せる

これも確定申告時の話です。その年の赤字を青色申告で損失申告をした場合には向こう3年間の所得から差し引くことができます。

例を出すと2017年に300万円の赤字を計上して、翌年2018年には400万の黒字が出たとします。その場合、前年の赤字(300万円)を2018年の所得(400万円)から差し引くことができるので、2018年の確定申告における課税所得は100万円となります。

屋号が名乗れる

屋号というのは、自分の店や事務所などの事業の名前のことを指します。イメージとしては会社名のようなものです。ただし、あくまでも”個人”事業主であって法人ではありません。そのため、〇〇社、〇〇会社、〇〇corporation、〇〇incなどの会社を連想させるような屋号にはできません。

屋号を取得するのに費用はかかりませんが、屋号を名乗ることで様々なメリットがあります。例えば、効果的な屋号をつけることにより人々が抱く興味関心を興味を惹き、集客効果の増大を狙うことができたり、例えば、屋号名義で銀行口座を取得し、家計とビジネスを完全に切り分けて財政状況や経営成績を簡単に管理できるようにしたりなどです。

ちなみに口座名義は多くの銀行では「屋号名+事業主名」になります。
(ゆうちょ銀行においては屋号名のみでの開設も可能です。こだわりがある人はゆうちょ銀行で開設してみると良いかもしれません)

社会的信用が増す

屋号名義の銀行口座が使えることもそうですが、開業届を提出することによって対外的に事業をスタートさせた証となります。例えば融資や助成金・補助金などの申請ができるようになったり(審査が通るとは限りません)お客様や取引先に対して正規の手続きを踏んでいるとして信用されやすくなります。

開業届を出すデメリット

続いて開業届を出すデメリットです。

失業保険が受け取れなくなる

このデメリットが適用されるのは、「失業手当を受給しながら就職活動をしているけど、フリーランスの道も視野には入れている」というような人です。

そもそも失業手当とは、働きたいという意思を持っているけどまだに対する就職先が見つかっていない人に対する手当です。つまり、開業届を出した時点で公的には「既に働いている状態」とみなされ受給する資格を失います。開業届を出したのに失業手当を受給していると不正受給となるので絶対に避けるようにしてください。

扶養控除が受けられなくなる

開業届を出したからといって、すぐに扶養から外れるわけではありません。ある一定の基準までは通常通りの扶養控除を受けられます。親や配偶者の扶養に入っている多くの学生や主婦の方はアルバイトやパートから得る収入を年間「103万円」を超えないように調整しますよね。個人事業主もこの考え方をすれば理解しやすくなります。

税制上の壁「38万円」

よくある勘違いなのですが、扶養から外れるボーダーの収入は103万円ではありません。正しくは「38万円」です。所得が38万円を越えると本人に所得税が課税され、扶養者の確定申告において控除が受けられなくなります。
ただし給与所得者の場合は給与所得控除65万円を差し引くことができるので、
給与収入103万円 - 給与所得控除65万円 = 所得38万円

という計算式が成り立ちます。
なのでボーダーの所得が103万だと思っている方が多いのですね。

個人事業主の場合も所得38万円がボーダーラインです。
売上(収入)-(必要経費+青色申告特別控除)=所得

例えば、1年間の売上が100万円、必要経費が20万円、青色申告で64万控除した場合、
売上100万円 - 必要経費20万円 - 青色申告控除64万円 = 所得16万円
となるので扶養からは外れません。

社会保険の壁「130万円」

ここからが要注意です。
被扶養者に認定されると、保険料の負担なく健康保険等に加入できるのですが、年間の収入が130万を超えると自分で保険料を負担する必要が出てきます。

この場合も計算方法があるバイトと個人事業主で異なります。
売上 - 必要経費 = 所得
※税制上の所得計算では、減価償却費や青色申告控除などを計上できましたが社会保険の場合は必要経費に含まれないので注意してください。

開業届を出さなかった時のペナルティ

基本的に罰則はありません

冒頭でも記載しましたが、開業届を出さないことで何か罰則が受けるわけではありません。そもそもなぜ罰則の規定がないかというと、届出を出さないことで損をするのは個人事業主の側だからです。本来正規の手続きをすれば特別控除を受けたり損失の繰越ができるのにそれをしないわけですから。

開業届の作成と提出方法

従業員がいない場合の作成はかなりシンプル

従業員を雇っておらず自分一人で事業を行なっている場合の手続きはとても簡単です。最低限必要な書類は「個人事業の開業・廃業等届出書」のみなので10分程度で作成は終わるかと思います。

「個人事業の開業・廃業等届出書」の書き方

まずは国税庁のHPから書類をダウンロードしましょう。

職業の欄を書くときは、総務省の「日本標準職業分類」を参考にするとよりスムーズに手続きが進めるかと思います。
最寄りの税務署に提出しましょう。(郵送も可能です)

「所得税の青色申告承認申請書」を出して節税を

開業届を提出するのと同時に、節税をしたい方は「所得税の青色申告承認書」も一緒に出しましょう。この書類も国税庁のHPからダウンロードできます。
提出の期限は青色申告をする年の3月15日までですが、開業時に節税しようと思っているなら同時に提出してしまった方が手間も省けて良いでしょう。

従業員を雇う場合は少し書類の作成が面倒かも

従業員を雇う場合は必要な書類の量がかなり大幅に増えます。

必要な書類

税務署に提出する書類
個人事業の開業・廃業等届出書 これは従業員の有無に関わらず必須
青色事業専従者給与に関する届出書 家族に給与を支払う場合に必要
開業日から2ヶ月以内に提出しましょう。
給与支払事務所等の開設届出書 従業員を雇う場合(家族を含む)
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 従業員10人未満で特例を希望する場合
承認されると源泉徴収を年2回にまとめて
納付することができるようになります。

労働基準監督署に提出する書類
労働保険関係成立届 従業員を雇う場合に必要
雇用から10日以内に提出しましょう。
労働保険概算保険料申告書 従業員を雇う場合に必要
雇用から50日以内に提出しましょう。

ハローワークに提出する書類
雇用保険適用事業所設置届 従業員を雇う場合に必要
雇用してから10日以内に提出しましょう
雇用保険被保険者資格取得届

社会保険事務所に提出する書類
新規適用届 従業員が5人以上になった日から5日以内
新規適用事業所現況書
被保険者資格取得届
健康保険被扶養者届

雇用保険と労災保険に加入する必要があるので、労働基準監督署やハローワークなどに提出する書類が必要です。

また従業員数が増え、社会保険が適用される事業所になると社会保険事務所に提出する書類も必要になります。

開業届を出す際の注意点

開業届を出す上でいくつか注意点があります。

業種についての注意点

複数の事業を展開する場合には注意

事業所得が290万円を超えたら、業種によっては一定の個人事業税がかかります。
法定業種と税率について確認するには東京都主税局のHPがわかりやすいかと思います。

届出を出すタイミングの注意点

自分が保管する開業届の控えにも必ず受付印をもらうこと

屋号で銀行口座を作るときや、各種助成金・補助金等の申請をする際に開業届の提出を求められることがあります。後から受け取ろうとすると手続きがかなり煩雑なので、無駄な手間をかけないように、提出用の開業届の控えを大事に保管しておくと良いでしょう。またその際には、必ず受付印をもらうようにしてください。

最後に

いかがでしたでしょうか?
謎に包まれた開業届という制度ですが、思っていたよりも簡単そうでメリットがありそうではありませんでしたか?
税制や社会保険等の制度は難しい用語がたくさん出てきて倦厭しがちですが、勉強するととてもお得に事業を運営することができるようになります。
まだ開業届を出していない個人事業主、フリーランスの方はぜひ手続きしてみてください!