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こんにちは!東大CARPです!
最近は5月とは思えないような暑い日が続いてますね!(‘・c_・` ;)
かと思えば先日非常に雨が大量に降ったときがあり、少し前は春だったはずなのに、もう完全に夏のような天気になってしまって、季節の流れが速いとしみじみ感じています…
早速ですが、前回の記事と関連して、東大の入学式で祝辞を述べた上野教授について、定例研究会で取り上げたので、まとめていきたいと思います。
今年の上野教授の祝辞についてはネットでも様々な意見が出ているそうですね!
その上野教授について特に著書を参考にしながら、定例研のなかで出た意見をもとに、その考え方を掘り下げていきたいと思います。
記事の流れとしては、①上野教授がたどってこられた人生について見ていきながら、②どのような趣旨で主張しているのか、という内容になっています。
少々長くなってしまうので、ブログの記事は①と②で分けて投稿していきたいと思います!
この記事では、①の上野教授が人生のなかでどのようなことを経験されて、そしてどのようなことを感じて考えてこられたのか、についてまとめていきます。
参考にするのは、上野教授の著書の一つである、『みんな「おひとりさま」』(2012)*¹です。
そこには詳しい教授自身の経験、そして特に家族関係や女性学への自身の姿勢について書かれていました。
さっそく、見ていきましょう!
上野教授は富山県に1948年に生まれ、御父君が開業医をされている家庭で育ちました。
その御両親について上野教授は下記のように語っています。
・子ども時代の私の記憶では、両親は不仲でした。( p. 47 )
・医師としては有能な職業人でしたが、家族に君臨し、狷介で、自己中心的で、お友だちいない
系の男。( p. 47 )
・私たちきょうだいは、誰も父と一緒に暮らそうとは思いませんでした。生活がかき回されるのは目に見えていましたから。( p. 47 )
・そもそも、私と母の関係はうまくいっているとは言えませんでした。私には、それまで、進学や恋愛など人生の転機に立って重大な選択をしなければならなかったときに、母がサポートしてくれなかったという思いが澱のようにたまっていた。( p. 45 )
・親に反抗したいためだけに、親が禁止したことを、ひととおり全部やりました。( p. 14 )
・暴君の父に仕えてきた母を嫌悪し、幼いころからそれをカウンターモデル(反面教師)に育ってきた ( p. 16 )
また、18歳で京都大学に進学するために実家を出た後経験したことから、男性に対して次のように語っています。
・私が男に失望した大きな契機は、学生運動でした。( p. 27 )
・60年代の終わりから70年代にかけて、社会正義を求めた闘いだった学生運動はどんどんゲバルト化していき、その中ではジェンダーの差別が目に見えて明らかになっていきました。機動隊に向かて火焔瓶投げたり、石投げたりする時も、彼らは「女は戦力にならない」という言い方をしてはばからなかった。( p. 27-28 )
・全共闘がそのまま女の問題にシフトしていったのではなくて、その間に女たちのジェンダーを巡る深い絶望があるわけです。( p. 28 )
そして、現在上野教授が専門としている女性学について、以下のように語っています。
・全共闘運動の瓦礫の中から生まれたウーマンリブ運動には、猜疑心を持っていました。( p. 16 )
・自分を学問の対象にしていいのかという目からウロコの驚きがあり、その上そこに集まる女たちがとても魅力的だった ( p. 16 )
・女性学を始めてからは、義務感からでなく、注文がなくても、自分の中に自発的に書きたいことがアルとわかった。生まれて初めてでした。女性学の論文を書くときには、私の中にふつふつと怒りが湧いてくる。( p. 17 )
・私はどうしてフェミニストになったかと聞かれると、ルサンチマン(私怨)からだと答える ( p. 28 )
いくつか箇条書きにして書き出してみましたが、これらをつなぎ合わせるために、女性学に向けた動機の部分に着目して述べていきたいと思います。
確かに、上野教授は、自身が女性学に出会ったときに、自分の性を研究対象とすること、また、集まってくる女性の方々を非常に魅力的だと感じた、という話をしていますが、それだけが原動力ではないことが指摘できます。
つまり、上記にも書かれてある通り、怒りやルサンチマンが上野教授の研究への動機につながっていると言えます。
論文を書くって結構大変なんですけど、(学部レベルのレポートでも四苦八苦する人もいます)そのときにこの内容を書きたい...!!という強い思いがないと、提出期限がないと書き出せません。('д` ;)
その点、上野教授は自ら進んで書いていったとありますが、そこに怒りが含んでいたこと、つまり父親に対する反発心・学生時代での男性との軋轢がその背景にあるといえるのではないでしょうか。
このことは、上野教授が祝辞で、自身を突き動かしてきたものとして挙げているなかに、「怒り」と明言していることからもわかります*²。
いわば、学術的な要素に純粋に魅了された(例えば、情報技術の可能性に感化されて情報工学を専攻したり、日本の教育をより良くしていきたいという思いで教育学を学ぶなど)という理由以外に、自身が抱いていた怒りやルサンチマンを研究することで解放したいという側面があることも指摘できるのではないでしょうか。
そうなった経緯として、家族とうまくいかなかった過去、学生時代の男性から受けた屈辱のような激情が関係しているのは一目瞭然ではないでしょうか。
考え方の根っこにそのようなものを抱えている人物が、一研究者として学術・政治・出版の分野で発言していることをよく理解しておかないといけない、という意見が定例研のなかで出ました。
上野教授は女性学の研究者として第一線で活躍されており、著名な方でありますが、その一側面としてこのようなことが指摘できるということにも留意すると、今回の東大入学式の祝辞に限らず、様々な観点で物事を見つめることができると思います。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。
次回は、上野教授が著書でどのような趣旨で主張しているのか、について見ていきたいと思います。
以上、東大カープでした!
参考文献
*¹ 上野千鶴子(2012)『みんな「おひとりさま」』青灯社.
本来の論文やレポートであれば、引用した文のところに 上野(2012)p. 9 など、丁寧に付け加えるべきですが、今回の記事の範囲内では一冊しか参考文献がないので、ページ数だけの注釈となっています。
こんにちは!東大CARPです!
さて、今回のテーマは、「台湾の同性婚合法化をめぐって」です。 同性婚・LGBTについては、これまで取り上げてきた、上野千鶴子さんのフェミニズムにも繋がっていきますし、これからの世界の、思想・価値観の在り方を大きく変容させていくであろう、ビッグイシューとして、みなさんとともに考えていきたいと思います。
【国民的議論のプロセスを無視する日本言論】
5月17日の台湾での同性婚法成立は話題になりましたね。同性婚が法制化されるのはアジア初ということで、大変衝撃的なニュースでした。海外からは称賛の声が多く、日本でも肯定的に取り上げるメディアがほとんどです。同性婚合法化を推進する人たちは活気づいており、事実すでに各自治体で同性パートナー制度導入に向けた陳情・請願運動が盛り上がっています。 しかし、台湾が合法化したからといってすぐに日本もと考えるのはあまりに短絡的です。実は、合法化をめぐって台湾では、採決を欠席した議員も多く、キリスト教団体など根強い反発意見があること、かなりの国民的議論があったことが、日本では全く注目されていません。そういったプロセスを無視して、安易にことを急ごうとするところに、日本のジャーナリズムの未成熟さが見え隠れしています。
【強権的な司法主導の合法化】
では、台湾では具体的にどんな議論があったのか、整理していきましょう。 まず2017年5月に、日本の最高裁にあたる司法大法官会議が、同性婚を認めない現行法令を「憲法違反」とする判断を示し、2年以内の法改正を求めました。つまり、どんな形であれ、今年5月に同性カップルの権利保障をすることがその時点で決まってしまったのです。結果的に一人の裁判官の賛否で結婚の定義が変えられることになりました。当然のことながら、これは「司法の越権」と批判されます。実は合法化は、台湾国民の意思というよりも、いわば強権的な、司法主導で発議されたものだったのです。
【男女の婚姻とは明確に線を引いた「同性婚特別法」】
ここで一気にアジア初の同性婚合法化が実現すると思われましたが、キリスト教徒を中心とする反対派の、激しい反対運動が巻き起こります。しかし大法官会議が命じた以上、何らかの形での「同性婚合法化」は避けられません。そこで反対派は「民法を守る」ことに焦点を当てました。つまり、民法とは別に、同性カップル向けの特別法を作ったのです。そうすれば、男女の婚姻と、同性同士の共同生活には一定の区別を設けられます。男女の夫婦と同性カップルとの間に、法的に明確な線を引いたのです。 その中で、昨年11月24日には同性婚をめぐる国民投票の実施に至ります。
【「LGBT教育」に対しては日本以上に批判的】
ふたを開けてみると、「婚姻を男女に限る」規定を守るべきとの意見が、反対290万票に対し765万票を集めて圧勝しました。その結果、今回5月17日の「同性婚合法化」は民法改正ではなく、特別法の制定で行われ、男女の婚姻とは明確に区別されました。例えば、カップルのどちらとも血縁関係のない子供を養子に迎えることは禁じています。賛成派、反対派双方に配慮が示された合法化となったのです。 また、国民投票では義務教育での「LGBT教育」を禁ずる提案も、反対340万票に対し700万票の支持を集めました。教育については、性的少数者に対応したトイレ設置など、なし崩し的に「多様な性」教育を行う日本よりも、台湾は保守的な立場を維持しています。 【反対意見を圧殺する日本の言論】 翻って日本の言論を見てみるとどうでしょう。昨年には雑誌『新潮45』の「杉田発言」問題がありました。LGBT支援を批判した内容の保守政治家の論文が猛バッシングを受け、論文を掲載した『新潮45』は休刊に追い込まれました。現代の出版業界において、「休刊」とは実質的には「廃刊」を意味します。LGBTに対する一つの意見がこういった日本独特の同調圧力によって圧殺されてしまったのです。 同性婚やLGBTについての議論は、もはや日本ではかなりのタブーになってしまっています。自由闊達な意見交換ができなくってしまっているのです。これからの家族のあり方をめぐる論点として、同性婚・LGBTの問題を国民的に盛り上げていくのは、日本では台湾と違ってかなり難しそうです。
以上、東大カープでした!
こんにちは!東大CARPです!
最近の新聞で、日本の合計特殊出生率が3年連続で下がったりだとか、2018年に生まれた子供の数が最も少なかった、などの記事が出てましたけど、ご覧になった方はいらっしゃるでしょうか?
昔から注目されていた話題にはなりますが、今回の記事は一段と深刻さがあるように感じました (゚Д゚;)
今回は、そんな社会の動きとかかわりがある、ある法律に注目していきたいと思います!!
それは…、男女共同参画社会基本法についてです!(タイトル見れば分かっちゃうけどね笑)この法律について皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか?
私が覚えている知識だと男女雇用機会均等法と同じような趣旨で制定されたような…としか覚えていませんでした。一言でいうなら男女の不平等を改善するための法律というイメージがあって、あまり深くは考えていなかったのですが、今回の定例研を通して、男女の不平等という観点だけではなく、社会全体について考えなおすことにもなりました。
ぜひいい機会だと思うので、皆さんも考えていただければと思います!
さっそく、男女共同参画社会基本法について詳しく見ていきましょう!
まず言葉の定義から調べると、男女共同参画社会とは、第2条によると、
「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」(男女共同参画社会基本法第2条)
ということが掲げられています。
では、なぜ日本では男女が均等に社会の活動に参画することを、法律でわざわざ制定する必要があったのでしょうか?
ここで、この法律が制定されるまでの歴史をたどっていきたいと思います!主だったものをまとめると、
1946年 憲法に男女平等の記載
1980年 女子差別撤廃条約に署名
1985年 男女雇用機会均等法が制定
1994年 男女共同参画推進本部ができる
1999年 男女共同参画社会基本法が制定
2000年~ 地方に男女共同参画社会基本法にもとづく条例をつくる方針に
戦前、日本の女性たちは参政権を求めて運動を起こしましたが、結局終戦になって憲法で男女平等の記載がされるまで、選挙に関わることができませんでした。この歴史があることを踏まえると、着々と女性の活躍を推進していこうという動きがありますね。この盛り上がりを見せた日本の世論の背景にあるのが、社会で活躍する女性の存在です。80年代に社会を牽引した一例として、このブログ記事でも紹介した上野千鶴子教授や女性のエリート官僚の方々がいらっしゃいました。また、その後の90年代には女性初という名目で、様々な名誉ある役職に女性が就くことが多くなっていきました。(これは1994年に男女共同参画社会推進室が設定されたことが影響していると思われます)1999年に制定された男女共同参画社会基本法の背景には、このような果敢な女性たちの努力があったことが想像できますね。
さて、ここまで見てきましたが、男女共同参画社会基本法ってそんなに変なイメージはないのではないでしょうか?私も正直、制定が歓迎された法律だと思っていたのですが、広い観点で見つめ直すことによって面白いことが分かってきました。詳しいことは次の記事でまとめていこうと思いますが、私たちが注目したのは現実とのギャップです。
男女共同参画社会基本法では、目指す社会の理想像として、「職場に活気」、「家庭生活の充実」、「地域力の向上」を掲げています。ですが、法律が施行されて実際の社会はどうなっているのか、また今後どうなっていくのがより良いのか、大学生という視点から考えていきたいと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
以上、東大カープでした!
参考文献
内閣府男女共同参画局 「『男女共同参画社会』って何だろう?」 参照2019年6月12日
http://www.gender.go.jp/about_danjo/society/index.html
小宮山洋子 (2019) 「出生数最少、出生率3年連続低下」 参照2019年6月13日
https://blogos.com/article/383196/
みなさん,こんにちは!東大CARPです!
最近はとても暑くなってきましたね!
さて,今回,東大CARPでは「LGBT・同性婚を考える」というテーマで研究会を行っていきました.皆さん,LGBTについては最近よく耳にしますよね.近年ですと渋谷区のパートナーシップ協定を覚えている方も多いのではないでしょうか.つい先日には台湾で同性婚が合法化されましたね.(以前のブログ記事参照.)
私たちはこういったLGBT,性的少数者の方に同性婚の合法化していく流れ・風潮を改めて見直してみようという観点で今回研究を行っていきました.
これから二つの論点で考えていきます.
【論点1】「LGBTの実際の割合はどれくらいなのだろうか」
【論点2】「同性婚と法律について」
以上の二つです。
まずは【論点1】から見ていきましょう。
近年活発化しているLGBT運動の根拠となっているものが2015年に大手広告代理店会社,電通が発表した調査です.この調査によるとLGBTの割合はなんと7.6%というのです.この数字,2015年当時で考えると,実に日本の人口のうち966万人がLGBTということになります.学校のクラスで考えれば,一クラスに2,3人はLGBTの方がいるのが平均ということになります.さらに,2018年での電通の同様の調査によるとこの割合は8.9%,実に1125万人が性的少数者ということになります.これは直感的に考えても少し多いのではないでしょうか.一方で,この割合,名古屋市の公的調査では1.6%,大阪市の2019年の調査では2.7%であったと言います.これくらいの方が信憑性ありそうですね.
実は,電通の調査はサンプルが偏っているということが指摘されています.この調査は電通のウェブで行われた調査であり,LGBTに関係するサイトにアクセスした人だけで集計されたデータとなるため、無作為抽出がなされた結果とは言い難いものになっています。データのもととなる調査に、希望する者しか参加していないことを考慮すれば、無作為抽出の場合よりもLGBTの方の割合が大きくなるのは当然ではないでしょうか。ちなみにこの調査によるとレズビアンやゲイの方が1.4%ほど,バイセクシャルの方も同程度で、トランスジェンダーの方は1%にも満たないとなっています.
それではこれらの数字を7.6%から除いた残りは一体何なのかといえば,実は「その他」という形らしいです!その他というのはアセクシャル(無性愛者),Xジェンダー(頻繁に性自認が入れ替わる),クエスチョニング(自分の性別や性的指向が分からない)といったものです.
ですので,実際のLGBTの割合というのは名古屋市や大阪市の公的調査の割合が妥当ではないかと考えられます.電通は広告代理店でありますから,LGBT運動が活性化することで新たな市場開拓を行おうとしているという狙いもあるかもしれませんね.
さらにもう一つ理解しておかなくてはならないことは、レズビアン・ゲイ・バイセクシャルとトランスジェンダーは本質的に異なるということです.LGBTとひとくくりに権利や社会制度改革の訴えがありますが,レズビアン・ゲイ・バイセクシャルは性的指向の話であり,性自認は特に一般の人と変わりありません.本当に社会制度の改革が必要とされているのは,トランスジェンダーの内の一部の人だけなのです.
まとめると,同性愛者(レズビアン・ゲイ)の割合は人口の1%程度であり,制度を望む性別違和(トランスジェンダー)の人は1%にも満ちません.
続いて【論点2】は「同性婚と法律について」です.同性婚を認めないことは差別なのでしょうか.
そもそも憲法を見てみると憲法には婚姻について「両性の合意」と書かれています.文字通り憲法を解釈すれば,これは「両性」であり,「同性」ではない訳で,同性婚は認められない,憲法違反であるということができるはずです.これに対して同様に憲法を引き合いに出し,それは「法の下の平等」に反するのではないかという人もいるかもしれません.
しかし,考えてみれば憲法は成人と未成年を区別します.未成年は酒や喫煙が禁止されていますし,年齢によって運転免許が取れたり,選挙に行けたりするわけです.この区別は何なのかと言えば,そこに合理的な理由があるからです.未成年は成長段階なので酒やたばこは避けるべきです.それではこの内容を婚姻制度に当てはめてみるならば,果たして婚姻制度において,異性婚と同性婚を区別する合理的理由があるのかと考えてみたくなります.
結論から言えば,この間には明確な差があります.男女間の婚姻は次世代を産み育てる公的な利益があり,独別は保護に値すると考えられるからです.婚姻制度というのは単なる恋愛ではありません.夫婦としての義務や責任を課す一方で,保護や優遇が行われているということです.実際に日本においては子供を持つとなるとほとんどの場合は婚姻し,明確なつながりがあります.そこに婚姻と同性婚を区別する合理的な理由があると言えるのではないでしょうか.もちろんここで言いたいことは現在の婚姻制度が同性愛を否定しているわけではないということです.あくまで,婚姻と私的な自由恋愛(同性愛を含む)は区別されるべきだということです.
同性婚について,最後の別の角度からも見てみましょう.
伊賀市の例です.伊賀市では,先ほどの電通のLGBTの調査をもとに,市内に5000~7000人の性的マイノリティが暮らしていると推算し,渋谷区に続いて先駆けて同性パートナーシップを進めました.
3年の月日が経ち,このパートナーシップ制度を利用した同性カップルはたったの5組だけだったと言います.これは大きな見当違いと言えますね.ここから分かることは,婚姻制度は自由恋愛にとどまらず,家庭を築き,次世代を産み育てるところまでが含まれているということです.もちろん,同性カップルの中には子育てしたい,家庭を築きたいと考えている人たちもいるでしょう.しかし,財産の相続や同居するといった内容に対して婚姻制度を用いる必要性はないに等しいと言えます.しかも,そもそも伊賀市の例から分かるように、パートナーシップを求める人は、はっきり言ってとても少ないです.
ここまで,二つの論点でLGBT問題,同性婚問題を考えてきましたが,私たちは決して性的少数者の方々を認めるべきではないと言いたいのではありませんし,特に日本の場合はそれが法律上罪となるということはありません.むしろ認めているわけです.ただ,同性婚を婚姻制度に組み込むとなると話は違うということです.LGBT問題は実に繊細な内容です.ですからLGBTの方を排除するような考え方はもちろん間違っていますし,逆に安易に同性婚を認めるようなこともよくないと考えます.LGBTの当事者の方々の声には,「実際に社会制度改革や支援が必要なのはトランスジェンダーの一部の人だけだ.そっとしておいてほしい」という声もあります.近年話題になっているLGBT運動の背景には、むしろこれが新しいビジネスチャンスになるからというところが大きいのではないでしょうか.
東大CARPでは次回以降,さらにこういった運動の背後に隠されているような思想や考えをみんなで話し合いながら読み解いていきたいと思います.
以上、東大カープでした!
・電通ダイバーシティラボ 2015年調査結果
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015041-0423.pdf
・2019年に伊賀市で5組
https://www.rainbow-kochi.com/パートナーシップ制度導入情報/
こんにちは!(*`▽´*) 東大CARPです!
前回の記事では、男女共同参画社会基本法についていろいろ考えていこう!ということで、この法律の制定に至る歴史や、その目的も含めてまとめていきました。
今回は、前回の記事の予告の通り、男女共同参画社会基本法が制定されて実際のところ何が起こっているのか、それについて大学生という視点で話し合っていったことをまとめていきたいと思います。♪ヾ(‘∀’o)ノ
男女共同参画社会基本法は、その目的に「職場の活気」と「家庭生活の充実」、「地域力の向上」の三つを掲げていることは前回の記事でも述べました。ではこの推進した結果として現実に注目するとどのようなことが言えるのでしょうか。
まず注目したのは、女性の働く環境の変化を客観的に示すものとして、男女共同参画社会白書から労働力率の変化についてのグラフが出ています。
年の刻みが多少大雑把ではありますが、1965年と比べて2010年は女性の労働力率が格段にアップしています。社会構造などの変容があったからそれに対応しただけ、という主張もできるかもしれませんが、ここに男女共同参画社会基本法の影響で女性の社会進出が進んだことは確かであると判断できますね。
では、このように女性の労働力率が如実に上がったことが分かる一方で、現在の日本社会で問題視されていることに非婚化・晩婚化が挙げられます。このことは、女性が家庭よりも社会に出ている時間が長いことの反映ではないでしょうか。
つまり、男女共同参画社会基本法で掲げられている、女性が社会進出することで「職場の活気」が果たされつつある反面、「家庭生活の充実」という観点では、そもそも家庭を持っている人数が減少傾向であることから、充実しているとはちょっと言い難いですよね…。
さて、ここからは諸外国の動きと比較しながらまとめていきたいと思います。
私が以前抱いているイメージとしては、日本は法律でわざわざ制定されないといけないくらい、男女不平等な国で、他の外国とか特にヨーロッパは進んでいるんでしょ ٩(๑`ȏ´๑)۶ 、というようなものでした。
これを考えるときに一つの基準になるものとして有名なものがジェンダー・ギャップ指数です。(けっこうそのままなネーミングですね)
これによると、日本は110位という結果になりました。これを見ると「まだまだジェンダー・ギャップがあるから何とかしないと٩(๑`ȏ´๑)۶ 」、という気持ちになると思います。
ちなみに上位国を見ると、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドが順番に1位から4位を占める結果になっています。
これだけを見ると、「やっぱりヨーロッパ、特に北欧はジェンダー・ギャップ少ない!男性も女性も幸せな国なんだね!」という結論になってしまいますね。
しかし、現実を見ると、その男女共同参画社会を叶えているように見える国に、かなりの乖離があり、それがもう見過ごせないレベルにまできていることが分かりました。
2001年に出版された武田龍夫さんの著作に『福祉国家の闘いースウェーデンからの教訓』というものがありますが、非常に驚く内容が載っていました。
スウェーデンと言えば、北欧の国々の一つで、先ほどの指数でもジェンダー・ギャップ指数で3位になるほど、女性の社会進出が進んで、男女平等が推進されているイメージがあります。
しかしその一方で、犯罪率の増加、離婚率の増加など、多くの社会問題を抱えていることを本で指摘しています。
例えば犯罪率で言うと、刑法犯の数が出版当時の数年の平均で日本が170万件、スウェーデンは100万件です。
あれ、日本の方が多いじゃない、と思いますが、実は日本の人口はスウェーデンの17倍あります。
10万人あたりで計算していくと、強姦事件が日本の20倍以上、強盗は100倍以上です。
その10万人あたりの平均犯罪数は、なんとスウェーデンは日本の7倍、米国の4倍になります。
ええ<(ll゚◇゚ll)>、というか恐ろしいという思いにまでなりますね。
離婚も日常茶飯事と言われていて、二組に一組は離婚する数字が出ているそうです。
原因の一つとして武田さんは、スウェーデンで女性の社会進出を推進して、その労働力の行き先がある一部の公的部門に集中してしまい、労働市場のバランスや流動性が失われてしまったことを指摘しています。
公的部門、つまり国家の高福祉政策を支える部門(主に介護など)に女性が集中した結果、仕事をして給料をもらってもその約半分は高い税金や保険料に取られてしまい、その上、仕事や給料ではパートの仕事が多く、男女の差がなくなったとは言い難い、というのがスウェーデンの現場です。
確かに、男女を問わず、外に働きに出る時間が増えれば増えるほど、必然的に、また物理的に育児や家事にかけられる時間が少なくなってきてしまうことは容易に想像できますよね。
この現状は、男女共同参画社会基本法が目指している、「職場の活気」「家庭生活の充実」「地域力の向上」とはかなり乖離していることが分かります。
ここからは法律の話になりますが、ドイツでは2015年に、大企業の女性役員比率を30%以上にすることを義務づける法案が連邦議会で可決されました。
また、ノルウェーでは2003年に、上場企業の取締役会メンバーの40%以上を女性にするよう法律で義務づけられて、フランスでも2011年に同様の法案が可決されています。
さらには、スペインやイタリアにも似た法律があり、イギリスでも企業の中枢へ女性を進出させようという勢いがあります。
この諸外国の流れを受けて、日本でも国や地方自治体の議員に占める女性の数を増やすようにと、また大手企業に女性役員を一人は誕生させるようにと要請しています。
ですが、ここで一旦考え直していきたいと思います。
何の危機感もなしに、ただ愚直に女性の社会進出を推し進めていけば、男女共同参画社会基本法の三つの目的は果たされるのでしょうか。
少なくとも、ジェンダー・ギャップがない「職場の活気」はいずれ果たされるかもしれませんが、「家庭生活の充実」を実現するにはスウェーデンの例を見ても分かるようにハードルがあり、またそれと同じように「地域力の向上」も危うくなってくるのではないでしょうか。
これからの社会が、男女共同参画社会基本法に描かれている「職場の活気」と「家庭生活の充実」、「地域力の向上」という姿になっていけるかどうかは、現実との乖離がかなりあることを十分に考慮に入れて、見つめ直していきたいですね。
以上、東大カープでした!
内閣府男女共同参画局 「『男女共同参画社会』って何だろう?」 参照2019年7月3日
http://www.gender.go.jp/about_danjo/society/index.html
内閣府男女共同参画局 「男女共同参画白書 平成28年度」 参照2019年7月3日
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h28/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html
内閣府男女共同参画局 「『共同参画』2019年1月号」 参照2019年7月3日
http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2018/201901/201901_04.html
タキレポ(2015)「女性の社会進出を促す欧米 いま世界が目指す社会のあり方とは」参照2019年7月3日
https://www.takigen.report/serialization/arekore-watch/post_1020/
こんにちは!東大CARPです!
今回は、最近話題になっている日韓の軍事情報包括保護協定(以下、GSOMIA)について、取り上げたいと思います。
【GSOMIAとは?】
GSOMIAとは、政府間で交換する軍事情報機密が、第三国にもれるのを防ぐことを目的とした取り決めのことです。批准すると、相手に秘密を伝えても、同意がない限り、そこから先の第三者に伝えないことや、情報を取り扱う人を限定することなどを定めています。防衛省関係者によれば、「これがなければ、防衛相会談を行っても、秘密の話はできない」といいます(NHK政治マガジン『1からわかるGSOMIA』)。
現在話題になっているのは日韓の間で締結したものです。中国を牽制する目的で、米国が推進するインド太平洋戦略の基盤となる協定とも位置付けられています。毎年自動延長される仕組みになっており、今年8月23日に韓国側から破棄が通告されましたが、直前の11月22日になって通告の停止が伝えられました(11月22日現在)。時系列にそって簡単に経緯を整理してみましょう。
【締結はつい最近だった】
実は日韓間のGSOMIAは、日米間(2007年締結)に比べ、2016年11月と意外と最近に締結されました。日韓は、北朝鮮の拉致問題やミサイル発射に悩まされてきましたが、もともと同盟関係ではなく、また両国の国民感情が良好でないということも影響して、それまで締結が引き延ばされてきました。もともと2012年に締結される予定でしたが、当時、締結が明らかにされたことで韓国民の反対運動がおこったこともあり、延期されていたのです。
締結後、両国間では軍事機密上のやり取りがさらに迅速になり、2017年、2018年には北朝鮮のミサイル発射が相次ぎましたが、問題解決に効力を発揮することになりました。韓国メディアによると、2019年8月22日の破棄決定までに、29件の秘密情報が共有されたといいます。
【事態は「泥沼化」へ】
その一方、2018年10月の「韓国大法院の徴用工判決」、12月の「韓国海軍のレーダー照射」など、両国間でも問題が相次ぎ、日韓関係は「過去最悪」と言われるまでに悪化してしまいました。日本政府は制裁として今年8月2日、貿易管理上の優遇対象国(ホワイト国)のリストから韓国を除外する、ということを決定。すると、韓国政府はその対抗措置として、同月23日、日本とのGSOMIAの破棄を通告し、事態は「泥沼」の様相を呈していまいました。
【「脅威」認識の違いが露呈】
北朝鮮のミサイルを防衛する上で、日韓の直接的な情報交換は不可欠です。例えば、ミサイルが日本海に向けて発射された場合、落下地点の情報は日本にしか得られません。一方で、北朝鮮内の人的な情報や発射の兆候についての情報は、距離的に近い韓国からしか得られません。GSOMIAが破棄されると、そういった情報のやり取りに大きなタイムロスが生じることになります。北朝鮮に向き合う中で、協定の破棄は、地域の安定に大きな損失になります。それにも関わらず、日米の思惑を外れ、韓国政府は協定の破棄を決定しました。
現在の韓国政府の北朝鮮の脅威に対する認識が、日米と根本的に異なっていたことが明らかになったのです。
論考は②に続きます!
以上、東大CARPでした!
こんにちは! 東大CARPです!
①に引き続き、GSOMIAについて、現状と私なりの提言をまとめてみようと思います。
【GSOMIA破棄取り消しに積極的でない日本】
対立が深刻化する中で、米国政府は、日韓GSOMIA破棄は米韓同盟を危機にさらすとして強く反発しています。議論が平行線に終わった11月17日の日韓防衛相会談で、エスパー米国務長官は「日米韓の協力は中国や北朝鮮の脅威に立ち向かうために必要だ」と述べ、GSOMIA破棄の再考を促しました。
しかし、そのような状況下でも、日本側は破棄の再考について積極的ではありませんでした。同会談後の記者会見では、河野外相が「別に日本側から延長について、とやかく申し上げてありません」と発言し、あくまでボールは韓国にあり、日本側は韓国に再考を求めるが、こちらは何もしない、とする姿勢を鮮明にしました。いったいなぜなのでしょうか。それは、日韓の軍事や情報面での韓国との信頼関係はすでに修復不能なほどに崩れているので、もはやGSOMIAがあってもなくてよいほど、形骸化してしまっているからだ、と言われています。
【武力衝突の可能性も】
結果的に破棄通告は撤回されましたが、22日の時点で、すでに事態は来るところまで来てしまっていました。日本政府からすれば、GSOMIA破棄を通告されて何らかの譲歩をすれば、これが悪しき前例となり、韓国にとってGSOMIA破棄が日本に対する決定的な外交カードとなってしまうという懸念から、日本の譲歩はありえません。また一方韓国政府も、今に至って無条件にGSOMIA破棄を撤回すれば、必ずや国民から突き上げを食らうでしょうから、韓国の譲歩もありえないと思われていました。
もし韓国がGSOMIA破棄という切り札を本当に使ってしまったら、残った有力な外交カードはほとんどなかったはずです。韓国自身もかなり追い詰められてしまったでしょう。作家の佐藤優は『文芸春秋(2019年10月号)』の中で、「この先、最も心配なのは、日韓の偶発的な武力衝突です」と述べています。かつては考えられなかったことですが、識者も武力衝突を視野に入れねばならないほど、日韓関係は最悪の状態に陥ってしまっているのです。
【「たかが」歴史認識】
戦後最悪の日韓関係に陥ってしまったことに対する本質的な問題は、両国の国民感情のレベルから対立を解かなければならない、ということでしょう。両国は民主主義国家ですから、根本的には国民全体が融和を望まない限り、両国の対立は解かれません。
お互い誇り高い国民性であるゆえに、歴史認識の相違は簡単にはすり合わせられませんし、利害関係というより互いの国の体面を巡って衝突することが多い気がします。
ただ、国の体面を言うのなら、「たかが」歴史認識をめぐり泥沼の喧嘩を今なお続けている両国が、国際的にどれほど未成熟に見えることでしょうか。
【日韓が本当に守るべき体面とは】
本来日韓両国は、中朝の軍事的脅威が高まり、米中貿易戦争でアジア太平洋地域の不安定性が増す中、地政学的に重要な位置にあって、自由民主主義の価値観を共有する国として協調すべきなのは、誰の目から見ても明らかです。少子高齢化や地方の衰退、低調な経済など共有する課題も多い両国なのですから、当然支えあうべきではないでしょうか。
また、日韓GSOMIAの破棄は、日韓関係のみならず、米韓関係、ひいては日米韓関係の崩壊をも意味すると言われています。それは韓国の識者も指摘するところです(中央日報2019年11月16日号社説)。日韓関係は両国だけの問題ではないのです。
私たちはもっと大きな視野でこの問題を見つめる必要があります。もっと優先すべき国益があり、守るべき体面があるのです。
以上、東大CARPでした!
こんにちは!東大CARPです!
気がついたらもう12月になっていて、これから本格的な冬の季節ですね!寒くなって風邪とかひいてないですかね?
さて、今回は私たちが以前から話し合っていた、男女共同参画社会基本法について記事をまとめていこうと思います!
男女共同参画社会基本法の理念や歴史についてまとめたり、そこから日本や海外の現状などを調べたりしましたが、男女共同参画社会を謳っている一方で、法が目指す社会と現実に乖離があることを指摘していきました。
ここで、その原因についてもう少し詳しく調べたり、それを基にみんなで意見を出して話し合ったりしていきました。
まず男女共同参画社会基本法が成立に至る経緯を細かくして見ていきましょう!
日本は戦後処理のなかで、個人の基本的人権の尊重や法の下の平等を定めた憲法を作ったりするなかで、男女の平等を目指す法の枠組みを整備していきました。戦前と比べて大きな第一歩であると言われています。
ですが、時代が進むにつれて、1960年代の高度経済成長の影響で、男性が労働し、女性が家事や育児を担うという、性別役割分担をする文化や価値観が浸透していきました。
その結果として、男性には一家の大黒柱として経済的な負担が集中するようになり、女性には家事や育児の負担が偏ってしまうという状態が生まれました。
この特徴は国民の意識にも反映されていて、1970年代に18歳以上の女性2万人を対象として行われた「婦人に関する意識調査」では、男女の性別役割分担に対して、それに賛成する人が80%以上を占め、労働も「出産まで」が28%、女性がいわゆるM字型の就労することに支持する人が53%となっています。今とはずいぶん違うことが分かりますね…!!
当時の社会には、結婚した女性の方が税制や年金制度などの社会的な優遇があり、未婚者の68%、特に20代は80%に達する女性が結婚に意欲的であり、結婚が社会的規範として捉えられていました。
ただし、性別役割分担に同意していても、男女の地位に関しては、62.3%が不平等だと答えています。何かしらの問題意識はあったと言えるかもしれませんね。
そんななか、政府は1985年に女子差別撤廃条約に批准したり、1985年男女雇用機会均等法が制定したりと、積極的に女性について地位を改善するような法整備を行っていました。
ただし、日本が独自に行っていったというよりも、1975年の国際婦人年の提唱にも代表されるように、世界的な女性人権運動の盛り上がりや、それに伴って日本国内でも女性の人権を見直すようにと、国際的な要請もあったことも大きな要因とみていいと思います。
そしていよいよ1994年男女共同参画推進本部ができ、1999年男女共同参画社会基本法が制定されました。
このような歴史があったということを踏まえたうえで、次に男女共同参画社会基本法の制定過程により注目していきます!!
以前の記事で指摘したように、「職場に活気」「家庭生活の充実」「地域力の向上」という三本柱を謳って、男女が個性をより発揮していくことができる社会の実現を目的に成立した法律です。
ですが、その成立過程を詳しく追っていくと、法律を作るうえで、政府の審議会で「ジェンダーからの解放(つまりジェンダーフリー)」を目指すことに基づくことが決定されたことが分かりました。
法律の方向性を話し合ったとき、以下に書いたようにA案とB案が論議されました。
A案「男女の特性を前提とせずに男女平等の実現を目指す立場、ジェンダーからの解放を志向する方向性を表現する」
B案「男女の特性を是認したうえで、男女平等の実現を目指す立場、生物学的機能に差があるから、社会的役割に違いのあることは当然であり、それは差別ではないとする考え方に解釈できる案」
このとき政府では、B案との十分な比較や検討を加えるということをせずに、流れのままA案を採用して法律を作ることを決定しました。
この理由として挙げられるのは、従来の社会であったような男女の性別役割分担を肯定し、それを悪用するのをさせないことであるとされています。
ここで指摘したいのは、男女共同参画社会基本法では、「職場に活気」「家庭生活の充実」「地域力の向上」という三本柱を謳ったものであるはずなのに、ジェンダーフリーという言葉を用いて、それがどのようにして三本柱を実現していくのかという検討が十分にされていなかった、ということです。
前半で述べたような男女性別分担による、社会や家庭の歪みを改善していこうとしたものの、(この記事ではジェンダーフリーの善し悪しには触れませんが)ジェンダーフリーという発想でどのように解決に持っていくのかが非常に不明確です。
つまり、「ジェンダーに縛られず、個性に基づいて」共同参画していく社会を目指すことが明確にされた一方で(上野教授もそれを明言)、その状態のまま法律を施行しました。
結果として、この法律は男女共同と表明していても、個人がそれぞれの個性を解放することを目的としたものであり、具体的な政策においても三本柱よりも、ジェンダーフリーを意識したものとなっていきました。
このような法律の制定の裏側まで探っていくと、男女共同参画社会基本法で訴えているような「職場に活気」「家庭生活の充実」「地域力の向上」という三本柱が、現実においてなかなか実現されていないことがわかると思います。
これからの男女共同参画社会を目指していくにおいて、どう社会を形成していくべきなのか、どのような具体的な方法を持って実現したらいいのか、改めて男女共同参画社会基本法を見直してみるべきであると感じます。
長々と書いてしまいましたが、ここまで読んでくださってありがとうございます!
以上、東大カープでした!