同居の実母87歳が認知症を発症しました。
認知症医療の第一人者である長谷川和夫先生が自らの認知症を公表し、大きな話題となりましたが、その先生が日本に初めて紹介したのが「パーソン・センタード・ケア」です。
認知症の方の個性を尊重する介護という意味ですが、個性の尊重とはその方の意思とやりたいことを認め、可能な限り束縛しないことです。
認知症になるとできないことに目が行ってしまいがちですが、実際はできないことは極わずかで、特に長年やり慣れたことは問題なくできます。できないことだけに最小限の支援の手を差し伸べることが認知症の方の介護負担を軽減させるコツです。そしてここが重要ですが、やりたいことができると認知症の進行を抑制することができます。
母は農作業を生きがいにしており、それを継続することによって認知症の進行が抑えられ、これまで通り平穏な日常生活を送ることができます。
認知症は高齢化に伴う脳の萎縮が原因です。萎縮により短期記憶に障害が出ますが、長期記憶は健全に機能しています。この仕組みが理解できれば認知症の恐怖が消えます。
短期記憶はついさっきのことで、それを忘れてしまうのが認知症です。長期記憶は昔のこと。これまでやり慣れていたことで、認知症でも脳にしっかり刻まれています。ついさっきのことを忘れたからといって目くじらを立てず、また同じ話を何度繰り返してもさらっと受け流していれば認知症の方の不安が解消し、それ以上の進行を遅らせることができます。
新型肺炎が猛威を振るい、その対策は「正しく知り」「正しく怖れる」ことですが、「正しく知れば」怖れる必要の全くないのが認知症です。