学園長コラム

介護や認知症について理解を深められる、学園長のコラムをご紹介します。
介護や認知症について理解を深められる、学園長のコラムをご紹介します。

2022.01.13 学校形式のデイサービスに見る、認知症介護のパラダイムシフト
衆議院議員 鈴木隼人先生のブログより転載 https://www.suzukihayato.jp/blog

たった一人の男が認知症介護にパラダイムシフトを起こそうとしている。
群馬県前橋市のデイサービス施設を訪問した私は変革の兆しを強く感じた。
施設の名は『こぐれ学園』。
学校形式のデイサービスという、聞きなれない介護事業を行っている。
施設の内装はまるで学校の教室。
私が訪問した時は「美術」の授業中だった。
4人いた生徒は全員が高齢者であり、うち3人が認知症とのことだった。
皆が教師の言葉に集中し、そして生き生きと絵を描いていた。
和やかに会話をしながら、時折笑顔に花が咲く。
これ本当に介護施設!?
しかもほとんどの人が認知症!?
キツネにつままれたような気になりながら、代表の小暮康弘さんに話を聞いた。
認知症介護のポイントは正しいスイッチを入れるかどうか

『こぐれ学園』の一日は朝礼から始まる。
その後の「時間割」は、授業の合間の15分休憩と昼休みの1時間を除き、各科目1時間ずつの授業で夕方まで埋められている。
認知症の方の集中力は30分も維持できないと言われることもあるが、小暮さん曰く「うちでは1時間で全く問題ない。皆さん集中して授業に臨んでいる」
ではなぜ、『こぐれ学園』では集中力が続くのか?
「一般的に認知症の方は短期記憶に弱い反面、長期記憶はしっかりしている。学校という、長期記憶を刺激する環境と、知的好奇心を満たせる喜びが脳を活性化させているのだろう。間違ったスイッチを押すと周辺症状が出現して大変になるが、正しいスイッチを入れればいい形で脳が働き出すということではないか」
「教える」ことを通じてセカンドライフに充実を

授業のメニューは英米文学、科学、美術、体育、音楽など多様。
簡単な内容だとかえって満足度が下がるので、一定の教養を持ち合わせている事を前提として大人向けの授業をやっている。
教師の多くは元高校教師や元大学教授など既にリタイアした方々で、中には教師自身が認知症、という方もいる。
介護職員を募集してもほとんど反応なかったが、教師を募集したら応募者が殺到した。
「シニアの方々の、もっと役に立ちたい、社会とつながっていたい、というニーズに合致したのだと思う。学校で教えることが生きがいになり、無為に暮らしていた多くのシニアに活力をもたらすことになるのではないか」
介護分野の人手不足を解消する

小暮さんは学校形式のデイサービスを運営しながら、「世間は認知症の人の能力を過小評価しているのではないか」と感じている。
『こぐれ学園』での振る舞いを見る限り、認知症の方であっても皆さん「ごく普通の教養ある高齢者」の姿だからだ。
実際、授業中はみな集中して勉強しているし、休憩時間も自分のことは自分でできるようになるため、介助が必要な場面はまず出てこない。
このため、介護職員は介助以外の仕事を進めることができる。
一般的に認知症介護には人手がかかると言われるが、「このやり方なら、介護分野の人手不足を解消することができるのではないか」と小暮さんは確信している。
劇的な改善を見せる利用者の皆さん

『こぐれ学園』で1日を規則正しく過ごすことによって、頭と体に適度な疲労を与えることになる。
このため、自宅に帰るとぐっすり眠り、徘徊などは起きなくなる。
また、意思疎通の力が戻ってきて、家族との間に会話が生まれる。
その中から家事の分担が始まり、家でボーっとせずにメリハリのついた生活を送ることができるようになる。
利用者の変化は顕著だ。
小暮さんには忘れられない出来事がある。
ある男性利用者を自宅に送り届けた時のこと。
玄関で出迎えた奥さんに対して、その方が笑顔で「ただいま」と声をかけた。
一見、何気ない日常のひとコマだ。
しかしその時ふいに、奥さんの頬を大粒の涙が流れた。
ここ数年、旦那さんの笑顔を見たこともなかったし、旦那さんから声をかけられることもなかった。
その方は、『こぐれ学園』に通う中で、それまでできなかった歯磨きや手洗い、そしてトイレも自分でできるようになった。
また、他人との意思疎通が全くなかった状況から、人に話しかけて積極的にコミュニケーションをとるようにまでなった。
認知症介護を変える戦いはこれから

従来型介護との違いは明らかだ。
数十年後、私たちの子供たちか、あるいはそのまた子供たちは、「昔、全く相手にもされなかった一人の男が、小さなデイサービスから認知症介護の在り方を変えていった」と語り継ぐことだろう。
そして、今を生きる私たちには想像もできないほどに認知症介護の質が抜本的に向上し、介護分野の人手不足が解消し、シニアのセカンドライフが充実という名の光に照らされていることだろう。
いま小暮さんが、そして私たちが人生を賭して戦うのは、そのような将来を自らの手で実現することに希望を見出しているからに他ならない。

2022.01.11 認知症は果たして病気か
Is dementia really a disease?

 結論から言えば、高齢化に伴う脳細胞の萎縮、ということになります。筋肉や歯、視力の衰えと同様に老化ですから、ある意味病気よりもより深刻で、回復は絶望的です。歳を重ね、高齢になるに従い、足腰の筋肉が衰え、起き上がることもままならなくなりますが、このような老化が脳細胞に及ぶと脳の萎縮による認知症が始まり、最後は自分が生きているのかどうかも分からなくなることもあります。これもある意味、死の恐怖から解放されるということになれば、どなたかがおっしゃっていましたが長生きをした方への神様のご褒美と言えるかもしれません。
 認知症の深刻さは、回復が望めないことに加え、10年あるいは20年以上にわたり症状が少しずつ悪化するという、闘病期間の長さにあります。この長さが家計の負担に重くのしかかり、医療、社会福祉費の破たんを招きかねないほど国民生活にも重くのしかかります。暗い未来しか描けませんが、認知症が病気である場合にはまさしく不治の病で、当事者はもちろんのこと、ご家族も国家としても、こと認知症に関しては悲惨な現実が待っています。
 しかしです、認知症の原因である数パーセントの脳細胞脳の萎縮、その部分に関しては医療が対応すべきカテゴリーでしょうが、萎縮していない90%以上の健全な脳細胞のことを見落としていませんか、ということです。筋肉が衰えても視力が落ちても入れ歯になっても高齢者は、無理をせずに筋肉量に応じた行動をし、視力は眼鏡で補い、歯が一本もなくても入れ歯で生活できます。筋肉や視力の衰えは病気でしょうか。歯が抜けるのも病気でしょうか。高齢者の場合、老化です。老化ですから逆に進行は止められません。認知症も同様です。大部分の健全な脳細胞を活用して多少不自由はあるものの、それは筋肉や視力の衰えによる不自由さと同じですから、日常生活は十二分に行うことができます。
 脳の萎縮が老化であるとすれば、医学的に進行を防止することはあまり建設的とは言えません。それよりも健全な脳細胞を生かす工夫、あるいは研究に投資すべきでしょう。現在、認知症の方は、400万人とも500万人とも言われています。目前の2025年には、団塊の世代が全員後期高齢者となり、認知症の方も急増することが予想され、その数は、700万人とも800万人とも言われています。さらに団塊ジュニア世代が後期高齢者になる2040年には一千万人を超え、小学生よりも多くなるという予測です。今でも幼稚園バスやスクールバスを見かける代わりに施設の送迎車両行き交っています。
 多少筋肉や視力が落ちても歯が抜けてしまっても施設への入所や、まして入院するようなことはありませ。認知症も多少脳細胞が委縮したとしても施設への入所は必要なく、入院は論外です。認知症の方の多くが高齢ですから持病の一つ二つはありますが、身体的に健全な方です。介護の三大要素である食事と排せつ、入浴に支障がなく、自分でできます。しかし介護の世界では、身体的に健全な方の認知症が問題になっています。介助の必要がないのはありがたいが、コミュニケーションが取れない、話が通じず言うことを聴いてもらえない、仕舞には勝手な行動をし、統制が取れない等々であり、貴重な介護要員を必要以上に充てなければならず、施設経営に過大な負担を強います。脳の萎縮に起因するできないことばかりを見ているからであり、実際はできることの方が多く、実は何でもできます。身体的に健全な認知症の方くらい介護が楽な介護保険認定者はいません。
 どうしても介護を必要とする方は、介護の三大要素である食事と排せつ、入浴に支障がある方、すなわち身体的に障害のある方であり、貴重な介護人材は介助にこそ割かなければならず、そうしなければ介助負担は軽減されず、いつまでも人材不足のままです。かといって認知症の方を放置できるかと言えば、決してそうではありません。
 家庭内では見守りのできる家族がいなければなりませんし、健全な脳細胞を会話等で刺激して認知症の進行を遅らせることも考えなければならず、家庭内で全てをケアすることは困難です。そこで週に1~2回、デイサービスに通い、仲間とおしゃべりして脳に刺激を与え、規則正しく一日を過ごすことが家族の負担を減らし、認知症の進行を遅らせることになります。認知症の方には必要最小限の介護で十分です。逆に過剰な介護が脳への刺激を阻害し自立を損ない、認知症の進行を早めてしまいます。
 認知症が老化現象で、必要かつ十分な最小限の介護が逆に理想ということになれば、3年後に予想される認知症の方のパンデミックにも最小限の家計と介護、医療負担で乗り切れると確信しています。

2022.01.09 世界で唯一、認知症の方の社会復帰
The world's only person with dementia is reintegration into society

 「学校形式のデイサービスこぐれ学園」では、認知症の方が介護職員として一般職員同等に勤務しています。その職員は介護職員ですが、実は数学の授業の時間講師です。
 弊社デイサービスは学校形式ですので、一日のスケジュールが時間割になっています。数学の授業は金曜の3限にあり、デイサービスですから当然のこと、半数以上が認知症の方を対象に授業が行われます。
 その職員に数学の時間講師を依頼する前、奥さんからご主人の認知症の相談を受けました。経歴を伺うと高校で四十数年間も数学の教師として教壇に立っていた、というではありませんか。最初は弊社デイサービスを利用したい意向でしたが、地域密着という制約があり、お住いが地域外であったため利用ができません。そこで提案したのが数学の時間講師です。算数ではなく敢えて数学をお願いしました。算数のような四則演算は、認知症の方を含めた介護を必要とする高齢者も得意で、脳トレにもなりません。論理的な思考を必要とする数学が脳の働きを活性化させる、という確信がありました。
 時間講師を提案はしたものの奥さんを含め二人いらっしゃるお子さんも、絶対に無理、と反対していました。お子さんのひとりは医師ですので、医師の常識、医学界の常識からしても認知症でありながら再度教壇に立つなどあってはならないことのようでした。でもダメ元です。数学の授業にチャレンジいただきました。案の定、こちらの見込み通りということですが、現役当時そのまま、黒板の板書も説明の語り口も一切よどみがなく、立て板に水とは正にこのこと、四十数年間のキャリアは脳と体に染みついている、としか言いようがりません。夫のその姿に奥さんも夢を見ているような、あるいは奇跡を目の当たりにしたような感動に浸っていたに違いありません。
 なぜこんな奇跡のようなことが起こったのか、理由は簡単でコロンブスの卵そのものです。認知症に伴う諸症状が短期記憶の障害として発症するからです。ここに錯覚が発生します。「ついさっきのことも忘れてしまうくらいだから」という錯覚です。ついさっきのことも忘れるくらいだから、「何もできない、全てダメ」と続きます。これは飛躍です。絶望的な飛躍です。障害は短期記憶ですから、ついさっきのことを忘れる症状が出るのは止むを得ません。しかし長期記憶はどうか。これも認知症の決まり文句ですが、「昔のことはよく覚えている」のです。これこそ長期記憶が健全な証です。実は脳機能の大部分が長期記憶で占められています。脳細胞の萎縮で生じた短期記憶障害は脳の機能のごくわずかな部分に過ぎません。この長期記憶には食欲や排せつといった生命維持に欠かせない機能も含まれていますから、認知症が進行すれば食べる意欲を失い排せつの感覚がなくなることもありますが、長期記憶の部分まで萎縮して脳機能が失われたわけではありません。長期記憶を刺激することができればたちまちにして復活します。食欲が戻り、自分の意志で排せつができるようになります。
 もうお分かりいただけたと思います。認知症の方が数学という論理的思考の塊のような授業ができたのは、長期記憶が健全だからです。長期記憶さえ健全であれば、短期記憶の障害は、日常生活に支障が出ません。しかし誰もが認知症でありながらキャリアを生かし、社会貢献やその先の社会復帰を果たせるわけではありません。このキャリアですが、矮小化、視野狭窄になってしまうと不可能に思えてしまいますが、キャリアの範囲を広くとらえれば誰もが生かせるキャリアがあります。そう、学校です。誰もが青少年の多感な時代を9年から20年以上も学校で過ごしています。この学校でのキャリアを最大限に引き出して成立しているのが「学校形式のデイサービスこぐれ学園」です。大きな黒板が正面にある学校そのままのフロアに一歩足を踏み入れると認知症の方が学生時代に戻り、長期記憶が刺激され活性化します。無表情だった表情に笑顔が戻り、級友との会話が始まります。授業が始まれば黒板の板書をノートに書き写し、不可能と思われていた文章が書けるようになります。認知症の症状が消え、萎縮していない健全な脳細胞が動き出します。認知症の進行、すなわち脳細胞の萎縮は老化ですから止めることはできませんが、健全な脳を動かし続けることによって進行を遅らせることができます。
 残念なことに学園で一日過ごした記憶も短期記憶の分野です。ほとんどの方が自宅に戻ると学園での記憶がありません。奥さんや家族が学園の様子を聞いても答えられません。しかし通学した日は、脳が一日フル稼働です。その晩は心地よい脳の疲れでぐっすり就寝することができますから、夜間の徘徊癖も解消です。

2020.03.01 認知症は怖くない
I'm not afraid of dementia.

 同居の実母87歳が認知症を発症しました。
 認知症医療の第一人者である長谷川和夫先生が自らの認知症を公表し、大きな話題となりましたが、その先生が日本に初めて紹介したのが「パーソン・センタード・ケア」です。
 認知症の方の個性を尊重する介護という意味ですが、個性の尊重とはその方の意思とやりたいことを認め、可能な限り束縛しないことです。
 認知症になるとできないことに目が行ってしまいがちですが、実際はできないことは極わずかで、特に長年やり慣れたことは問題なくできます。できないことだけに最小限の支援の手を差し伸べることが認知症の方の介護負担を軽減させるコツです。そしてここが重要ですが、やりたいことができると認知症の進行を抑制することができます。
 母は農作業を生きがいにしており、それを継続することによって認知症の進行が抑えられ、これまで通り平穏な日常生活を送ることができます。
 認知症は高齢化に伴う脳の萎縮が原因です。萎縮により短期記憶に障害が出ますが、長期記憶は健全に機能しています。この仕組みが理解できれば認知症の恐怖が消えます。
 短期記憶はついさっきのことで、それを忘れてしまうのが認知症です。長期記憶は昔のこと。これまでやり慣れていたことで、認知症でも脳にしっかり刻まれています。ついさっきのことを忘れたからといって目くじらを立てず、また同じ話を何度繰り返してもさらっと受け流していれば認知症の方の不安が解消し、それ以上の進行を遅らせることができます。
 新型肺炎が猛威を振るい、その対策は「正しく知り」「正しく怖れる」ことですが、「正しく知れば」怖れる必要の全くないのが認知症です。

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