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【アパレル】
●株式会社アイソトープ
●岩下株式会社
●株式会社NFL
●三喜商事株式会社
●株式会社ジオン商事
●住商モンブラン株式会社
●株式会社ディープサンクス
●株式会社東方貿易商行
●有限会社トレモア・プランニング
●林田株式会社
●株式会社プルテル
●マツオインターナショナル株式会社
●株式会社ふじや
【テキスタイル】
●大津毛織株式会社
●陰山株式会社
●株式会社サンウェル
●柴屋株式会社
【商社】
●伊藤忠商事株式会社
●株式会社STX
●株式会社クラボウインターナショナル
●澤村株式会社
●帝人フロンティア株式会社
●株式会社リンド
●スタイレム瀧定大阪株式会社
【服飾資材/副資材】
●FYS株式会社
●清川株式会社
●清原株式会社
●コロナマルダイ株式会社
●テンタック株式会社
●増見哲株式会社
●モリト株式会社
【ファッション雑貨/生活雑貨】
●株式会社スプリング
●株式会社ナカハシ
●富士産業有限会社
【企画】
●有限会社ユープランニング
【教育機関】
●大阪文化服装学院
素材メーカーと協力し商品企画の視点からお客様に喜ばれるSDGsを実践
SDGsというテーマを掲げたのは2019年初の展示会からとなりますが、エコという観点ではすでに25年の実績があります。
当社の株主は住友商事㈱様の他にも東洋紡STC㈱様があり、1995年に東洋紡グループが再生PET素材の取り組みを始めたことをきっかけに、当社でも再生素材を使ったユニフォームを展開しました。そこから環境対応に注力しています。
ユニフォームは耐久性や機能性など、お客様の要望をひとつひとつ具現化することでこれまで事業を行っております。当初、価格差のあった再生素材はお客様の要望に応えるべく、素材メーカーと共に努力し通常品との価格差を無くして普及に取り組んできました。
■17のテーマの内、どのテーマに取り組んでいますか?
主には素材メーカーと共同で環境配慮型のユニフォーム素材をお客様に提案しており、その他にもカーボンオフセットや回収・リサイクルに関連した活動もおこなっています。
小松マテーレ㈱様の染色技術から生まれたもので、合成繊維を天然素材で染めることができるのが特徴です。タマネギの皮、ワイン+ぶどうの絞り殻、竹炭、オリーブの葉+絞り殻、インディゴ、米のもみ殻など、従来は廃棄されていた素材を活用することで、自然と人に優しい色を表現しており、オーガニックレストランや美容、介護などの分野で活用いただいています。
③カーボンオフセット
京都議定書などで注目された温室効果ガス削減活動を促進する取り組みとして、当社が担っている材料調達から製品製造・輸送など一連の工程で排出される二酸化炭素の量を計測し、1着当たり2kgと算出。自分たちが排出する二酸化炭素の総量に対してオフセットする仕組みを活用し、CO2の削減に取り組んでいます。
④広域認定制度
大切に長く着ていただいたユニフォームを適切に回収し、有効なリサイクルに繋げることができるよう、指定回収期間や指定リサイクル工場を持つことにより販売店、お客様と力を合わせて取り組みができる体制を整えています。
⑤キッズユニフォーム活動
お子様を対象に食育、医療、介護などのイベントをする際のキッズユニフォームを提供しています。子供達がユニフォームを着る体験を通じて将来、「コックさん」や「看護師さん」になりたいという夢を持ってくれることを願っており、その子供達が働く服を作ることが、私たちの仕事です。
⑥FSC認証紙、ベジタブルインク、グリーンパワー
当社では営業ツールとして数多くのカタログを発行しているため、その工程において使われるエネルギー、用紙、インクなどにも環境配慮をおこなっています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
大きなテーマは「社会をより良くすることができるユニフォーム」を作ることを目指しています。「あの制服を着て仕事をしてみたい!」と思われるユニフォームには、働く人のモチベーションを上げる力があり、またそのユニフォームを着ることで「今日もいい仕事をしよう」という意欲にも繋がっていると考えています。また、長く使える耐久性も兼ね備えているため、その観点では「環境」にも関わっています。
年1回の展示会では社員が学び直してお客様と共にSDGsを推進
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
当社はメーカーですので、企画部門がSDGsの推進を担当しています。また、生地取引が祖業のため、社員は素材に対するこだわりを持っています。このようなバックグラウンドがありますので、環境配慮型素材オニベジやPETボトル再生繊維などユニフォーム素材からSDGsを推進していくことができることが、当社の強みなのです。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
先ずは、「社員ひとりひとりがきちんと理解した上で周りに伝えること」がポイントだと考えています。具体的には、年に一度開催している当社の展示会ではSDGsに関する情報を展示していますので、その機会に社員も勉強し直し、お客様に説明できるレベルまで理解するよう取り組んでいます。展示会は東京と大阪の2カ所で開催していますが、来場されるお客様からは、「我が社に説明に来てほしい」という依頼もいただき対応しています。このような活動は、全国へSDGsを広める活動にも繋がっていると考えています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
SDGsはどこかの機関が認可や認定をするものではないので、自社で設定したテーマが「正しいのか?」「どうしたら良いのか?」と分かりにくい点があります。よってそれぞれの取り組みが、なぜこの項目に該当するのかをメンバーで考え議論して答えを導きだしています。SGDs17テーマに無理に当てはめるようなことはせずに、SDGsの取組と決めた活動については、「何故該当するのか?」をQ&Aに纏めています。素材メーカーが設定したSDGsの項目もそのまま転用するのではなく、自社で考えて設定し、素材メーカーへフィードバックしています。
リサイクル素材のユニフォームで働きがいも経済成長にも貢献を!
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
最終的にはすべてリサイクル素材でまかなえるようになりたいと考えています。我々のビジネスは主に企業向けなので、環境素材や回収リサイクルの活動については理解いただきやすいと思っています。SDGsのテーマについては、そもそも17個すべて網羅することはできませんし、ユニフォームという商材では8番の「働きがいも経済成長も」というテーマが追求しやすいと思っています。ユニフォームをきっかけに働きがいを感じていただき、日々の仕事を通じて経済成長に繋がることを願っております。最近ではコロナの影響で衛生管理への関心が高まる中、医療分野や食品衛生のユニフォーム需要も増えてきており、ユニフォームを通じて幅広い業種の働きがいと経済成長に貢献していきたいですね。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
我々が取り組んでいる活動について、もっと出来ること、まだまだやらねばならないことがあるのではないかと考えていますので、幅広い分野でのSDGsへの取り組み内容が知りたいです。SDGsの活動には気付かないうちに該当していることもあり、中でも廃棄削減については、捨てる神あれば拾う神あり、というようにある場所で不要になったものが他の場所で活用できるということも沢山あると思います。当社の取り組みをさらに進化させるためにも、関西ファッション連合には幅広い情報提供に期待しています。
■取材者あとがき
ユニフォームメーカーとして商品企画の視点からSDGsに取り組む活動は、自社の営業活動に直結するだけでなく、ユニフォームを使用されるお客様企業の取り組みにおいても環境、社会に対応したアクションに繋がっています。また17あるテーマについては自分たちが説明できる番号だけを厳選して表記している姿勢もSDGsの活動を内外に広めるために大切なポイントになっていると感じました。ユニフォームから拡がるSDGsアクションのさらなる進化に期待しています。取材協力ありがとうございました。
最大の財産が人という理念の元、客観的評価による認定を獲得
服飾資材及び繊維資材の総合商社として国内、国外と幅広い事業を展開されている清原株式会社さまの取り組みについて取締役副社長で管理本部長兼経営企画室長でもある西島輝彦さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
元々海外アパレルや一部の国内ユニフォーム関連のお客様からは、早くから環境やリサイクル商品に関する問い合わせがあったのですが、我々の主力であるレディスアパレルを含め、アパレル業界の興味や反応が比較的小さく、自社の意識も今一歩高まらないことついて、将来的な営業リスクを感じていました。社内現場も同様で、アパレル事業部でCSR/CSV、SDGsに関する草の根的な調査・予備活動が始まり、それを2019年6月から社内タスクフォース『CSRプロジェクト』に昇格させ、他の事業部を巻き込んで全社的な取組みを始めました。
■17のテーマの内、どのテーマに取り組んでいますか?
CSRプロジェクト発足後の1年間は、まず経営・管理のテーマにフォーカスしました。具体的にはCSR憲章の制定、健康経営や働き方改革の推進、ワークフロー(電子決裁)やでんさい(電子記録債権)導入などによるペーパレス化、各拠点のLED化の推進、対外的契約ルールの更新などに着手しました。プロジェクト活動においては、自分たちの活動が何をゴールとしているのか見失わないよう、(多少こじつけですが)全ての活動目標をSDGsの17項目に落とし込み、課題・計画化しています。また、成果が曖昧であったり、自己満足で終わらず客観的に説明できるよう、数値達成度の測定と外部のお墨付き(認証など)を得ることなどにこだわっています。中でも人が財産という理念のもと、社員の健康や労働環境、福利面などの改善に取り組みました。2019年12月に三井住友銀行より働き方改革融資を受け、2020年3月に経済産業省より健康経営優良法人の認定を受けました。また従業員が万が一、病気やケガで長期間仕事ができなくなった時に一定の収入を守るためGLTD(団体長期障害所得補償)制度も導入しました。また当社は従業員の男女比が6対4と女性の就業比率が高いのですが、直近では育児休暇後の復帰率100%など、キャリアの断絶が少ない環境作りにも取り組んでいます。
次に環境については2020年2月にbluesignⓇに卸売業として加盟しました。これは繊維業界において環境、労働、消費者の観点における持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される認証で、世界レベルで消費者の安全、労働者と環境への影響・負荷の抑制、資源の節約に取り組むことを目指すものです。まだ日本では加盟している企業が少ないのですが、当社では欧州でbluesignⓇに加盟しているメーカーの生地をお客様へ提案する活動を始めています。
そして社会については、お客様の流通を支える立場として、新技術を取り入れた人的・物的負荷が少なく持続可能なサプライチェーンの実現と、それを担保するBCP対策に取り組んでいます。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
先述のように、プロジェクト発足後の1年間はまず経営・管理課題を主体に進めてきましたが、今後はアパレル事業部、ホビーライフ事業部、ライフスタイル事業部、海外事業部それぞれが主体となり、経済に力を入れていきたいと考えております。具体的にはこれまでのCSR(企業の社会的責任)活動を進化させ、営業を意識したCSV(共通価値の創造)活動に注力することを目指しています。
経営直結型のプロジェクトチームでスピーディーにSDGsを推進
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
プロジェクトリーダーは管理本部の西島が担当していますが、四つの事業部、及び管理本部から課長クラス、担当クラスなど、各々数名のメンバーを選出し、現在12名でこのプロジェクトを推進しています。また当社の取り組みは経営とも直結させており、プロジェクトで議題となった内容を次の経営会議に報告し、すぐにアクションに移せる仕組みも作っています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
SDGsに限らず、これからの活動においては情報に関する感度、デジタル技術を使いこなすスキルがなければ何事も前に進まないと考えています。当社では情報システム部門が独立した100%子会社KiSを保有しており、ここから3名を社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)化をサポートするエバンジェリスト(伝道者役)に抜擢、ともすればIT化に乗り遅れそうなシニア層を含め、業務の平準化、標準化、ボトムアップをスピーディーに進める体制を導入しました。通信環境やコミュニケーションツール、データベースの整備など、デジタル環境の整備と社内外情報連携強化を重点課題として取組んでおります。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
管理側のテーマは社内で完結出来ますし、具体的に進めやすいですが、営業側のテーマはお客様自体が試行錯誤の段階でもあり、ご期待に応えるには時間がかかると認識しています。テーマに掲げたCSV(共通価値の創造)活動を推進するには、ボタンや生地といったパーツの提供、我々が得意とするトレンド対応のみならず、消費者が求める製品のコンセプト作りから開発、生産、流通までトータルビジネスにパーツのプロとして積極的に関与させていただくべく信頼関係構築を行い、ビジネスパートナーにご指名いただけるよう取り組んでいきたいと考えております。
半歩先行く視点でこだわりのものづくりを服飾資材からサポート
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
10年後の未来を予測するのは難しい、というより正直不可能ですが、今後は実店舗での購入が減るなど消費者の購買行動が更に大きく変わり、合わせて流通形態も変化することが予想されます。我々のビジネスにおいても従来型の訪問営業が縮小し、ネットワークを駆使したデータベースの活用やインサイドセールスが重要となってきます。B2B、B2C、C2Cなどビジネスモデルも多様化し渾然一体となる中で、ベースとなる卸としての機能強化を行いつつ、一方では卸の枠に留まることなく新たなチャレンジしていくことが必要と考えます。メーカー様やお客様、更には一般消費者とも連携し、コラボして、次の市場を捉えた商品・ビジネス開拓につなげるべく、そのための機能強化を目指しております。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
アパレル業界では製品の半分を廃棄していることが問題になっていますが、今後製造量が抑制されるなかで、当然パーツ供給側も売上を維持拡大することが難しくなることが想定されます。ファストファッションが大きく成長してきた背景もありますが、そのような中でも、他者とは違う自己表現をしたいというニーズや、こだわりのクオリティ商品を長く愛着をもって使いたいというニーズは存在します。「神は細部に宿る」という言葉がありますが、我々の扱っているボタンなどのディテイル資材は製品の5%程度です。しっかりしたコンセプトの上で、こだわったパーツを採用いただき、製品をひと味違うものにしていただくことに、パーツ屋として貢献出来ると思います。ディテイルへのこだわりはコストパフォーマンスの観点でも意味があるとも思います。アパレル業界が大きな変革期を迎える中、明確なコンセプト表現やブランド育成、こだわりのものづくりなど業界全体に刺激を与えるような仕掛けを行っていただけることを期待しています。
■取材者あとがき
最大の財産が人であるという理念の元、SDGsへの取り組みが自己満足にならないよう外部による認定制度を積極的に取り入れ、スピーディーに実践されている姿が印象的でした。またいち早くbluesignⓇに卸売業として加盟するなど営業に直結する取り組みも今後の展開が期待できます。そしてSDGsのプロジェクトを経営に直結されている点が何よりも実践の鍵であると思いました。取材協力ありがとうございました。
商号 株式会社サンウェル
代表 代表取締役社長 今泉治朗
創業 1966年(昭和41年)10月
従業員数 219名(男性:75名・女性:144名)
事業内容 繊維ファッション総合商社
取扱商品 衣料及び資材用テキスタイル全般、レディース・メンズ・こどものアパレル製品、インテリア雑貨製品
取材日:2020年9月1日
SDGsの前に経営理念あり!社会に貢献することは我が社のビジネススタイル
テキスタイルの総合商社としてグローバルな拠点を持ち自社ブランドも展開されている株式会社サンウェルさまの取り組みについてSDGsプロジェクトメンバーの中嶌謙吾さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
そもそもSDGsのアクションに取り組もうという前に、当社の企業理念の中に「社業の繁栄を以て各人の生活の向上を計り社会に貢献しよう」という一文があり、創業以来ずっと行ってきた活動がSDGsに繋がっていたという感覚の方が近いですね。我々は生地を販売している訳ですが、例えば1着のシャツを作るには約2メートルの生地が必要になります。しかし生地の生産は2メートルだけを作るというわけにはいきませんので、沢山作った生地をお客さまが必要な分だけ販売するという仕組みを提供しています。必要な数量の計り売りスタイルを創業当時から提供することで、お客さまの過剰在庫にならないビジネススタイルをモットーにしてきました。そのような中、数年前から総合展示会において我々の取り組み内容をパンフレットにまとめて紹介してきたものを、今年からホームページに掲載するようにしました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
現在、10個の取り組みを行っておりますが、中にはSDGsが制定された2015年よりも以前から取り組みを始めている活動もあります。
■(1966年~)テキスタイルストック
創業以来54年間、生産・物流を効率化。必要な時期に必要な数量をお届けし、生産の無駄や物流に伴うCO2排出量削減を推進。業界ではいち早く取り組んだ
■(2008年~)オーガニックコットン
自然に優しいサイクルで栽培する
■(2016年~)ピース・インド・プロジェクト
インドのコットン種子栽培にかかわる子どもたちへの支援
■(2016年~)サンプルリユース
生地見本回収で環境配慮と子どもたちへの支援
■(2019年~)エコペット®
2つのリサイクル方法で生まれるポリエステル繊維
■(2019年~)SOLOTEX🄬×エコペット®
植物由来繊維とペットボトルでつくる
■(2019年~)e&dress™
ペットボトル生まれのコットンの風合い
■(2019年~)RENU®
”繊維から繊維”で実現するサーキュラーエコノミー
■(2019年~)COOLMAX®
97%リサイクル資源から繊維に再生
■(2019年~)Paralym Art®
障がいのある人々の可能性を広げる
詳細はこちら ⇒ サンウェルの取り組み ※㈱サンウェルHP参照
これらの取り組みの中でもサンプルリユースについては、当社の特長を活かしたものであると認識しています。当社では大量のサンプル帳をお客さまに提供していますが、商品化を終えたサンプル帳を捨てるのではなく、返却いただき当社が寄付をすることでお客さまにもSDGsの活動に間接的に参加していただくことができます。また気軽にサンプル帳を持ち帰っていただくことで、メーカーとしてのものづくりの幅が拡がることにも繋がっています。このような取り組みを通じて「サンウェルと関わることでSDGsに貢献できる」という理解が拡がることに期待しています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
経営理念の一文にもあるのでやはり「社会」が大きなテーマになっています。しかしSDGsのテーマに着目することで今後は「環境」や「経済」というテーマにも意識して取り組んで行きたいと考えています。とはいえ我々は環境に優しい素材を開発できるメーカーではないので、メーカーさんが開発された素材を取り扱い、それをお客さまのビジネスにうまく繋げることを使命にしていきたいと思います。
社員の自発的なアイデアから新しい取り組みがどんどん生まれています
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
今年度SDGsプロジェクトを発足し活動を推進しています。取り組み内容を紹介したパンフレットを展示会で配付し、その後ホームページにも活動内容を紹介していますが、ちょうど9月からは、これまでの活動を一歩前進させるべく、具体的なテーマを持った分科会活動の立ち上げを計画しているところです。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
元々は当社の社長が「国内で捨てられる衣服が年間およそ100万トンある」という情報を起点にして当社で出来ること、やるべきことは何かという問いかけから始まった活動なので、トップダウンで取り組みが出来ているという安心感があります。その上で、ホームページで「活動レポート」というページを作り、最初に行なった勉強会やワークショップ、様々な活動内容を随時紹介しています。直近では自社ブランド「ヴェロフォンナ」「ハウピア」、サンウェルグループの「㈱フィス」が取り組むSDGsのアクションも紹介。社員の自発的なアイデアが具体的なカタチになってきています。この「活動レポート」を社員にも取引先にも見ていただくことで活動の輪を広げて行きたいと考えています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
強いて挙げれば「ジェンダー平等を実現しよう」というテーマかもしれません。当社では女性社員の比率が高く(65%)現場、実務面では大きな戦力となっております。近年は福利厚生の側面からも女性が長期間に渡り働きやすい職場環境になることを目指していますが、女性管理職の比率(15%)などについては世界基準に及ばず、まだ課題があると認識しており女性の成長と登用に注力している過程です。
我々の活動にゴールはない。和の精神で共に努力を続けることこそが大切
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
当社の理念に「信頼と堅実をモットーに全員参加による目的達成に努力しよう」という一文があるのですが、「目的達成しよう」ではなく「目的達成に努力しよう」となっていますので達成すれば終わりではなく、終わる事なく努力し続けることが我々のスタイルです。そのような意味でSDGsにおいても2030年で終わるという理解をしていません。また当社では「和の精神を重んじ」という言葉があるのですが、この和は輪に通じるものであり、取引先、お客さま、従業員を含めすべてが繋がっているという意味がそのまま社会に繋がりますので、広く社会を意識した取り組みをゴールで区切ることなく続けて行きたいと考えています。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
沢山の情報を公開していただくことに期待しています。我々は数多くの取引先をもっているのですが、各社各様にその背景や取り組み内容は異なりますので、より多くの情報を提供いただくことが、我が社の活動においても貴重な情報源のひとつになります。そのような情報を活かしながら当社でも単に仕入れて売るということではなく、幅広い相談ごとをいただけるような企業になりたいと願っています。
■取材者あとがき
2015年に制定されたSDGsよりもずっと前から社会に貢献することを経営理念としてきた歴史を持っておられます。また「目的達成しよう」ではなく「目的達成に努力をしよう」という社訓が終わりなき活動の源泉にもなっています。まさに付け焼き刃のSDGsではなく、創業以来の社訓に裏付けられた活動のひとつひとつが豊かな社風を表していると感じました。取材協力ありがとうございました。
商号 蔭山株式会社
代表 代表取締役社長 伊藤忠一
設立 1967年(昭和42年)4月25日
従業員数 25名(2020年4月現在)
事業内容 繊維製品の販売及び付帯する一切の業務
取扱商品 羽毛ふとん及び羽枕の表地、裏地、中袋他
羊毛ふとんの表地、裏地
羽毛ふとん、羊毛ふとん、マットレスなどの縫製側
羽毛ふとん、羊毛ふとん、カバリング、枕などのOEM寝装製品
アイスランド産直輸入最高級羽毛;アイダーダックダウン
インテリア用ファブリック;garb casa「ガーブカーサ」
取材日:2020年9月10日
トップの号令でSDGsに取り組む
寝装寝具のテキスタイルを中心に高級羽毛などを取り扱い、インテリア用ファブリックも展開されている蔭山株式会社さまの取り組みについて商品企画部部長の宮崎尚之さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
代表者である社長は外部の会合に参加する機会が多く、参加をすると必ずと言っていいほどSDGsが話題に登り、企業としても今後必須となるであろう取り組みであると感じていました。SDGsに関しては2019年9月頃に会社として指示が降り、商品企画部が商品化を検討しました。注目したのが環境問題の中でも海洋ゴミ、特に多くを占めるプラスチックゴミ中でも“ペットボトル”です。10数年前より再生ペットボトルを使用した商品を取り扱ってきましたが、今から20年も前に制定されたグリーン購入法、エコマーク云々の基準に合わせると品質面では風合いが固く使用感を損ね、また再生原料を使用する為価格の高い商品となり消費者への訴求には限界がありました。国内外で情報収集をする中でペットボトル再生糸「REPREVE(リプリーブ)Ⓡ」に出会い、2019年10月よりREPREVEⓇを使った生地の取扱いを始めました。皆さんそうかもしれませんが、当社でも以前から紡績メーカーが扱うECO関係の様々な素材を、この商品が”環境問題に配慮したものです”と取り立てて謳うことなく扱って来ましたが、今回のREPREVEⓇは当社ではSDGsが提示するアイコンに合致し尚且つ、ブランディングの面でもわかりやすく伝えやすい商品であり、消費者にも所謂”伝わりやすい商品”であると考え、ペットボトルの再生に取り組むREPREVEⓇを製品化しSDGsとして推進しています。
わかりやすいアイコン・ブランディングで消費者へも伝わるSDGs
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
当社ではREPREVEⓇというリサイクル・ポリエステル繊維を、羽毛布団の側生地に使用する取り組みを行っています。羽毛布団の側生地としてはボリュームのTTC(ポリエステル85%、綿15%)と呼ばれる素材があるのですが、そのポリエステルの中の30%にリサイクルペットボトル繊維であるREPREVEⓇを使用しています。この再生ポリエステル糸は、リサイクル原料のトレーサビリティ即ち廃棄されたものを回収した段階から、最終製品が製造され、販売されるまでの間に、非認証原料の混入がないかなどの担保だけではなく、有害化学物質を含む加工薬剤の排除、廃水管理やエネルギー使用などの環境面、労働時間や各種ハラスメントのチェックなどの労働環境面、倫理面も審査項目となっている「グローバルリサイクルスタンダード」の厳しい検査を経て認証を受けた中国の紡績会社が製造しています。当社ではこの糸を使用し出来た製品には、その事を証明する「REPREVE」の札を製品1枚に付き必ず1枚を厳格な管理の元付与し販売する様にしています。また再生糸のみ使用した場合、生地の物性が弱くなり風合いも損ねるためREPREVEⓇ糸は30%程度しか使うことが出来ません。それでもシングルサイズの布団1枚で、破棄された500mlのペットボトル約10本がリサイクルされたことになります。今までの経験からECO商品は価格が高く、販売面の不安があり初めは売れなくても根気強く続けるつもりでスタートしましたが、何社かのお客様に賛同を頂き初回ロットは即消化することができました。更に受注しており現在追加の発注をしているところです。また一方では染色工程での取組も行っています。生地の染色には薄い無地色でも大量の水を使用します。一切色を付けずそのまま使用する事、またプリントに関してもスクリーンプリントではなく転写プリントにする事で染料と水の使用料を抑えるなど、当社では意識をしてそのような方法で商品を企画しています。これもSDGsの取り組みのひとつです。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
コロナ禍、アフターコロナと呼ばれる今はまず経済が回ることが大前提ですがこれからは環境、社会、経済全てが並行して進んでいかなければなりません。昨年の9月頃はSDGsを知らない人はまだ多く、販売員の中にはエコ素材に対するかつての経験則から取り組みに反対する声が社内にもありました。昨年は主婦層の注目度の高い小泉議員の環境大臣就任や、SDGsバッチ等アイコンの普及、メディア露出等により今まで然程興味を持たなかった一般消費者が環境問題に興味を持ち始めるという流れがありました。現在はコロナ禍で少し停滞感がありますが、そろそろSDGsの取り組みも本格的に進むのではないかと期待をしています。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
ものづくりの部分での取り組みなので商品企画部が中心となり、販売先さまのその先の売り先の提案も行っています。環境問題に対する意識の高い大手企業から引き合いがあり、大手企業ほどトップダウンの指令により取組に前向きです。リサイクル関係の取り組みは多くの企業から提案されていますが、我々が扱っているREPREVEⓇはグローバルに展開する前述のGRS認証を取得しているので進め易いと感じています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
トップである社長が号令をかけ取り組みがスタートしました。商品企画部が素材の企画、調達と販促ツールの作成、それと営業に説明するためのポイントを共有できるリーフレットを作成しています。お客様への提案の際に要望があれば営業に同行もしています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
日本の場合は特にリサイクルに対して遅れていると感じています。日本の消費者は「再生」と聞くと「人が使ったもの」というイメージを持つ人が多く、我々は素材供給の会社である為、企業間の提案では資料の作り込みで対処できますが、一般消費者へは「再生」=「人が使ったもの」というイメージを直接払拭する術を持ちません。今後は店頭VMDなどを用いてイメージ払拭のためのソリューションを供給するところまで踏み込むことが課題となるでしょう。結果リサイクルへの取り組みが「かっこいい」と思われるようになり、世の中で必須のようになれば有難いです。消費者にも少しでも環境問題に貢献できる商品を選ぶ意識の高い人が増えてきており、日本でもこれからだと感じています。再生ポリエステルは高騰している現実があります。この取り組みが広まりスタンダードになれば価格も下がり、以前のECO活動よりは広がりがあるのではないかと期待しています。
SDGsに取り組む限りは貢献できるものにしたい、世の中に広げていきたい
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
REPREVEⓇに注力をしてきたいと考えています。布団業界ではボリューム定番素材であるTTCに、REPREVEⓇは価格も使用感も近いため自然と再生PET使用素材に移行していくことが可能です。たとえそれが当社の商品でなくても構わないと考えています。生地用尺を多く使う布団は、それだけ再生PETも多く消費することが出来ます。多く使用することで素材原料の価格をおさえスタンダードにしていきたいと考えています。また布団は耐久消費材としては比較的長期間使用でき、商品ライフサイクルが長いため製造―使用―廃棄まで時間がかかることもSDGsの一環として貢献できるものです。寝装業界全体がSDGsを意識しこの課題に取り組むことが大事であると考えます。当社としても取り組む限りは貢献できるものにしたい、世の中に広げていきたいと思っています。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
多くの企業が加入する団体であるKanFAから業界へ働きかけREPREVEⓇなど再生PET素材を広めて頂きたいと思っています。多くの企業が使うことで環境改善へより大きな効果が期待できます。
■取材者あとがき
自社の売上よりも業界全体で取り組むことが優先であり、それがひいては自社の売上に繋がっていくという循環型の考え方が印象的でした。また、消費者の環境への意識の高まりを見据えながら事業を推進される事で、消費者の意識の変化に柔軟に対応できると感じました。取り組みを推進される中で、担当者ご自身がゴミの分別を積極的にされるようになったとお伺いし、SDGsの取り組みのポイントがここにあると実感しました。取材協力ありがとうございました。
商号 富士産業有限会社
代表 代表取締役 下代勝
設立 1962年(昭和37年)2月1日
従業員数 16名(グループ会社含む)
事業内容 販促用タオル・業務用タオル・各種アメニティグッズ卸
取材日:2020年9月8日
タオルはSDGsのテーマに沿った商品
泉州タオルの産地である泉佐野の地で二代に渡りタオル産業に携わっておられる富士産業有限会社さまの取り組みについて取締役社長の下代勝さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社の創業者は母親なのでジェンダー平等という意味では、自分が子どもの頃からそのような環境で育ったように感じています。また自宅には井戸があり、庭にもハーブや野菜など食べものになる植物が植えられていますので、水質や土壌の安全性など自然な環境の中で知らず知らずのうちにSDGs的な感覚が身についたのかもしれません。またタオルという商品はもともと耐久性があり、長期間に渡って清掃や衛生管理などきれいな環境を維持する役割を果たします。そしていよいよタオルとしての寿命を迎えた後も、ぞうきんとして私達の暮らしに役立つものであると考えております。そんな事業を営んでいますので、常日頃から回りの環境にも関心が向くことが多いですね。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
先ず、富士産業には実質定年がありません。最近まで86歳の従業員がおりました。現在でも20代、30代、40代、50代、60代、70代と幅広い年代の方が働いています。65歳が定年なので一旦給料は下がりますが、その後も出来るだけ長く働いてもらえるよう就業規則も含めて職場環境を整えています。また先ほどもお話しましたが、タオルはそもそもSDGs的な商材であり、新品でも使えますが使い古したものはぞうきんとしても再活用できますし、最後は土に帰ります。また製造工程においては、B品も一定量出ますが、販売及び寄付等で有効に活用しています。B品タオルがそれなりの価格で販売出来ること自体、タオルがSDGs的商材なのだと改めて感じます。また、近隣の皆さんに向けて年2回、春と秋にタオルの即売会なども開催しています。現在はコロナ禍で休止中ですが、励ましのお言葉を多数頂き、感謝の気持ちでいっぱいになります。
他にも駐車場にはレモンやバナナなど実がなる木を植えており、収穫できるようにしています。レモンはよく実がなりますので、従業員のお土産になることもありますが、バナナの木は今年初めて実がなりました。泉佐野の地でバナナの実がなるということも地球温暖化の影響のひとつではないかと少し驚いております。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
この機会にSDGsの17のテーマと169のターゲットを改めて読み直してみました。その結果、環境、社会、経済という課題設定ではなく自分なりに改めてテーマを整理しました。
このように17のテーマを3つにまとめると覚えやすく、自分でも取り組みやすくなったと感じています。
介護で職場を離れても大丈夫!障がい者施設も公正に取引します
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
SDGsについては自分で考えたテーマに沿って、常に新たな課題を見つけ出し、自分が出来ることから順番に取り組むよう心がけています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
当社の従業員は地元の方が多く、高齢者を介護されている方もいます。そのような状況においては勤務中であっても急な対応が必要になるケースが発生しますので、介護などの理由で職場を一時離れることは問題なしとしています。またタオルを畳む作業などを近隣の障がい者施設にも委託しているのですが、作業時間は少しかかりますが、作業内容は一般の加工所と同じ内容なので、当社では一般の加工所と同じ加工費を支払うようにしています。社内会議での重要なテーマの1つが、加工業者さんへの発注を年間を通じて出来るだけ平準化することです。閑散期に発注を増やし、繁忙期に発注を抑える。繁忙期に発注しても弊社の仕事を優先的に熟して頂ける加工業者さんは有難い存在ですが、加工業者さんにとっては他社の仕事を断り、仕事のチャンスを逃していることは明らかです。在庫リスクは負いますが、サプライチェーン維持の観点からも大切な事だと考えています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
会社の回りにも気になるところが出てきます。以前地元の観光地である犬鳴山で全国の学生が集まるイベントがあると聞いたので、さっそく犬鳴山を歩いて環境調査をしてみたのですが、看板やベンチやトイレが荒れていました。そこで市役所に対して観光地として対策いただけるようお伝えしましたが、改善には山あり谷ありでした。グループ会社の従業員が、アフリカ東部のモーリシャスの繊維関連企業に招かれて出張したことがあり、今夏のモーリシャス沖合での日本企業所有の貨物船座礁・燃料油流出事故にも大変関心があります。対応を誤れば諸先輩方が築いて来られた日本とアフリカとの良好な関係に悪影響が出はしないかと危惧しています。自分の会社だけでなく、回りの環境や、町全体のことまで気になるのですが、どなたにお伝えすれば事が進むのかが分からないことも多々あり、一人の発想ではなかなかうまく行かないことを実感しています。
「泉州タオル」ブランドをパートナーシップで育てていきたい
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
タオル産業を営む当社にとって「泉州タオル」というブランドはとても大切な存在となります。とはいえ汎用品であるタオルという商材は安売りの対象になりやすいものでもあり、ブランドイメージの構築と、実際の販売現場のイメージが合致しないため、なかなかブランド品としての認知が拡がらないジレンマがあります。世の中に求められる商品として生まれた泉州タオルがブランドとして認知されるよう、当社もタオル組合も共に長期的な視点を持って取り組んで行きたいと願っております。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
自分の経験からも言えることですが、いくら正しいと思う事でも、一人で主張してもなかなか世間を変える事は出来ません。KanFAの会合には政治家の先生や行政の要職の方も来られますので、業界の抱える問題を解決するため、一個人、一会社の主張ではなく、組合企業全体の考え方として新たな提言をして欲しいと思います。まさにパートナーシップで目標を達成できることを期待しています。
■取材者あとがき
取材に向けて17のテーマと169のターゲットを読み直し、自らの考え方をまとめられる姿勢に頭が下がりました。社員の働きやすさに気を配り、会社の回りの環境にも目を配り、地元泉佐野という町の有り様にも関心を寄せる。取材日には庭でとんぼ、バッタ、めだか、カタツムリ、とかげなどに出逢い、自然と共生する企業姿勢を実感させていただきました。取材協力ありがとうございました。
商号 柴屋株式会社
代表 代表取締役社長 奥野雅明
設立 1907年(明治40年)2月
従業員数 38名(平均年齢31歳、男女比1:1)
事業内容 繊維専門商社
・テキスタイル事業(天然繊維を中心としたテキスタイルの企画、生産、販売)
・アパレル事業(カジュアルウェア、ワークウェア、ユニフォーム等を中心に
素材から一貫したODM・OEM)
取材日:2020年9月10日
人と自然に丁度良い、環境に配慮したモノづくりを心掛けています
繊維専門商社として113年の歴史をもつ柴屋株式会社さまの取組みについて、代表取締役社長の奥野雅明さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
私は2017年に弊社の代表者になったのですが、就任するまでに暫く時間があったので、今の自社のビジネスモデルや会社の在り方等をじっくりと考える中、SDGsの考え方と通じるものがあったので取り入れました。元々のビジネスモデルをSDGsの17の目標で整理して、しっかりと文字化していったのですが、言葉にまとめるのには苦労しました。社長に就任した時からスタートさせましたが、ホームページの刷新をする際に一気に社内外に向けて発信しました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
テキスタイルを作る責任として、持続可能な消費と生産にもとづき、過剰在庫を持たないことを意識しています。生地を見切りで処分することは地球環境だけでなく経済活動にも良くありません。過剰在庫を持たないビジネスモデルとは何かを考えながら、人と自然に丁度良い、環境に配慮したモノづくりを心掛けています。例えば、弊社ではテキスタイルを日光で乾かす「天日干し」を推進しています。乾燥機を使用しないことで、化石燃料の使用を削減し二酸化炭素の排出を抑えることが出来ます。また、テキスタイルの染色過程においても多くの染工所では地下水を使用して浄化槽でろ過していますが、この過程でも二酸化炭素を発生させます。出来るだけ水を節約する染色技法を取り入れ日光で乾かすことが、二酸化炭素の排出を削減し、陸上生態系の保護や海洋汚染防止に繋がります。持続可能な世界にしていくためにも環境に優しくすることは私たちの使命だと考えています。現在、「天日干し」を推進することがどれだけ環境保護に貢献しているかの数値化を依頼しているところですが、これなら日本中どこでも出来ますし、これが日本の特徴となってジャパンイコール「天日干し」みたいになれば面白いですね。今後とも天然繊維を中心とした物づくりをすることで、SDGsの達成に貢献出来るテキスタイルつくりを目指します。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
企画生産と営業のスタッフ全員で意識を高めながら推進していますが、経営トップが率先して旗を振り、現場の社員の発案を後押しすることが大事だと考えています。SDGsの目標のうち6~15番までは企業活動の中で目指すべきものとして、会社の中でも自然に意識されているものです。弊社は経営層と社員の距離が近いので、感じた事や思ったことをすぐに言葉にして議論が出来る体制になっています。
世の中にない物は何かを考え続ける事、議論してアイデアを出し続けることが重要です
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
とりあえずやろうということで従業員にSDGsバッジを支給し、社内の意識を高めることから始めましたが、マーケットの変化に敏感な取引先が多い東京の従業員の反応が良かったですね。社内の古い体質を改革していくうえで、クリティカルシンキングといいますか、今までのビジネスでいいのか常に検証が必要です。人間にとって最高の素材とはどんなものか、世の中にない物は何かを常に考え続ける事、それを議論してアイデアを出し続ける事が我々のような企業には重要です。弊社にはイタリア人など外国人スタッフもおり、男女比が1:1で、自由で幅広い議論の出来る環境づくりを心掛けています。私もアイデアを出しますが大体が不採用ですね(笑)
国内外の販売先にも弊社の取組みをしっかり伝えるようにしています。最近はヨーロッパの会社から柴屋のテキスタイルをアピールするためのピスネームを要望されるようになってきました。また、インディテックスは弊社と取引するにあたって、弊社のCSRが世界基準に適合しているかの調査のため、先方が指定した外部機関を監査に送り込んできました。その際には弊社の企業理念やテキスタイルへの考え方などをしっかりとお伝えしました。どこまで理解して貰えたかわかりませんが、世界最大級のアパレルの考えている環境活動と合致しているか、これからが楽しみです。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
どんなに意味があって価値があるものでも、取引先・アパレルが取り上げなければ前に進みません。売りやすい物優先でピックアップされるのを否定できないのが残念ですね。川上からSDGsに取り組んでも、最終段階で消費者に選ばれなければ川下の企業はとり上げにくい。先ず経済が回る仕組みを作らないとSDGsの活動もうまくいかないと感じます。SDGs活動を浸透させるには、政府や国レベルでもっと大々的に動くことが重要で、ユニセフのTVキャンペーンのように、一般の消費者・国民に伝わるような分かりやすい啓蒙活動を数多く実施することも必要だと思います。残念ながら業界の中には短期的な経済活動を優先して、抜け駆けする人がいることも事実です。幸福の度合いと経済との折り合いをどこでつけるのか難しい問題ですが、世界の環境は全て繋がっていて、地球全体がどんな環境であるかという認識を持って、川上から川下まで業界全体で足並みを揃えて進めることが肝心だと考えます。
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
テキスタイルコンバーターとして、何かしら環境に優しくて産業としても誇りの持てるものに取組んで行きたいと考えています。毎年50万人の人口減少が進む日本では、将来に向けて日本でしか作れない付加価値の高いモノづくりが絶対必要になってくると思います。日本でのモノづくりに付加価値をつけて、産地を守っていくいろんな取組みをすることで、メイドインジャパンは高いけど魅力があっていいよねと、モノづくりの日本回帰が進めばと思っています。そのために出来れば日本の方には日本製を使ってほしいですね。
「自然環境を守る」「産地産業を守る」「身の回りの環境地域の産業を守る」、キレイごとな部分もありますが、テキスタイルコンバーターに重点を置いて日本でのモノづくり回帰に貢献していきたいと考えています。
採用のページにも掲載しているのですが、弊社は今年で創業113年になり、社員に「我社のビジョン・ミッションは200年続く企業を目指すこと」と言っています。200年続く会社になるには、自他共栄の精神に基づき、仕入先や得意先など様々なステークホルダーの皆様とともに一緒に成長しなければなりません。これはSDGs8番の「働きがいも経済成長も」がベースになるのかもしれません。
2030年に向けて一番進めて行きたいことは、ビジネスを通して気候変動の緩和と環境再生に貢献し、自分たちの子供のためにいい未来を残すこと。そのために、発想・アイデアを出して、常に前向きに取り組む仲間づくりをして行きたいですね。
200年続く企業に向けて、自他共栄の精神でステークホルダーの皆様とともに成長を!
■これから関西ファッション連合に期待することは?
このままでは川下のアパレル産業そのものが衰退しかねません。アパレル産業の活性化や、新しいビジネスモデルの構築のためには、繊維の川上から川下までが参加するKanFAのような団体が、SDGsの啓発・普及に取り組み、加盟各社の意識をコツコツと変えていく活動が大切になってくると思います。
「あきまへん」ではなく各社が常にファイティングポーズをとって、前を向いて夢をもって進めるように、まずは業界全体のマインドを変えていってもらいたいですね。そのためにはもっと若い人の参加が必要ではないでしょうか。その辺りも期待しています。
■取材者あとがき
113年の歴史ある企業を引き継がれるにあたり、充分時間をかけて自社の分析と将来へのビジョンを練られたことが良く分かりました。200年企業を目指し、周りを巻き込みながら日本のモノづくりを世界に発信し、環境・社会・経済・そして未来良しにチャレンジされる姿勢と、一貫して前向きでアクティブなお話には元気づけられました。取材協力ありがとうございました。
商号 三起商行株式会社
代表 代表取締役社長 木村皓一
創業 1971年(昭和46年)4月
設立 1978年(昭和53年)9月
従業員数 610名 (2020年4月現在)
事業内容 子供服及び子どもを取りまくファミリー関連商品の企画・製造・販売、及び出版・教育・子育て支援などの文化事業
■取材日:2020年9月7日
事業の根底にある「安心・安全」。応援しているアスリート達は社員の誇りにも繋がります!
子ども服のブランドとしては国内に留まらず、世界中に沢山のファンを持つミキハウスブランドを展開する三起商行株式会社さまの取り組みについて、企画本部執行役員統括部長の平野芳紀さまと株式会社ミキハウスHCサポート取締役の藤原裕史さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社はもともとモノづくりを大切にする会社であり、作ったものを長く大切に使いましょう。という創業当時からの考え方が根底にあります。また我々の事業は沢山のサプライヤーさんとの繋がりで成り立っていますので4~5年前からCSR調達という観点で環境問題や人権問題に取り組んで参りました。
2016年からは取引先へのアンケートの実施を行ない、我々の調達の在り方について取引先とも相談しながらその基準を組み立て、2020年1月には調達先の基準をより厳しいものに改定しており、既に80社以上から協力いただく承諾をいただいております。このようにこれまで実践してきたCSR活動の延長線上にSDGsの取り組みがあると感じています。敢えて整理すると企業向けにはCSRの観点で、消費者向けにはSDGsの観点で取り組み内容をお伝えすることが大切なのではないかと考えております。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
我々の事業の根底は安心・安全なものづくりであると考えています。また「わたしたちミキハウスグループは、子どもとその家族が笑顔になれるよう、子どものことを第一に考えたものづくりを通じて、安心できるものをお届けし続けます。」というポリシーを大切にしています。そのような考えのもと、先ず赤ちゃんに向けてはコロナ禍の数年前より独自の技術で抗ウイルス加工を施した「ピュアベール」という新製品を発表しておりました。この製品を通じて現在のお客さまの不安な状況を少しでも和らげることができればと考えております。
またコロナ禍においてご出産を控える新米ママとパパに向けてはオンラインでの出産準備セミナーを提供させていただいております。従来は百貨店などリアルの場で提供していたプログラムですが、不安なママとパパに安心して出産を迎えることができるお手伝いになればと取り組んでおります。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
どれが大切というよりも、全部揃った上でのそれぞれの取り組みではないかと考えております。経済があって環境への取り組みが意識できたり、環境を考えることで社会との繋がりを意識できるように感じています。SDGsを学ぶカードゲームでもバランスの大切さを実感しましたが、全部が繋がっているので、先ずは自分が起点になって何かを始めるという意識、つまり自分事として考えることが大切だと考えております。
自らがファシリテーターとなり、SDGsの理解と浸透に取り組んでいます
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
ものづくりが先行する会社なので企画本部が推進役となって進めています。具体的にはものづくりそのものをCSRの観点やSDGsの観点をもって取り組むことが重要です。そのようなものづくりの考え方を販売の現場へも浸透させていくために、人材教育を担当するミキハウスHCサポートの存在があります。例えば、来年の創業50周年に向けて、販売スタッフが改めて自社のものづくりの考え方を基本から学ぶ研修を行なったり、お客さまへの伝え方を学ぶ動画の制作等にも取り組むことで、ものづくりの段階で考えたことが販売店を通じてお客さまにもきちんと届く工夫を行なっています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
先ず私、平野と人材育成を担当する藤原が一緒にSDGsを学ぶカードゲームのファシリテーターの資格を獲得しました。その上で今年7月に本社で社員を集めた勉強会を開催。世代をシャッフルしたグループを構成し、1回約40名を対象にした勉強会を計4回開催。実施前はほとんど理解できていなかったSDGsについて、徐々に社内の共通言語になりつつあることを実感しています。
また取引先に対しては、今年1月にCSR調達の説明会を実施することで、社会と環境に対する目標や基準を明示させていただき、承諾書の提出をお願いしました。そして展示会の場でも、広くSDGsの考え方を伝える機会としています。社員が正しく伝えることができるよう簡単なテストも実施しているんですよ。
そのような活動の中から、娘が通う学校にもお声掛けをいただきまして、二人で出向きSDGsを理解するカードゲームを開催させていただきました。段々、ライフワークのようになってきましたね(笑)
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
17個のうち何番が難しいということではなく、例えば労働人口の慢性的な不足という課題に対処する為には、外国人技能実習生の雇用なども行なう訳ですが、その際に仕組みや制度が部分部分で設定されているため、サプライチェーン全体では解決できないような課題が発生します。このような事象については企業だけ、業界団体だけでは解決できない問題もあるので、法的な整備や実習生の送り出し国との連携などに踏み込んでいただきたいと感じることがあります。
2030の次は日本がリードしてワクワクする取り組みにチャレンジしよう!
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
2030年に向けてはたちまちやるべきことばかりという印象がありますが、そもそも2015年に制定された17個のテーマはネガティブな問題をニュートラルに戻すという観点にたっており、本来はさらにポジティブな社会を作るべく取り組むことが理想ではないかと考えています。そのような視点では17番の次に出てくるであろう18番、19番と新たな付加価値を生み出すようなテーマに取り組んで行きたいと思います。
当社が応援しているアスリートはよく会社に来てくれるので、社員と近い関係になっていきます。そのような機会を通じて会社が応援する選手から、自分たちが応援する選手という存在になり、選手のワクワク感が社員のワクワク感に繋がっていくのです。
我々の仕事は子ども達の成長を後押しすることが使命なので、事業そのものがワクワクするものになることを心がけたいと願っています。2030年から先の15年間は日本がリードできるよう取り組んでいけるといいですね。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
社外の方にお会いした際に、SDGsについて自社が何に取り組めばよいか分らないという声を聞くことがあります。そのような意味で各社にとってどのような取り組みをすることが相応しいのか、組合としてリードして欲しいと思います。そもそもファッション業界は社会のワクワク感をリードすべき立場であると思いますので、ビヨンドSDGsをキーワードに次の一手に繋がるよう、自発的な活動が生まれることに期待しています。
■取材者あとがき
子ども達に向けてどのような価値が生み出せるかという観点で事業を行なっておられるので、考え方のベースにCSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)というものが備わっていると強く感じました。またあまり注目されないマイナーな競技で日々努力を重ねるアスリートを愚直に応援し続ける企業姿勢にミキハウスというブランドのファンが増え続ける秘訣があるように思いました。取材協力ありがとうございました。
商号 林田株式会社
代表 代表取締役社長 林田誠司
創業 1940年(昭和15年)
設立 1947年(昭和22年)
従業員数 50名
事業内容 アパレルメーカー。
紳士カジュアルブランドLeCENT(レセント)、MAGNOLIA TOKYO(マグノリアトウキョウ)、samscuri(サムスクーリ)、HAND ARTS(ハンドアーツ)を有し、全国の有名百貨店・専門店を中心に広く展開している。また一方、有名アパレルに対してOEM生産をしている。
■取材日:2020年9月15日
最高級のカシミヤ衣料の端布は再生毛布に生まれ変わります
最上級のカシミヤ素材から生まれるメンズカジュアルを全国の百貨店に展開し、多くのブランドファンを持つ林田株式会社さまの取り組みについて代表取締役社長の林田誠司さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
実は元々やっていた取り組みがSDGsの考え方にピッタリだったんです。当社では天然のカシミヤ素材を原料にして紳士用アパレルを製造しているのですが、製造工程でどうしても端布が発生することになります。その端布を貯めておいて、ある程度貯まった段階で毛布を作っているのです。
具体的にはカシミヤの端布を半毛することで一旦糸に戻しますが、どうしても糸が短くなるので強度を保つためにウールを少し混ぜて再生糸を作ります。その糸を使って柔らかく、暖かい毛布が生まれることになります。濃い端布はワインレッドや紺色など濃い色の毛布へ、薄い色の端布はベージュやグレーなど薄い色の毛布に生まれ変わります。20年以上前からもったいないという精神で取り組んできたこの取り組みは、まさにSDGsに通じるものではないかと考えております。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
百貨店で販売しているカシミヤのウェアについては、先ずお直しのサービスを提供しています。もともと天然素材であるカシミヤは長年着ていただける素材ですが、何シーズンも愛用いただく中で虫食いに合うこともあります。そのようなことに備えて当社の工場では過去10年間に企画製造したすべてのカシミヤ製品の原料をストックしており、新品同様に修理・再生することが可能です。
また既製品の他にオーダーの注文に力を入れています。欧州にも高級ニットブランドはありますが、お客さまには袖が長すぎるなど体型にフィットしないケースも存在します。そのような時に色、サイズ、柄などオーダーいただくことで自分だけの一着を作り出すことができます。この仕組みは売れないものを作らない、売れてから作るという発想に基づいていますので、まさに12番の「つくる責任つかう責任」に沿ったものであると認識しています。
さらに今後は商品を入れる袋やキーパーなどの副資材についても、天然由来のものに変更することを検討しています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
これは三つがそれぞれ密接に関係しているので、優先順位を付けたり、切り捨てたりすることは出来ないと考えています。もともと当社は「天然素材を活かした製品を作っていこう」という考え方がベースにあり、カシミヤ、シルク、海島綿などを使用しています。化学繊維にはそれぞれ特徴もありますが、同時に環境負荷も小さくないという側面があるように思います。我々は化学繊維に比べて環境に優しい天然素材を責任をもって製品にしていきたいと考えております。
節約は義務ではなく自分ごととして前向きに取り組みを
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
小さな会社ですので、専門の部門はありませんが、会社全体の取り組みがSDGsに合致しているという意識もあり、この気持ちで今後も取り組みを進めていこうと考えています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
社内については、昨今の状況もあり工場のLED化の推進で節電を行ったり、パッキンケースを削減するなど節約に取り組んでいます。とはいえ節約、節約だけでは後ろ向きな取り組みになりますので、これらの取り組みで浮いたお金を賞与のようなカタチで従業員に分配させていただきました。このことにより、今だけの活動ではなく景気が回復した後も、自分たちの行動が環境対策にも繋がっているという前向きな気持ちで取り組めるようになれば嬉しいと考えています。
取引先については大手企業が多いので、先方からレジ袋の有料化や通い箱の活用など提案いただく機会が多くあります。当社で対応可能なことはひとつひとつ取り組むようにさせていただいております。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
テーマが17個もあるので当社が出来ることは少ないと思いますが、12番の「つくる責任つかう責任」を軸にしながら出来ることは全力で取り組みたいと思います。5番の「ジェンダー平等を実現しよう」については昔から販売現場も工場も女性が頑張っている会社でもありますし、男女で給料格差もありませんので実践できていると思います。また当社の工場長も女性ですし管理職にも女性がいます。この部分は進んでいるといえるかもしれませんね。
社是「良/感/伝/承 いつまでも 生きている いいもの」を実践する
ECサイトとOEMへの取り組み
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
2030年は少し遠すぎるので10年先ではなく1年1年頑張っていこうと考えています。現在はECサイトでの販売を伸ばすこと、OEMの受注を増やすことを目標にしています。ECサイトについては百貨店でも展開しているオーダーメイドの仕組みをうまく取り入れることで、良い品を長く使っていただけるお客さまの体験を増やしていきたいと考えています。OEMについては日本製をセールスポイントにするブランドのお役に立てるよう、高品質・小ロットのオーダーに対応していきいきたいと考えています。
当社には「良/感/伝/承 いつまでも 生きている いいもの」という社是がありますので、これまでもこれからもこの社是を実践できるよう着実に取り組んで参りたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
当社は製造卸売業から製造小売業へ変化をして参りましたが、この業態を維持するためには企画、デザイン、製造、販売とすべての工程でプロの技が必要になってきます。このプロの技こそが生産性を上げてくれる鍵になると思いますので、これからも能力を高めてくれる研修やトレーニングや認定試験などの機会をどんどん提供していただければと思います。
また我々は製造から小売まで一気通貫のビジネスモデルを構築することで、収益構造を改善してきましたが、梱包資材や運送費用など小さな会社の交渉力ではなく、組合として団体交渉力によってコスト構造を変えることができれば有り難いと思います。このような取り組みを通じて業界全体で、個人の能力と会社の交渉力が高まることに期待しています。
■取材者あとがき
天然素材であるカシミヤを製造小売という一気通貫の仕組みで市場に提供することで最大のコストパフォーマンスを実現。また端布を貯めて再生毛布を製造するなど、まさに無駄のない取り組みが印象に残りました。「良/感/伝/承 いつまでも 生きている いいもの」という理念がそのままSDGsに繋がっているように思いました。纏まりのある素敵な会社ですね。取材協力ありがとうございました。
商号 株式会社ジオン商事
代表 代表取締役 川端康資
設立 1968年(昭和43年)6月10日
従業員数 561名(ジオングループ会社255名を含む)
事業内容 婦人服の製造、販売(卸売、小売)
■取材日:2020年9月28日
ハンガーのリユースに加えてSDGsがテーマの新ブランドを開発
海外のアパレル製品の輸入からスタートし、現在では数多くのレディス向けブランドを展開するジオン商事株式会社さまの取り組みについてSDGs推進本部のメンバーである中村成男さま、藤本隆司さま、氣谷章男さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
昨年のことですが2019年6月20日の朝礼で川端社長がいきなりSDGs推進本部を立ち上げると宣言されたのです。その時点ではほとんどの社員がSDGsという名前は聞いたことがあるが、何をすれば良いのかという知識はありませんでしたが、「未来を考える」というテーマに興味を持った有志が集まりプロジェクトチームが結成されました。社長の意向では若い人を中心にということだったのですが、結果的には40代~50代の社員も結構集まり、現在は15名で構成されています。
先ずはメンバーがSDGsのカードゲームを体験することで環境、社会、経済のバランスを取りながら持続可能な成長を目指すという考え方を勉強しました。そして2019年12月には東京、大阪、福岡に在籍する社員約130名に対してカードゲームを実施。合わせて会社としてどんなことに取り組めそうかというアイデアを募るアンケートも実施しました。
また当社には別会社として販売を専門に行なう会社があるのですが、こちらに在籍するスタッフに対しては、SDGsの考え方を理解してもらえるような冊子を作成して配付しています。また独自にポスターも制作し社内各フロアに掲示しています。
このような取り組みを通じて、常にSDGsの意識を高めることに取り組んでおります。他にも最近の学生はSDGsへの関心が高いので、リクルート活動の場においても当社が取り組むSDGsの内容をお伝えするよう心がけております。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
先ずは我々にとって一番大きな課題として、プラスチックハンガーとハンガーカバーについて検討しました。取引先のハンガーメーカーさんも含め、色々な方法を考えた結果、プラスチックハンガーは洗浄してもう一度使うリユースの仕組みを構築。ハンガーカバーは回収してリサイクル原料として活用する仕組みを整えました。
次にショッパーや包装用の袋ですが、こちらは順次プラスチックから紙への転換を進めています。また用紙は適切な森林管理を行なっているFSC認証のものを使うようにしています。
またどうしてもプラスチックを使用しなければならない資材については、バイオマス原料のものを検討しています。我々はこのような取り組みを通じてできるだけプラスチックの使用を削減する努力をして参りたいと考えております。
そして商品では「つながるプロジェクト」というタイトルでTシャツにサスティナブルなメッセージを入れたものを作成し、収益の一部を今年はオリンピックイヤーでもありますので障がい者スポーツ団体へ寄付する取り組みを行なっています。この商品は「IVISUTO(イヴィスト)」というブランドで展開していますが、まだSDGs関連の商材が少ない地方の百貨店さんに賛同いただいております。
さらに新しいブランド「yueni(ユエニ)」ではSDGsの考え方そのものを商品化し、生分解素材の使用などにより、サスティナブル意識の高い方をターゲットに展開しています。但し、どうしてもコストがアップしますので、ブランドのコンセプトや背景を丁寧にお伝えすることで、サスティナブルな市場を拡げていきたいと考えています。
11月にデビューする「mielina + ミエリナプラス」は自分らしく生きる女性を輝かせたいという想いから立ち上げたブランドです。
素材はサスティナブルなものから日本の職人が作り上げる生地など産地の支援にもつながるものを選んでいます。
ファッションを通じて社会貢献できるブランドに成長していきたいと思います。
一方、本社財務部で取り組んでいるタンザニアでの鉱山プラント開発のプロジェクトの関連で、ムアンザにある鉱山技術を学ぶ学校開設に対して資金面の支援を行なっています。ここはビクトリア湖の南湖畔にある町で、開校式典にはタンザニアの教育担当大臣も列席されました。この取り組みは4番「質の高い教育をみんなに」というテーマに繋がっています。
また当社では以前からジオンビジネススクールという社員教育の仕組みを持っており、通信教育や授業料の補助など、社員が学びやすい環境も整えております。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
この中で特に優先順位はないと思いますが、婦人服の製造と販売という事業の中で、先ずは目の前のこと、自分たちに出来ることに取り組んでいますので、結果的には環境対策のアクションが多くなっていると思います。
社長からは「SDGsの活動を通じて会社が良くなっていくことが成果である」とコメントいただいていますので、会社が良くなっていくことで結果的に社会へ貢献できればいいなと考えています。
専門部署がないのでみんなのアイデアで取り組んでいます
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
すべての事業グループから有志で参加したメンバーによって自主的に活動しています。そのような意味では営業、広報、品質管理、財務などそれぞれの部署が、それぞれ出来ることに取り組んでいますので、どこかの部署が推進しているという事でもないですね。今後は社内にグループウェアの導入を計画していますので、これまでよりも密に情報交換をしながら、同時にペーパーレスにも取り組んでいきたいと考えています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
冒頭にお話しましたが、全社員でのカードゲーム体験や、社内でのポスター掲示、また販売スタッフに向けた冊子の配付などを行なってきましたが、最近ではどこかの部署が新しいアクションを始めると、社内で協調が拡がるようになってきました。最初にSDGsを推進する固定的な部署を作らなかったので、自然とパートナーシップで互いに支援する環境になったように思います。
社外に向けてはサスティナブルをテーマにしたブランドを立ち上げていますので、本業を通じて理解や賛同が拡がることに期待しています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
我々のメインのお客さま層である専門店さんの関心がまだ薄いように感じています。個人店の場合は比較的従業員も少なく、自分の店舗運営だけでも仕入れ、陳列、接客、販売など一日中忙しくされていることが多いです。その上に、SDGsの理念をお伝えして共にアクションしていただくには、我々の啓蒙活動がまだまだ必要であると実感しています。
「商事」という名のもとグローバルに自由に発想します!
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
個人的には5番「ジェンダー平等を実現しよう」というテーマについては、今後高いレベルで取り組んでいくべきであると考えています。
また12番「つくる責任つかう責任」、14番「海の豊かさを守ろう」、15番「陸の豊かさも守ろう」といった環境に関連するテーマについては、婦人服の製造、販売という事業の立場からもさらに推進していく必要を感じています。
そのような意味ではSDGsをコンセプトとした新しいブランドを通じて、経済という観点でも成功させていくことが会社としての大きなテーマになると思います。
当社の社名には「商事」つまり商いごとという言葉が入っていますが、単に服を作って売るという発想ではなく、常に商売のネタを探すという視点から、ロシアでの航空機リース事業や、アフリカでのプラント事業などにも取り組んでおり、これからも他社にないグローバルかつ自由な発想でSDGsの活動にも取り組んでいきたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
自社でできることは限られていますので、SDGsの推進には17番「パートナーシップで目標を達成しよう」というテーマが不可欠であると考えております。そのような意味で、他社との繋がりを見つけることができる場所、機会、紹介、橋渡しなど様々な取り組みに期待しています。
繊維にはロットの問題もありますので、類似の取り組みをされている会社さんを含めて、沢山の方と出逢い、繋がり、共にアクションできることを楽しみにしています。
■取材者あとがき
SDGsというテーマに対して、自分が関わりたいという有志のメンバーで構成されているため、取材においてもどんどんコメントが湧き出し、義務感ではなく楽しみながら活動されていることを実感しました。また社内のポスターや冊子作りなど情報の見える化にも取り組むことで、常にSDGsを意識する環境づくりに工夫されているのが印象的でした。取材協力ありがとうございました。
商号 株式会社 ヤギ
代表 代表取締役社長 八木隆夫
創業 1893年10月
設立 1918年4月
従業員数 659名(連結、2020年3月末現在)
事業内容 繊維専門商社
取扱商品 綿・合繊糸等繊維原料、ニット・テキスタイル、メンズ・レディスアパレル、スポーツウエア、ナイティ・インナーウエア、寝装品・インテリア商品、生活関連および産業繊維資材
■取材日:2020年9月28日
独自のコンセプト「ヤギシカル」を制定しパートナーシップを目指します!
繊維商社として127年の歴史を誇る株式会社ヤギさまの取り組みについて経営企画本部グループ経営企画部課長であり、エシカル推進グループのリーダーである菅原勇一さまと同グループのメンバーである向井瑞貴さま、大久保英太さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社ではSDGsのテーマが制定されるずっと前からオーガニックコットンやリサイクルコットンの取り扱いを営業レベルでは行なっていたのですが、それらの取り組みを全社的なものにするため、2017年12月に先ず非公式なカタチでエシカル委員会を立ち上げました。ここで各部署から集まったメンバーが、会社として何ができるかという観点で何度も議論を重ね、2019年に取り組みテーマとなる「ヤギシカル」を制定しました。
繊維商社であるヤギだからこそ出来るエシカル活動に、独自の名前を付け、ロゴを作り、我々が目指す方向性を明らかにすることができました。
また2020年4月からは、中期経営計画の重点項目のひとつとして「サスティナビリティの着実な実行」を掲げ、エシカル推進グループが正式に発足。この活動を普及させること、継続させること、そして事業と両立させることを目指しています。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
先ずは元々行なっていた活動を17のテーマに当てはめることから始めました。
具体的には縫製工場で廃棄されるはずの生地(コットン)の切れ端を回収し、色ごとに分類して糸を再生する「リサイクルコットン」の取り組み。インドの農家と連携し、3年以上農薬や化学肥料を使用せずに綿花を栽培する「オーガニックコットン」。さらにインド産のオーガニックコットンを使用した製品に基金を付けて販売し、その基金を活用して農家の支援や、農家の子ども達の就学・奨学を支援する「PEACE BY PEACECOTTON」の活動にも参加しています。
その他にも普段の生活の中でエシカルな選択が拡がるようエシカルテキスタイルブランド「FORETHICA(フォレシカ)」の展開。廃品となった羽毛を回収し丁寧に洗浄することで高品質な羽毛に蘇生させる「サイクルダウン」の取り組み。愛着あるモノを修理しながら長く使い続ける時代を見据えて、アパレル商品やファッション雑貨の補修、クリーニングを行なう「REPRO-PARK(リプロパーク)」の設立などにも取り組んでいます。
これらの活動の推進を通じて一番重要だと感じたことは、17番の「パートナーシップで目標を達成しよう」というテーマです。
というのも我々は商社ですので我々だけで解決できる課題は限られています。しかし数千社に及ぶコネクションという強みを活かすこと、具体的には仕入れ先様、生産地の工場、販売先様、さらには消費者も含めてパートナーシップで課題解決に取り組むことでより大きな課題解決ができるのではないかと考えました。
その為には我々のエシカル活動である「ヤギシカル」を一人でも多くの方に知っていただき、同じ輪に入っていただくことが大きな使命であると認識しています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
環境、社会、経済の中で特にこれが中心と決めているものはありません。昨今注目されているESGという概念ではどれも大切であると理解しています。
とはいえ環境に配慮すればコストアップに繋がったり、経済重視で行けば環境負荷が増したりと、両立させることはなかなか難しいとも感じています。
よって我々一社だけで両立を目指すのでなく、素材メーカー、生産工場、アパレル、小売り企業などとも協力を得ながら成し遂げて行きたいと思います。「続けよう、未来のために。」をスローガンに皆さんと共に環境、社会、経済のバランスの取れた両立を目指して参ります。
社員向けのホームページを開設し最新情報はメルマガでも配信中
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
我々エシカル推進グループのメンバーは大阪に3名、東京に3名の6名で構成されています。メンバーは総務、開発、営業など各部署から集まっており、月に1回の定例ミーティングで活動のアイデアを出し合ったり、各部署の取り組み内容を共有したりしながら「ヤギシカル」の推進に取り組んでいます。
商社という組織は意外と別部署の業務を知らなかったりするので、横断的なグループ構成により、全社での情報共有にも繋がっています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
先ずは社内浸透のために社員向けのホームページを立ち上げており、サスティナブルに関わるニュースを掲載し、その内容をメルマガでも配信しています。合わせて社内で「ヤギシカル」に携わっている人にインタビューも実施しています。
また「ヤギシカル」の活動をより多くの人に知ってもらうために、マスクの配付も行なっています。これは洗って繰り返し使える機能素材マスクになっていますので、マスクを通じてサスティナブルを感じていただく効果も狙っています。
また社外に向けては中高生主体で構成される「ありがとうと、笑顔が生まれる服づくりを世界中に浸透させること」を最大目的としたプロジェクト「やさしいせいふく」のパートナー企業に採用されました。
他にも社会課題に取り組みファッションブランド「coxco(ココ)」と業務提携し、倉庫に眠る生地から新たな価値を持つ洋服を生み出すプロジェクトもスタートさせました。
若い世代の皆さんはエシカルの意識も高くSNSを使った発信力もありますので、これらの取り組みは未来を見越したマーケティング活動に繋がっていくことをイメージしています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
やはり社内への浸透が難しいと感じています。このような新しい活動はある程度、余裕があった上で進めることが多いのですが、現在の状況ではどうしても目の前の仕事に集中する環境にあるため、「ヤギシカル」の活動に興味関心を持っていただき、自分事として考えてもらえる工夫が大切だと考えています。
そのためには、なるべくかしこまらずに、等身大で、出来ることから始めましょう。という姿勢で取り組んでいます。また「何年までにCO2何パーセント削減」などの目標も敢えて設定していません。強制的にならず、自発的な取り組みがどんどん生まれてくることを期待しています。
繊維業界が良い業界になるようネットワークを拡げて参ります!
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
これまで繊維業界に127年携わってきましたので、先ずはこの業界を良い業界にしていきたいと思っています。例えば、生産地の労働問題、国内では産地の疲弊、過剰在庫の問題、環境負荷など様々な問題がありますが、全部SDGsの17のテーマに当てはまると考えています。つまりは繊維産業そのものがサスティナブルな業界になっていく必要があると思います。2030年に向けて我々だけで出来ることは少ないですが、糸、生地、製品など色々なところでパートナーシップを発揮しながら関わっていけるとイメージしています。そのためには社内の意識も高まり、エシカル推進グループがなくても当たり前の行動として標準化できることが理想です。特に若い世代がわくわく感をもって働ける会社を目指していきたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
パートナーシップに向けて組合員企業同士が共に取り組めるようなネットワークを拡げていただきたいと思います。先ずは情報交換などから始めていただければ、似たような取り組みを一社ではなく、共に取り組めれば、より大きな成果に繋がるものと考えています。
また我々の取り組みはまだまだ発展途上でありますので、このように取材、紹介いただくことで他社の取り組み内容をお互いに参考に出来ることは有り難いです。
「ヤギシカル」をコンセプトに、沢山の人と繋がりを生み出していただけることに期待しています。
■取材者あとがき
2017年からエシカル委員会を立ち上げ、自分たちに出来ることはなにかと議論を重ねて「ヤギシカル」という独自のコンセプトを設定されました。同社の社是にある「終始一誠意」がSDGsの活動にも繋がっており、強い信念と今後の拡がりの可能性を感じました。
またエシカルの意識が高く発信力を持つ若者に向けた取り組みは、まさに未来のマーケティング活動であると感心しました。取材協力ありがとうございました。
商号 株式会社プルテル
代表 代表取締役 田崎正明
設立 1975年(香港法人1982年)
従業員数 8名(日本6名、香港1名、上海1名)
事業内容 婦人服のOEM事業(企画、製造、卸)
■取材日:2020年11月13日
イタリアメーカーのカタログをきっかけにSDGsを発信開始
高品質なイタリア製の素材や独自のルートで調達するカシミヤ素材を使い、付加価値の高い婦人向けセーターのOEM事業を展開する株式会社プルテルさま。その取り組みについて代表取締役の田崎正明さまとマネージャーの蔡正芳さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2017年頃からイタリア製素材の取り扱いが増え、その中で、環境に優しい素材をお客さまにアピールしてきました。2019年になりイタリアのゼニア・バルファ-社のカタログの中にSDGsの17テーマが掲載されており、初めてその存在を知りました。
さっそく自分たちでもその内容を調べることで、環境に優しい素材を取り扱うことがSDGsの活動に繋がることを理解しました。そこで自社でもお客さまにSDGsの17テーマを提案する資料を作成し活用するようになりました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
環境に優しい素材を提案する中で、お客さまは「エコ商品」とは新品でなく再生品であり安いものという認識があり、なかなか本来の意味をご理解いただくことができませんでした。
そこで先ずはサンプルを作って展示会へ出すことで販売に繋げていこうと考えました。そのことにより環境に優しい商品に興味をもつ小売店から注文をいただけることを想定しています。
このような取り組みの中で、年々素材メーカーからのアイテム数も増え、徐々に理解が進んできたように思います。イタリアでは当たり前のSDGsへの認識も、まだまだ日本では浸透していないという印象を持っています。
またカシミヤについては、その混率が課題となりますので当社ではその生産工程を細かくチェックしています。具体的には内モンゴルに足を運び、ヤギを選ぶ工程から指示を出し、毛の長さや、色、品質について厳格なチェックをしながら100%カシミヤ素材を提供しています。
中でもSDGsの観点ではナチュラルカラーカシミヤの取り扱いを増やすようにしています。このカシミヤは染めることで色を揃えるのではなく、淡色から濃色まで色々な色調の毛を人の手で分けて、集めることにより初めて製品となります。手間はものすごくかかりますが、染色工程がありませんので、環境に優しい素材として評価が高まってきています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
やはり経済が回ることで環境に繋がっていくと考えています。環境に優しいエコ商品は新しい取り組みになりますので、アパレルメーカーさんがある程度、余裕がある中で初めて取り組みが動き出します。エコ、エコと叫ぶだけで製品が売れる訳ではありませんので、そこはデザイナーさんの企画力にも大いに期待しています。
身近な世間の動向からエコへの取り組みを提案
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
マネージャーの蔡が商品企画を行ないお客さまに提案するようにしています。
お客さまとお話する際もいきなり自社の素材を提案するのではなく、例えば、お客さまが使っているiPhoneや近くにあるスターバックスが再生素材を使用するなど世間の話題から入ることで、自社製品にも関心を持っていただけるようにアプローチしています。
具体的には展示会において最低でも5型以上のサンプルを展示いただき、小売店からの注文に繋がるよう一緒に取り組むことをご提案しています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
イタリアでは当たり前の取り組みになっているSDGsについて、先ずは興味を持っていただけるように資料を作ってお話するようにしています。また、ゼニア・バルファーやアカデミアの環境素材を採用いただいた場合は、商品にラベルを付けていただくことも出来ますので、その点も合わせて訴求しています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
この業界は1社でヒットが出れば各社が追随してくれるという認識があります。そのような意味では来年の展示会をきっかけに小売店からの注文が入り、商品が売れ出すことで一気に市場が拡がっていくと考えています。
但し、そのためにはエコ素材を全面に出すのではなく、商品を見てかわいい!着てみたい!と思ってもらえるようなデザインの力が不可欠です。既に数社から展示会への出展について商談が進んでおりますが、提案については会社として企業イメージやブランドイメージに繋がる取り組みであることを理解いただくため、出来るだけトップとの商談も心がけています。
取り扱い素材の30%はSDGsにつながるものに
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
まだまだSDGsの17テーマを知らない人が多いように感じています。先ずは知っていただくことで17項目の中から自分たちが出来ることが必ずあると確信しています。中でも若い世代の皆さんはグローバルな視点を持つ方も多く、SDGsについても強い関心を持っておられます。今後は我々が扱う素材の中で20~30%程度をエコ素材に置き換えていきたいと考えています。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
SDGsの17テーマが一覧できるツールを作成いただきたいと思っています。その際はネットでの情報提供だけでなく、手にとって一覧できるツールが良いと思っています。また各社の取り組みを業界紙に掲載できるような広報活動もお願いします。やはり情報は目で見て確認して、理解することが大切です。沢山の人の目に触れる機会を増やす取り組みに期待しています。
■取材者あとがき
取材の中で何度も「当たり前」という言葉が出てきました。イタリアでは当たり前のSDGsを日本でも当たり前の活動に繋げるため、素材の立場から今できることに全力で取り組まれる姿勢が印象に残りました。来年の展示会を起点に一気に市場が拡がることを楽しみにしています。取材協力ありがとうございました。
社名のディープサンクスの気持ちで日々取り組んでいます
レディスアパレルのBtoB事業をベースにBtoC事業への展開を拡げている株式会社ディープサンクスさまの取組みについて代表取締役社長の重延賢治さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
会社名のディープサンクスはこの会社を立ち上げるときにお世話になった皆さんへの感謝を忘れてはならない、恩返しをしなければならない、という思いからこの名前を付けました。
そんな思いがありましたので、会社を立ち上げた時から、障がい者の作業所を運営する福祉関係の会社への支援を行なっておりましたが、なかなか継続することができませんでした。
そんな外向きの思いが強かったのですが、先輩社長から、先ずは従業員が充実して働くことができる環境を作ることが先だと言われ、そのことに取り組んだ結果、ようやく業績も安定し外に向けて活動ができる環境が整ってきました。
最近ではCSR(企業の社会的責任)やCSV(共通価値の創造)を意識して何が出来るかを従業員と知恵を絞っているところです。特に教育をテーマとした取組みを行ないたいと考えています。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
先ず、自社商品についてはリサイクルポリエステルを活用したニット商品を10品番展開。また副資材についても袋や下げ札などに使われているプラスチック製品の見直しを始めています。
また、在庫品については定期的に佐賀県にある施設の職員や子供達に着てもらえるよう寄付させて頂いています。
そして関西ファッション連合さんが推進されるユニセフへの寄付や、障がい者のファッションショーなどについては積極的に協力させていただくようにしています。
このような自社単体での取組みに加えて、ECサイトを運営されている取引先さまとは、商品の販売、回収、リサイクルなどの仕組みを作り、SDGsに繋がるような活動ができないか検討を始めています。他にも売上の何パーセントかで社会貢献活動する仕組みを作り、そのような思いを持つ会社を募ることで活動を拡げることもイメージしています。
これまで会社がしんどい時もありましたが、そんな場面でもお客さまや取引先さまが支えてくださったことに深く感謝しています。そんな意味からもこれからは「恩送り」をしたいという気持ちが大きくあります。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
この中ではやはり環境がもっとも大事だと考えています。我々が取り扱う芯地は服になると見えない存在ではありますが、最後は土に還る素材を提供することで、環境に貢献できるのではないかと思っています。
そもそも芯地は、美しいシルエットを表現するという役割だけでなく、型崩れしない、縮まないなど耐久製についても大きな貢献をしています。例えば学生服であれば3年間毎日着るものであり、何度洗濯しても縮まないなどの高い耐久性が求められます。
長く使うことで愛着も持っていただける、愛着を持つことでモノを大切に使う気持ちが芽生える、など見えないところから持続可能な社会に貢献できれば嬉しいことだと思います。
35項目のフィロソフィーでなぜ働くのかを考えています
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
2019年にBtoC向けに立ち上げたブランド「LIAN」が好調なので、このブランドを通じて様々な取組みにチャレンジしたいと考えています。またこの後は「flame」というブランドから派生する新ブランドを立ち上げ、ECサイトでの販売を計画していますので、社員の自発的な発想をベースに取り組んで行きたいと思います。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
当社には35項目のフィロソフィーがあり、社員に対してもなぜ働くのかをしっかり考える機会を提供するようにしています。具体的には毎週月曜日にテーマを選び、それが出来ているかどうかを考える時間を作っています。また社訓、社是についても明文化しており、毎朝唱和する時間を設けています。
またお正月の初出の際にはおでんパーティーとして取引先にも振る舞ったり、仕事納めや長期休暇の前にはみんなが交流できる機会を作るようにしています。
これらの取組みを通じて社員の皆さんにも働きがいのある環境を作りたいと考えています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
まだSDGsを切り口にした商談はビジネに繋がりにくいと感じていますので、さらなる啓蒙活動の重要性を感じています。日本の市場だけで今後の成長を考えるのは難しいと思いますので、東南アジアやインドなど、今後成長が期待されるアジア市場に展開するためにも次のステージを考えたものづくりが求められていると思います。
教育を実践する場として令和の寺子屋を作りたい
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
やはり教育ということをテーマに寺子屋のような場所を作ることで若い経営者を育てる機会を作っていきたいと思います。会社が何の為にあるのかをみんなで勉強できる場所があるといいなとイメージしています。 また会社を立ち上げる時には起業資金をバックアップできるような仕組みを作りたいと考えています。教育と資金の二本立てで起業家を支援していきたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
KanFAの高い信用力を活用して色々な取組みの冠になっていただくことを望んでいます。新しい経営者を育てるということについても期待するところがあり、現在のアパレル業界の中で状況が良くない企業を支援するような仕組みを作るのもいいと思います。 何事にもフットワーク軽く新たなことに柔軟に取り組むことを期待しています。今後はSDGsに取り組む企業を応援するような仕組みもあれば有り難いですね。
■取材者あとがき
経営者の勉強会に積極的に参加しながら常に会社の存在意義を考える。フィロソフィーをしっかり明文化することで社員と共有する。そんな姿勢から「恩送り」という言葉が出てきたように思います。まさに持続可能な経営こそがSDGsに繋がりますね。取材協力ありがとうございました。
女性活躍から土に還る芯地までこだわりを持って推進中
芯地の王様コロナエースのブランドでアパレル各社に芯地を提供するコロナマルダイ株式会社さま。外からは見えない芯地をベースにどんな取り組みをされているのか代表取締役社長の森澤章雄さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2019年に仕入れ先であるシキボウ株式会社からSDGsについて紹介をいただき、それをきっかけに本を読んで勉強を始めました。もともとヨーロッパ向けの芯地の販売においては素材や環境対策などの規制が厳しかったので、SDGsの主旨を学ぶことで改めて持続可能性について考える機会となりました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
先ず当社では以前から女性活躍という視点で、上海、ベトナムなど海外拠点のマネージャーは女性を登用しています。現地では自国語に加えて、日本語、英語も含め3カ国語が必要となりますので、優秀なスタッフであること、広い人脈を持っていること、そして何よりも丁寧できめ細やかに業務をこなすことなどの条件を考えると、自然と女性に活躍していただくという選択となりました。
同じように本社においても課長は女性が務めておりますし、そもそも男女で昇進、昇格、給与の差は何も設けておりません。そのような意味では5番のジェンダー平等を実現できていると考えております。
そして芯地については、その素材として不織布、織物、編物を使用することが多いのですが、合成繊維ではなく植物繊維に切り替える取り組みを行なっています。
具体的にはシャツであればポリエステル65%、綿35%、ブラウスであればポリエステル100%、パジャマであれば綿混など対象となる商材に合わせて色々な組み合わせがありますが、出来るだけ再生ポリエステルと植物繊維を使用するようにしています。
このような取り組みは12番のつくる責任つかう責任に繋がるものと認識しています。
また生地に芯地を接着させる際の溶剤についても、天然由来のものを使用することで環境に配慮した加工を実践しています。とはいえ自分自身では化学の知識が乏しいため、わからないことは出来るだけ大手メーカーに問い合わせてみたり、大学の先生に教えてもらうなど、知識を深めることで正しい提案が出来るように努めています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
社会課題の中では特に教育の中に道徳を持ち込むような活動に取り組みたいと考えています。それは今の教育の中に道徳が欠けているように感じているからです。父が鹿児島の出身でもあり薩摩の郷中教育にも関心がありました。これは年長者が年少者にものごとを教える仕組みですが、単に知識を記憶するだけの教育ではなく、なぜそうなのかという理由を知ることで一度学んだことを忘れないような教育が必要だと感じています。
洋服の良し悪しを決める芯地を企画段階から考えます
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
私が自ら情報を集めてどんな提案ができるか試行錯誤しています。素材メーカーさんからは日々新たな技術を活かした提案が出てきますので、芯地屋としてアパレルメーカーさんにどんな提案が出来るのかを考えています。
芯地の良し悪しによって、出来上がった洋服の良し悪しが決まったり、逆にクレームに繋がることもありますので、企画段階からデザイナーやパタンナーさんとも知恵を絞りながら共に取り組んでいきたいと考えております。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
これについては逆にどのようにすれば良いかを教えていただきたいテーマです。例えば展示会で訴求するために提案用のパネルを作成するなどの工夫はしていますが、まだまだうまく巻き込むまでは至っておりません。引き続き幅広く情報を集めて取り組んで行きたいと思います。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
まだSDGsを切り口にした商談はビジネに繋がりにくいと感じていますので、さらなる啓蒙活動の重要性を感じています。日本の市場だけで今後の成長を考えるのは難しいと思いますので、東南アジアやインドなど、今後成長が期待されるアジア市場に展開するためにも次のステージを考えたものづくりが求められていると思います。
「ミラノ」に並ぶ「せんば」ブランドを目指して
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
次なる東南アジアの市場に向けて、2025年の大阪万博をきっかけにできればとイメージしています。大阪の船場地域は、イタリアの「ミラノ」のように大阪の「せんば」がブランドとして注目されるだけのポテンシャルは十分持っていると思っています。今だけを見るのではなく次の市場をしっかり見据えて日々の活動を進めて行きたいものです。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
弊社は元々近江商人の流れを組み、三方よしの精神で商いを行なっています。売り手よし、買い手よし、世間よしの理念はそのままSDGsにも通じるものがあると思いますので、大阪のせんばがその強みを活かし、SDGsに邁進しているということを広く内外に伝えて欲しいと思います。
関西ファッション連合のSDGsテーマである「パートナーシップで廃棄削減に取り組む」ためには、まさしく愛着を持って長く使ってもらうことも大切です。コロナ禍で若い世代の考え方もサスティナブルに変わってきたと思いますので、組合員の意識をしっかり高めていただけることを期待しています。
■取材者あとがき
芯地は外から見えないけれどシャツ、ブラウス、パジャマなど普段我々が着ているものを内側から支えてくれていることを知る機会となりました。まさに縁の下の力持ちという存在ですね。見えるものだけでなく見えないところからもSDGsに取り組む姿勢はとても大切ですね。取材協力ありがとうございました。
SDGsを意識したカタログ制作をきっかけに大手アパレルとビジネスがスタート!
服飾副資材の専門商社として、釦・レース・ファスナーから裏地・芯地まで取扱っておられる一方で、アパレルメーカーに販売している服飾資材を1個から購入できる直営店を展開されている増見哲株式会社さまの取り組みについて代表取締役の増見喜一朗さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
㈱ディープサンクス様の2017年の忘年会に参加した時に、盛和塾に参加されている方で地球にやさしいシャンプーを取り扱われている社長が参加されていました。最初は何を言っているのかと思っていましたが、SDGs関連の取材が入っていると聞きました。その時にSDGsを始めて知り、㈱ディープサンクス重延社長からこれからはSDGs、10年後に生き残る為には必要な取組であると言われたのがきっかけで意識をするようになりました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
SDGsを意識して環境に優しい資材を集めた商品カタログを作成し、取引先に向けてプレゼンを行っています。そのおかげで大手アパレルメーカーにバイオマスのボタンを採用頂くことができました。早く取り組んだ事で大手アパレルメーカーとの接点が出来たと思います。
現在も新しい商品作りに取り組んでおり、卵の殻や廃材などをボタン、ファスナー、バックル等に使えないかと、他社に依頼し開発をしていますが、強度、匂いなどが課題です。漁網を活用した商品も今後取扱いたいと思っています。
東京ニットファッション工業組合では「TOKYO KNIT」という組合員の商品を集めたブランドを作っていて、その商品に当社のSDGs対応の付属、ボタン、袋、ネーム等を使用していただいています。
また、障がい者就労継続支援事業所のあ~とはうす様と連携して、障がい者の方が作られたオリジナル商品を販売させていただいたり、木津川市加茂少年少女合唱団様の衣装用の生地を提供させていただいております。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
会社として意識しているのは経済になりますが、自社で取り扱っている商品も最終的には捨てられてしまうので、環境も意識しています。環境を意識した商品でないと売れないと思っています。環境と経済を意識したものづくりをすると、アパレルだけではなく他業界や学校とも繋がりができてきますし、広く連携できるのではと考えています。これからはSDGsを意識しないとどの企業も生き残れないと思います。今、コロナ禍でみんな苦しんでいると思いますが、逆に今がチャンスと捉えて、駆け上りたいと思っています。海外企業は環境に対してスピード感があるので、何もしなければ勝てないです。環境に配慮した商品を作ってブランド化していくことが重要だと思います。
生き残るためにはSDGsを意識した経営判断と社内外へのアピールが重要
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
中小企業の場合は、絶対に社長がやらないとダメですよ。社員に任せていると取り残さる一方だと思います。
今、何が注目されるかといえばSDGsです。SDGsは経営する上で知っておかなければならない事ですし意識しなければならない事だと考えています。取り組むにはお金もリスクも掛かるので、SDGsを意識した経営判断をしなければなりません。また、取組み内容を社内外へアピールすることが重要だと考えています。
SDGsに取り組めなければ生き残れないと思います。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
当社では社員が名刺交換した方にメルマガを配信しています。メルマガは毎週1回、担当部署を交代しながら配信していますが、コロナ禍になって、プライベートな事よりも商品についての記事を書くようにしましたが、その際にSDGsを絡めたような記事を書くことで社員の意識も高まると思っています。
また、快適多機能素材COVEROSSⓇ(カバロス)を取扱うhap株式会社の社長にお越しいただき、社員への勉強会をオンラインで開催しました。
社外向けとしては、繊研新聞や繊維ニュースに取り上げていただいたり、機関紙である「おおきに通信」に掲載したりしています。
2019年5月頃のおおきに通信にSDGsについて掲載しましたが、当時は何これ?ってよく言われました。ですが、この1年で大きく変わったと思います。取り組まないといけないという意識にはなってきました。ただ、具体的に経営方針を決めて商品開発をしている企業はまだまだ少ないと思います。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
17項目の中には日本では現実的でない項目もあるので、すべてに取組むのは難しいと思います。得意先に関しましてはもともと価格で勝負されているような企業は少なく、意識の高い企業が多いので、推進が難しい部分は少ないです。大手アパレルの方が意識が高いと感じています。
取り扱う全ての商品を環境に配慮した商品にしたい
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
取り扱う商品すべてを環境に優しい商品にし、その商品を使用して自社製品やOEM製品を生産したいと考えています。それを海外に向けて販売をしていきたいです。東京や大阪ではない場所に拠点を持ち、意識の高い方々と連携して商品開発を行うことで生き残り、今とは違う立ち位置を目指したいと思っています。今、SDGsに取り組まなければ会社は潰れます。
阪急電車がSDGsのマークを付けて走っている世の中なのに、会社が知らずに今までとおりの経営をしていると必ず取り残されてしまいます。海外、特に中国は早いですので、今、これに取り組まなければ生き残れません。SDGsを意識しておかないと2030年は来ないと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
このように取材していただける事で自分もSDGsへの取組の意識が高まります。それとどんな企業がどんなことをしているのかは知りたいですね。今後も当社の取組みの後押しをお願いしたいです。
■取材者あとがき
インタビュー中に何度も「SDGsに取り組まないと生き残れない」という言葉が出てきました。社長の強い想いと行動が従業員にも伝わり、社長を中心に社員一丸で活動されている姿勢が新しいビジネスを生み、SDGsの輪をさらに広げていくことに繋がっていると感じました。取材協力ありがとうございました。
「SDGs de 地方創生」ファシリテーターになり、
多くの人、多くの企業さまへ伝える活動を展開。
まずはコミットメント!SDGsを宣言することからスタート
1952年創業の羅紗屋(生地問屋)をルーツに持つ大阪谷町紳士フォーマルアパレル販売、株式会社NFLさまの取り組みについて代表取締役の川辺友之さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社は長年紳士服店を経営していました。毎年毎年、生地メーカーからオーダースーツ用のサンプル生地台帳(バンチブック)が届くのですが、シーズン終了後に破棄する事に対して「もったいない」、このバンチブックのスワッチ生地で何か作れないかとずっと考えていました。
2019年3月に大阪青年会議所の友人に誘われ「2030カードゲーム」というSDGsをカードゲームで体験できるイベントに参加しました。カードゲームを体験し「これがSDGsか」と頭の中だけでなく体で体感し、実際に具体的なプロジェクトを実行しなければSDGsではないと思い、バンチブックのスワッチ生地で何かを実際に作ってみようと思いました。
また、SDGsカードゲームの内容は大変面白く更に勉強したいと思い、同年の7月に「SDGs de 地方創生」公認ファシリテーターの資格を取得しました。翌月の8月よりSDGsカードゲームの勉強会を開催しSDGsを広げる取組もしています。参加者は大手企業、教育関係者などで、意識の高い方が多く、新たな繋がりが出来ました。中小企業の方にもSDGsを勉強してもらい、それを説明できるまでになっていただきたいと思っています。
サンプル生地をアップサイクル!ウーリーベアプロジェクト
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか
バンチブックのスワッチ生地でテディベアを作る「ウーリーベア」プロジェクトをやっています。私の名刺にはSDGsの項目、8番、11番、12番を記載しています。8番はリモートワークを増やし、子育て中のお母さんにも働きやすい制度を作っています。在宅制度はコロナの前から取り入れています。11番はクラウドファンディングを活用し空き家、古民家の再生、まちづくりなどをおこなっています。12番は「ウーリーベア」プロジェクトです。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
環境と経済に重点を置いています。
環境は12番「作る責任・使う責任」。バンチブックのスワッチ生地を破棄するのではなく、スワッチ生地を利用してテディベアを作成し、SDGsの教材として子供たちにプレゼントをします。
また経済は8番「働き甲斐も経済成長も」。障がいのある方や小さい子供を育てていて家でしか仕事ができない方に、在宅でテディベアを作ってもらおうと、今、東京支部と大阪支部で女性グループを集めています。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
代表直轄で担当社員を決め、社員も巻き込んで推進しています。「ウーリーベア」プロジェクトは社員にも好評でSNSなどで積極的にアピールをする準備をしてくれています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
女性のコミュニティにこの「ウーリーベア」プロジェクトを説明し、テディベアを作り報酬を得られるようになりたい女性を募集し、リーダーには各地の支部を作ってもらいながら賛同者を増やしていっています。
また全国のテーラー、オーダースーツ屋さんにもお声がけをしてスワッチ生地を集める取組も準備を進めています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
「ウーリーベア」プロジェクトに関しては、可愛いテディベアを作ることが難しく、また、価格が通常のぬいぐるみより高価になる点が課題です。現在は可愛いテディベアを作る為にプロの作家さんにサンプル作成を依頼しています。今後はウーリーベア作りを学べる教室を作り技術を身に着けた方に作成していただくなどを検討しています。
当初、クラウドファンディングでの販売を予定していましたが、すべて1点ものの手作り作品になるので、その販売方法についても改めて検討をしています。
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
テディベアだけでなく、スワッチ生地で作れるものの幅を広げ、また、学生さん、専門店、百貨店、大手GMSなどにも参加いただき、アップサイクルの輪を広げていきたいと考えています。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
アパレル業界にたくさんあるスワッチ生地を使ってのアップサイクル商品をブランディング化して、他の繊維関連団体さんも巻き込んで日本中に広げていきたいと思っています。その活動のサポートをして欲しいです。17番「パートナーシップで目標を達成しよう」ですね。KanFA組合員とも一緒にやりたい、ウーリーベアに参加したい企業やデザイナーを募集中です。
■取材者あとがき
様々なプレーヤーを集めアップサイクルという一つの文化を広げる活動はとても魅力的です。課題はたくさんありますが川辺社長の湧き出るアイデアと熱い思いでひとつずつ実現されることを期待しています。取材協力ありがとうございました。
クラボウグループの環境意識の高さを踏襲し、取組みをスタート
クラボウグループの繊維専門商社として、素材の開発から縫製までグローバルなサプライチェーンを構築し、消費者に喜んで頂ける新商品開発にも積極的にチャレンジされておられる株式会社クラボウインターナショナルさまの取り組みについて、マーケティング室の内田淳さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
きっかけとしては世の中の流れと、クラボウグループの環境に対する感度が高かったことが影響しています。そして世の中で環境負荷を減らそうとかリサイクルを推進しようなどの声が大きくなってきたこともあり、取り組む方向に進みだしました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか
衣服の縫製が当社の生業なので、その縫製に関係することに取組んでいます。例えば、海外駐在員事務所を通じて協力工場に縫製の仕事を発注することで雇用に貢献したり、歩くことの大切さや健康寿命の維持を、動きやすく急な雨でも安心の当社オリジナルのウォーキングウエアでフォローしています。それに、他社の活動を参考にするためSDGs関連のセミナーや講演会に出席したり、当社のSDGs活動をホームページに掲載し周知しています。
①パワーウォーキング
パワーウォーキングとは、モスクワオリンピックの50キロ競歩の金メダリストであるドイツのガウダー氏が考案したスポーツウオーキングです。ランニングはちょっと・・、でも散歩では物足りないという方にピッタリ。パワーウォーキングは健康寿命の維持に最適なスポーツウォーキングです。そこで我々は、このパワーウォーキングを行う人をサポートするための最適なウェアを開発、パワーウォーキングブランドを販売し、人生100年時代の健康的な生活をサポートしています。
②ルナセル
ルナセルはクラボウが開発したコラーゲンを融合したレーヨンで、世界初の素材なんですよ。レーヨンはパルプから作られている生分解性を持つ循環型原料です。安全性も高く、エコテックススタンダード100認証を今年2月に取得しました。冬は暖かく夏は涼しい、そのうえ消臭効果も併せ持つ原料です。
そのルナセル繊維とポリエステル繊維をバランスよくブレンドしたルナセルサーモを、寝具や布団の中綿用として開発しました。空気層を保ち弾力性と柔軟性と優れた吸湿発熱効果があるため、暖かく消臭効果を有し、嫌な匂いを押さえます。
このルナセルサーモは寒い時期に使用していただくことで、部屋の設定温度を下げることができます。
③インドネシアでの雇用促進
インドネシアに縫製の自社工場を持つことによって、しっかりと技術を継承しつつ、さらに向上を図り生産を進めていくことによって雇用を促進しようと考えています。これは自社工場だからなせる業だと考えています。
④新興国への技術支援
バングラディシュやベトナム等の新興国で商品を生産しています。残念ながらコロナ禍で現在は行くことができませんが、従来は2ヶ月に1度程度ですが日本から技術員が現地に入り、縫製を発注している協力工場に技術支援をしています。継続して技術支援することで縫製技術が向上し、技術が向上することで安定した品質でのものづくりが可能となり、継続した生産活動が可能となります。そのことが現地の雇用維持や安定した生活につながると考えています。
⑤ループラスへの挑戦
クラボウのループラスは、生産工程で発生する裁断クズなどを回収し、反毛、開繊して再び糸にします。その糸を使って織物や編物にする、それがループラスのリサイクルシステムです。生産工場は廃棄・焼却をしなくて済むので、廃棄物削減とCO2削減に繋がり、SDGsの活動に直結します。
生地以外にもノートやメモ帳にもしています。そのループラスを活用し、当社は持続可能な循環型社会を目指し商品作りを進めています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
全部ではないでしょうか。社会、経済が安定するための一つとして環境配慮が必要だと思っています。地球温暖化が原因と言われる異常気象が引き起こす災害や、暖冬・冷夏などで起こる様々な社会問題、そんな環境問題の解決のため、未来を活性化させ社会、経済を安定させるためSDGsの取組みが必要だと思います。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
会社全体でSDGsに取り組んでいますが、推進している部署といえばマーケティング室になります。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
取引先については、とにかく安定した品質と決められた納期を守る事です。そんな基本的なことを地道に行う事がお客様の信頼を獲得する事になり、そのことが新たな受注につながります。その受注商品を海外の協力工場に継続的に発注することで、技術支援や雇用促進を行い、品質向上を目指すということに尽きると思います。
従業員については、新聞記事で周知したり、ホームページにアップして情報提供に努めています。メディア取材やホームページを更新することがSDGsの周知には大切だと考えています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
新興国への技術支援は惜しみなくやっています。それは品質向上させるため、利益を上げるため業務として必然的にやらないといけないことです、そのことがSDGsの活動「8働きがいも経済成長も」につながることと考えています。同様に業務の一環として行う技術支援や商品展開などは自ずとSDGs推進につながります。
一方、推進活動が難しいこともあります。例えば「5ジェンダー平等を実現しよう」「6安全な水とトイレを世界中に」などはSDGsの活動を何かやりましょうとなった時、業務とは異なるためなかなか進まないと思います。
無駄をなくして廃棄物も無くしていきます!
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
廃棄物の削減と再利用に取り組みたいと思っています。工場内での廃棄物も再利用できるような仕組みが必要です。10年後、マーケットは変化しているかもしれませんが、このSDGsのような流れは変わるものではないと思っています。当社は服を作っている会社であり、素材メーカーに直結している会社なので、SDGs的な考えをリマインドして、無駄なことをしない。これに尽きると思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
今回、当社のSDGsの取組みを取り上げていただきましたが、こういった組合活動を知った企業はSDGsについて調べる気になると思います。調べる気になると様々なところで情報を入手していきますし、自社でも取り組まないといけないという気持ちになると思います。これは繊維業界にとってSDGsに取り組むためのすごくいいきっかけになると思いますよ。SDGsの啓蒙に関西ファッション連合様の仕掛けを期待します。
■取材者あとがき
世の中の動向に刺激を受け、自社でも何か取り組まなければと、身近なことから海外の生産工場まで様々な活動を日々行っておられます。より活動を広げていくためには意識を持って自分ごとにして取り組むことがポイントだと思いますが、クラボウインターナショナル様のように日々の仕事の中で毎日取り組んでいることを少しずつパワーアップしていくことが重要だと実感しました。取材協力ありがとうございました。
70周年を機にエコ商材のサンプルブックでSDGsを訴求
今年70周年を迎える服飾資材、繊維製品を取り扱う専門商社。最近では鞄、アクセサリー雑貨まで商品を拡大され、国内はもちろん中国、香港、ベトナム、ミャンマーなど幅広くグローバルに展開されている清川株式会社さま。その取り組みについて執行役員の酒井さま、商品開発室マネージャーの原渕さま、総務部課長代理の高嶋さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2019年の夏ごろエコロジーが大事であるとの話があり、PRADAがリサイクルナイロンを使った鞄を発表しました。8月の役員会において、各役員に対してCSRとサスティナブルについてどう考えるかという課題が与えられ、まず役員の意見を纏めるところから始めました。今年が創立70周年の年にあたり、当社の取組としてまずはエコから推進しょうという方向が決まりました。副資材の自社開発も含めエコ商材のサンプルブックを作成し今年の1月6日に各営業に配布、清川としての方向性を打ち出しました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか
2月を過ぎコロナ禍に突入していく中、経済不調により通常の副資材の需要は少なくなりました。また、多くの外国人が来日するオリンピックは海外に向けて日本のエコへの取組を発信できる好機と捉え、小売業などにエコ商材をアプローチする予定でしたが、オリンピックの延期、経済不安を受け、改めて何をすればよいのかを検討しました。
その結果、高齢化社会とウイズコロナをキーワードとし「健康」に力を入れていくことになりました。先般の展示会ではそのテーマを「Health&Ecology」とし取組んでいくこととしました。
来年から「Health&Ecology」商材は本格的に動き始める予定です。
健康商材としてゲルマニウムを練り込んだ糸「チオクリーン糸」、数種類の鉱石を練りこんだ素材「セリアントⓇ」、集積機能性ミネラル結晶体「イフミック」を提案しています。重衣料が厳しい時代では異業種、異分野など様々なところに売っていかなければなりません。その中でも社会貢献が出来る商材の取り扱いはSDGs3番につながります。
自社オリジナルのサスティナブル商品の開発を進めています。来年以降発表をしていく予定です。副資材では環境に優しい商品づくりを目指しSDGs12番、13番、14番、15番を中心に取組んでいます。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
難しい質問ですが、社会と環境でしょうか。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
資材事業部が健康商材やエコ商材を開発しており、その延長線上で製品になりますので、資材事業部で推進をしています。
会社の方向性を全社員と共有、理解を深めながらSDGsを推進
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
今年の初出の日には全社員に取組を発表しました。社内用のパンフレットを配布し、説明しながら理解を深めてもらいました。外部の方には展示会などで説明をしています。
また、社員を巻き込み、意識を高める取組として、社員の名刺を環境に優しい新素材に変更しました。「健康経営優良法人」の認定申請も現在進めています。
また、カンボジアに中学校を建設するプロジェクトに賛同し、基金に協賛するなどのCSR活動を社内報に掲載し社員に発信をしています。女性総合職の採用なども積極的に進めております。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
当然コストの問題があります。あとファッション性を重視すると健康商材は難しい部分があります。取引先によってTPOがまったく違いますので見極めてお勧めしています。
ファッションの世界では商材のひとつとしてお勧めし、プラスアルファーとして健康とかエコについてお伝えするようにしています。
サーキュラーエコノミーの実現を目指して
環境に配慮したものづくりをスタンダードに
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
エコ商材のサンプルブックを持って1月から取引先に提案をしていますが、コロナの影響でなかなか採用には至っていませんが、興味は持っていただいています。通常品より価格が高いなど難しい部分もありますが、今後広まっていく事でスケールメリットが出てきますし、これがスタンダードになれば良いと思っています。当社は副資材を提案していますが、表地も含めてトータルでエコな製品作りを営業では提案をしています。
今後、エコについて大きく取組もうとされている企業もあります。大量に商品を生産すると必ずロスが発生し焼却される商品もでてきますが、焼却はCO2を排出することになりエコではありません。販売した服を回収する業務が必要となり、それを再生させた生地や付属を作り、製品を作る時代が来ると思います。繊維業界は大きく変わるのではないでしょうか。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
会員企業さまに商品を紹介したり、同業企業さまと情報交換ができる機会があればいいですね。参加させて頂いたセミナーのグループディスカッションの際には名刺交換をし、交流ができ非常に有意義でした。このような機会を引き続き設けて頂きたいと思います。
会員企業が集まるスポーツの大会「運動会」なども交流の機会になり面白いかもしれません。
また、2025大阪万博に向けて関西の繊維業界を活性化する取組を何か仕掛けて盛り上げて欲しいです。
■取材者あとがき
70周年の記念の年に会社としての方向性を決定し全社員へ発表、計画性をもって取組まれているその推進力は部門を超えた全社のチームワークから生まれていると感じました。繊維業界のサーキュラーエコノミーの実現に向けた今後の取組が楽しみですね。取材協力有難うございました。
企業理念に環境重視のメッセージを取り入れ、
様々な事業をグローバルに展開!
あらゆる繊維・製品ビジネスをグローバルに展開されている帝人フロンティア株式会社さまの取り組みについて、取締役執行役員で技術・生産本部長の重村幸弘さま、経営企画本部 広報・IR部 部長の大里研一さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2015年にSDGsという考え方が世の中に出てきましたが、当社ではそれよりも以前から環境対策には取り組んでいました。
ポリエステルの事業でいいますと、石油等の天然資源の枯渇を考えて当初からリサイクルの取り組みを始めていました。例えばケミカルリサイクルの素材は20年前、ペットボトルリサイクルの素材は25年前から取り扱っておりますので、かなり早い時期に取り組んだと思います。現在はエコペット®ブランドとして展開しています。
当時、容器包装廃棄物の再商品化を義務づける法律「容器リサイクル法」(略称)が成立し、当社では使用済みペットボトルを原料とするボトルto繊維のマテリアルリサイクル事業を始めました。また、その以前から、工場生産時に発生する原料クズを廃棄せず、化学分解して原料に戻し、それを社内で再利用していましたので、その技術を用いてケミカルリサイクルの事業をスタートさせました。
また、帝人グループでは2011年に人権保護や不当労働排除、環境対応への取組みである国連グローバルコンパクトにも加盟しています。
ですので、SDGsの考え方を知った時も当然やるべきことでしたので、違和感なく取り組みました。
SDGsは事業を整理するきっかけとなり、どの取組みがどの番号に合致するかを割り当てていきました。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか
リサイクル以外の環境に優しい取組みとして、空気や水のろ過を行うフィルターの開発、省エネの一環としてカーテン等に遮熱素材を使うことにより、冷房効率をあげて省エネに貢献する取り組み、ものづくりの観点から有害物質を使用しない取り組みや、工場で排出されるCO2の削減などに取り組んでいます。
CSR活動の一環としてCSR調達を推進しています。CSR調達基準の設定や、実態調査の実施、海外の縫製工場における強制労働や児童労働の撲滅に向けた取り組み、工場経営者向けの品質向上・労働環境を含めた環境安全への教育などにも以前より取り組んでいます。
野外フェスなどの音楽イベントやプロスポーツのスタジアムで、使用済みペットボトルやプラ容器を回収し、リサイクルする活動にも協力しています。
また、名刺の素材に再生ポリエステルを活用したりしてきました。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
どれも関連していますので、どれが重点ということではないです。ただ、経済活動と環境保全は平行して考えなければならないと思っています。経済活動の中で環境に負荷を掛ける部分もあると思いますが、できるだけ負荷を掛けないものづくりを目指し、改善していくよう取り組みを進めていくことで、よりよい社会が形成されると考えます。
2018年4月に、私たちの企業理念を「私たちは新たな価値を創造し、美しい環境と豊かな未来に貢献します」に改定し、より環境を重視するというメッセージを込めました。
我々はものを作り、ものを売る立場ですので、環境という考え方は切り離すことはできないですね。
SDGsのポイントは身近な目標を設定して日々実践すること
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
SDGsの担当部署というのはありませんが、環境に対して社内外への啓蒙を含めた活動を行う全社横断の環境チームや、CSR監査や環境安全の管理を行う環境安全・品質保証部があります。
一方、帝人グループにはCSRを管掌する役員がおり、環境やCSR等の委員会を所管しています。各委員会は定期的に開催されており、弊社の各部署からも参加しています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
従業員に対しては、社会貢献的なイベントに参加してもらい、一緒に体験することで理解を深めてもらっています。
それと、部署毎に環境に対する目標を毎年決めています。例えば、紙資源の削減、資源を大切にしよう等です。コピー・プリントアウトの出力をできるだけ少なくするために、昨年と比較して何パーセント削減するかという目標値を設定して、毎月実績を責任部署に報告しながら日々実践しています。印刷ボタンを押す瞬間に、押してもいいのかな、とよぎるようになりましたので、これはいい習慣だと思います。
身近な目標を設定して日々実践するというやり方はSDGsに沿っていると思います。
これは弊社独自の取り組みですが、従業員が自分で考えた環境に対する行動目標を書いたカードを常に持ち歩いています。環境に対する意識を常に持ってもらうために行っています。
対外的には「THINK ECO®」という名称の環境戦略を、従業員を含め、消費者の方にも分かりやすいように2020年7月に刷新しました。2030年の環境に対する具体的な目標を挙げて、消費者の方、そして次世代を担うお子さんにも理解してもらえるような内容にしました。具体的な数値を明記していますが、これは私たちの2030年度に向けたコミットメントです。ものづくりをする立場でのコミットメントですが、自社製品を活用いただくことで省エネになる商品の売上についても含んでいます。
併せてロゴマークも刷新しました。黄色が私たちを含めた社会で、青が海・空気、緑がエコロジー、赤がエネルギーを表しています。そしてそれぞれの組み合わせによって目標を分かりやすく表しています。これを環境チームが中心になって帝人フロンティアグループ全体で実現していきます。
発信や分かりやすさは巻き込むための手段としては重要だと思いますし、あまり難しい、自分よがりだとダメだと思います。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
CSR監査をするにしても縫製工場だけでも800社ほどあり、毎年監査するのは難しいので、改善に向けて、より精度をあげるためにはどうすればいいか。
また、リサイクル面でいえば、国内ファッション業界ではリサイクル素材に対する意識が、欧米に比べて低いです。理解と意識向上をしていただくにはどうすればいいか。
SDGsでいえばジェンダーの問題です。女性の管理職をどうやって増やしていくか。
様々な課題があり、それぞれ解決できていないような事が多いのでSDGsが提唱されたのだと思います。
ビジョンを見据え、繊維でくらしを進化させます
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
環境以外でも2030年までにSDGsの目標に向かってできる事をしっかりやっていきたいと思います。
「未来の社会を支える会社」が帝人グループの長期ビジョンですので、2030年の社会に対して自社がどう貢献できるか、という観点で存在意義を出していきたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
リサイクルや環境への意識が高くない消費者もまだまだ多いですので、その意識を向上していただくために、環境対応素材の普及策を一緒に考えていただきたいです。
アパレルがサステイナブルを訴求しようとしても、採算面がハードルとなりますので、例えば「当社は一部、環境対策の商品を作っています」というように、まずは会社として打ち出しをしていただき、徐々に商品数を増やしていっていただけるような進め方を推奨していただけるとありがたいです。
組合には様々な企業が加盟されています。SDGsの取り組みも全て同じやり方で進めるのも難しいと思いますのでレベル分けをするといいのではないでしょうか。それぞれで注意すべき点などを纏めたガイドラインなどを作成されるとハードルは下がると思いますし、最初のハードルは低くないと始めにくいと思います。
■取材者あとがき
SDGsへの取り組みは従業員全員でやっていくという企業スタイルを感じることができました。来るべき社会に対して自分たちがどう貢献するか、という自分たちへの問いかけが、企業理念のとおり、SDGsを実践した美しい環境と豊かな社会における存在意義に繋がっていくように感じました。取材協力ありがとうございました
世界唯一の特許技術でCO2削減に取り組んでいます
衣料副資材の企画・製造・販売と情報タグを取り扱うテンタック株式会社さまの取組みについて、営業本部 副本部長の支倉常雄さま、企画マーケティング部 部長の村上慶彦さま、西日本営業部 部長の川村勝司さま、副部長の河合博明さま、滑川泰平さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社の取引先企業さまで5~6年前からラベルの粘着面に添加することで、焼却時にCO2の排出を抑制できる技術との出会いがありました。当時はまだお客さまの方でも環境に対して関心が高い時期ではありませんでしたが、この技術をラベル以外のフィルム製品でも上手く転用することができないかと考え、東京理科大学発のベンチャー企業と共同開発を始めました。
その結果、プラスチックの生産時にこの素材を3%添加することで、焼却時のCO2を約60%削減できるフィルムパッケージが誕生しました。これは世界でも類を見ない日本独自の特許技術であり、透明度や強度などプラスチックの良い面はそのまま維持されます。また機能性マスターパッチ方式を採用したことにより、僅かな量を加えるだけでイニシャルコストがほとんどかからず、様々な業界のプラスチック製品を安価にエコ化を実現することが可能になりました。
当社ではこの技術「グリーンナノCO2 OFF」を2019年からカタログにも掲載し、販促活動を強化。日本発、燃やしてもエコなプラスチックとして取引先企業への提案を行なっております。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか
具体的な製品例としては、ハンガー、フック、パッケージ、ゴミ袋、レジ袋、バック、保護カバー、値札シール、サイズシールなどを展開できますが、採用事例としては、GMSやSPAなどの商品パッケージ、大手スポーツメーカーの輸送用パッケージなどに採用されております。これらの商材については「グリーンナノCO2 OFF」のロゴを掲載することで、消費者への啓蒙にも取り組んでおります。
さらに紡績メーカーさんと組んでポリエステル繊維の原料として、また化粧品容器メーカーのボトル原料としても供給を行なっており、製品、原料の双方で温室効果ガス削減に具体的な貢献をしています。
これらの取り組みを17のテーマに照らし合わせてみると、7番「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」、12番「つくる責任つかう責任」、13番「気候変動に具体的な対策を」、14番「海の豊かさを守ろう」、17番「パートナーシップで目標を達成しよう」に該当する活動であると認識しています。
特に17番については、紡績メーカーや化粧品容器メーカーさんのものづくりの工程で原料から採用いただくことで、当社だけでは出来ない拡がりのある活動に繋げていくことを目指しております。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
すべての項目が重要なものであると思いますが、現時点では「グリーンナノCO2 OFF」の技術が環境について貢献しているものと考えております。当社の主要な取引先であるファッション産業はサスティナブルについて大変関心が高い業界ですので、ここでの採用を拡げながらも、非アパレルの分野への提案もさらに積極的に行なっていきたいと思います。
また、当社のもうひとつの主力事業であるRFIDについては、自社のスケールメリットを生かして従来品に加え、金属やアクセサリーやリネンなど各々に対応したRFID、基材として使っていたフィルム部分を紙に変えるなどした環境配慮型RFIDなど、様々なラインナップを設けてRFIDの普及スピードを上げていく計画を立てております。このことにより情報処理のスピードが格段に上がりますので、業務や在庫のムダがなくなり結果的に経済や社会にプラスの影響を生み出せるものと確信しています。
営業部が一体となってSDGsに邁進しています
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
当社では、主力商材である副資材を扱う営業本部が主幹となってスピード感をもった活動を推進しています。また企画マーケティング部が情報ハブ機能を持つことにより、個々の営業が掴んできた情報をリアルタイムで共有し、提案活動に活かす工夫も行なっています。
このように全社を挙げて活動が推進できる背景には、社長がそもそもSDGsへの意識が高いこと、常に現場の状況をしっかりと抑えていること、があると感じています。これからも営業本部が主幹となりながら、お客さまのトレンドに敏感に反応して参りたいと考えています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
我々の扱っている副資材は生産工程の中では一番最後の工程で必要なものになりますので、活動が後手に回らないよう、企画マーケティング部からサンプルブックの閲覧ができるような環境を作ったり、最新キーワードについて社内イントラネットで共有できるような取組みを行なっています。情報のスピードと活動のスピードを共に高めていくことで社内、社外をうまく巻き込んでいきたいと考えております。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
やはり環境以外の社会、経済については、今後強化していきたい課題であると考えています。具体的にはテーマ1から6までの項目にある、貧困、飢餓、健康と福祉、教育、ジェンダー平等、安全な水とトイレといったものです。
ちなみに当社の生産拠点は8割が海外になっており、具体的には中国、タイ、ベトナムなどに拠点を持っています。今度さらに海外での生産拠点を展開する際に、途上国における衛生環境や教育環境など、まだ達成できていないテーマにも積極的に取り組んでいきたいと願っています。
17のテーマ169のターゲットすべてを意識していきたい
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
先ずは環境をメインにしながらも17のテーマ、169のターゲットを意識して幅広い活動を推進していきたいと思います。「脱プラスチック」という言葉に代表されるように、まるでプラスチックが悪者のような印象が拡がっていますが、プラスチックの可能性を正しく評価いただき、我々が提供する技術を使うことでプラスチックの活用と焼却を正しいサイクルで回していけるよう取り組んでいきたいと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
コロナ禍はアパレル業界にも大きなダメージを与えています。このまま元に戻るということではなく、各社にとっては新たなビジネスモデルの開発が必要だと考えています。サスティナブルな視点をもった企業が集まり、お互いが持っている技術を紹介したり、ビジネスマッチングできるような場を作っていただけると有り難いと思います。その際は当社も是非プレゼンテーションのステージに上がりますので、是非よろしくお願いします。
■取材者あとがき
プラスチックの対応に注目が集まる中、たった3%の素材投入で焼却時に最大60%の二酸化炭素の削減ができるという技術はとてもユニークなものであると感じました。またパッケージの供給だけに留まらず、原料レベルでも製品メーカーと組んで新たな素材を生み出す発想力と行動力に期待が膨らみます。取材協力ありがとうございました。
経営理念「人を大切にする経営」のとおり
ステークホルダーのために出来る事を考えます!
紡毛、製織、編立から染色整理加工まで一貫生産できる泉州地域でも老舗の紡毛製品製造販売会社である大津毛織株式会社さまの取組みについて、代表取締役社長の臼谷喜世彦さま、管理部 次長の上中文博さま、テキスタイル部の冨田真規子さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
少子高齢化が益々進み、社会保障制度の限界も垣間見え、生き方や働き方を含めた環境問題が世界的な問題となってきました。一方、グローバル化とIT化が進化したことで、市場のニーズや流通構造も大きく変化し、この社会の変化にどう対応していくかは大きな課題であり、持続可能性が問われる時代になってきたと思います。
そんな中、2015年に国連でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。市場の環境変化に対応して持続可能な目標を持ち、そこを目指していくという取り組みは我が社が従来から行ってきたことですが、最近の大きな社会変化を鑑みて、さらに積極的に取り組まなければならないと認識しています。しかし変化のスピードは早く、SDGsへの対応が迫られてきました。経営理念である「人を大切にする経営」のとおり、社員、お客様、地域がこの変化に対応していくために何が出来るのかを全社で考えていますし、得意先に対してもSDGsに関連する提案を検討しております。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか
①会社全体としての取り組み
まず、男性と女性の昇給基準が別々だったのを同一基準にし、男女評価を同一とする制度に改めました。
そして、社員の育成教育として、全社員にお願いしていることなのですが、個人ごとに目標を設定してもらい、年3回の上司との面談の内容を記録することにより、個人の成長の促進に繋がるよう取り組んでいます。併せて中堅社員に対しても年3回の社長面談を実施し、会社方針の確認と目標の共有に努めています。
採用面では中途採用に力を入れていて、特に高齢者や女性を積極的に雇用しています。従業員の比率として60歳以上は約35%、70歳以上は約10%となっています(2021.1現在)。また、人事考査制度や職能等級制度等、諸制度を整備し、働きやすい環境づくりを目指しています。
地域の小中学生をはじめとする工場見学も積極的に受け入れています。
②原糸部における取り組み
染色工程削減の取組みとして、自然色を利用した原料を使用することにより染色工程を行わずに済みますので、CO2排出・熱エネルギー・水の使用量を軽減しています。
また、エコロジー紡毛として、紡績工程での落ち綿や製織工程の残糸などを回収してリサイクルしています。カシミヤにおいては色ごとに古着を分類することで原色を活かしたカラー糸を提供しています。
一方、中国の現地パートナーに反毛の機械とノウハウを提供し、自社の希望通りに生産してもらえる反毛工場を開設しました。通常、反毛は反毛業者からしか仕入できないのですが、当社はオリジナリティのある反毛を作ることができます。編立や製織工程での糸屑や縫製の裁ち屑、ノイルと呼ばれる紡績工程での短い毛等を使用しています。中国は紡毛の世界の生産基地になっていますので、様々な素材を収集することが出来ます。希望の素材を集めてもらって反毛していますので、品質も安定させることができます。
設備面として、繊維長の測定は経験に基づく目視での測定が多く、経験者に依存していたところですが、経験の少ない人でも繊維長を測定できるよう、自動測定器を導入しました。
③テキスタイル部の取り組み
天然繊維の長所を伸ばし短所を補うような、例えば「軽さ」や「撥水性」、「イージーケア」や「ストレッチ性」などについて提案しています。
また、「OZMYⓇ」ブランドはトレーサビリティのとれる原料のみで編み上げたニット生地を生産していますので、これにより品質や混率を保証しています。
当社では工程の内製化と雇用の促進に取り組んでいます。今、産地では高齢化による廃業等で生産の多様性が失われつつあります。そこで廃業される機屋3軒から設備を譲り受けるとともに、その経営者や工場長に整備の協力をいただく体制を作りました。
また、丸編生産におきましても多品種・小ロット生産に対応するため、廃業する撚糸屋の設備と人材を取り入れ、更に外注工場で管理いただいていた編機も内製化することにより、安定的な生産と更なる商品開発を可能とする体制を作りました。日本国内で糸から編み地工程まで内製化している企業は他には無いと思います。
これまで素材は合成繊維が中心でしたが、カーボンニュートラルの視点から天然繊維の商品や、天然繊維を使用、無晒し、天然成分による洗い等、環境に良く人にも優しいガーゼ生地の開発を行っています。
また当社は国内生産を推進しています。従来、海外生産比率は約95%でしたが、現在の国内生産比率は約40%になっています。自社に生産設備はありませんが20年前までは、自社で編立、染色整理を行い、自社での企画製造販売を行っていたため、ノウハウはありますので、それを活用して泉州産地に還元しています。
⑤仕上加工部の取り組み
塩素を使わない防縮加工や、バインダーを使わないセットなど、環境負荷となる化学物質の使用量を削減するような取り組みや、高効率のボイラーの導入、各配管の入れ替えや断熱化により省エネへ取り組んでいます。
また、自動梱包機や自動搬出機、新型測色機と自動調液機を導入し、作業員の負荷軽減や経験の浅い方でも働きやすい環境を作るように取り組んでいます。
我が社ではお客様がSDGsに取り組むための素材や商品の提供、提案をしていくことを目指し、日々、技術開発、商品開発を進めています。
SDGsの取り組みは経営者がリーダーシップを取るべき!
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
チームのようなものはありません。それぞれの部門で市場ニーズをくみ取った結果として進めています。そのうえで、持続可能な目標を目指すためには、経営者が各部の取り組みを継続するよう言い続けないと実現できないと思います。現場だけでは、どうしても日々の仕事に追われて持続していくのが難しいように思います。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
従業員に対しては各自が取り組んでみようと思えるところまで話をするようにしています。
また、展示会や、商談時に話ができるようツール(Youtube等)を作っています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
変化に対応して新しいことにチャレンジするのが難しいです。変化については私から各事業部に、現状と今後進む方向性について伝えるようにしていますが、今は新しいことに挑戦して上手くいく可能性は限りなく少ないですし、挑戦して失敗すると責任も追及されるので従業員は新しいことに挑戦しにくい。だから経営者がやるしかない。ただ、それでも従業員からやりたいと言われたら応援するようにしています。
お客様が満足するものを提供することが大切
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
世界一の紡毛企業になること。そして日本でものづくりをしながらマーケットが要求する商品を提供し続ける会社であることを目指します。
新型コロナウイルスの影響で貧富の差は広がり、環境悪化も激しくなり、社会は大きく変化していきます。変化する社会や顧客のニーズ(満足)に応えていける会社でなくてはならないと思っています。そのために自社のノウハウや技術や設備を活用していきたい。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
今、皆が一番困っている事に対して助けてあげること。それが存在意義だと思います。
これからは実際にものづくりをすることに対して困ると思うので、ものづくりの情報を伝えていくべきだと思います。各社では付き合っている範疇でしか分からない。
組合員にとってはどれだけ自社を助けてもらえるかということだし、それなら新規加入も増えると思います。具体的な方法を考えていただければいいと思います。
■取材者あとがき
SDGsに取り組む上で最も重要なのは「人」であり、人を大事にしない会社は生き残れないというメッセージが心に響きました。「人を大切にする経営」という経営理念がSDGsの活動と企業経営に直結しているように感じました。取材協力ありがとうございました。
SDGsに取り組むのが当たり前の風土や文化を目指したい
アメカジ子ども服のセレクトショップからスタートされ、今では多くの直営店を出店されながらオリジナルブランドも多数展開されている株式会社マーキーズさまの取組みについて、代表取締役社長の廣畑正行さま、商品本部・営業本部 本部長の内藤浩次さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2年程前から、サプライヤー様から商談時にSDGsに貢献が出来る副資材や生地のご提供を受ける機会が何度かありました。その当時は、提案のバリエーションが少なかったり、価格が割高だったりした為、興味はあったものの積極的に取り入れるまでには至りませんでした。
2020年7月スタートのプラスチック製買物袋有料化の対応を考え始めた2019年12月頃より、紙製ショッパーへの変更とエコバッグの開発がきっかけで、お客様に直接お渡しして使っていただくものとして、環境負荷に対して考えるようになった事がきっかけです。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか
私たちは子ども服の小売業です。「子ども達とご家族の事を第一に考えたものづくり」を創業時より根底に置き、身に着けた時に安全で安心出来る快適な商品の提供を常に心がけています。サプライヤー様と共に「つくる責任つかう責任」は特に意識して取り組んでいっております。
①COTTON USAの活用
テキスタイル・エクスチェンジの推奨繊維・素材リストであるCOTTON USAの取扱いを増やして、環境と社会に配慮した商品開発を行っています。2020年の年間の取扱いは16型92,000枚で、3年連続でBrand/Retailerのライセンシー資格も取得しております。店頭にPOPを置き、お客様に知っていただくための活動も進めており、今後もCOTTON USAの活用を推進していきます。
②アップサイクル
古着の使用できる部分を裁断・再縫製したり、裁断後の端切れを繋ぎ合わせて、新たな製品を製造(アップサイクル)し販売する取り組みを始めました。アメリカはリサイクルが文化として根付いていて、団体が古着を回収して小売店に集めるサイクルが成立していますので、そこで調達した古着をパキスタンで分別・裁断・縫製し、その商品を販売しています。
古着や裁断屑の廃棄を減らし、資源の有効活用に貢献しています。
③ 日本製の取組み
Made in JAPANである「JIPPON」というオリジナルブランドを展開しています。日本各地(香川県・広島県・奈良県)の縫製工場と提携して継続的に製造していただいた商品を販売しています。特にストレッチパンツは2010年からシリーズ累計販売本数が43万本を超えています。
また、三井住友銀行様からSDGs推進融資企業として、当社のSDGs推進活動に対しての評価もいただきました。併せて、日本経済新聞の三井住友銀行様の全面広告にSDGs推進融資企業として掲載していただきました。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
全てに配慮してリンクして考えなければならないと思っています。ただ、サプライチェーンの最後にいる私たちは各サプライヤー様がいないと成り立ちませんので、経済に軸足を置き、そこから社会、環境とバランスを考えてその時々に最適解を考えていきたいと思っています。
草の根活動で認識を徐々に広げていきます
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
専門部署はありませんので、SDGsに関する情報を集めて、事業や商品にどの様に組み込んでいけるか検討しながら進めています。まずは、ものづくりに携わる商品本部と共に、無理なく出来ることから進めています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
社内の従業員に対しては、SDGsに関して取り組んだ事例を社内メールにて定期的に発信をして共有しています。今後はSDGsに関わった製品を増やしていきますので、商品を通して店舗スタッフには特に周知していきます。コツコツと草の根活動を行ないながら、認知度向上を目指したいと思います。
また、サプライヤー様には、私たちがSDGsの開発目標に取り組んでいく企業として意思表示をしていますので、商談時には必ずご提案や情報をいただく様にしています。
ホームページ上でSDGsを支援している内容を掲載しておりますが、その中でSDGs推進融資の件で三井住友銀行様と相互リンクを貼り、より多くの方に知っていただくよう取り組んでいます。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
私たちがどの目標に対して率先して貢献できるのか。そして具体的に貢献できるのか。事業活動として取り組むにあたり、当社の製品やサービスを無理なく紐付けて、継続して実施することで、このSDGsや社会的課題解決に貢献できるのか等、客観的な判断と評価が難しいと感じています。
今はコロナ禍の不況を脱出することが優先です。しかしSDGsの活動も考えておかなければ生き残れないと考えていますので、生き残り方をどのように考えるかが重要です。
自分ごとと捉えて意識し行動に移す
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
私たちは洋服やファッショングッズを通して、ショッピングの楽しさをご提供し、「洋服と人のチカラでご家族の日常をもっと笑顔にすること」を使命だと考えています。当社に集い、働いているスタッフの誰もが同じ思いを共有しています。より働き甲斐のある会社であり続ける為に、知恵を絞り、社会や環境の変化に適応し続けられる人材の育成に力を注いでいきたいと思っています。
SDGsへの取り組みは、一人一人が自分ごとと捉えて意識し行動に移すことで広がりをみせると思いますので、取り組んでいるのが当たり前の風土や文化になっていることを目指したいと思います。
当社は子ども服を扱っている企業として、これ以上環境を悪化させるわけにはいかない。子ども達の未来のためにやるべきことは何なのか、という事を常に考えていきたいです。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
SDGsに関しては、繊維業界が特に取り組むべき課題や目標を分かりやすく情報発信していただき、世界の潮流や他業種の取り組み等も合わせて共有していただきたいです。
引き続き期待することとしては、組合員企業や業界の発展となる意見等を集約していただき、行政機関へ提言し続けていただく事と、何事も気軽に相談事が出来るよう門戸を広げ続けていただければ幸いです。
■取材者あとがき
子ども達の将来に豊かな社会を残すことを意識して、できることから取り組んでおられる姿勢は、まさに持続可能な社会を形作る礎になると思いますし、SDGsが日常に溢れている時代になった時に、お客様から選ばれる会社であるために必要なことだと感じました。取材協力ありがとうございました。
商号 学校法人ミクニ学園 大阪文化服装学院
代表 理事長 岩﨑一哉
創業 1946年
従業員数 43名(2021年3月現在)
事業内容 ファッション専門学校
■取材日:2021年 3月 10日
「ファッションで社会に貢献する」という経営方針のもと、ファッション業界との連携を重視し、即戦力となる人材を教育・輩出しておられる大阪文化服装学院さまの取組みについて、経営企画室 室長の加藤圭太さま、室長補佐の豊田晃敏さま、スーパーデザイナー学科・ファッションクリエイター学科 学科長の杦山晶さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
以前より、WWDジャパンなどの特別講義などでもコレクション情報の中に各ブランドのSDGsへの姿勢などが多く含まれるようになってきていました。学生がファッションショーやショップを企画するうえでも、SDGsに関する内容が織り込まれることが年々増えてくるなど、意識せずとも、学内でもSDGsへの意識は高まっていました。
ただ、学生や世の中の動向を見るにつけ、何かやらないと、と感じてはいましたが、「何かをしないと」でするべきことなのかと悩みましたが、やらないよりやった方がいいと判断しペーパレスなどに取り組みました。しかし、学校の取組みとしてこれでいいのかという違和感がずっとありました。
そんな中、2020年の卒業作品発表会(卒展)では、学生の企画により、ビジネス系学科が運営するオリジナルショップの会場に、レインボーフラッグをイメージするカーペットをステージ全面に敷き詰めました。学院としても、招待状を「ストーンペーパー」という再生紙に変更、羽毛循環サイクル社会の実現をめざす Green Down Projectに賛同し、アーバンリサーチ様と共同で回収ボックスを卒展の会場に設置するなど、卒展がSDGsについて考えるきっかけとなりました。
この卒展では、海外のファッションスクールから多くのゲストをお招きしたのですが、彼らとの交流、意見交換を通して、当校にとってのSDGsの活動とは、本業である教育活動にしっかり取り組むことだと再認識しました。より教育の質を高めるために本気で取り組んでいかなければならないと決意を新たにしました。
学生はそもそもサスティナビリティへの興味を持っている子が多く、資源を無駄にする事に対する意識は高いです。大人に比べるときっと身近なことなんだと思います。その子たちに触れ、大人も目先の何かではなく、継続的にできる本質的な行動を求められてきたように感じています。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
当校におけるSDGsアクションは、まさに「教育」そのものです。4番「質の高い教育をみんなに」を実現するべく、常に教育の質を高める取り組みを続けています。学内で組織横断型のプロジェクトを組み、直近3年程度で何をすべきか?10年後の社会を想像し、育成すべき人材とは?今のうちから取り組むべきことは何か?について議論しています。「本物のファッション」を創造できるクリエイティブな人材を如何に育てるか、これまでに無い新しい価値を生み出せるクリエイティブな能力をどれだけ身に付けさせるかが、提供すべき教育なのだと思っています。
①DX(デジタルトランスフォーメーション)教育の推進
目下の重点ポイントの一つとして、「DX教育の推進」をテーマに挙げています。DXが急速に進む社会において、ICT等のテクノロジーの活用法を学ぶことは、学生が「自身の人的価値」を高めるためには必須と言えます。そして、これらの人材は、9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」に直結する、SDGsのいくつかの項目で目標達成に大きく寄与します。
2021年4月より、ファッションテック専門スクール「東京ファッションテクノロジーラボ(TFL)」と教育提携し、ファッション専門学校で初となる「3Dモデリスト」を育成する専門コースを新設します。
「3Dモデリスト」とは従来2DのCADでのみ作図されてきたパターンを、PC内で3Dモデルと連動して立体の形状に仕上げる技術を持つクリエイターのことを指します。高度なスキルを持つ「3Dモデリスト」が作成する3DCGは、現物サンプルと遜色ないレベルにまで再現されます。これにより、資源の無駄を省くだけでなく、各企業様における時間や経費の削減にも大きく貢献することになります。
・デザイン案〜量産決定までの検討期間の短縮、スムーズな合意形成
・量産決定までのサンプル経費の削減
・緻密な3DCGデータを活用した先行受注などによる需要予測
・ECサイトでの販売に向けてのささげ経費の削減
といったファッション業界のDX化を推進することが可能となります。
② グローバル戦略
もう一つの当校が挙げている重点ポイントが「グローバル戦略」です。長く愛用される「本物のファッション」を創造するには、クリエイティブな能力が欠かせません。当校は、イタリア・ポリモーダ校をはじめ、世界各国のファッションスクールとの交流を持ち、ファッション教育に関する意見交換を行っています。新しい価値を生み出せる、国際的に通用するクリエイティブな人材を育成する教育のあり方をつねに模索しています。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、厳しい状況下にあるファッション業界において上昇気流を生み出すこと、デジタルスキルを持ったクリエイティブな人材をマーケットに送り出すこと、またそれによりファッション業界に活気を取り戻すことが当校の使命であると考えています。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
「教育」を通じて、環境、社会、経済、すべての発展に貢献できる人材を育成することが重要だと考えています。
新しい価値観を生み出し、企業や社会にインパクトを与えられるような人材を育成することが学校の役割と認識していますので、当校は創立以来「ファッションで社会に貢献する」という経営方針のもと、ファッション業界との連携を重視し、即戦力となる人材を輩出して参りました。ファッション業界の次代を担える人材を育成できるよう、10年先、20年先の社会を予測して、教育をアップデートして参ります。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
教育改革の推進を先導し、取りまとめているのは「経営企画室」となりますが、経営ボード、教育現場を預かる教職員が一丸となって取り組んでいます。教室で学生を指導する各学科の教員一人ひとりが問題提起し、それに対する解決案、また、新たな取り組みについて提案する仕組みを作っています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
教職員向けとしてSDGsアクションに限ったことではありませんが、例えば、教育改革を進めるための学内横断型のプロジェクトでは、全教職員が参加するワークショップなどを年間を通して何度も行い、現状の課題や未来に向けて取り組むべき事項について、年齢やキャリアを超えて対等に話し合う機会を作っています。そこからSDGsに関わるアイデアも数多く出ています。
学生向けの取組みとして外部講師による特別講義を開催したり、SDGsをテーマにしたコンテストやイベントに積極的に参加しています。例えば乳がんの啓蒙活動とサスティナブルを意識したセレクトショップのイベント、IZA PINK CHRISTMASにスタイリストとして参加したり、世界中から有力なファッションスクールが参加する「GRADUATE FASHION WEEK」(ロンドン)内のSDGs観点のコンテストへの参加を予定しています。
アーバンリサーチ様の再生ダウンをテーマとしたコンテストでは、2020年度に最優秀賞を、2021年度は特別賞を獲得し、商品化していただくことになりました。
また、外部に向けて、当校が開催するファッションショーでは、できるだけ様々な人種のモデルに登場いただくなど、ダイバーシティーを意識しています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
学生指導において、SDGsとの向き合い方を示すことに難しさを感じています。作品(商品)を作る際の姿勢として、つねにSDGsを意識しておくことが基本です。ただ、時に、SDGsをトレンドとしてとらえてしまったり、学生が表現したいことを実現するうえで、環境負荷の高い素材を使用する場合もあります。基本的に、学生時代は自由な発想でのクリエイティビティを鍛えるための時間です。ファッションを生業とする限り、人をワクワクさせるプロダクトやサービスを創造できなければならないわけですが、その本分を見失うこともあります。前提とすべきSDGsへの姿勢、新しい価値を創造するクリエイション、双方をしっかり意識したモノづくりを指導する、このあたりのバランスは難しいところです。
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
2030年には、グローバル化が進み、テクノロジーがさらなる発展を遂げ、世界は、今以上にボーダレスになっていきます。その担い手になれるような学生を数多く育てること、国境や人種、ジェンダーなど、ボーダレスな世界で新たな価値を創造できる人材を育成していきたい。そのためには「国際感覚」「デジタルスキル」は必須といえます。活躍する分野さえ「ファッション業界」に拘らず、ボーダレスに飛び越えてほしい。引いては、それが、日本のアパレルの発展につながると信じています。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
当校の教育活動に対し、企業、業界の皆様からの評価、ご意見はつねにお伺いしたいと考えています。当校では、「教育課程編成委員会」や「学校関係者評価委員会」を設置し、学外の方に評価いただき、教育内容をアップデートしています。こちらには、KanFAやKanFA会員企業様にもご出席いただいており、教育活動に対する疑問、ご意見、またご要望を直接頂戴し、教育に反映させています。
専門学校は、業界への入口です。これからファッション業界を目指す「Z世代」の若者が魅力を感じられるような業界にすべく、企業、学校関係者が一丸となって努力しなければならないと思っています。企業の皆さまにも、当校の教育内容に関心をもっていただき、教育の在り方、次代を担う人材のあるべき姿についてディスカッションできるよう、そのパイプ役として、産学交流の場を数多く創出していただければありがたく思います。
■取材者あとがき
SDGsの活動方針について悩まれ、自らの本業を見つめ直した結果、4番「質の高い教育をみんなに」を目標に据え、経営方針「ファッションで社会に貢献する」を実現できる人材の育成を最優先課題として取り組まれておられます。本業を通じて目標達成に取り組まれている姿勢はまさにSDGsの活動趣旨に合致していると感じました。取材協力ありがとうございました。
商号 伊藤忠商事株式会社
代表 代表取締役会長CEO 岡藤 正広
創業年 1858年
従業員数 4,319名
事業内容 繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の
各分野において、国内、輸出入および三国間取引を行うほか、国内外に
おける事業投資など、幅広いビジネスを展開
■取材日:2021年 2月 22日
繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において幅広いビジネスをグローバルに展開されている総合商社の伊藤忠商事株式会社さまの取組みについて、総本社 サステナビリティ推進部の黛桂子さま、大橋結実子さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
伊藤忠商事は、近江商人である伊藤忠兵衛が麻の布の行商を始めた1858年を創業の年としています。この創業者伊藤忠兵衛をはじめとする近江商人が経営哲学としていた「三方よし」の理念を、創業来の精神として、今も大切に受け継いでおり、2020年4月より改めて基本理念に制定しました。この三方よしの考え方は、SDGsの理念にも通ずると言え、そのような意味では、創業来、常に三方よしビジネスを展開してきているのだ、と自負しています。
また、2021~2023年の中期経営計画の基本方針において「SDGs」への貢献・取組強化を掲げており、更にSDGsに資するビジネス展開を加速させていきます。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
伊藤忠商事は、サステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)を、2013年に特定しました。以降、国際社会の動向やステークホルダーからの期待等を踏まえて適宜見直しを実施し、2015年のSDGs、パリ協定の採択等の社会状況を捉え、2018年度の中期経営計画を機に、新たに7つの重要課題を特定しました。(以下のスクリュー図ご参照)
社会の今と未来に責任を果たす伊藤忠商事のサステナビリティへの取組みは、SDGsをマテリアリティに取り込むことにより、SDGsの達成にも寄与する仕組みとなりました。
① 繊維カンパニー「環境配慮型素材のブランディング」
サステナブル素材のブランディングを進めながら、繊維製品をグローバルに展開しています。
■「RENU (レニュー)」プロジェクト
2019年に始動した「RENU」プロジェクトでは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現と大量廃棄問題の解決を目指しています。「RENU」のリサイクルポリエステルの原材料は端切れや残反、使用済みの衣類で、それらを化学的に分解して粗原料まで戻すことで、品質や機能を損ねることなく新しい繊維に再生しています。
繊維業界の廃棄物を繊維素材にリサイクルして循環させるプロジェクトです。
■「Kuura(クウラ)」
2021年より、フィンランド森林業界大手Metsaグループと共同で開発した独自製法によるセルロースファイバー「Kuura」の展開を開始しました。Metsaグループが独自に開発した新特殊溶剤の使用および、製造工程における再生可能エネルギーの活用等により環境負荷を大幅に低減。
また、フィンランド森林業界のリーディングカンパニーであるMetsaグループとタッグを組むことで、木材資源から繊維製品という広範囲にわたるトレーサビリティを確立するとともに、安定的な原材料調達も実現しています。
②エネルギー・化学品カンパニー「ナイロン循環リサイクルビジネスの推進」
サステナブル素材のブランディングを進めながら、繊維製品をグローバルに展開しています。
世界最大のリサイクルナイロンブランド「ECONYLⓇ(エコニール)」を展開するイタリアAquafil社とナイロン循環リサイクルに関するビジネスの推進、拡大に向けて業務提携を締結しました。
本提携を契機にナイロン廃棄物の回収スキームの構築、全世界にネットワークを張り巡らせ、廃漁網、廃カーペット、衣服などの最終製品を効率よく回収するスキームの構築を目指します。また、リサイクルナイロンを原料としたファッション及びプラスチック関連(包装資材等)の最終製品の開発、販売を各業界のブランドオーナー、Aquafil社と連携し本格的に取り組んで参ります。
さらに、既存の販売チェーンからの廃棄用ナイロンの回収スキームを構築する予定で、Aquafil社への原料安定供給の観点からも協業を進めて参ります。廃棄物の回収から最終製品の販売までをAquafil社と共同で取り組むことにより、付加価値の高いナイロン循環リサイクルの拡大を目指します。
③三方よしビジネス展
2020年7月1日から同年8月7日までの間、地域貢献の拠点伊藤忠青山アートスクエアにて、当社の循環型ビジネスを紹介する「伊藤忠の三方よしビジネス展」を開催しました。
廃棄物発電の仕組み、ワイン製造後のブドウの種を全部使い切るフランス産グレープシードオイルなど、繊維、機械、金属、エネルギー・化学品、食品、住生活、情報・金融、第8の各カンパニーがそれぞれのサービスや商品を展示し、持続可能な資源利用に資するビジネスを実物やビジュアルで紹介しました。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
世界共通の課題は引き続き気候変動であり、自社の削減取り組みや環境に資するビジネスを今後も積極的に展開することで、世の中への貢献ができるのではないかと考えています。
一方新型コロナウィルスの影響で、人権も重要度が増していると認識しています。
総合商社は取り扱う品目が多種多様で、あらゆるサプライチェーンに介在しており、その影響力は大きく、セクターを跨いでサプライヤーに「責任ある調達」を働きかけられる、重要な役割と責任を担っております。
その範囲は、自社の従業員だけでなく、調達先や取引先の従業員、消費者、また、それぞれが関わる地域社会まで広く及んでいるということを改めて認識し、対応していかなければと感じております。
そのため、環境、社会のどちらにおいても商社に期待されることや果たせる使命は無数にあり、重要なのは、いずれも本業を通じて経済の要素を織り交ぜながら持続可能にしていくことであると思います。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
全社サステナビリティ推進施策においてはサステナビリティ推進部が企画・立案しており、実行は各組織に選任されておりますESG責任者及び推進担当者が担っております。
各組織毎に選任いただくことで、組織の事業や専門領域に応じた推進活動を実現することができております。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
特定されたマテリアリティを着実に推進するため、事業分野・実業ごとの重要なサステナビリティに関する課題とリスク・機会をカンパニー、組織ごとに抽出し、中長期目標となる「サステナビリティアクションプラン」を策定、HP上で公開しており、毎年進捗をレビューしております。
そのように実ビジネスの中で目標を立てていただき、進捗管理する仕組みがSDGsビジネスを生み出す土台になっています。
サスティナビリティアクションプラン
https://www.itochu.co.jp/ja/csr/itochu/activity/actionplan/index.html
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
総合商社単体だけでなく、グループ全体へのESG推進が期待されておりますが、ビジネス領域が多岐に亘り、取り組みや考え方も事業会社毎に様々な状況です。その点を尊重しながら、偏りや不整合が生じないように考慮しつつ、推進施策を考慮することや、全体のデータの集計なども収集範囲が多くなるため、サステナビリティ推進部だけでは対応が難しいこともあり、ESG責任者・推進担当の協力を得ながら推進しています。
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
当社は、先般中期経営計画で発表した「SDGs」への貢献・取組強化の経営方針の下、持続可能な社会を目指し、全てのステークホルダーに貢献する「三方よし資本主義」の具現に努めてまいります。
また、2030年はSDGsのゴールの年でもあり、総合商社の特性を最大限に活かし、多岐に亘る商品・サービスの提供および新規ビジネスの創出において社会的な責任を果たしながら、SDGs推進に取組み、新時代の持続的成長企業として挑戦し続けます。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
サステナビリティへの取り組みには、さまざまなステークホルダーとのパートナーシップが欠かせません。これからも、SDGs関連の情報発信を継続していただくことで、企業同士の連携をさらに促進し、サステナビリティ側面で新たな価値創造につながる取組の拡大に貢献していただくことを期待しています。
■取材者あとがき
近江商人の「三方よし」の考え方はSDGsの理念にも通じると考え、ビジネスの中に「三方よし」の精神を取り込んでおられます。まさに創業者の「三方よし」の精神がしっかりと受け継がれていることを体感しました。多種多様な分野の事業に取り組まれておられますが、その根本は決して変わっていないことに感銘を受けました。取材協力ありがとうございました。
■会社概要
商号 株式会社東方貿易商行
代表 王 永發
創業年 1968年(昭和43年)10月
従業員数 18名
事業内容 婦人ニット、カットソー製造卸販売
■取材日:2021年 3月 17日
創業以来一貫して天然素材でのものづくりにこだわりを持ち、中国無錫の自社工場の機動力を活かし、商品を提案されている株式会社東方貿易商行さまの取組みについて、代表取締役社長の王永發さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
SDGsについては言葉としては良く耳にしていましたが、2年程前に大手百貨店がすべての取引先の経営者を集めSDGsの説明会を開催され、そこに参加したことが大きなきっかけとなりました。SDGsの重要性と今後の取組の方向性を聞き、意識がさらに高まりました。こちらの百貨店ではSDGsへの取組を進めており、SDGsを取り入れた企画への協力依頼などもあり、提案を行っています。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
今回のインタビューをきっかけに改めて、当社のSDGsの取組を見直してみました。
まず、当社では「天然素材」を1つのキーワードとして経営をし、天然素材に特化した商品を作っています。「Naturale」(イタリア語で天然素材の意)というブランドのロゴは太陽と大地、その間に育まれた豊かな自然を意識したデザインにしています。これもSDGsに通じるところかと思います。
当社は元々シルク商品が得意であり、その流れから、ウール、コットン、麻と天然素材の取り扱いを広げてきました。結果論かもしれませんが天然繊維を活用することでSDGsに繋がるものづくりを行っています。
また、ニット製品のものづくりの工程上、どうしても残糸が沢山でてしまいます。この糸を上手く活用することは出来ないかと考え、様々な色の商品があっても面白いのではないかと発想し、ストールやアームウォーマーなどファッション小物を作りました。
1枚からでも製造できる自社生産の強みを活かした多色展開の商品はお客様に好評を頂きました。捨てるのではなく、寝かせるのでもなく資源を有効活用できる企画をお客様に提案しています。
また、商品を作るにあたってはデザインを意識し過ぎたり、拘りが強いあまり無駄になる、環境に負荷をかける事もあると感じています。担当者には許容範囲を意識するようにお願いしています。
当社では経営理念として「働く仲間を豊かに、まわりを笑顔に、社会を大切に」を掲げています。まずは精神的にも経済的にも豊かになる事を目指し、経済と暮らしのバランスを大切にしています。当社では社員に子供さんの行事などは最優先することを進めており、家庭を大切に出来る働き方を推奨しています。また、東京支店では完全フレックスタイムを導入し、働きやすい環境を実現しています。
女性の活躍推進はもちろん、学ぶ意欲のある社員を応援する取組も行っています。セミナーの受講、資格取得、読書の機会を社員には進めています。費用補助もしており経営指針書に明記しています。
■環境、社会、経済の中で重点と考えているのは?
全てが絡み合っているのでこれに重点を置いているという事は難しい。経済活動は必要であり、また社会活動も両立したい。環境も大切であり、どうバランスを取るかが大事なのではないかと思っています。
SDGsは誰かが考えるのではなく、全員で考える
■どの部署がSDGを推進していますか?
中小企業では社長が先頭に立ち旗を振り、全社員に考えてもらう、意識してもらうことが大切だと思っています。1つの部署ではなく全員で考える事が重要です。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
社内では勉強会を開催し、意識を高めています。当社では改善提案を社員に義務付け改善に取組んでいますが、今後はSDGsをテーマとした提案を義務づける事も良いかと思っています。本日のインタビューを機会に私自身、様々な案が浮かんでいます。
社外では工場にも残糸の活用がSDGsに繋がる取組である事を共有し、今後の取組のきっかけにしていきたいと思っています。
■活動の推進が難しいと感ありますか?
SDGsを考えるきっかけになったのは百貨店の勉強会でしたが、一方で百貨店などの衣料品売り場では夕方5時以降お客様は殆どいない状況の中、営業をされています。閉店までの数時間はエネルギーや販売員さんの働き方の観点からは無駄な部分が多いのではないかと感じています。経済活動とのバランスがとても難しいのですが、日本の衣料品売り場の営業時間は必要に応じて改善が必要ではないかと思っています。
経済活動優先から意識を変え、働き方を見直す事は大切ですが、なかなか進みません。
人類にとってSDGsは永遠のテーマ
皆が意識し、取り組む事がスタート
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
17の項目は非常にハードルが高く、あと10年で本当にゴール出来るのでしょうか。人類にとってSDGsは永遠のテーマではないでしょうか。2030年までに人類全てがSDGsを“知る”“意識する”事がゴールであり、皆が意識し、皆が取り組み始める2030年が本当のスタートになるのではないでしょうか。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
今回の取材は改めてSDGsを考えるきっかけになり、当社の取組みを見直すことで多くの気づきがありました。SDGsは我が社とは関係がないと思われている企業さまの中にも、案外、既に取組んでいる事があるのではないかと思います。
取組み事例を紹介する事は業界各社の気づきに繋がるのではないでしょうか。情報を発信し、気づいてもらう事が大切です。まずSDGsを意識、理解してもらう事がKanFAの大きな役割かと思います。
■取材者あとがき
「何のために働くのか」を考えたとき、家族が幸せになり、働く仲間とその家族も笑顔になるそんな経営を目指そうと思われた王社長。経営もSDGsもまずは身近な所から、出来ることから取り組み、その先にご自身も社員も、社会も笑顔になる「三方よし」を実現して欲しいですね。取材協力ありがとうございました。
意識することで社内の雰囲気も変わり、原価率も下がる
悪い事はひとつもない
創業当時から赤ちゃんのことを第一に考え、安心・安全・快適を追求し、生地から染色・プリント・縫製・仕上げ・検品に至るまで全てを日本国内で一貫して生産されている岩下株式会社さまの取組みについて、代表取締役の岩下眞彰さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
SDGsというキーワードということであれば、2019年12月に開催されたKanFA理事会後の講演会で帝人フロンティア株式会社 日光社長(当時)の取組事例のお話を聞いて、SDGsに対して意識していかなければならないと感じたのがきっかけです。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
① 化学繊維より環境に優しく再利用も可能なコットン100%
コットンに合繊を混ぜるとリサイクルしづらく、お客様のご要望もあり、できる限りコットン100%の商品を企画しています。
② 生地ロス削減を考えた生地作り
肌着用の生地は和歌山で編み立てていますが、ニッターさんにも協力していただき、当社での裁断時の廃棄生地を極力削減するために生地巾の設定等、効率的に編み機を調整してもらっています。また、ニッターさんも編み立てが終了した際に余った糸は廃棄していましたが、糸を廃棄しなくてすむように編み立て数量の調整も行っています。
③ 運送方法の変更と主力の染色工場を熊本県に拘り、移動距離を短くしてCO2削減
生地の輸送方法をトラックからJR貨物に変えました。弊社の縫製工場は熊本県にあるのですが、編み立てた生地を和歌山県から熊本県の染色工場までJR貨物で運んでいます。出来る限りCO2の排出量を減らすために、コンテナが満杯になるタイミングを計算して運んでいます。CO2の排出量はトラックと比較して約1/13の量に削減可能です。(JR貨物のホームページ記載)
④ 働きやすい環境づくり
工場は女性が多いので「生地が重いという意見がでれば軽くなるよう改良する」、また「生地を運ぶのが大変という意見がでれば延反機までの移動をサポートする」といった仕組み作りを行い、働きやすい環境づくりを目指しています。
⑤ 歩留り改善によるロス削減
裁断をする際にCAD・CAMを活用し、型紙の配置を工夫することで、廃棄する生地(裁断屑)が極力少なくなるようにしています。また、営業にもなるべく同じ生地で提案するように指示しロス削減に努めています。歩留りを良くして作ったものを的確に使っていくことが大事だと思います。
⑥ 裁断後の処分生地のリサイクルを徹底
裁断屑を再利用できる粉砕業者と取り組み、通常は廃棄される裁断屑を手袋等の素材にリサイクルしています。裁断屑を運搬する際の段ボールも勿体ないので、通いの袋でやりとりをしています。これには運送業者さまにも協力を頂きました。
⑦ 生産時に発生する紙材料の再利用に努力
工場では紙や梱包材など燃えるゴミも多く、燃やさずに再利用する取り組みを5年ほど前から始めました。今も継続しています。当時、廃棄していた量は毎日軽トラック1.5台分ほどもありましたが、今は燃やさないように努力をしています。
そういった活動から従業員の意識も変わってきました。当初はゴミ袋に入れるために廃棄物を折ったり小さくしたりする作業をしていましたが、無駄な事をしないように皆で考えようと繰り返し伝えていった結果、皆が自分たちで考えて無駄を無くすよう取り組みだしました。今は無駄な作業も減り、非常に喜んでくれています。
製品も汚れないように紙で梱包していましたが、梱包せずに折りたたみコンテナを活用して持ち運ぶようにしたところ、紙を使わずに済むことで作業効率が向上したと喜んでいます。
⑧ 女性の活躍できる職場づくり
ベビー用品を扱う企業として、従業員に対しても妊婦さんやママさんに、より良い環境で働いていただけるよう産休・育休を取得しやすくしています。また、産休からの復帰後も十分活躍できる場所を用意して対応しています。
そのため、当社は女性比率が約80%と高く、女性が活躍できる企業です。
■環境、社会、経済の中での重点と考えているのは?
環境が重点と考えています。洗浄時に使用する水を削減する、排水時に不純物を流さない、CO2を削減する、等に意識を高めて取り組んでいきたいと考えています。
普段の業務の中から一生懸命考えることが大事
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
SDGsアワードでジオン商事様が勉強会ということを強調されておられました。やはり知識が無いと継続できないと思います。どのような形であっても皆を巻き込むことは重要だという思いから、工場も含め、全部署から代表者に参加してもらう勉強会を開催しようと考えています。その考え方や活動を世の中に発信していくために、ブランド事業部が中心となって取り組んでもらいたいと思っています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
まずは従業員の知識向上から始めたいと思います。そのために、各部署の代表者が参加する勉強会を開催し、その後、各部署の意識を高めていくような取り組みを進めていきます。
知識が無いと得意先も巻き込めません。まずは自分たちが知識を身に付けた上で、取引先の知識に合わせた形の提案をしていかないと何も変わらないと思います。
ですが、私たちもまだまだです。自分たちが理解できていないと社外の人には間違いなく伝わりませんので、自分たちが主体性を持って話せるように取り組んでいきます。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
今は活動を推進している事を伝えれば問題ありませんが、これからはそれを数値化して伝えていくことが必要だと考えています。ただ、数値化する方法は難しいため、それが今後の課題であると認識しています。
また、もう一つの課題は、オーガニックコットンの活用方法です。オーガニックコットンの生産量は非常に少なく、価格が高騰しています。オーガニックコットンは素晴らしい取り組みの中で生産された素材だと思います。 ただ、残念ながら日本の市場ではオーガニックコットンは肌に優しく体に良い、だから価格が高い、というイメージが先行していると思います。そのため、オーガニックコットンに拘らず、フェアトレードの活用や環境に優しい糸を使っていくことも重要であると考えています。
フェアトレードを意識したものづくりに拘りたい
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
コットンを繰り返し使う、所謂リサイクルコットンの仕組み作りを目指したいです。それと無農薬による素材の活用を目指していきたいと考えています。ただ、2030年以降の環境変化も見据えて、オーガニック以外の取り組みも必要になってくると思いますので、今から模索していきたいです。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
KanFAでも見える化や共有化が重要ということで事業を推進されていますが、今まで以上に共有できる機会を作っていただきたいです。スポーツ界で活躍されている方々も今までは公表してこなかった練習方法を配信する等、見える化を推進したことで、スポーツ界全体のレベルアップに貢献している事例もあります。情報を取られるということよりも一緒に磨いていくということを意識して、私たちが気付くことのできる環境を作っていただきたいと思います。
また、多くの方に組合活動に参加していただくためにも、新しい目線で情報を発信していただくことも重要だと思います。
■取材者あとがき
得意先だけではなく運送会社や粉砕業者をも巻き込んで、取り組みの主旨を説明され理解してもらいながら一緒になって取り組まれている姿勢は、「誰ひとり取り残さない」というSDGsの理念そのものを体現されていると感銘を受けました。無駄なことは無くしていくという岩下社長の考え方は、持続可能な経営に直結していると感じました。取材協力ありがとうございました。
豊富なアイデアとワクワクする企画提案で、取引先のSDGs活動をサポート
レディースウエアをはじめメンズウエアやゴルフウエア、様々なグッズなどの企画を多くのアパレル企業に提案されている有限会社ユープランニングさまの取組みについて、代表取締役の平有子さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
以前から、海岸で見かける大量のゴミや海洋プラスチックの問題などに関心があったのですが、2019年から福井産地の繊維企業の商品開発・販路開拓をお手伝いすることになり、「サステナブル」をテーマにコンセプトワークやサンプル作りを進めるうちに、一気にSDGsへの意識が高まってきました。
その頃からネットや雑誌でもたびたびSDGsが取り上げられるようになった事も関心を持つきっかけになったと思います。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
企画を提案するうえで「サステナビリティ」を意識して、ECOやリサイクルの素材を盛り込んだり、すでに取り組まれている他社や他業種の事例を紹介したりしています。
最近は取引先からSDGsに関連した企画アイデア・製品のご相談が増えており、素材・デザイン・生産工程、展開アイデアなど様々な面においてご提案をしています。
例えば、ゴルフ場では浴室などに無料のビニール袋を常備していますが、コンビニのレジ袋と同様に削減・廃止を目指して、そのまま洗濯出来るブランドロゴ入りのランドリーバッグを提案して商品化して頂きました。その後ビニール袋を置かないゴルフ場が増えてきています。
また、当社のグラフィック機能を活かして婦人服ショップにはブランド名入りのエコバックを、釣り具メーカーには海洋汚染問題を表現したTシャツを提案して、それぞれの取引先のSDGs活動をサポートしています。
当社のオリジナル商品では、サンプル生地の残りや量産後の残反等を利用してメンズパンツを生産し、リーズナブルな価格で小売店に卸しています。
これは省資源化、素材の廃棄削減への取組みですが、デザイン型数を絞ることでパターン作業の効率化を図り、縫製工場の閑散期に生産し、継続供給することで顧客の定着化に繋がっています。
■環境、社会、経済の中での重点バランスは?
全てがバランス良く運営されるのが望ましいのでしょうが、ファッションの企画会社としてはまず環境に重点を置いた商品企画や顧客サービスの提案を通じて、社会と経済の安定した発展に貢献したいと考えています。
弊社はコロナ禍になるずっと以前からテレワークを導入していました。その関係で総務省主催のテレワーク推進事業での講師を依頼されることもあり、関西ファッション連合でも講演させて頂きました。
導入のきっかけは社員の結婚、出産、育児、そして介護など、そのライフステージに合わせて働きやすい環境を整えるためでした。「働きがい」というよりも、人それぞれの「生きがい」を大切にするための環境づくりを考え、決められた時間や場所で拘束するのではなく、自由な時間軸で出来るだけノンストレスで働くことで仕事とプライベートを両立させ、結果的に仕事の質の向上に繋がっています。
以前は取引先にテレワークでの商談を提案してもリアルでの要望が大半だったのが、今回のコロナ禍で外出自粛・三密回避などに対応するため一気にテレワーク化が進み、無料のサービスが現れるなどして更に加速しました。その便利さや新しい働き方でのコスト削減効果が認知されたことも大きかったですね。ずいぶん仕事がやりやすくなりました。
ただ、早くから取り組んでいる弊社では、テレワークの良い点、悪い点も熟知しており、仕事の内容に応じてリアルとテレワークでの最適化を図っています。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
専門の部署はありません。福井産地のプロジェクトを担当していた4名のスタッフがSDGsに取り組んでいたことで、他の社員にも波及し全社的に理解が深まっていきました。
今では全社員が日々の業務の中で意識して取り組んでいます。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
社内では社員間でSDGsに関して取り組んだ事例を共有して、取引先のご要望に柔軟に対応できるようにしています。
例えばパッケージの縮小化やリサイクル製品企画の提案、エコバック付きウエア、予備ボタンの廃止、ロックスから綿糸への変更、残糸・残反の有効活用などすぐに取り組める事例などです。特に予備ボタンの廃止は全アパレルがすぐに取り組めて、それに付随する資材も含めて廃棄削減・省資源化に直結します。
取引先には、今後ブランド価値の向上と持続的な発展にはSDGsへの取組みが必須であることを、他社の事例もご説明しながら、それぞれの企業・ブランドに合ったSDGsに関連した商品企画や販促アイデアを提案し続けていきます。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
提案段階では興味を持たれてもECO素材はコスト面でハードルが高く、売れるかどうか最終的には取引先の判断になるので、時には企画に盛り込めない事もあります。
取引先の企業理念や活動指針にSDGsが組み込まれていないと、商品化されても販売状況次第ですぐに立ち消えてしまうので、企画から売場まで一貫してSDGsを謳う流れを作ることが難しいと感じることもあります。
今まで以上にSDGsへの取組み事例に関して情報収集し、今後のマーケットの方向性と業界内外の事例を紹介しながら、ブランドの持続可能な発展にはSDGsの視点が欠かせないことを粘り強く提案していきたいと思います。
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
現在、プラスチックの環境汚染問題が、海洋・陸上ともに益々深刻になっています。
ファッション業界としてプラスチック製の製品袋やカバー、副資材の使用を止めるなど、積極的に脱プラスチックの提案を強めていきます。
また同様に、革や毛皮にするためだけに大量の動物が飼育されていることも問題だと考えています。新型コロナのような感染症が広がると毎回大量に殺処分されることに関して、率直な疑問と生き物の命に対する責任を考えさせられます。
どちらの問題にしても、代替えの素材の提案やデザインアイデアでの解決策を提案することで、将来に向けてより良い地球環境を残すため、取引先と共に問題の解決に取組んで行こうと思います。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
リアルな展示会の開催が困難な状況で、オンライン展示会を実施検討するアパレルが増えており、今後はリアルとオンラインの併催が当たり前になってくると考えられます。
組合にはSDGsの推進とともに、組合員の皆様に今後の企業発展のカギになるDXに関する情報の発信や、事例紹介などを積極的に進めて頂きたいと思います。
当社も商品企画だけでなく、オンライン展示会やそれに関連した販促ツール、動画制作など様々な提案をしていますので、ご協力させて頂ければ幸いです。
■取材者あとがき
平社長が就職されて最初にされた仕事は、ニット工場で沢山出る残糸を使って製品を作ることでした。その経験から資源を無駄にせず有効に使い切ることの大切さを学ばれたそうです。これからも社員の働く環境を常に整え、一人一人の能力を最大限に引き出して、ワクワクする提案でSDGsを推進されることと思います。取材協力ありがとうございました。
商号 株式会社ナカハシ
代表 代表取締役 中橋 晋作
創業 1967年7月1日
設立 1976年9月30日
従業員数 19名 ※2021年7月現在
事業内容 ハンドバッグ製造・卸、オリジナルバッグブランドの製造・販売
■取材日:2021年8月4日
「自分にしかできない“ありそうでなかった”バッグを世に出そう」という思いで立ち上げ、ものづくりの殆どの工程を内製化しているブランド「kawa-kawa」を展開している株式会社ナカハシさまの取組みについて、代表取締役の中橋晋作さま、営業部部長の大田夕樹さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
2年ほど前からSDGsの流れを肌で感じるようになりましたが、当初はあまり実感もなく、いわゆる「エコロジー」的要素として認識しておりましたが、日々のニュースや日常からも「サスティナブル」の言葉や行動を垣間見る機会が増え、ビジネスにおいても大きな流れを感じるようになりました。
ただ、当時は自社がSDGsに貢献できるとは思っていなかったのですが、SDGsの認識や理解がないと市場から退場させられるのではないかという恐怖感はありました。そしてコロナ禍になり考える時間も増える中で「もったいない」という言葉が引っかかりました。子供の頃からもったいないという教育の中で育ったこともあり、そういった身近なことが取り組むきっかけになりました。
ヨーロッパのメゾンが毛皮や牛皮の不使用を打ち出してきています。主流にはならないにしても世の中の流れだと感じています。ただ当社は皮革製品が約80%を占めている、革で育ったような会社ですので、それを合成皮革等に置き換えるのは難しい。そんな中、できることを考えた時に、「もったいない」という言葉とおり、リユースやリサイクルに焦点を当てて取り組みを始めています。
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
1年ほど前から「当社ができるSDGsとは?」を直視し、製造メーカーとしての武器を活かせるよう、2021年4月1日に新ブランド「kawa-Re(カワーレ)」を立ち上げました。
kawa-Reではお客様から不要になった当社製品「オリジナルブランド:kawa-kawa(カワカワ)」を買取り、自社工場にて再生・修復作業を施し、生まれ変わった製品として再度、市場に流通させる仕組みを構築しました。
環境への取り組みは徐々に始めていけばいいと思っていましたが、始めてみるとお客様の反応が思っていた以上によく、お客様から「待ってました」と言われることも多々あり、我々よりも進んでおられる方も多いという事を感じる機会にもなりました。
お客様から画像付きで使用後の感想や、プレゼントしたらすごく喜んでもらえた等のお声もたくさんいただけるのが非常に嬉しく、モチベーションアップに繋がっています。
我々は顧客が第一で、お客様が喜ばれることを常に考えてものづくりに取り組んでいます。その一環としてSDGsへの取り組みを行なっているという感覚です。
当社では限りある資源の有効活用はもとより、お客様には商品を大切に使う意識を持っていただき、「循環」を目的としたものづくりを製造メーカーの責務として取り組み、「つくる責任、つかう責任」を果たしていきたいと考えています。
意識を持っていただくためにもSNSやホームページでお伝えしておりますが、より大切にしようと思っていただくために、お客様にはこんな場所でこんな人がこういった商品を作っているということを全て見ていただけるよう、取り組んでいきたいと考えております。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
デザイナー(社長)が主だって発信・推進しています。当社ではSDGs活動に特化した部署はなく、社全体で取り組んでいく仕組みを構築していて、企画部、生産部、営業部がそれぞれの役割を担いながら、日々の業務がSDGs活動に繋がるよう意識しています。
活動の発信はSNSを活用したり、雑誌で取り上げられた等の活動をホームページでしっかりと説明するようにしています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
社内の従業員に対しては、実際に業務として再生・修復作業に関わり、限りある資源の有効活用を実感してもらっています。
当社の従業員は全員、修復・再生業務が出来るように、自分で一つの商品を作り上げることに取り組んでもらっています。そうすることで、オールマイティな人材が育ちますし、お客様から買い取った商品をどうやって再生すれば需要が生まれるのか、ここもったいないよね、これまだ使えるよね、といった感覚を日常の業務の中で養っています。
自分たちで工夫して作って売って、お客様の声も届くので、従業員も楽しみながら取り組んでくれています。
また、仕入れ先へは当社が目指すものづくり(ブランドコンセプト)を伝え、素材のリクエストを行うことで、目標の共有を図った上でビジネスにつなげるように取り組んでいます。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
原材料の開発費などコスト面において難しく感じています。リサイクルするとやはりコストが高くなるので手を出しにくい。SDGsは持続可能と言われますが、企業は利益が出ないと継続するのは難しいです。
それと、再生素材を活用しようにも選択できる素材や色数がまだまだ少ないのが現状です。再生素材の流通量が増えていく事で価格も安価になっていくかもしれないですね。
これまでに築いてきたブランドの適正価格もありますが、現市場のニーズが追い付いていないように感じています。
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
ビジネス視点での 「買い手良し」「売り手良し」「世間良し」の「三方良し」を当社のリアル環境に落とし込み、継続発展させることが課題であり目標です。kawa-Reというブランドはもちろん大きくしていきたいですが、利益を優先するよりもkawa-kawaのブランド力を強化するために取り組んでいるのと、利益は寄付に回せたらと考えています。私は海が好きなので海の環境を守ってもらえるような団体に寄付したいです。
目標の数値化は難しいですが、2030年になっても継続して取り組んでいたいと思っています。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
本取り組みも含めて、今後当社が取り組む新プロジェクトを業界内に広く発信するためのお力添えを頂ければありがたいです。自社として発信や広報が得意ではないので、KanFAの中でマッチングを進めていただきたい。マッチングアプリなんかがあると嬉しいです。
また、デベロッパー等でSDGsのイベントが開催されるなら、出展させていただきたい。お洋服を買いに来られたお客様に対して、その場でカバンのお手入れをして差し上げたり、長持ちするための方法をお伝えするような場にもなればと思います。
■取材者あとがき
事業のきっかけである「もったいない」という想いがみんなを巻き込んで、そのままSDGsに繋がっているように感じました。まずは目の前にある自分たちで出来る事から取り組むという姿勢は持続可能性の第一歩であり、多くの企業のお手本になると思いました。取材協力ありがとうございました。
商号 マツオインターナショナル株式会社
代表 代表取締役社長 松尾 憲久
創業 1958年5月15日
設立 1985年12月21日
従業員数 723名 ※2021年6月現在
事業内容 婦人服飾、雑貨、小物製造販売
■取材日:2021年12月7日
我々のミッション及びバリューは、今までに無い商品を
提供することで生活に新鮮な彩りを添えてもらうこと
素材重視、美しいシルエット、意外な組み合わせの提案で、日本の美を前提としたライフスタイルを世界に向けて発信されているマツオインターナショナル株式会社様の取組みについて、執行役員管理本部副本部長の谷口直樹様にお話を伺いました。
■SDGsアクションの取組のきっかけは?
コロナ以前より、百貨店を中心としたアパレルの撤退が相次ぎ、什器資材や人的資材の遺失が見られるようになりました。弊社では、元々社風として「もったいない精神」が受け継がれており、折角の揃えた資材や育った人材がもったいないと、その資源の活用、再生に役立てるように、出店を意識して行うことがきっかけとなりました。
■御社はSDGsに対してどのような事に取り組んでいますか?
商品も重要な資源として意識し、一時社会問題視されていた環境破壊につながるような廃棄も行っていません。自社ショップやイベント等で最後まで売り切る販売や、残反などもノベルティや小物の製作で、無駄をなくし廃棄物を出さない取り組みを永年行っています。
また、全国の百貨店で売り場に出来た空きスペースの有効活用を手掛けており、出店時には新たな什器を製作せず既存のモノを活用することで、資源を無駄遣いせず廃棄の削減に取り組んでいます。
新たな売り場では、直接の販路を持たないメーカーやコロナ禍で販路を失い廃棄処分をせざるを得ないメーカー等に場所を提供し、企業経営の持続化の一助となる事業も始めています。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
専門部署はありませんが、弊社の代表が毎年掲げる「未来創造計画書」で全社員に方針が示されます。この中で「再生」が取り上げられており、再生の5R(リユース・リモデル・リハウス・リメイク・リプロダクション)をコンセプトに、各部署が推進しています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
再生をテーマとした全社的な事業計画の策定を通じ、社員が共有できる取り組みを行っています。弊社がコーディネーターとなって、既存の取引先とリユース企業との取組みの推進や、新たに他社とコラボしたリモデル商品の展開、室内のインテリアや植栽などの提案を通じた空間再生ビジネスへの着手も計画中です。
「未来創造計画書」を基に、様々な業界のプレイヤーとパートナーシップを組み、環境問題をベースにした新たなビジネスへの取り組みを推進しています。
■活動の推進が難しいと感じている点はありますか?
弊社が得意とする、個性的なものづくりに欠かせない素材変化の加工や洗いの工程は、一部で環境への負荷が大きく、水の大量使用やCO2排出などで気候変動に影響を与える行為になる点が難しい。
今後は新技術の開発・導入などで負荷の軽減に取り組みながら、同時にコスト高に影響されない弊社らしい新しい価値観を創造することが必要になると感じています。
「個の力=デザイナーの力」を100%引き出すことで、
世の中にないユニークな商品を提案する
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
第一番目には、企業内でのダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包括性)の実践です。
性別、年令、障害、国籍などにかかわらず、個々の多様性を認め、それぞれの個性を尊重し、能力に応じて適材適所で活躍できる場を提供していきたいと考えています。企業内の誰にでも仕事に参画・貢献するチャンスがあり、平等に機会が与えられることで、これまで以上に社内リソースの有効活用を目指しています。
これはSDGsに謳われている「誰一人取り残さず」にも合致すると思います。
第二番目には、産地と消費者を結びつける販路の確保とIT活用により、精度の高いD2Cを目指しています。
関連会社の新潟見附産地匠の夢の高い技術力をより磨き上げ発展させ、弊社の小売部門であるロン都で直接消費者にお届けしたい。
さらに、小売を強化すべく開発中の施設「about her.」では、館内の空間提供を通じてクリエイターの多様な才能の発掘も行うことで、持続可能な消費と生産のサイクルの構築すること。また、近隣の方が利用することで地域の文化サロン的な施設に育っていければと考えています。
■これから関西ファッション連合に期待することは?
各社に埋もれているリソースや技術を結びつけ、企業同士のパートナーシップが円滑に行われるように、業界のプラットフォーム的な環境を提供されることを期待します。
■取材者あとがき
人も商品もグローバルに、産地から店頭・消費者までを一気に繋ぐ取組みに更に磨きをかけ、異業種とのコラボレーションにも積極的で、次々と出される新しいライフスタイルの提案からユニークなビジネスが生まれています。その事業活動そのものがSDGsの目標に沿っており、個々の個性を尊重したモノづくりと共に企業の強さの理由だと感じました。今後も多様性と包括性の実践を通して、更に魅力ある企業として発展されることを期待しています。
取材協力ありがとうございました。
商号 有限会社トレモア・プランニング
代表 代表取締役 山本 一彦
設立 2003年11月
従業員数 12名 ※2021年12月現在
事業内容 衣料品卸売及び商品企画
■取材日:2021年12月14日
ものづくりに「ファッション」を添加し、新しい価値を届ける
「社会で生活する人々、従業員とその家族、そして取引先に幸せを届ける」をフィロソフィーとして事業を推進されている 有限会社トレモア・プランニングさまの取組みについて、代表取締役の山本一彦さま、デザイナーの上野欣也さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取組のきっかけは?
弊社の得意先様より、全国にある店舗でその地域ごとのSDGs関連商品を取り扱いたいという意向から、パートナーシップを結べる地場産業の工場様の紹介依頼がありました。2019年頃、得意先様と共に地域の繊維製品の生産工場様を訪問したことがきっかけとなりました。
各工場様で生産される商品を見ていると天然素材や天然染料を使っているものが多く、海や陸に配慮したものづくりに触れる機会が多くなったことから意識するようになりました。それに工場様が発展し稼働され続けることが、新しい雇用の創出に繋がると思い、これが当社の考えるSDGsであると実感しました。それまではSDGsという名詞(単語)としてしか認識できていませんでしたが、自分が実際に動いてみたことで初めて動詞化(自分ごと)することができました。
■御社はSDGsに対してどのような事に取り組んでいますか?
時代と共に生産地が海外に変わり、国内の工場様は減少の一途を辿ることとなりました。しかし、現在残っている工場様を色々と訪問させて頂く中で、奈良の蚊帳織物や、奄美大島の泥染め等々、陸に優しい天然素材や海に優しい染色技術など、伝統的な製法技術と商品を目の当たりにしました。資本力や価格力で流通に乗らず、市場に知られていない技術や商品が沢山埋もれている事を知りました。
世の中に知られていないSDGsのテーマに沿う商品や技術、継承する文化は多くあります。これらの商品や技術を弊社が結び役となり、お互いの工場様がパートナーとなって新たな商品を作り出すことで新しい価値が生まれ、それらの地場産業の次世代への継承が出来ると考えました。
各工場様とも事業を継続していきたいと考えておられますが、一社での活動だとかなり厳しく、廃業する工場様も増えていくと思います。こんな商品や技術があると提案することで、新しい商品が生まれ販路も広がります。事業も継続できる可能性があります。そういった事も常に意識しながら工場様を訪問させていただいております。
その考えのもと、共同企画での生産商品やオリジナル商品等を集めて、SDGsセレクトSHOPを心斎橋PARCOでポップアップ出店しました。今後、このポップアップSHOPを自社ショップとして展開していく予定です。そこに各産地の商品を出品いただくことで、サスティナブルショップという位置付けとして取り組んでいきたいと考えております。ECも立ち上げることで、より多くの産地の方とも一緒に取り組んでいただける可能性が広がるので、より深く検討したいと思います。
SDGsは最初から100%を目指すのは難しい
■現在の取り組みはどのテーマに該当しますか?
できれば17テーマ全てに取り組みたいと思いますが、出来る部分から取り組んでいきます。検討しているのが、障がい者支援施設で、就労されている方々向けの住居の提供等、障がい者の方への就労環境の支援で、「1 貧困をなくそう」にも繋がるのではと、関係各所とも検討を進めております。
また、染色せず素材本来の天然素材の蚊帳の生地を企画していますが、それを介護現場でも活用できる商品を生産することで、「3 全ての人に健康と福祉を」にも貢献できると考えています。
国産の商品は価格が高くなりますが、海外に無いような素晴らしい商品ばかり。そのPRのお手伝いに弊社が間に入り、各工場様の商品の紹介や他産地同士の工場様を、マッチングさせて新しい商品を企画し、得意先様の店頭で販売するという事を始めております。これは「17 パートナーシップで目標を達成しよう」に繋がっています。
自社でも何かに取り組まなければと考え、印刷会社様のご協力で実用新案を申請しながら、新しいパッケージ製品を作りました。表は従来通りのビニールですが、裏をビニールから紙に変えました。柄物の下着など、商品が見えるようにしたいが、半分をビニールから紙にすることで、半分がエコになりSDGsに繋がります。いきなり100%エコにすることは難しいですが、できる部分からエコに取り組む、まずはやってみる事が重要と考えました。少しずつでも世の中が変わるきっかけになればと思っています。
■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?
SDGsの提案商品をクラウドファンディングでも出品しましたが、その拡がりにより、多くの地域の方々と、交流させて頂ける場が出来ました。また、様々な方面から、弊社がSDGsセレクトSHOPを始めたことで問い合わせを頂いております。
セレクトSHOPは対外的な面だけではなく、従業員にもSDGsの意識を持ってもらいたいという気持ちもあり実施していますが、若い方々にも浸透するには、もう少し時間が必要かもしれません。
一方、得意先様に関してですが、ある得意先様は意識を強く持って、能動的に活動されています。それと各工場様も、かなり意識が高くなって来られていると感じております。
SDGsは「まずはやってみる」精神が重要
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
SDGsのセミナーへの参加や取引先様からのSDGsのご商談も増えましたが、CSRとCSVの問題、SDGsを動詞で捉えられている企業が少ない事、若い方々をはじめとした社会の方々がSDGsを名詞としてしか捉えていない事、等々、SDGsの社会への浸透実践には、まだまだを感じております。
あと、SDGsは利他の精神が必要ですが、利他vs利益という天秤のつり合わせ方の難しさが課題と感じております。楽観的に捉えて「まずはやってみよう」とはなかなか思っていただけないのが現状です。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
CLOUDYのように、営利とNPOを実践されたらワクワクします。
SHOPではなくても構わないので、アドバルーンのようなKanFAとしてのメッセージや考え方を出していただけるといいのではないでしょうか。
■取材者あとがき
産地の工場のものづくりを世の中に広め、それを軸に新しい価値を生み出し、持続可能であり続けるための取組みには感服しました。伝えるだけではなく自社も何か取り組まなければと実際に活動されているのは、正に動詞化のお手本だと思いました。今後の活動にも期待しております。取材協力ありがとうございました。
商号 モリト株式会社
代表 代表取締役社長 一坪 隆紀
創業 1908年(明治41年)6月1日
設立 1935年(昭和10年)12月17日
従業員数 1,328名
事業内容 グループ会社の経営戦略策定、経営管理およびそれに付帯する業務
グループ会社は服飾資材の提供から車や鉄道などの輸送機器や
映像機器分野へと裾野を広げ、生活に溶け込んだ事業を展開
■取材日:2022年 2月 3日
「パーツでつなぐ、あなたとつながる、未来につなげる」を
経営理念に、未来に繋がる取り組みを
創業以来110年以上ハトメ・ホック・マジックテープ®などの服飾資材をはじめ、
フットウェア資材、シューケア・フットケア商品、輸送機器資材と多彩な商材を全世界に供給されるグループ企業、
モリト株式会社さまの取り組みについて、
執行役員事業戦略本部 副本部長の森弘義さま、藤原まゆみさまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取組のきっかけは?
2020年中期経営計画にてサステナブル・エコにこだわったモノづくりの事業戦略を掲げた事がきっかけです。
弊社では以前よりエコ素材による商品開発を行っておりましたが、明確なエコの基準がありませんでした。社会的な責任として、改めてサステナブル・エコという大きなテーマに対し、17項目の中で具体的に携われるものを検討した結果、
「CO2・エアー」「海洋・オーシャン」「森林・フォレスト」の3つをテーマとした“C.O.R.E.”(コア)をスタートしました。
※C.O.R.E.とは
美しい地球と限りある資源を未来につなげる包括的なアプローチであり、モリトグループの環境へのコミット(Committed to Our Resources and Environment)を意味しています。
海のゴミ、捨てられる廃漁網をアップサイクル 価値ある製品へ
■具体的にはどのような取り組みを行っていますか?
まず、海洋プラスチック問題の1つである廃漁網を原材料とした再生樹脂を使って、副資材、生地、雑貨の製造に着手しました。海洋プラスチックごみというとビニール袋をイメージされると思いますが、実はその約4割は漁網です。
漁網はポリエステルかナイロンで作られています。それをボタンなどへの再生を検討するにあたり、廃漁網を回収しペレットにしている企業にコンタクトを取った事から協業が始まりました。
2020年4月に糸付けボタンから始まり、紐止め、バックルや付属品、それ以外にもペレットから糸を作り生地も製造しています。雑貨では携帯ケース、ハンガーやシューキーパー、サーフィン関連商品などもあります。
製品としては、兵庫県の豊岡鞄に廃漁網からアップサイクルした生地を使用いただき高品質な鞄を製造、販売されています。伊丹空港内のショップやモデルのTAOさんとのコラボ商品の提案などもされており、当社の生地をマスコミに取り上げて頂きました。その用途はアウトドア用品、アパレル商品、靴など多岐に広がっています。
また、エアーをテーマとした取組では水・化学薬品・電気等の資源の削減の抑制等、より持続可能な製造プロセスに着手しています。当社が扱うハトメなどはメッキを施しておりますが、メッキには大量の水と電力を使用します。従来の製法を見直しその使用量を50%に削減する方法の開発を行っています。小さな動きですがCO2排出量削減に繋がればと考えています。
■現在の取り組みはどのテーマに該当しますか?
基準がないSDGsの取組に独自の基準と明確なトレーサビリティで信頼を獲得
■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?
当社のSDGsに賛同頂ける新規取引先が多数生まれました。
基準がないSDGsの取組に対して、我々の中で廃漁網とバージン素材の混合率の基準を作ったこと、また仕入れ先、製造場所等のトレーサビリティを公表することで信頼を頂けたと思っています。
SDGsはブームで終わらない活動です
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
SDGsの取組に賛同頂けるお客様が増えた一方で、まだまだSDGsに関心が低いお客様がそれ以上に多いと言う現実があります。
社内でもスタート当初は、「高くて売れるのか」との声がありましたが、国連発信のSDGsはブームで終わらない活動であり、高くても欲しいと思われるような付加価値をつけたい。徐々に世界の動きは理解されつつあります。お客様も様子見的なところもあり、時間がかかると感じています。ビジネスとして成り立つ事を目指し、消費者が購入しやすい価格で提供できるよう、良い循環を創っていきたい。
豊岡鞄との取り組みの延長として社内から人員を募り、昨年11月には海岸での清掃活動を行いました。プロジェクト以外の従業員も参加し、現状を見る事で自分たちがやらなければと感じてもらうことができました。小さな取り組みですがゴミの回収、地域活性の取り組みを兵庫県から日本全国へ広げていきたいとの思いがあります。今後も定期的に継続し広がって行くことを期待しています。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
今回はオーシャンの取り組みを取材、紹介いただきますが、エアーやフォレストがテーマの取り組み、新しい商材の開発などを行っていきますので、定期的に紹介、発信できる場を作って頂きたい。
■取材者あとがき
海洋ごみの研究からスタートした活動は提案から2年余りを経て様々な地域、企業を巻き込む活動に広がっています。基準がない取り組みだからこそ自分達で基準を明確にされるその姿勢には説得力がありました。「現状を体験する事で、誰かがやってくれるだろうから自分達がやらなければに変わる」とても印象的な言葉でした。取材協力ありがとうございました。
商号 株式会社アイソトープ
代表 取締役社長 林 直行
設立 2000年
従業員数 42名 ※2022年2月現在
事業内容 ニット製品企画製造販売、各種原糸販売、産業資材加工
■取材日:2022年 2月 8日
アパレル製品にFSC認証マークを表示できるのは当社が世界初
国産ニットウェアの企画製造販売されている株式会社アイソトープさまの取組みについて、創業者の金沢克哉さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取組のきっかけは?
約15年前、まだサスティナブルな意識が無かった頃に和紙糸製造のノウハウを持つ工場と出会い、当時あまりメジャーでなかった和紙糸を綿に代わる素材に育て上げることで一致し、2社で素材開発と商品拡販を進めてきました。
和紙糸は以前からありましたが高額なのと、太く硬いため産業資材の用途にしか使用できず、アパレルには不向きでした。しかしこの工場が開発する和紙糸は細く、アパレル用途にも使用することができました。
また、和紙糸は日本独自の素材で、コスト的にも技術的にも優位性があると言うこと、繊維不況で新たな素材が開発されない中、新規性があるということもあり、和紙糸に着手しました。
和紙糸の原材料は針葉樹のため植物由来であり、調べてみると50年にわたり温室効果ガスを吸収し続けるということが分かりました。結局のところ、温室効果ガスを吸収するのは木しかありません。また、木を燃やした時には二酸化炭素を排出しますが、それまでに吸収していた二酸化炭素の量以上には排出しないので、まさにカーボンニュートラルです。
それと、和紙糸の製造量が、事業を始めた15年前は年間1トンでしたが、現在は100トンを超え、温室効果ガスの吸収量もある一定の量になりつつあるのと、環境への取り組みを重視できなければ大手企業との取引が難しく、企業価値向上面もあり、本格的に和紙糸を使ったSDGsに取り組むようになりました。
木は二酸化炭素を削減できます。その他は必ず二酸化炭素を排出してしまいます。リサイクルをするにもエネルギーは必要です。作り過ぎたものをどうするかではなく、ものづくりをしない事が一番のエコだと思います。でもそれでは社会として成立しない。必要な量だけ作るようにしないといけないと思います。
■具体的にはどのような取り組みを行っていますか?
和紙はマニラ麻やバナナなど様々な植物由来で出来ています。当初、針葉樹の他にマニラ麻を原料とした和紙糸も生産していましたが、フィリピンの麻農場では、コブラの生息している場所で子どもが裸足で労働させられているといった劣悪な労働環境や児童労働が、当たり前のように行われているのを目の当たりにしました。また、他の産業廃棄物の植物由来による原料であっても、労働としては劣悪な環境に変わりはなく、近代的に生産されている針葉樹だけを使用することにしました。
針葉樹は長年にわたり成長段階で二酸化炭素を吸収し、大木は建築、未成長木は家具など、端材などの廃棄物はパルプの原材料になり、当社で使用している原料パルプは廃棄物ロスにもつながっています。
しかし、針葉樹であっても植林をしない乱伐採があれば森は消滅し、温室効果ガスは減少しません。そこで当社は、森林や動物保護を目的とする国際的な認証である“FSC認証”を取得しました。
昔は一般的にSDGsの意識が無かったので、エコを標榜するために木を使うようになったため、木が伐採され天然林はどんどん無くなっていきました。それを危惧していた時にFSCという団体は伐採したら必ず植林するといった、木を無くさないことを活動目的の一つとしていることを知り、FSC認証を取得することを考えました。
FSC認証を取得するためには製造工程はもちろん、労働環境やフェアトレードも確認の対象になります。FSC認証マークが付いている商品はエビデンスがあり、しっかり管理された環境で作られた商品という証明になります。
持続可能で管理された森林資源を活用して和紙糸を製造し、それを使って商品にして販売していくことで、持続可能な“エコロジーとエコノミーの両立”を考えています。
それと、アパレル製品にFSC認証マークを表示できるのは当社が世界初だと思います。FSC認証をアパレルが取得する場合、紙、紡績、染色、編立、縫製、二次加工、検品等、サプライチェーンに掛かる全ての工場で取得しなくてはなりません。全ての工程で認証を取得しているのは当社だけですので、アパレル製品に認証マークを表示できるのは当社のみという仕組みです。
FSC認証の表示はTシャツや靴下に考えていますが、ファッション要素が強くデザインが変わる衣類への表示はあまり考えていません。産業資材や制服を中心に検討しています。
和紙糸は売れば売るほどSDGsに貢献できる
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
商圏と製品開発は相談役の金沢が、拡販は社長の林が、FSC事務局対応は総務経理が担当しています。
■社内の従業員や社外の取引先をうまく巻き込む工夫は?
FSC認証は従業員全員が意識を共有していないと運用できない仕組みになっています。従業員に対しても帳票の意味やロゴやラベルの使用方法、認証を取得する意義等についても確認をされますので、従業員には講習を受けてもらい理解してもらう必要があります。
また、認証商品が通常品に混入しないことや、どの針葉樹から製品ができ、どこに販売したか等、すべて管理する必要があります。逆に言えば、この製品はいつ、どこの森林で採れたどの木が原料という事が確認できなければなりません。認証商品はトレーサビリティーとエビデンスがとれますが、そのためにも会社全体で運用する必要が自動的に発生します。
FSC認証を運用することで、会社と従業員は自動的にSDGs項目の多くに貢献していることになります。
従業員の意識として、元々ISO9001を取得しているのでFSC認証を取得する事に対してもハードルは高くなかったと思います。それと和紙糸は元々売上も大きかったこともあり、和紙糸でFSC認証を取得するという事なら更に利益に繋がる、ということで従業員も理解してくれました。
“当社はカーボンニュートラルです”を目指して
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
あくまで私の考えです。
リユース(再利用):一番エコだが、経済は崩壊する
リデュース(削減):安価大量をやめられますか?
リサイクル(再生):素材減でも新品と再生の両方ができて量が増えている
エコロジーとエコノミーの両立は難しく、現在はエコノミー推進のためのエコロジー活動がメインになっている場合が多いと思います。
また、SDGsバッチをつけている販売先もSDGsを口にする割に安価なものを要求しています。今のところアパレル業界のSDGsは販売につながる売り文句の域を超えていないのが現状です。
ただ、私も最初は3Rがいいと思っていましたが、リサイクルも二酸化炭素を排出してしまいますので違うと思いました。結局、エコロジーとエコノミーの両立は難しいです。
■2030年に向けて今後目指すべきものは?
1ステップ “この商品はカーボンオフです”
2ステップ “この商品はカーボンニュートラルです”
3ステップ “当社はカーボンニュートラルです”
の順序で考えています。
1については、この商品については木の時にこれだけの二酸化炭素を吸収していますと言えるので、すでに達成できています。
2についてはあと一息です。
3については当社の温室効果ガス排出のメインである電力を改善する必要があります。そのためには自家クリーンエネルギーの開発が必要になります。風力や太陽光発電、それと当社で扱っているのは針葉樹もしくは植物由来の素材ですので、繊維廃棄物を使用したバイオマス発電など現在実現可能かどうか模索中です。
併せて、商品を全て和紙製品に変えなくてはなりません。そこを目指したいのですが、そうなればセーターは作らずに産業資材だけになると思います。売れている間はセーターを作りますが、いずれ売れなくなり、セーターは無くなると思います。
今後は和紙糸を使って無くならない商材を作りたいです。現在でもアパレル以外の業種とのやり取りが増えてきていて、どんどんお客様がアパレルではなくなってきています。
A.FSC認証の和紙糸製品を増やす(持続可能で他素材を使用するより温室効果ガスをより吸収)
B.社用車、運送、社内雑品などエコ商品に転換(温室効果ガスの削減)
C.クリーンエネルギーの自社導入など(一番の排出量をなくす)
Aから進めています。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
海外で安価な商品を大量に仕入れる→在庫を残す→売値を安くするため、もっと大量に安く仕入れる→在庫を残す・・・・・、このサイクルを断ち切っていく活動をしてほしいです。要るものを要る分だけ国内で作り残さないクレバーさを啓蒙してください。そうすれば日本の繊維業は適正な売上、適正な仕入れ、適正な給与で適正に経営できるのではないでしょうか?バングラディシュやミャンマー、中国等で大量に製造して販売できるほど日本の市場は大きくないはずです。国内の消費はコロナの影響もありますが、そもそもしんどかった。そろそろそこに気付いて欲しいです。
以上、国産の工場を代表して言わせていただきました。
■取材者あとがき
15年程前のある出会いがきっかけとなり、カーボンニュートラルな資源である木をビジネスに活用され、商品だけではなく企業自体もカーボンニュートラルであるように目指して取り組んでおられる姿勢は、地球温暖化対策にダイレクトに貢献されていると実感しました。取材協力ありがとうございました。
商号 株式会社ふじや
代表 代表取締役 柳楽 昌義
設立 1990年1月
従業員数 9名 ※2022年1月 現在
事業内容 ベビー子供服製造卸
■取材日:2022年 1月15日
世界一たくさんの「笑顔」と「幸福」を創る企業を目指します
創業以来ベビー・子供服の物づくりを続けていらっしゃる株式会社ふじやさま。未来を担う子供達の思い出の1ページを作るとても大事な仕事との想いを
形に変えて、子供達や家族、まわりの方々が「笑顔」になる商品創りをされていらっしゃいます。ふじやさまの取組みについて、代表取締役の柳楽昌義さま
よりその内容をご紹介いただきました。
日本産にこだわり、お客様だけでなく、環境も大切に
■SDGsアクションを始めるきっかけは何ですか?
新聞やネットなどで企業としてのSDGsへの取り組みの高まりを感じました。これまで当社は一企業として世のため、人のために、何ができているのだろうか?将来世代に何か残していけるものは何だろうか?と考えてはいましたが、ぼんやりしていて具体的には発表できていませんでした。そのタイミングも
あったかと思います。
■具体的にはどのような取り組みを行っていますか?
高齢者にも健康と社会の橋渡しを
日本製にこだわり、ものづくりを行っています。日本国内の縫製業は高齢化が進んでいますが、高齢者の方々定年を過ぎても家内工業的に縫製を続けている方も多くいらっしゃいます。その方たちに少しでも仕事を通じて健康と社会とのかかわりの橋渡しができればと考えています。また、廃業される取引先の
社員さんの雇用も行っており、その技術が伝承されるよう努めています。
仕事と心の成長
当社では従業員全員参加で朝礼時に交代で、心が成長できるような読みものをしています。また月に一度は勉強会もしており、仕事と共に心の成長も目指しています。
面談による従業員の向上心サポート
2ケ月に一度全ての従業員と面談をして、働く環境での向上に努めていくことをお話しています。働き甲斐がある職場や仕事こそが人間の成長へ、素晴らしい人生に繋がっていくと信じています。
日本産にこだわり、お客様だけでなく、環境も大切に
海外での大量生産による物余りは、ゴミを排出する要因にもなり、地球環境を破壊していっています。私達は日本で物づくりを続けていくという使命をもち、ものが溢れている世の中で本当に必要なもの、本物を常に作り続けたいと考えています。適正な量を生産することにより、環境破壊への影響の軽減を
少しでもできればという思いを持っています。
廃業される会社から設備を譲り受け使用するなど、様々な面で廃棄削減に取り組んでいます。中古品で賄えるものは中古品を探して購入するようにします。
■現在の取り組みは17テーマの内、どの番号に該当しますか?
■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?
社員全員参加の勉強会を通じて、働く事で社会に貢献しているという意識が従業員に生まれてきたと感じています。
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
繁忙期や、経営的にも余裕がない時にはじっくり取り組むことが難しく、後回しになってしまう事が課題です。
また目に見えて何かをできているという実感が見えにくい点も課題です。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
商売に結びつけるための事例紹介や、業界全体での情報交換、またこれから組合員同士、お互いに発展していくための取り組みを推進して欲しい。
■取材者あとがき
企業として求められる社会的意義を考えスタートされたSDGsへの取組は、全従業員さまから地方の工場さま、取引先さまにまで広がっています。
経営理念に掲げられている、世界一たくさんの「笑顔」と「幸福」を創る企業を目指されるその想いは、持続可能な社会の実現に繋がると思います。
取組をご紹介いただきありがとうございました。
■会社概要
商号 澤村株式会社
代表 代表取締役 春日 強
創業 1872年4月1日
設立 1925年8月25日
従業員数 101名
(男性63名/女性38名 ※2021年9月30日現在)
グループ総従業員数 173名
(男性71名/女性102名 ※2021年9月30日現在)
事業内容 繊維専門商社(繊維製品の企画製造販売事業)
■取材日:2022年7月15日
「スリーハートの精神」で
得意先・仕入先・澤村が一体となって共存共栄を
繊維専門商社として今年創業150年を迎えられる澤村株式会社さまの取組みについて、執行役員営業副本部長の田中一志さま、管理部部長の奥野純永さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
SDGsについてはこの2~3年良く聞くようになりましたが、弊社が環境問題に取り組んだのは2003年頃からで、当時の社長の発案がきっかけでスタートしました。
京都で開催されたCOP3(第3回気候変動枠組条約締結国会議)で採択された「京都議定書」の流れや社会情勢などを検討したうえで、今後永続的に経営を続けるにあたり弊社が取組むべき重要課題として地球環境の保全を戦略項目に加えました。
それに伴って2004年にKES(京都・環境マネジメントシステム・スタンダード)の認証を取得し、企業として環境宣言を行って、本格的に環境マネジメント活動をスタートさせました。この認証制度は企業が自ら環境改善目標を定め、毎年7月に達成内容の審査を受けて更新するもので、現在も継続して取り組んでいます。
また一方で、このような取組みへの有無が現実のビジネスに影響してくることも事実です。その後売り場や取引先からの要望もありテキスタイルで「エコテックス®スタンダード100」の認証も取得しました。弊社はメーカーではないので単独では何も出来ません。
弊社の企業理念である「スリーハートの精神」(得意先・仕入先・澤村の三者が一体となり、三つの心をもって共存共栄する。)を実践する中で、互いに協力し合いビジネスを通して環境課題の解決に取組んでいます。
オリジナルロゴマーク「Life with Sustainable」の利用拡大へ
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
➀ムダ使いしません
➁資源を大切に使います
③不要なものは作りません
の3項目を掲げて、環境に優しい素材の開発、ペーパーレスの促進、古紙の再利用、水資源の節約、エネルギー(電気・ガス)の使用量削減、リサイクル商品の活用といった取り組みを徹底しています。
大手の得意先とは共同で、製品のリサイクル原料への置き換えを進めていますが、弊社が主導して出来る部分でもバージン原料からリサイクル原料への置き換えやバイオ原料を使った副資材の使用、オーガニックコットンや水の消費量を大幅に減らせる原着糸の使用等を進めています。
また今年、サステナブル素材を使って作られた製品につける弊社オリジナルのロゴマークとして「Life with Sustainable」を商標登録しました。
「社員の成長は会社の成長」社員一人一人が働きがいを
女性のボディファッションを扱う澤村グループでは、縫製工場から店頭販売まで多くの女性が働いているため、第三者機関のチェックも受けながら女性の活躍の場を整備し、ストレスフリーチェックも行い働きやすい環境づくりを行っています。
また、「社員の成長は会社の成長」との認識のもと、社員から仕事に役立つ勉強や資格取得などの申請があれば補助をする制度を整えており、特にTES(繊維製品品質管理士)や女性の下着アドバイザーの資格IA(インティメイトアドバイザー)の取得には全額補助をしています。他にも繊維の知識や各種法規の勉強、英会話などにも利用されており、この制度を利用して、学んだことを仕事や生活に活かし、社員一人一人が働きがいをもって「顧客満足度」と「自己満足度」を共に高めていきたいと考えています。
対外的な活動として、国内での災害時には衣料品(肌着)の支援物資を地方自治体へ寄付したり、また海外の貧困地域や自然災害を受けた人々、紛争での避難民などへは「日本救援衣料センター」を通して長年にわたり衣料品の寄贈活動を続けています。
■どの部署がSDGsの活動を推進していますか?
基本的に管理部が管轄していますが、グリーン調達や資源のムダ使いなどには経営室が力を入れており互いに連携して推進しています。
SDGsへの取組みで部門間の交流が活発になり全社の連携が深まった
■SDGsへの取組みにより、どのような変化がありましたか?
以前からずっと取り組んでいる事の延長に、後からSDGsがやってきた感覚なので、改めてSDGsへの取組みで取引に変化があるかは分かりませんが、社内的には大きな変化がありました。
東京ビックサイトで開催されたサステナブルファッション展に二回連続出展したのですが、他社の取組み内容にも刺激を受けたこともあって社員の意識が高くなり、SDGs関連の商品を販売することに積極的になってきました。
一回目はインナー事業部だけでしたが、二回目は営業本部全体で出ることにしたので、出展準備段階から事業部間の交流が進み、全社で横の連携がより深まりました。特に若い社員にとっては、今まで知らなかった他の事業部が扱うサステナブル商材の情報を共有したことで、会社全体の動きを理解する事にも繋がりました。
社外への発信強化の一環で、ホームページを刷新して「環境問題への取組み」を大きく取り上げました。最近はホームページを見た就活の学生からの問合せも増えています。
また、社内のグループウエアでSDGs関連の新着情報を常にアップして、社員全員で共有するようにしていますが、今のところ社内外へのアピールがまだまだ足らない状況です。
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
やはり商売では値段が重要で、お客様からはリサイクル糸でも同値段でとの要求があり、結果的にコスト高が問題で取り上げてもらえない事も多々あります。色々なお客様がいるので中々難しいですが、現場の営業には多少利益が少なくても将来のためにひるまず取り組むように指導しています。
今後は値段の問題も少しずつ解消していき、同時にもっと消費者や社会の中でSDGsへの機運が高まれば取引先の意識も変わっていくと思います。
諦めることなく辛抱強く取り組んでいけば、いずれ必ず成果が出ると考えています。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
先ずは繊維業界の色々な新しい情報を発信してもらいたい。普段はどうしても弊社の取引先や仕入先と取引上の範囲内で話すことが多いため、深く突っ込んだ話をすることがあまりありません。そういった面で業界内の新しい出来事や日々更新される情報が貰えるとありがたい。また、SDGs関連も含め業界内外とのビジネスマッチングや、全体的に商売が広がるような情報の提供にも期待したい。
■取材者あとがき
SDGsが採択された2015年よりずっと以前から地球の環境問題に取り組まれていて、会社の「環境宣言」として基本理念・方針を具体的に示されていることで、地球環境の保全に対する思いに説得力がありました。また、社員の自己啓発を積極的に支援し、働きがいのある環境づくりに努めるというお話が印象的で、人を大切にする社風が社員に浸透して、「スリーハートの精神」の実践や地球環境を大切にする行動に繋がっているのだと思いました。取材協力ありがとうございました。
■会社概要
商号 株式会社STX
代表 代表取締役社長執行役員 髙丸 雅弘
創業 1898年
従業員数 210名(2022年4月1日現在)
事業内容 繊維製品関連商品(衣料品、繊維原料等)
■取材日:2022年6月16
企業の社会的責任でもあるSDGsの流れにいち早く対応
繊維原料からアパレル用品、雑貨類にいたるまで幅広い商品を扱う繊維専門商社、株式会社STXさまの取組について、管理本部 総務部 総務人事課長の松尾周平さま、大阪営業本部 副本部長兼原料部長 櫻井繁広さま、大阪営業本部 大阪営業第一部長 岡戸康彦さまにお話を伺いました。
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社ではプロジェクトチームのようなものは無く各課で各々が取組んでおり、会議などでお互いの活動内容を共有しながら進めています。
まず人事総務部門では、これがきっかけといった明確なものはないのですが、当社は女性社員が多く社員の約6割が女性ということもあり、以前から活躍し、管理職になる社員もいます。もちろん産休や育休など働き易い環境の整備は以前から行っており、ジェンダー平等の取組に貢献しています。
原材料部門では8年程前ヨーロッパの有名アパレル向けの原材料供給に携わったビジネスがきっかけになりました。SDGsに関わる取組は欧州の方が早く、BCI(綿花持続可能性プログラム)認証を受けた綿花でなければ取引が出来なかった為、日本の商社として初めてBCIに参加することになりました。
アパレル向けの部門では、まず「エコテックス®スタンダード100」認証取得のドレスシャツからスタートしました。2012年に「特定芳香族アミンを生成するアゾ染料」を含む家庭用品の販売規制が始まることを知り、アゾ染料について調べる過程でエコテックス認証を取得することで課題がクリア出来ることがわかりました。また当時、欧米向けの取引が多いバングラデシュで様々な工場を訪問する中、外装ケースにエコテックス認証の表示を多く目にし、エコテックス認証に興味を持ったことがきっかけです。2015年9月に国連サミットでSDGsが採択されました。当社では2016年の春にエコテックス認証のドレスシャツの企画が始まり、2017年にはエコテックス認証商品が出来る、これは良いタイミングでSDGsに絡めた取組になると考えスタートしました。
サスティナブルな未来を広げる国際認証を取得することで
世界トップレベルの安心・安全の証を実現
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
管理部門では細かい事になりますが紙の使用量の削減やLEDへの変更などを全社に通達し意識付けを行っています。眼に見える成果として共有できない事が課題ですが、意識は変わってきていると感じています。
原材料部門ではBCIに参加したことをきっかけに「U.S.コットン・トラスト・プロトコル」にも参加。GRSにも再度加入を予定しています。このようなプログラムに参加しそれに準じた原料を供給していくと共に、取引先など皆さんにその取り組みの紹介を積極的に行っています。また、親会社である蝶理株式会社が取り組む「ECO BLUE(エコブルー)」では共同ワークを進め、漁網ナイロンの再生にも着手するなど、様々な取引先さまと幅広く取組を推進しています。
インドでは風量発電のみで稼働している紡績工場の製品を大量に仕入れており、また 一方では風力発電に使われる資材の供給を行っており、クリーンエネルギーにも貢献できているのではないでしょうか。
アパレル向けの提案商品では「エコテックス®スタンダード100」認証を取る事は安心安全の証明になります。企画当時は2020年の東京オリンピックの開催も決まっており、日本語の解らないインバウンドのお客様に向けてエコテックス認証の商品でアピールできると考え、2017年に発売を開始しました。さらに製造工場での「STeP」を取得し、エコテックス認証の最高峰、素材から生産背景、製品まで信頼性を確認できる繊維のトレーサビリティ証明「エコテックス®MADE IN GREEN」を取得した商品も提案しています。エコテックス認証を通じて多くのSDGsに繋がっています。
2021年にはダウンに代わる商品として「POWDERBALL™」を開発しました。ダウンと同等の暖かさで取扱いも簡単、生物由来の原料は使用せず環境保全を推進していく為に最新技術によって独自開発をした素材です。SDGsの9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」12番「つくる責任つかう責任」に繋がる取組です。
商品のパッケージに使う紙も本来なら捨てられてしまう米糠を生成する特許技術を用いてつくられている「FSC」マークの付いたものを使用しています。
■現在の取り組みは17テーマの内、どの番号に該当しますか?
価格競争ではない価値観を提案 SDGsの推進を取引先さまと共に
■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?
昔にくらべて環境に配慮した商品への問合せは増えてきたという実感はありますが、まだそれが中心にはなっていない状況です。
SDGsに関わる商品については価格競争ではない新しい価値観、差別化というところでお客様に提案をしており、プラスアルファーに働いています。
また、一方で来年の新卒採用には環境に配慮した取組に反響がありました。今の学生は非常に意識が高く環境問題について良く勉強をされています。繊維産業の課題を理解したうえで原料を扱う当社を希望された方がいて大変驚きました。人材採用の際には企業として環境に配慮した取組を推進する事は必要なものになってきていると感じました。
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
環境に配慮した商品に興味をもつ取引先さまは確実に増えています。企業としてやらざるを得ない状況になってきていると思います。一方で残念ながら一般ユーザーにはそこまで響かないことが課題です。日本でのSDGsの認識はレジ袋の有料化、素材の変更で広まりましたが、実際にSDGsの17の項目を知っている方がどれくらいいるのか疑問です。
ビジネスの上ではもちろんコストの問題が一番大きいです。また既存商品の素材を環境に配慮したものに変更しようとすると、場所によっては作る事が出来ず、生産拠点の変更が必要になることもあります。また原料が異なると風合いが変わり商品が変わってしまう、このような事もハードルになっています。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
各社が独自性をだして取組んでいますので連携して推進するということはなかなか難しいと思いますが、価値に共感できる仲間を増やしながら一緒に出来る事があれば取り組んで行きたいと考えています。KanFAには各企業さまの情報を収集、発信していただき、繋がる場になっていただきたいと思います。
■取材者あとがき
安心・安全な商品を提供し、その情報をどのように伝えるかを検討される中で参加された様々なプログラムや国際認証の取得がSDGsの推進に繋がっていることを知る良い機会になりました。よりハードルの高い認証を取得され、SDGsに貢献する新しい素材を開発されるなど、進化をされるSTXさまの取組に今後も注目し、繊維業界の取組が一般ユーザーにも認知され、SDGsがスタンダードとして広がることに期待したいと思います。取材協力ありがとうございました。
■会社概要
商号 株式会社リンド
代表 代表取締役 近藤 卓司
設立 2022年1月
従業員数 3名(2022年8月現在)
事業内容 インド製品輸入販売
■取材日:2022年8月18日
■SDGsアクションの取り組みのきっかけは?
当社は長年培ったインド貿易を背景に、日本のお客様の様々なご要望に応じてインドの最適なメーカーをマッチングし、コミュニケーション、生産管理、検品、輸入など、お客様へのサポートを中心に事業を行っています。その中でお客様にはインドの文化や商習慣、生産背景への理解を、またインド側には日本のマーケットや感性への理解を、相互に深めて頂けるよう努めています。
ただ、以前からそれが大量生産、大量廃棄、薄利多売のアパレル、雑貨製品の生産サポートになっているのではないか、常に価格を訴求するビジネスは結果的に日本のアパレル業界を苦しめていて、価格競争は必要ではあるがエンドユーザーはそこまで求めているのか、などの疑問を感じていました。また大量廃棄をしない為にオフプライス店を出口として活用するなどの仕組みを全否定はしませんが、業界にとっては昨今の目指すべき姿とは真逆の姿ではないかと感じていたところ、インドの展示会で「PROJECT1000」を手掛けている企業と知り合い、そのコンセプトに共感したのが今回の取組みへのきっかけです。インド専門商社として、これをお手伝いすることができれば、少しでも先ほどの疑問に対してアクションを起こすことができると考えました。
貧困からの経済的な自立を支援し、健康的で持続可能な生活へ
■御社はSDGsに対してどのようなことに取り組んでいますか?
インドのテクノクラフト社グループは地域農村部の女性の経済的自立支援を目的として、現地の紡績・生地工場から排出される端切れや廃棄品を利用してハンドクラフト製品を作るプロジェクト「PROJECT 1000」を立ち上げ、2か月間の製作技術のトレーニングから製品開発、品質管理、販売支援までを行っています。当社はその趣旨に賛同して、日本国内向けの商品開発・販売支援を行っていきます。
またそれとは別に、以前からインドの自然素材を活かした手作り製品やオーガニック素材、草木染原料などを手掛けていましたので、今回の取組みはその延長になります。
■現在の取り組みは17テーマの内、どの番号に該当しますか?
■SDGsへの取り組みにより、どのような変化がありましたか?
今始まったばかりなので、具体的な効果はまだでていませんが、関心はあるのか反響は上々です。一般でもSDGsへの関心が高まるにつれ、今まで扱ってきた自然素材も含め展示会への出展機会も増えると思うので、より沢山の方に「PROJECT1000」を知って頂き、少しでも多くの製品を販売できれば現地のワークショップで働く人たちの自立支援になるため、今後に期待したいです。
また、従来から手掛けている草木染の染料や色々なオーガニック素材の販売にも注力していきます。
■SDGsアクションの推進について課題と感じていることはありますか?
率直にいって、現在のところはSDGsのアクションをすればするほどビジネス(利潤追求)はできないと思います。どこかでバランスをとらざるを得なければならないと考えていますが、それが解決すべき課題かと思います。
いずれSDGsへの取組みが会社全体に好影響を及ぼし、持続可能なビジネスに繋がる事を期待しています。
■SDGsの推進に際し、関西ファッション連合に期待することはありますか?
具体的な内容ではありませんが、ひとつでも多く販売できるように「PROJECT1000」のコンセプトを広げる支援をしてもらいたいです。
■取材者あとがき
会社を設立された時期とコロナ禍が重なり大変な状況でスタートされましたが、30年以上インド貿易一筋で仕事をされてきた実績と信頼関係で、日印双方にしっかりとしたコネクションを築かれていることが、お話を伺っていて良く理解出来ました。
また、遠い外国・異文化でも地球規模のSDGsへの思いは同じだと再認識させて頂きました。今後の日本にとって最も重要な国の一つであるインドとの友好関係が、SDGsを通して益々広がることに期待したいと思います。取材協力ありがとうございました。
※(KanFA事務局)
取材中に、今年の10月25日・26日にKanFAと大阪商工会議所が共催する「エコ・エシカル展」をご紹介し、出展されることになりました。この機会に「PROJECT1000」を多くの方に紹介するお手伝いをしていきたいと思います。