能を楽しむ

能を楽しむ豆知識
知れば知るほど面白い!奥深いのが能!
そもそも能ってどんなもの?
公演を観る前に知っておくと便利な情報をお届けします。

歴史

history

能の歴史は遠く奈良時代までさかのぼります。大陸から渡ってきた芸能のひとつに、散楽という民間芸能がありました。平安時代になりその役者たちは各地に分散して集団を作り、大きな寺社の保護を受けて祭礼などで芸を演じ、各地を巡演するなどしていました。この頃、散楽は日本風に猿楽と呼ばれるようになり、時代とともに単なる物真似から様々な笑いの台詞劇として発達し狂言へと発展していきます。一方、農村の民俗から発展した田楽などの芸もさかんに行われるようになり、互いに交流・影響しあっていました。 鎌倉中期頃には猿楽の集団も寺社公認のもと座の体制を組み、当時流行していた今様や白拍子などの歌舞的要素をとりいれた、一種の楽劇を作り上げていきます。

田楽・猿楽の座が芸を競う中、南北朝の頃になると、大和猿楽は14世紀後半を代表する観阿弥を生みました。観阿弥は、将軍足利義満の支援を得、物真似主体の強い芸風に、田楽や近江猿楽などの歌舞的要素をとり入れて芸術的に高め、当時流行していた曲舞の節を小歌節と融合させるなど音楽面での改革をも行って、大いに発展を促しました。この観阿弥の偉業を受け継いで今日まで伝わる能の芸術を確立したのが、息子の世阿弥です。世阿弥が少年の頃、将軍の寵愛を受けることとなり、その絶大な後援を得て、能をさらに優美な舞台芸術へと高めました。彼は幽玄を理想とする歌舞主体の芸能を磨き上げていきました。

応仁の乱以降の幕府の弱体化や寺社の衰退は、能に大きな打撃を与えました。田楽も近江猿楽もほとんど消滅し、十六世紀後半には有名大名を頼り地方へ下る能役者が続出しました。中でも、織田信長は、能に対して好意的だったことが知られており、豊臣秀吉はさらに熱狂的な愛好家でした。以来 能役者は、社寺の手を離れ武家の支配へと時代と共に変化していきました。
秀吉の没後、徳川家康も能を保護しました。町人の間に謡本が普及したことにより、「謡」が全国的に広まりました。その後、第二次世界大戦後の混乱期にも、大きな打撃を受け存亡の危機にさらされましたが、多くの人々の懸命な努力に支えられ再興し、わが国を代表する古典芸能として、現存する世界最古の舞台芸術と謳われ「ユネスコ世界無形遺産」に宣言されました。海外からも高い評価を受け今日に至っています。

舞台

stage
かつて能は神社の拝殿や芝生の上や屋外の仮設舞台などで演じられていました。現在のような能舞台での演能は、室町時代末期から一般的なものになったと考えられていますが、正式な能舞台はすべて屋外に設置されていました。近代になって生まれた「能楽堂」という劇場は、かつては舞台とは別棟であった観客席、舞台と観客席との隔てとなっていた白州も、そのまま建物の中にとり込み、屋外の能舞台を建物で覆った形に変わりました。
舞台と客席とが一つの建物の中に収まった劇場形式になったのは明治14年以降のことで、400年余の能舞台の歴史の中ではまだ新しいものになります。能舞台の背面の板は鏡板と言い、必ず老松が描かれています。これは奈良県春日大社の「 影向の松」と呼ばれていた実在する松を模したものが始まりといわれています。演目によって変わることがなく、どのような曲でも松の背景で演じられます。能楽堂に足を踏み入れて非日常の空間を体感してください。
屋内でも屋根があるのが特徴です。
舞台の大きさは三間四方で大きく張り出した舞台と橋掛りと呼ばれる廊下のような部分があります。また、
観客席のことを見所と言います。 舞台を正面・脇・斜めからの三方で取り囲んだ能舞台独特の造りとなっています。鏡板とその天上部の板は、反響板になっていたり、舞台の床下には複数の甕が設置されているなど、音響効果を高める工夫が随所に施されています。

物語

story
能はストーリー仕立ての演劇です。現在でも演じられている演劇で1番古い舞台芸術と言われています。
能の物語では、「平家物語」や「源氏物語」など室町時代に人気があった古典を題材にしていることが多く、神仏への信仰、鬼退治、男女の恋模様、人間の嫉妬、親子の情愛、死生観、などいつの世も変わらない人間の普遍的な内面を描いているのが特徴です。能を観ることで、物語の世界を楽しむのは勿論、当時の人々が何を大切にしていたかなど、価値観に触れることができるのも能の魅力の1つです。

能に登場するキャラクター

能の始まりはお調べから始まります。
オーケストラでいえばチューニングのようなもので、笛、小鼓、大鼓、太鼓の4つの楽器の音がどこからともなく聴こえてくるのです。お調べに耳を傾けこれからはじまる物語の世界を想像しながら、静かに気持ちを整えていきます。お調べが終わると、囃子方や地謡が舞台に登場し、物語が始まる準備が整いました。多くの演目の場合はまずワキが登場し物語へと導いてくれます。
それからシテが登場しますが、例えば里の女といった身近な人物として登場することが多いです。しかしこれは仮の姿。実は源平の戦で活躍した武将の霊であったりと、本当の姿は後半で明らかになるのです。能の主人公の多くは、その地に残した思いを語り舞います。シテがどんな人生を歩んできて、心の内にはどのようなことを思っているのか、ご覧になっている方もワキが静かに耳を傾けているのと同じように、想像を膨らませながら見ると、実際に目で見るものよりもずっと鮮やかに主人公の心の機微に触れることができるかもしれません。

Q&A

question

初めて能をご覧になられる方のちょっとした疑問をお答えします。

Q
能と狂言はどう違う?
A
能と狂言、あわせて能楽と言います。神事・慶事の伝承、貴族たちの恋物語、武将たちの戦記、怪物退治、親子・恋人の別れの悲劇など多彩な物語を劇的に描くのが能で、親しみやすい一般庶民を主人公にして滑稽な話を独特のしぐさや語りで演じるのが狂言です。現在ではまったく異なる芸能に見られがちですが元を辿れば同じ芸能で今でも同じ舞台で演じられています。
Q
能って難しそうですが事前に勉強しないとダメ?
A
雰囲気を楽しむだけでも良いですが、少しあらすじやみどころを理解しておいた方がより楽しんで観ていただけると思います。初めての場合は言葉が聞き取りにくく、物語のあらすじを理解するのは難しいかもしれません。ですが、お囃子の音を楽しんだり能装束や能面をじっくり鑑賞するなど、美術館で絵を楽しむように、理解するよりも何かを感じて頂ければ幸いです。
Q
橋がかりは歌舞伎の花道と同じ?
A

そもそも歌舞伎は能を母胎として生まれた新しい芸能なので、橋がかりが変形したものとする説があります。また能舞台には西洋式舞台と異なり緞帳がなく、橋がかりの揚幕から演者が入場してきます。囃子方の入場から既に舞台は始まっているといえます。また、歌舞伎では緞帳も花道の登退場口にも幕があります。

Q
薪能って何?
A

薪能は、野外で行われる能のことで、現在は、全国各地で盛んに行われるようになりました。お寺や神社の境内や公園などで催される事が多く、深い緑や土の香りといった自然との一体感や、宵のころ篝に火を入れる「火入れ式」、闇の中に浮き上がる舞台などの趣向が人気です。能楽堂での観能とは違ってイベント感覚でご覧いただけれので初心者の方にも大変オススメです。

Q
どこの席がお勧め?
A
やはり正面席です。初心者の方は特に迫力の伝わりやすい前方がお勧めです。
ご自身で楽しみ方を見つけられると、次はいろんな角度から堪能していただきたいです。

Q
指揮者がいないのになぜ合う?
A

囃子では掛け声が指揮者の役割を果たしています。掛け声でお互いの息使いを感じ間を伝達します。 コミといって息を詰めるところが非常に大切なポイントで地謡とコミで確認し合います。

Q
小書ってなに?
A
能の番組やチラシに曲名の左側に小さく字が書かれていることがあります。それは小書と言い能や囃子や狂言の特殊な演出のことを言います。演目によって様々ですがシテの面や装束、ワキや狂言方、作り物や小道具、舞や囃子の変更など多岐にわたります。同じ演目でも大きく印象が異なったりするので多彩な魅力が生まれるのです。
Q
ひとつの公演にリハーサルは何回?
A
演者全員が集まって何度も一緒に稽古を重ねていくことはまずありません。全員が舞台の展開を通し稽古で確認する場を「申合」と呼び原則として本番前に一度だけです。すべての舞台はただ一度きりのものです。お客様も含めたその場に居合わせた人びとだけの一期一会の経験です。
Q
観能中の睡眠はご法度?
A
観能中にどうしても眠くなってしまうことは多くの人が経験することかと思います。気持ちをリラックスさせ、まどろみの中で、文字通り夢うつつの世界に身をゆだねるのも悪くはありません。しかし頭をフラフラさせたりいびきを響かせたりするのは他のお客様へのご迷惑となるのでやめましょう。
Q
観能に拍手は必要?
A
能の舞台はいつの間にか始まりひとときの夢のごとく終わる世界です。舞台が空になるまで上演は続いています。シテ、ワキ、囃子、地謡と舞台から退場するたびにパラパラと拍手をする必要はなく、舞台に誰もいなくなって拍手を頂ければ幸いです。
Q
後見の役割ってなに?
A
舞台の進行が円滑に運ぶよう見届ける役割です。装束を直したり作り物や小道具の受け渡し役を務めるほか、シテに万一事故があったとき直ちに代役を演じなければならないため大変重要な役割です。特に後見のリーダーである主後見は、シテと同格か演目によってはシテより上位の者が担当することが多くなっています。
Q
能って難しそうですが事前に勉強しないとダメ?
A
雰囲気を楽しむだけでも良いですが、少しあらすじやみどころを理解しておいた方がより楽しんで観ていただけると思います。初めての場合は言葉が聞き取りにくく、物語のあらすじを理解するのは難しいかもしれません。ですが、お囃子の音を楽しんだり能装束や能面をじっくり鑑賞するなど、美術館で絵を楽しむように、理解するよりも何かを感じて頂ければ幸いです。