「地域医療」新時代
真の需給バランスとは

切東美子/一般財団法人神戸マリナーズ更生会 評議員

近年、医療分野におけるトピックスは尽きない。改正労安衛法に基づくストレスチェック、マイナンバー制度、在宅医療推進事業、そして地域医療構想策定ガイドラインである。いずれも、地域医療の根幹にかかわる重要トピックスだが、中でも『地域医療構想』は、これからの市民の健康を考えるうえで欠かせない施策である。一言でいえば、2025年を見据えた今後の医療供給体制について地域住民を含めた関係者で施策を検討し医療計画を策定することである。平成26年度の国民医療費の約3/2が高齢者という現状をみても「救命、延命、治療」の医療から「病気と共存しながらQOLの維持向上をめざす」医療に変わらざるをえないのは当然であり、地域包括ケアの推進が叫ばれる所以である。
老々介護

2025年には75歳以上の入院医療需要の増加と外来医療以需要の減少により、医療の需給バランスが崩れることが見込まれている。地域によって異なる需給バランスを踏まえ、データの分析によって、将来の需給バランスを予想し地域の専門家や住民とで適正な医療計画をたてようというのが『地域医療構想』の柱である。

これまで一県一医大や医師、看護師養成のプランが人口構造の変化や人口分布を無視していたために医療格差などの問題を生み、大都市における医療や介護の矛盾を招いたとも考えられる。
また、昨年10月からは、『病床機能報告制度』が開始されている。これは、入院患者の病名及び在院日数を毎月報告させ、その結果をもとに病院を機能別に高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4種類に分類していこうとするものである。手間がかかるものの、この制度により、医療の中身がよくわかり、病院の実体が明らかになる。
しかし、病院の場合、医師や看護師の入れ替わりもあって、同質の医療が続くとは限らない。医療では、数値やデータがすべてではない。最も大切な『需要』は患者さんの気持である。その気持ちに応えられるのが真の『供給』である。地域医師会のある先輩が「患者さんと気持ちが通じ合えば、病気の8割は治ったようなものです」と言われたことを思い起こす。病院主体の知恵と活力が試されるときである。
病院の廊下 看護師と患者
『地域医療構想』は、これから本格的な議論が各地域で始まるわけだが、病院の立場から、専門職、有識者の立場から、さらには社会福祉や企業の立場からもしっかり意見を述べていかなければならない。それも財団の使命だと考えている。