~最期に弘前城公園の桜が見たいと笑顔で逝った女性の話~
彼女は全身にがんが転移し、ベッドから起きることもままならず、口から少し食べては嘔吐するという状態でした。元々寡黙な印象の方でしたが余命一ヶ月と宣告されてからは、表情も硬く手足を少し動かすことさえも難しくなっていきました。その頃は妹さんに持ってきてもらったするめをほんの少ししゃぶるのが唯一の楽しみだったようです。
妹さんは痛みも望みも何も言わず苦しそうに寝ているお姉さんを見て、とてもつらかったそうです。私が訪問する時だけが唯一ほっとでる時間だったようです。
残された時間を大切な家族とどう過ごすか?何かできることはないか?と考えお互いの望みを聞いてみました。本人は何度聞いても何もないと言われ、困った私はもし身体が元気なら何がしたい?と尋ねると趣味だった旅行がしたい。もう一度弘前城公園の桜が見たいと言われました。現実には無理でも何かできるはず!!そこで私は妹さんや医師、病棟看護師の協力を得て大きな紙に弘前城の写真を張りました。そこに色紙で作った桜の花びらを訪室するたびに少しずつ貼ってもらいました。会話や笑顔がほとんどなかった部屋がどんどん明るくなっていったのを覚えています。
壁に張った紙が桜の花びらでいっぱいになった時に、彼女は笑顔で旅立ちました。お見送りをしたとき妹さんが、あの時間に二人とも救われました。棺の中に桜の紙を入れてあげます。と言われました。
こんないくつかの体験が、最期の最後まで懸命に生きる大切さを私に教えてくれたのです。
今ならまだ間に合います、後悔のない人生を生きるために一緒にやりましょう!