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血証論

小見出し

自叙


自 叙
 先君子体羸(1) 善病,故海早岁即习方书,有恙(2) 辄(3) 调治之。

【訓読】先の君子は体羸ルイし(1)善く病む,故に海(大きい、偉大の接頭語)早き歳に即ち
方書を習ひ,恙(2)有り輒(3)スナワち調ひ之を治す。

【翻訳】先の君子は体が痩ヤセ弱く善く病んだ,したがって早い歳に海のように大きく方書を
習ひ,疾病が有るをたやすく調い治した。

〔評釈〕この前書きは作者の研究した血証の経過を述べた。

癸酉六月,骤得吐血,继复转为下血。

【訓読】癸ミズノト酉トリ六月,驟ニワカに吐血を得,継ツひで復た転じて下血と為す。(骤 速く走る
[はやくはしる], 速く走らす, 突然(に), 速やか(に))

【翻訳】(彼の父は)癸ミズノト酉トリ六月に,驟ニワカに吐血をして,継ツいで復た転じて下血と為
した。

〔評釈〕彼の若い頃にあって、彼の父は急に患い血を吐いて、その時たくさんの有名な医者
はすべて見てもらった、同じに治療効果があるのを投じた。

查照各书,施治罔效(4);延请名宿(5) 仍无确见,大约用调停之药以俟(6)病衰而已。

【訓読】各書を査シラべ照テラすに,施治すも効罔(4)ナし;名宿(5)を延請(【延请】招へいす
る。)エンセイするも仍ほ確見無し,大約なる調停の薬を用ひ以て病を俟マツ(6)も衰ふる而已ノミ。

【翻訳】各書を査シラべ照テラして,施治するものの効果無し;著名的老手(楊西山)を招へい
するも仍ほ確見無し,大約なる調停の薬を用い以て病の経過を待つも衰えるだけである。

〔評釈〕彼はすべての医学書を全部調べて、適切な見解も探し出せず、その時とても評判の
名声を負う楊西山が《失血大法》という書物の論治でさえ精詳を欠いた。

困此遍(7) 览方书,每于血证,尝(8) 三致意。

【訓読】此に困り遍アマネく(7)方書を覧,血証に毎オノおの,嘗カツて(8)三つの致アタヘる意。

【翻訳】此に困り遍アマネく方書を覧て,血証に毎オノおの,嘗カツて三つの致アタヘることがあった。

〔評釈〕それから彼の父はついに病死して、これは彼に対してとても大きい刺激だった。そ
こで彼は決心して血証を極め研究した。

时,里中人甚诩(9)乡先辈杨西山先生所著《失血大法》得血证不传之秘,门下钞(10)存,私
为鸿宝(11)。

【訓読】時に,裏中に人ハイり甚だ诩ホコリタカい郷先輩楊西山先生著す所の《失血大法》を得て
血証の伝わっていない秘禄が,門下鈔に存し,私は鴻コウ宝ホウ(11)と為す。

【翻訳】時に,裏中に人ハイり甚だ诩ホコリタカき(9)郷先輩楊西山先生著す所《失血大法》を得
て血証の伝はらざる之の秘が,門下抄に存していて,私は鴻コウ宝ホウ(非常に珍貴な宝物)と
わかった。 

〔評釈〕彼は《内経》と仲景の本を人手し、その中の道理を理解して、しかしまた古書にこ
だわることもなかった。

吾以先君病,故多方购求,仅得一览,而其书议论方药究亦未能精详,以之治病,卒(12) 鲜
成效。

【訓読】吾れ先君を以て病む,故に多くの方購を求む,僅に一覧を得て,而ち其の書を方薬
議論究し亦た未だ精詳能はざる,之を以て病を治し,卒(12)ツイに鮮アザヤカに成効す。

【翻訳】吾れは先君を病み,故に多くの方購を求めた,僅に一覧を得て,而スナワち其の書を
方薬議論究し亦たまだ精詳はできていない,之れにて病を治し,卒ツイに鮮アザヤカに成効し終
えた。

〔評釈〕苦しい努力を経て、それから結局ついに血証治療する方法を掌握した。

〔評釈〕作者の血証の研究過程を通じて、私達は彼が1つの進取に努める医学家なことを見
抜くことができ、比較的に厳格な研究する精神があり、彼の師は古いが古くとも泥ではない。

〔評釈〕彼は“かりに一材一芸があっても、少し十分にその当時に補ふに足り、また出し惜
しむ”の行為を伝えることに忍びないのは醜くく、自分の臨床経験の総括を刊行して後代の
人に役立てるべきだ。

乃废然自返,寝馈(13) 于《内经》、仲景之书,触类旁通,豁然心有所得,而悟其言外之旨,
用治血证十愈七八。

【訓読】乃ち廃然自返し,《内経》、仲景之書を寝饋(13)し,触類旁通(【触类旁通】ひとつ
のことから他を類推する。一端から類推して他を理解する。)し,豁然(目覚めた)として
心に得る所有りて,而ち其の言外の旨を悟り,血証を治すに用ひ十に七八を愈ゆ。

【翻訳】やっと廃然自返し,《内経》、仲景之書を沈溺(むさぼり読んで)し,一端から類推
して他を理解し,豁然(目覚め)として心に得る所有りて,而スナワち其の言外の旨ムネを悟り,
血証を治すに用い十に七八を愈ナオした。

废然自返,寝馈于今先君既逝,而荆妻(14) 冯氏又得血疾,视制方剂,竟获安全。

【訓読】废然して帰り、眠り今先君は既に逝イき,愚妻馮氏又た血疾を得,方剤を視制すに,
竟に安全を獲す(処方をつくること、意外にも安全を得る)。

【翻訳】がっかりして帰ってから、眠り贈る 今先君は既に逝イきて,荊妻(14)馮氏は又た
血疾を得,方剤を視制すに,竟ツイに安全を獲す(処方をつくること、意外にも安全を得る)。

慨然曰:“大丈夫不能立功名于天下,苟有一材一艺,稍足补救于当时,而又吝不忍传,陋哉
(15)!”

【訓読】慨然として曰く:“大丈夫(一人前の男)は天下に功名を立て能於アタはず,苟イヤシク
も一材一芸有るも,稍スコし当時に救ひ補ひ足タる,而るに又た忍び伝ふに吝ケチなり,陋ミニクイ
や(15)!”

【翻訳】慨然として曰く:“大丈夫(一人前の男)は天下に功名を立て能アタはず,苟イヤシクも
一材一芸有るも,稍スコし当時に救い補い足タりる,而シカるに又た忍び伝えるに吝ケチなり,陋
ミニクイ(醜い)や!” 

爰(16)将失血之证,精微奥义一一发明,或伸古人所欲言,或补前贤所未备,务求理足方效,
不为影响之谈(17)。

【訓読】爰ソコで(16)将に失血の証,精微なる奥義を一つ一つ発明し,或は古人の言はんと欲
す所を伸ばし,或ひは前の賢所の未だ備ソナはずを補ひ,方効を足る求理を務め,影響の談(1
7)と為さず。(そこで失血の証を、精微な奥義は 1 つ 1 つ発明して、あるいは古人所言葉を
伸ばして、あるいは先賢所を補って用意していないで、相手にして方効に足りることを願っ
て、影響の話さんがため。)

【翻訳】そこで将に失血の証,精微なる奥義を一つ一つ発明し,或は古人の言わんと欲す所
を伸ばし,或いは前の賢所のいまだ備ソナはないことを補い,方効を足る求理を務め,影響の
談(とらえどころがなくて、付和雷同する言い方。)と為さない。

「そこで失血の証を、精微な奥義は 1 つ 1 つ発明して、あるいは古人所言葉を伸ばして、
あるいは先賢所を補って用意していないで、相手にして方効に足りることを願って、影響の
話さん(とらえどころがない)がため。」

书成,自顾而转憾悟道不早(18),不能延吾父之寿也。

【訓読】書成り,自顧ジカイして憾カンに転じ道を悟るに早(18)からず,吾の父の寿トシに延び
る能はざるなり(本ができて、自オノズカら顧ココロみ遺憾に思って道を悟ることを転じ早からず
(遅くなった)、吾父の寿に延びることができずなり)。

書成り,自顧ジカイして憾カンに転じ道を悟るに早からず,吾の父の寿トシに延びる能はざるな
り。

【翻訳】本ができて、自オノズカら顧ココロみ遺憾に思って道を悟ることを転じ早からず(遅くな
った)、吾父の寿に延びることができずなり。

然犹幸此书之或可以教天下后世也。

【訓読】然るに猶ほ幸ひに此の書は之れ或ひは天下の後世に教へ以て可けんなり。(可以:
~できる)(しかしまるで幸運なこの本のはあるいは天下の後世を教えることができる)。

【翻訳】このようなまるで幸運にもこの本のはあるいは天下の後世を教えることができる。

〔評釈〕このようなため、《血証論》の才能(手腕)は“良い人の所の言葉を伸ばし、あるい
は先賢所の未備なことを補ふ”。

容川唐宗海自叙 

〔注〕
(1)羸(lei):瘦弱。
(1)羸(lei):痩ヤセ弱い。
(2)恙(yang):疾病。
(2)恙(yang):疾病。(【恙】つつが虫[つつがむし], 病気[びょうき], 心配事[しんぱい
ごと])
(3)辄(zhe):总是。
(3)輒(zhe):総是。(【辄】 即ち[すなわち], たやすく, 無造作に[むぞうさに], その度
毎にそのたびごとに])
(4)罔(wang):没有。
(4)罔(wang):没有。
(5)名宿:著名的老手。
(5)名宿:著名的老手。(有名なベテラン)
(6)俟(si):等待。
(6)俟(si):待マツに等しい。(待つ)
(7)遍(bian):同遍。
(7)遍(bian):遍アマネクに同じ。
(8)尝:曾经。
(8)嘗:曽経。(…ことがある)
(9)诩(xu):夸耀。
(9)诩(xu):誇ホコリ耀テラス。(自慢)
(10)钞:同抄。
(10)鈔:抄に同じ。
(11)鸿宝:鸿是大的意志,鸿宝指非常珍贵的宝物。
(11)鴻宝:鴻とは是れ大的なる意志,鴻宝は非常に珍貴な宝物を指す。
(12)卒:终于。
(12)卒:終る。
(13)寝馈(kui):寝是睡,馈是食,寝馈是吃住的意思,这里引伸为沉溺的意思。
(13)寝饋(kui):寝は是れ睡,饋は是れ食,寝饋は是れ吃住の意思,這コの裏は引き伸ノバ
し沈溺する意思と為す。
(14)荆妻:旧时对人谦称自己的妻子。
(14)荊妻:旧ムカシの時人に対して自己の妻子を謙ねて称す。
荆指以荆条为钗,兼有表示贫寒寒之意。
荊はイバラの枝をかんざしにすることを指して、表示は貧乏で寒寒を兼ね備ふの意。
(15)陋(lou)哉:丑恶啊。
(15)陋(lou)哉:醜悪。(醜い)
(16)爰(yuan):于是。
(16)爰(yuan):於是。(そこで)
(17)影响之谈:望风捕影、随声附合的说法。
(17)影響の談:風を望み影を捕ふ、随声附合の説法。(とらえどころがなくて、付和雷
同する言い方。)
(18)悟道不早:懂得道理的时间晚了。
(18)悟道不早:道理の時間晩了を得て懂(理解する)する(道理の時間が遅くなったこ
とにわかる)。

血証論・清 唐容川 人民衛生出版社
訓読・翻訳 大曽根清朗

巻1


血证论·血证论卷一
血証論・血証論巻一

阴阳水火气血论1-1-1

陰陽水火気血論1-1-1

人之一身,不外阴阳,而阴阳二字,即是水火,水火二字,即是气血,水即化气,火即化血。
人の一つの体は、陰陽の範囲を出なく、陰陽二字は、即ち水と火であり、水と火の二字は、即ち血気であり、水は即ち気に化し、火は即ち血に化す。

何以言水即化气哉,气着于物,复还为水,是明验也。
何を以て言うか、水は即ち化して気に、気は物に著し、ふたたびまだ水と帰る、是れ明験なり(明らかである)。

盖人身之气,生于脐下丹田气海之中,脐下者肾,与膀胱水所归宿之地也,
人身の気に被カブせ、臍サイ(へそ)下カ丹田に気海①の中に生じ、臍下の者は腎にて、膀胱の水と宿に帰す所の地なり、
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①丹田气海:丹田指脐下三寸处。
①丹田気海:丹田とは臍下三寸の処を指す。

气海有上下之分,上气海又叫膻中,下气海又叫丹田,这里指下气海,与丹田同意。
気海は上下の分に有り,上気海又は膻中と叫ヨぶ,下気海は又た丹田と叫ヨぶ,這裏コレは下気海を指し,丹田と同意を与ふ。
――――――――――――――――――――――――――――――

此水不自化为气,又赖鼻间吸入天阳,从肺管引心火,下入于脐之下,
この水は自ら化せず気と為し、又鼻間に天陽②を吸入するに頼り、肺管従ヨり心火へ引き、臍下に下入する

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②天阳:指天地之间的阳气
②天陽:天地間の陽気を指す
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蒸其水,使化为气,如易之坎卦,
其の水が蒸し,気と為すに化さしめ、易の坎卦③の如し、

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③易之坎卦:易指《易经》,坎系八卦之一,卦形☵,象征水。中画为一阳,故曰一阳生于水中。
③易エキの坎カン卦ケ:易エキは《易経》を指し,坎カンは八卦の一つに系ツナガる,卦ケの形は☵,象征ショウチョウは水スイ。
中画は一陽と為す,故に一陽が水中より生ずと曰く。
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一阳生于水中,而为生气之根,气既生,则随太阳经脉为布护于外,是为卫气,
一陽は水中に生じて、生気の根と為す、気をすでに生じ、則スルと太陽経脈に随って外を布護する、是れ衛気と為す、

上交于肺,是为呼吸,五脏六腑,息以相吹,止此一气而已,
肺に上り交い、呼吸、五臓六腑、息を相い吹くことによる、此れ一气止ヤむ而已ノミ(この一気はすでにやめる)、

然气生于水,即能化水,水化于气
しかれども気は水を生じ、即ち能ヨく水スイに化す(水に変わることができる)、水は気に化す

亦能病气,气之所至,水亦无不至焉,
またよく気は病んで、気の至る所は、水またここに至らざるなしや、

故太阳之气达于皮毛则为汗,气挟水阴而行于外者也,
故に太陽の気が毛皮に逹せば則ち汗と為し、(同様に)気は水陰を挟みて外に行る者なり。



太阳之气,上输于肺,膀胱肾中之水阴,即随气升腾,而为津液,是气载水阴而行于上者也,
太陽の気は、肺に上輸す、(同様に)膀胱腎中の水陰は、即ち気に髄して升騰して、津液と為し、是は気が水陰を載せて上を行る者なり、

气化于下,则水道通而为溺,是气行水亦行也,
気は下に化し、すなわち水道通ずれば溺(尿)となる、是は気が水を行り亦た行るなり。



设水停不化,外则太阳之气不达,而汗不得出,内则津液不生,痰饮交动,此病水而即病气矣,
もし水停止し化せず外なれば太陽の気は達せず、而るに内なれば津液を生ぜず、痰飲は動きを交わし、此れ水スイを病ヤみてすなわち気を病むや。



又有肺之制节不行,气不得降,因而癃闭滑数,以及肾中阳气,不能镇水,为饮为泻,不一而足,此病气即病水矣,
また肺の制節が行らず、気が降るを得られず、因って癃閉(排尿障害)滑数となり、および腎中の陽気は、水を鎮む能はず、飲むと為す瀉と為し、一つだけに足らず、この病気は即ち水を病むや。



总之气与水,本属一家,治气即是治水,治水即是治气,
この気と水を総じて、本は一つ家に属し、気を治せば即ち是れ治水である、治水は即ち是れ気を治めることである。



是以人参补气,以其生于北方,
是れ人参を以て気を補う、其れを以て北方④に生じる、

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④北方:按照五行学说 北方属水。
④北方:五行学説に按照ジュンジる 北方は水スイに属す。
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水中之阳,甘寒滋润,大生津液,津液充足,而肺金濡润,肺主气,其叶下垂,以纳气,得人参甘寒之阴,内具阳性,为生气化水之良品,
水中の陽は、甘寒滋潤、大いに津液を生じ、津液は充足すれば、肺金を濡潤し、肺は気を主り、その葉は下へ垂れ、気を納むによる、人参は甘寒の陰を得て、内は具に陽性、気を生ずと為し水を化す良品物と為す、

故气得所补益焉,即如小柴胡,仲景自注云,上焦得通,津液得下,胃气因和,是通津液,即是和胃气,
ユエに気が補益を得るや、即ち小柴胡の如く、仲景自ら注に云う、上焦は通を得て、津液は下を得、胃気は和すに因り、是れ津液を通すことであり、即ち是れ胃気を和すことである。



盖津液足,则胃上输肺,肺得润养,其叶下垂,津液又随之而下,如雨露之降,五脏戴泽,莫不顺利,而浊阴全消,
しかしながら津液が足らば、すなわち胃は肺に上輸し、肺は潤養を得て、その葉は下垂し、津液かつ之に随して下りて、雨露の降るごとく、五臓を沢ウルオし戴ノせ⑤、順利せざるなくして、濁陰は全て消ゆ、

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⑤载泽:接受恩惠的意思。
⑤載沢サイタク:恩恵の意思を接受セツジュす。
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亢阳不作,肺之所以制节五脏者如此,
亢陽は作らず、肺のいわゆる五臓の節制する者は此のごとし。





设水阴不足,津液枯竭,上则痿欬,无水以济之也,下则闭结、
もし水陰が枯渇すれば、津液は枯渇し、上は則ち痿欬⑥し、同様に、水無くを以て之を救ふなり、下は則ち閉結す。

――――――――――――――――――――――――――――――
⑥瘙咳:肺痿的咳嗽。
⑥瘙ソウ咳ガイ:肺痿の咳嗽。
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血证论卷一·阴阳水火气血论1-2
血証論巻一・陰陽水火気血論1-2



设水阴不足,津液枯竭,上则痿欬,无水以济之也,下则闭结、
もし水陰が枯渇すれば、津液は枯渇し、上は則ち痿欬⑥し、同様に、水無くを以て之を救ふなり、下は則ち閉結す。

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⑥瘙咳:肺痿的咳嗽。
⑥瘙ソウ咳ガイ:肺痿の咳嗽。
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制节不达于下也,外则蒸热,水阴不能濡于肌肤也,
節制下に逹せずも、外ならば熱を蒸し、水陰肌膚に濡る能はず、

凡此之证,皆以生水为治法,故清燥救肺汤,
凡スベてこの証は、皆(全て)水を生ず治法と為す、故に清燥救肺湯、

生津以补肺气,猪苓汤,润利以除痰气,都气丸,补水以益肾气,即如发汗,所以调卫气也,
生津は肺気を補ふを以て、猪苓湯、潤利(痰気を除く)は、都気丸、補水し以て腎気を益し,即ち発汗する如く,所以る衛気を調ふなり,

而亦戒火攻以伤水阴,故用白芍之滋阴,以启汗原,
一方(而)でまた水陰に傷らる以て火攻めを戒む、故に白芍の滋陰を用い、汗の原を启ミチビく、

用花粉之生津,以救汗液,即此观之,可知滋水即是补气,
花粉の生津を用い、以て汗液を救ふ、即ちこれを観、滋水は即ち気を補うことであるを知る可し。



然补中益气汤,六君子,肾气丸,是皆补气之方也,何以绝不滋水哉,
けれども(然)補中益気湯、六君子、腎気丸は是れ皆補気の方(剤)なり、何を以て滋水せず絶するや

盖无形之水阴,生于下而济于上,所以奉养是气者也,此水则宜滋,
蓋し無形の水陰,下に生じて上を濟スクふ,所以る養を奉ホウジる是れ気であり,此れ水ならば則ち宜しく滋す,

有形之水质,入于口而化于下,所以传道是气者也,此水则宜泻,
有形の水の質シツ(天性),口より入りて下に化し,所以る道ミチを伝ふる是れ気でもある,此の水則ち宜しく瀉すべし。



若水质一停,则气便阻滞,故补中汤,用陈术以制水。六君子,用苓半以利水,肾气丸,
若し水の質一たび停むれば,則ち気は便スグに阻滞す,故に補中湯,陳朮を用ひ以て水を制す。六君子,苓半を用ひ以て水を利す,腎気丸,

亦用利水之药,以佐桂附,桂附以气药化水,苓泽即以利水之药以化气,
亦た利水の薬を用ふ,以て桂附を佐とす,桂附は気薬を以て水に化し,苓沢は即ち以て利水の薬を以て気に化す。



真武汤尤以术苓利水为主,此治水之邪,即以治气,与滋水之阴,即以补气者,固并行而不悖也,
真武湯は尤トクに朮苓を以て利水を主と為す,此れ水の邪を治すは,即ち以て気を治し,水の陰に滋を与ふ,即ち以て気を補ふ者は,固(丈夫)に並行して悖ソム⑦かざるなり,

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⑦并行而不悖(bei):悖是违背、违反的意思。
⑦並行而シテ悖(bei)せず:悖ボツとは是れ違背ソムク、違反の意思。

并行不悖足说二者并行,彼此没有矛盾。
並行し悖ボツは二者が並行するに説するに足タる,彼は此れを没有メイユウ(無い)と矛盾である。
――――――――――――――――――――――――――――――

旦水邪不去,则水阴亦不能生,
旦だ水邪去らずんば,則ち水陰亦た生ず能はず,

故五苓散去水邪,而即能散津止渴,并能发汗退热,以水邪去,则水阴布故也,
故に五苓散は水邪を去りて,而シカも即ソク能く津を散じ渇を止む,並びに能く発汗退熱し,以て水邪去らば,則ち水陰は布ヒロメく故へなり,

然水阴不滋,则水邪亦不能去,
然り水陰滋せずんば,則ち水邪亦た去る能はず,

故小柴胡通达津液,而即能下调水道,总见水行则气行,
故に小柴胡にて津液を通達し,而シカるに即スぐ能く下りて水道を調ふ,総じ見るに水は行り則ち気行る,

水止则气止,能知此者,乃可与言调气矣。
水止まば則ち気止み,能く此を知る者は,乃ち気を調ふやと言ふべし。


何以言火即化血哉,血色,火赤之色也。
何を以て火が即スぐ血と化すやと言ふ,血の色,火赤の色なり。

血证论卷一·阴阳水火气血论1-3
血証論巻一・陰陽水火気血論1-3



何以言火即化血哉?,血色,火赤之色也。
何を以て火が即スぐ血と化すやと言ふや?,血の色,火赤の色,

火者心之所主化,生血液,以濡周身,火为阳,而生血之阴,即赖阴血以养火,
火とは心の化すを主ツカサどる所,血の液を生じ,以て周身を濡らす,火は陽と為して,血の陰を生ず,即ち陰血に頼りて以て火を養ヤシナふ,

故火不上炎,而血液下注,内脏于肝,寄居血海,由冲任带三脉,行达周身,以温养肢体,
故に火が上炎せずんば,而るに血液下注し,内は肝に臓し,血海に寄り居り,衝ショウ任ニン由り三脈に帯び,周身を行り達し,以て肢体を温養す,

男子则血之转输,无从觇验,女子则血之转输,月事时下,血下注于血海之中,心火随之下济,
男子なれば則ち血の転輸,覘ネライ験タメ⑧すに従ふ無く,女子なれば則ち血の転輸,月事時に下り,血は血海の中へ下注す,心火之に随ひ下シモを済タスく,

――――――――――――――――――――――――――――――
⑧觇(chan)验:观察验证之意。
⑧覘テン(chan)験:観察験証の意。
――――――――――――――――――――――――――――――

故血盛而火不亢烈,是以男子无病,而女子受胎也,
故に血盛にして火が亢烈せず,是れ男子を以て病無く,而るに女子は胎を受くるなり。



如或血虚,则肝失所藏,木旺而愈动火,心失所养,火旺而益伤血,是血病即火病矣,治法宜大补其血,归地是也,
如し或ひは血虚し,則ち肝は蔵す所を失ひ,木は旺にして火を動し愈イゆ,心は養ふ所を失ひ,火は旺にして傷血を益す,是れ血病の即ち火病なりや,治法は宜しく大ひに其の血を補ひ,地に帰す是れなり,

然血由火生,补血而不清火,则火终亢而不能生血,
然れども血は火生ず由り,補血して清火せず,則ち火は亢終りても血を生ず能はず。



故滋血必用清火诸药,四物汤所以用白芍;天王补心汤,所以用二冬,归脾汤所以用枣仁;
故に滋血には必ず清火の諸薬を用ふ,四物湯は白芍を用ふ所以ユエン;天王補心湯は,二冬を用ふ所以ユエン,帰脾湯は棗仁を用ふ所以ユエン;

仲景灸甘草汤,所以用二冬阿胶,皆是清水之法。
仲景灸甘草湯は,二冬阿膠を用ふ所以ユエン,皆な是れ清水の法。



至于六黄汤,四生丸,则又以大泻火热为主,是火化太过,反失其化,抑之即以培之,清火即是补血。
六黄湯,四生丸に至れば,則ち又た火熱を大瀉すを以て主と為す,是れ火化太過し,反て其の化を失ひ,之を抑し即ち以て之を培ツチカふ,清火は即ち是れ補血なり。



又有火化不及,而血不能生者,仲景灸甘草汤,所以有桂枝,以宣心火,人参养荣汤,所以用远志肉桂,以补心火,皆是补火生血之法。
又た火化に及ばず有り,而して血が生ず能はざる者,仲景灸甘草湯,桂枝有る所以ユエン,以て心火を宣ヒロぐ,人参養栄湯,遠志肉桂を用ふ所以ユエン,以て心火を補ふ,皆な是れ補火生血の法。



其有血寒血庳者,则用桂枝细辛艾叶干姜等,禀受火气之药,以温达之,则知治火即是治血,血与火原一家,知此乃可与言调血矣。
其れ血寒血庳ピ有る者なれば,則ち桂枝細辛艾葉乾姜等を用ひ,火気の薬を稟受ウけ,以て之を温達せば,則ち火を治すを知る即ち是れ治血なり,血と火の原は一つの家,此を知り乃ち血調トトノふを言ひ与タスくべし。



夫水火气血,固是对子,然亦互相维系,故水病则累血,血病则累气,
夫れ水火気血は,是れ対子ツイレンに固カタむ,然ども亦た互ひに相ひ系りを維イジす,故に水スイ病めば則ち血に累カカワり,血病めば則ち気に累る,

气分之水阴不足,则阳气乘阴而干血,阴分之血液不足,则津液不下而病气,
気分の水陰不足なれば,則ち陽気陰に乗じて血乾し,陰分の血液不足せば,則ち津液下オりずして気を病む,

故汗出过多则伤血,下后亡津液则伤血,热结膀胱则下血,是水病而累血也,吐血欬血,必兼痰饮,
故に汗出過多なれば則ち血傷り,下したる後に津液を亡くし則ち血を傷る,熱が膀胱に結し則ち血下る,是れ水病みて血に累カカワるなり,吐血欬血は,必ず痰飲を兼ぬる,

血虚则精竭水结,痰凝不散,失血家往往水肿,瘀血化水,亦发水肿,是血病而兼水也,
血虚し則ち精竭ツき水結,痰凝散ぜず,失血家は往往にして水腫す,瘀血水と化し,亦た水腫を発す,是れ血病して水を兼ぬるなり,

盖在下焦,则血海膀胱,同居一地,在上焦,则肺主水道,心主血脉,又并域而居,在躯壳外,则汗出皮毛,血循经脉,
蓋し下焦に在らば,則ち血海膀胱は,同じ一地に居る,上焦に在らば,則ち肺は水道を主ツカサどり,心は血脈を主る,又た域に併びて居り,躯壳カラダの外に在り,則ち皮毛より汗出,血は経脈を循メグる,

亦相倚而行,一阴一阳,互相维繁,而况运血者即是气,守气者即是血,
亦た相ひ倚ヨせて行り,一陰一陽,互ひに相ひ維繁して,而況(=何況)ナニヲカイワンや血を運ぶ者は即ち是れ気なり,気を守る者は即ち是れ血なり,

气为阳,气盛即为火盛,血为阴,血虚即是水虚,一而二,二而一者也,
気は陽と為す,気盛なれば即ち火盛と為す,血は陰と為す,血虚せば即スぐ是れ水スイ虚す,一而モて二,二而モて一なる者なり,

人必深明此理,而后治血理气,调阴和阳,可以左右逢源。
人は必ず此の理を深く明らかにし,而る後に血を治し気を理オサめ,陰を調トトノひ陽を和す,左右の逢ホウ源ゲンを以て可なり(元に会う)。



又曰血生于心火,而下藏于肝,气生于肾水,
又た曰く血は心火に生じて,下の肝に蔵す,気は腎水より生ず,

而上主于肺,其间运上下者,脾也,水火二藏,皆系先天,人之初胎,以先天生后天,人之既育,以后天生先天,
而シカるに上は肺が主る,其の間上下に運ぶ者は,脾なり,水火の二蔵,皆な先天に系カカワり,人の初胎は,先天後天を以て生れ,人の既アトで育つ,以て後天より先天に生る,

故水火两藏,全赖于脾,食气入胃,脾经化汁,上奉心火,心火得之,变化而赤,是之谓血,
故に水火の両蔵,全て脾に頼り,食気胃に入り,脾は汁に化すを経て,上ノボり心火に奉ホウじ,心火は之を得く,変化して赤きなり,是れ之を血と謂ふ,

故治血者,必治脾为主,仲景炙甘草汤,皆是此义,以及大黄下血,
故に血を治す者は,必ず脾を治すを主と為す,仲景炙甘草湯は,皆な是れ此の義,大黄の下血に以及オヨヒぶ,

亦因大黄秉土之色,而大泄地道故也,地黄生血,亦因地黄秉土之润,而大滋脾燥故也,其余参?
亦た大黄秉ジョウ(束)土ドの色に因りて,地道ジドウ(本物の)の大ダイ泄セツが故へなり,地黄は血を生じ,亦た地黄秉土の潤に因りて,大ヒニ脾燥を滋すが故へなり,其の余りは参サンずるか?

,运血统血,皆是补脾,可知治血者,必以脾为主,乃为有要。
,運血統血は,皆な是れ脾を補ふ,血を治す者と知るべし,必ず脾を以て主と為す,乃ち要カナメ有りと為す。



至于治气,亦宜以脾为主,气虽生于肾中,然食气入胃,脾经化水,下输于肾,肾之阳气,
気を治すに至り,亦た宜しく脾を以て主と為す,気は腎中に生くると雖も,然シカシナガら食気は胃に入り,脾は化水を経て,腎に下輸す,腎は之れ陽気なり,

乃从水中蒸腾而上,清气升而津液四布,浊气降而水道下行,水道下行者,犹地有江河,以流其恶也,津液上升者,犹土膏脉动,而雨露升也,
乃ち水中従ヨり蒸騰して上ノボり,清気が升して津液四布す,濁気は降りて水道に下行し,水道下行する者は,猶ほ地に江河有り,以て其の悪を流すなり,津液上升する者は,猶ほ土膏脈動⑨して,雨露ウロ升ノボるなり,
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⑨土膏脉动:韦应物《理西斋诗》有”春阳土脉起,膏泽发生初”之句,”土膏脉动”系指地之精气萌动上升的意思。
⑨土膏脈動:韋ナメシガワに応ずる物《理西斎詩》に”春陽に土脈起き,膏コウ沢タク発生し初ウむ”の句有り,”土膏脈動”とは指地の精気萌モエ動ドウし上升の意思に係る。
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故治气者必治脾为主,六君子汤,和脾利水以调气,真武汤,扶脾镇水以生气,十枣陷胸等汤,攻脾夺水以通气,此去水邪以补气之法也,
故に気を治す者は必ず脾を治すを主と為す,六君子湯,脾を和し調気を以て利水す,真武湯,脾を扶タスけ生気を以て鎮水す,十棗陥胸等湯,脾を攻め通気を以て奪水す,此れ水邪を去すに補気を以ての法なり,

又有水津不灌,壮火食气,则用人参滋脾以益气,花粉清脾以和气。
又た水津にて灌カンせざる有り,食気を壮火し,則ち人参を用ひ脾を滋し以て益気す,花粉は脾を清し以て気を和す。



凡治气者,亦必知以脾为主,而后有得也,
凡スベて気を治す者,亦た必ず脾を以て主と為すを知り,而る後に得有るなり,

李东垣治病,以气为主,故专主脾胃,然用药偏于刚燥,不知脾不制水固宜燥,脾不升津则宜滋,气分不可留水邪,气分亦不可无水津也。
李東垣の治病は,気を以て主と為す,故に専ら脾胃を主り,然るに用薬は剛燥に偏き,脾が制水せず宜しく燥を固むべきを知らず,脾は升津せずんば則ち滋すに宜ヨロし,気分は水邪に留めべからず,気分も亦た水津無くべからざるなり。



朱丹溪治病以血为主,故用药偏于寒凉,不知病在火脏宜寒凉,病在土脏宜甘缓也,
朱丹渓の治病は血を以て主と為し,故に用薬は寒涼に偏ず,病に火臓在り宜しく寒涼すべきを知らず,病が土臓に在り宜しく甘緩すべきなり,

此论不专为失血立说,然治血者,必先知之,而后于调气和血,无差爽云。
此の論は失血を立説する為に専らならず,然り治血とは,必ず先に之を知りて,後に調気和血を,爽すに差無し云ふ。


 


血証論巻一・男女異同論(参看血経胎産門)1-4

世谓男子主气,女子主血,因谓男子血贵,女子血贱,并谓男子之血,与女子不同,而不知皆同也,
世に謂ふ男子は気を主り,女子は血を主る,因て謂ふ男子の血は貴トウトく,女子の血は賤イヤしと,並びに謂ふ男子の血,女子と同じからず,而るに皆な同じと知らざるなり,

其不同者,女子有月信,男子无月信,只此不同而已矣。
其の同じからざる者,女子は月の信タヨり有り,男子は月の信タヨり無し,只だ此れ同じからざるのみや。



夫同是血也,何以女子有月信,而男子无月信哉,
夫の同じは是れ血なり,何を以て女子に月の信タヨり有り,而るに男子に月の信タヨり無しか,

盖女子主血,血属阴而下行,其行也,气运之而行也,
蓋し女子は血を主り,血は陰に属して下行し,其れ行るなり,気は之を運ハコびて行るなり,

女子以血为主,未常不赖气以运血,气即水化,前论已详,气血交会之所,在脐下胞室之中,
女子は以て血を主と為し,未だ常に気に頼らず以て血を運ハコび,気は即ち水と化す,前論に已に詳し,気血の交会の所,臍下胞室の中に在り,

男子谓之丹田,女子谓之血室,则肝肾所司,气与血之总会,气生于水而化水,男子以气为主。
男子は之を丹田と謂ふ,女子は之を血室と謂ふ,則ち肝腎の司ツカサどる所,気と血の総じ会ひ,気は水を生じて水と化す,男子は以て気を主と為す。




血证论1_5男女异同论(参看血经胎产门)
血証論1_5男女異同論(参看血経胎産門)



夫同是血也,何以女子有月信,而男子无月信哉,
夫の同じは是れ血なり,何を以て女子に月の信タヨり有り,而るに男子に月の信タヨり無しか,

盖女子主血,血属阴而下行,其行也,气运之而行也,
蓋し女子は血を主り,血は陰に属して下行し,其れ行るなり,気は之を運ハコびて行るなり,

女子以血为主,未常不赖气以运血,气即水化,前论已详,气血交会之所,在脐下胞室之中,
女子は以て血を主と為し,未だ常に気に頼らず以て血を運ハコび,気は即ち水と化す,前論に已に詳し,気血の交会の所,臍下胞室の中に在り,

男子谓之丹田,女子谓之血室,则肝肾所司,气与血之总会,气生于水而化水,男子以气为主。
男子は之を丹田と謂ふ,女子は之を血室と謂ふ,則ち肝腎の司ツカサどる所,気と血の総じ会ひ,気は水を生じて水と化す,男子は以て気を主と為す。

故血入丹田,亦从水化,而变为水,以其内为血所化,
故に血は丹田に入り,亦た水化従り,而るに変じて水と為る,其の内を以て化す所血と為る,

故非清水,而极浓极稠,是谓之肾精,
故に清水に非ずして,極めて濃く極めて稠ネバり,是れ之れ腎精②と謂ふ,
――――――――――――――――――――――――――――――
②肾精:精是生命的物质基础,通常有两种含义:ⅰ水谷之精。ⅱ生殖之精。肾精指后者而言,因其生成、储藏、排泄均由肾主,故名肾精。
②腎精:精は是れ生命の物質基礎,通常両種有り含む義:ⅰ水谷の精。ⅱ生殖の精。腎精は後者を指して言ふ,因て其の生成、儲チョ蔵、排泄を均しく腎由ヨり主ツカサドる,故に腎精と名づく。
――――――――――――――――――――――――――――――

女子之气,亦仍能复化为水,然女子以血为主,
女子の気,亦た仍カサネて能く化し復し水と為す,然シカし女子は血を以て主と為す,

故其气在血室之内,皆从血化,而变为血,是谓之月信,但甚血中仍有气化之水液,
故に其の気は血室の内に在り,皆な血従ヨり化して,変じ血と為る,是れ之の月信ゲッシン(月の信タヨリ=月経)と謂ふ,但だ血中甚だしくば仍カサネて気化の水液有り,

故月信亦名信水,且行经前后,均有淡色之水,
故に月信は亦た信水と名づく,且カつ経前後に行り,均しく淡色の水有り,

是女子之血分,未尝不借气分之水,以引动而运行之也,
是れ女子の血分にて,未だ嘗カツて気分の水を借りず,以て動きを引きて之を運行するなり,

知此,则知男子之精属气属水,而其中未尝无血无火,且知女子之经,属血属火,而其中未尝无气无水,
此を知り,則ち男子の精は気に属し水に属すを知りて,其の中に未だ嘗て血無く火無しならず,且つ女子の経は,血に属し火に属して,其の中に未だ嘗て気無く水無しを知る,

是以男子精薄,则为血虚,女子经病,则为气滞也。
是れ男子精薄ウスきを以て,則ち血虚と為し,女子経病ヤみて,則ち気滞と為すなり。



问曰,男子主气,女子主血,其中变化,诚如兹之所云矣,
問ひて曰く,男子は気を主り,女子は血を主る,其の中変化は,誠に之を茲ココに云ふ③所の如しや,
――――――――――――――――――――――――――――――
③诚如兹之所云;的确象这样的说法。
③誠如茲之所云;的確には這コノ様ヨウな説法を象カタチどる。
――――――――――――――――――――――――――――――

而女子何以必行经,男子何以不行经,
而も女子は何ぞ必ず経を以て行し,男子は何ぞ経を以て行らざるか,

答曰经血者,血之余也,夫新生旧除,天地自然之理,故月有盈亏,海有朝汐,
答へて曰く経血の者は,血の余りなり,夫れ新しく生ウマれ旧フルくは除ノゾかる,天地自然の理にて,故に月に盈エイ虧キ(満ち欠け)有り,海に朝汐④チョウセキ有り,
――――――――――――――――――――――――――――――
④潮汐(xi):海水受月球和太阳的影响,每天涨落两次。
④潮汐(xi):海水が月球和ト太陽の影響を受け,毎天に漲チョウ落の両フタ次タビする。

早晨海水上涨叫潮,/傍晚海水上涨叫汐。
早ソウ晨シン(早朝)海水が上に漲ハるを潮チョウと叫イふ,/傍晩ユウガタに海水が上に漲ハるを汐セキと叫イふ。
――――――――――――――――――――――――――――――

女子之血,除旧生新,
女子の血は,旧フルきは除かれ新アタラシきを生む,

是满则溢,盈必亏之道,女子每月,则行经一度,
是れ満すれば則ち溢アフれ,盈ミチれば必ず之を虧カク道ミチ,女子毎月なれば,則ち経を一度行メグる,

盖所以泄血之余也,血主阴而下行,所以从下泄,而为经血也,
蓋し所以る泄血の余りなり,血は陰を主りて下行す,所以る下泄に従シタガひて,経血と為すなり,

至于男子,虽无经可验,然亦必泄其余。
男子に至りて,経無く験すべきと雖も,然も亦た必ず其の余りを泄す。



男子以气为主,气主阳而上行,
男子は気を以て主と為す,気は陽を主りて上行す,

故血余不从下泄,而随气上行,循冲任脉,上绕唇颐,生为髭须,
故に血余は下泄に従はず,而るに気に随ひ上行し,衝任脈を循る,上は唇を繞マトひ頤ヤシナひ,生ショウじて髭鬚ヒゲと為す,

是髭须者,即所以泄血之余也,所以女子有月信,上遂无髭须,男子有髭须,下遂无月信,所主不同,升降各异,
是れ髭鬚とは,即ち所以る泄血の余りなり,所以る女子に月の信タヨリ有り,上は遂ケッキョく髭鬚無く,男子に髭鬚,有り下は遂ケッキョく月信は無し,主る所同じくせず,升降各おの異コトなる,

只此分别而己矣,义出内经,非创论也,世谓男女血迥不同,
只だ此の分別而己ノミや,義は内経より出イデ,創論に非ざるなり,世の謂ふ男女の血は迥ハルカに同じからず,

岂知变化之道哉,夫必明气血水火变化运行之道,
豈に変化の道を知るや,夫れ必ず気血水火の変化と運行の道を明アキラカにす,

始可治气血水火所生之病,女子要血循其常,男子亦要血循其常,若血失常道,即为血不循经,在女子虽无崩带,亦不受胎,男子虽无吐衄,亦不荣体,至失常之至,则女子未有不崩带,男子未有不吐衄者也,故女子血贵调经,男子亦贵调经,但男子吐衄,
始め気血水火の生ずる所の病を治すべし,女子は其の常を循ずるに血を要す,男子は亦た其の常を循ずるに血を要す,若し血が常道を失なはば,即ち血は経を循らずと為す,女子に在りては崩帯無しと雖も,亦た受胎せず,男子はたとえ吐衄無きと雖も,亦た体を栄へず,失常の至りに之れ至らば,則ち女子も未だ崩帯せず有らず,男子は未だ吐衄せず有らず,

乃上行之血,女子崩带,乃下行之血,不可例论耳,然使女子吐衄
乃ち上行の血は,女子崩帯,乃ち下行の血は,例論のみにすべからず,然り女子をして吐衄ありや?

,则亦与男子无殊,男子下血,则亦与崩带无异,故是书原非妇科,而于月经胎产尤为详悉,诚欲人触类引伸,于治血庶尽神欤。
,則ち亦た男子に殊トクに無く,男子下血を与ふれば,則ち亦た崩帯に異なる無しを与ふ,故に是れ原に書く婦科に非ず,而も月経胎産にて尤トクに(とりわけ)悉く詳ツマビラかと為す,誠タシカに人は類を引き伸ばすに触れむと欲し,治血に庶ソウシテハジメて神歟⑤に尽ツクすや。

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⑤庶(shu)尽神欤(yu): 也许可以尽量发挥其妙用吧!庶是庶几,表示希望之词。尽神,语出《易经》”鼓之舞之,以尽其神。”即以尽其妙的意思。
⑤庶(shu)尽神歟(yu): 尽く量ハカり其の妙を用ふに発揮可以デキる也許カモしれないか!庶ショは是れ庶幾ショキ,表示は希望の詞コトバ。尽神は,《易経》に出イずる語”之を鼓コし之を舞ひ,以て尽く其の神なり。”即ち以て尽く其の妙的な意思。

欤,语气词。
歟は,語気詞。
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血证论・男女异同论1-6
血証論・男女異同論 1-6



又曰,女子胞中之血,每月一换,除旧生新,旧血即是瘀血,此血不去,便阻化机,凡为医者,
又た曰く,女子胞中の血,毎月一たび換カワり,旧を除き新を生ず,旧フルき血は即ち是れ瘀血,此の血去らずば,便ち機カナメに化すを阻ソシす,凡ボンな医者と為す,

皆知破血通经矣,
皆な破血通経を知るや,

独于男女吐衄之证,便不知去瘀生新之法,抑思瘀血不行,则新血断无生理,
男女に独り吐衄の証,便ち瘀を去り新を生ずるの法を知らず,抑ソモそも瘀血行メグらずを思へば,則ち新血は断じ生理が無し,

观月信之去旧生新,可以知之,即疮科治溃,亦必先化腐而后生肌,腐肉不化,则新血亦断无生理,
月信の旧き去り新生ずを観る,之を知るを以て可なり(可以:できる),即ち瘡科の潰を治し,亦た必ず先に腐クサり化して後に肌を生ず,腐肉が化せずば,則ち新血も亦た断じ生理無し,

且如有脓管者,必烂开腐肉,取去脓管而后止,
且つ膿管有る如き者,必ず爛開腐肉し,膿管を去り取りて後ち止む,

治失血者,不去瘀而求补血,何异治疮者,不化腐而求生肌哉,
失血を治す者,瘀去らずして補血を求む,何ぞ瘡を治すと異なる者,腐り化せずして肌を生ずるを求むか,

然又非去瘀是一事,生新另是一事也,
然り又た瘀を去り非ず是れ一事(つながりあり),新に生じるは別の是れ一事なり,

盖瘀血去则新血巳生,新血生而瘀血自去,
蓋し瘀血去らば則ち新血巳スデに生ウマる,新血生じて瘀血自ら去る,

其间初无间隔,即如月信下行,是瘀去也,
其の間初め間隔無し,即ち月信下行する如く,是れ瘀去るなり,

此时新血,已萌动于血海之中,故受孕焉,
此の時新血は,已スデに血海の中に萌モばへ動き,故に孕を受くや,

非月信巳下多时,然后另生新血也,
月信に非ず巳スデに下オる多き時,然る後に別の新血を生ずるなり,

知此,则知以去瘀为生新之法,并知以生新为去瘀之法,
此を知り,則ち去瘀を以て生新の法と為すを知る,並びに生新を以て去瘀の法と為るを知る,

生血之机有如此者,而生血之原,则又在于脾胃。
生血の機カナメは此の如く有りて,生血の原は,則ち又た脾胃に在り。


经云,中焦受气取汁,变化而赤,是为血。今且举一可见者言之,
経に云ふ,中焦は気を受け汁を取る,変化して赤く,是れ血と為る,今且シカも一つ見る可ベき者の之の言を挙アぐ,(今しかも1つわかる者言葉を挙げる)

妇人乳汁,即脾胃饮食所化,乃中焦受气所取之汁也。
婦人の乳汁,即ち脾胃飲食の化す所,乃ち中焦が気を受け之の汁を取る所なり,

妇人乳汁,则月水不行,以此汁既从乳出,便不下行变血矣。
婦人の乳汁ならば,則ち月水行らず,此の汁を以て既に乳従ヨり出イで,便ち血に変じ下行せずや,

至于断乳之后,则此汁变化而赤,仍下行而为经血。
断乳の後に至れば,則ち此の汁変化して赤く,仍ナホ下行して経血と為る,

人皆知催乳须补脾胃,而不知滋血尤须补脾胃,盖血即乳也。
人は皆な催乳は須べからく脾胃を補ふを知る,而るに血を滋すに尤トリワけ須べからく脾胃を補ふを知らず,血は即ち乳に蓋カブすなり,

知催乳法,便可知补血法,但调治脾胃,须分阴阳,
催乳法を知り,便ち補血法を知る可し,但だ脾胃を調のひ治し,須べからく陰陽に分つべし,

李东垣后,重脾胃者,但知宜补脾阳,而不知滋养脾阴,脾阳不足,水谷固不化。脾阴不足,水谷仍不化也。
李東垣の後,脾胃重き者,但だ宜しく脾陽を補ふべしと知る,而るに脾陰を滋養するを知らず,脾陽不足は,水谷固カタむに化せず,脾陰不足は,水谷仍ナほ化せざるなり,

譬如釜中煮饭,釜底无火固不熟,釜中无水亦不熟也。
譬タトへ釜中に飯を煮る如く,釜底に火無く固カタく熟さず,釜中に水無くは亦た熟さずなり。



予亲见脾不思食者,用温药而反减,用凉药而反快。予亲见催乳者,用蓍术鹿茸而乳多。
予ヨは親しく脾が食を思はざる者を見て,温薬を用ひて反て減じ,涼薬を用ひて反て快ヨロコぶ,予は親しく乳を催するに,蓍朮鹿茸を用ひて乳多しを見る,

又亲见催乳者,用蓍术鹿茸而乳转少,则以有宜不宜耳。
又た親しく催乳を見る者,蓍术鹿茸を用ひて乳は少く転じ,則ち以て宜スべきで有り宜スべからずのみ,(宜があるか)(ふさわしいだろうか)

是故宜补脾阳者,虽干姜附子转能生津,宜补脾阴者,虽知母石膏,反能开胃。
是れ故に宜しく脾陽を補ふ者は,乾姜附子と雖も転じて能く生津すべし,宜しく脾陰をふ者は,知母石膏と雖も,反て能く胃を開くべし,

补脾阳法,前人已备言之,独于补脾阴,古少发明者,子特标出,俾知一阴一阳,未可偏废。
補脾陽法,前人は已に備へ之を言ふ,補脾陰に独り,古く少し発明者,子は特に標を出イだし,一陰一陽,未だ偏廃す可からずと知ら俾シむ。




男女异同论(参看血经胎产门)1-7
男女異同論(参看血経胎産門)1-7



补脾阴以开胃进食,乃吾临证悟出,而借伤寒论存津液三字为据,此外固无证据也,书既成,后得泰西洋人医法五种,内言胃之化谷,乃胃汁化之,并有甜肉汁,
脾陰を補ひ以て開胃進食す,乃ち吾れ証に臨み悟り出て,傷寒論を借り存津液の三字は拠ヨリドコロと為し,此の外固カタむ証無しを拠となり,書は既に成り,後に泰タイを得たり西洋人医法の五種,内に言ふ胃の谷化は,乃ち胃汁が之れ化し,並びに甜ウマき肉汁⑦有りや?
――――――――――――――――――――――――――――――
⑦甜肉汁:指胰液。
⑦甜肉汁:胰スイ液エキを指す。
――――――――――――――――――――――――――――――

苦胆汁,皆入肠胃化谷,所谓汁者,即予所谓津液也,西医论脏腑,多言物而遗理,如此条者,实指其物,而尚不与理相背,适足以证予所论,故并志之。
苦胆汁,皆な腸胃に入り谷化す,謂ふ所の汁とは,即ち予ヨの謂ふ所の津液なり,西医は臓腑を論ず,多く物を言ひて遺理⑧す,此の条の如き者,実は其の物を指して,尚ほ理に相ひ背ソムくを与へず,証を以て予の論,ずる所に足り適カナへ故に並びて之に志ココロザす。
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⑧言物而遗理:言物是只谈具体事物、表面现象。遗理是忽赌其中的道理,内在的规律。
⑧言物而遺理:物を言ふ是れ只だ具体事物、表面現象を談ハナす。遺理とは是れ忽タチマち賭カケる其の中の道理,内在の規律。
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脏腑病机论1-3-1
臓腑病機論1-3-1


脏腑各有主气,各有经脉,各有部分,故其主病,亦各有见证之不同,有一脏为病,而不兼别脏之病者,单治一脏而愈,有一脏为病,而兼别脏之病者,兼治别脏而愈,业医不知脏腑,则病原莫辨,用药无方,
臓腑に各おの主気有り,各おの経脈有り,各おの部に分つ有り,故に其れ病を主り,亦た各おの証の同じからざる有りが見られ,一臓が病と為すと有りても,別臓の病を兼ぬらざる者か,単に一臓を治すして愈か,一臓のみ病と為す有りか,而るに別臓の病を兼ぬる者は,別臓の治を兼ねて愈か,医の業ナリワイは臓腑を知らずば,則ち病の原に弁莫ナく,薬を用ふるに方無しや,

乌睹其能治病哉,吾故将脏腑大旨,论列于后,庶几于病证药方,得其门径云。
烏イズクンソぞ其の能く治病を睹ミるや,吾れ故に将マサに臓腑の大旨ダイシ,後に列し論ず,病証薬方の庶幾ショキ(そうして),其の門径モンケイ(いとぐち)を得ウると云ふ。
脏腑病机论1-9


心者,君主之官,神明出焉。
心とは,君主の官,神明出イずや。

盖心为火脏,烛照事物,故司神明。
蓋し心は火臓と為し,事物を燭照ショクショウす,故に神明を司る。

神有名而无物,即心中之火气也。
神に名有る而シカし無物,即ち心中の火気なり。

然此气非虚悬无著,切而指之,乃心中一点血液,湛然朗润,以含此气,故其气时有精光发见,即为神明。
然ども此の気は虚に非ず懸カカワり無しを著アラワし,切に而して之を指す,乃ち心中の一点血液は,湛サカン然ゼンと潤ひを朗アキラカにし,以て此の気を含む,故に其の気の時は精光有り見アラワるに発す,即ち神明と為す。

心之能事,又主生血,而心窍中数点血液,则又血中之最精微者,乃生血之原泉,亦出神之渊海。
心は之れ事を能デキる,又た生血を主りて,心竅中に血液が数点なれば,則ち又た血中の最精微の者,乃ち生血の原泉にて,亦た神出ずる之れ淵フカひ海なり。

血虚则神不安而怔忡,有瘀血亦怔忡,火扰其血则懊憹,神不清明,则虚烦不眠,动悸惊惕,水饮克火,心亦动悸,血攻心则昏迷,痛欲,死。
血虚せば則ち神は安ぜずして亦た怔忡す,瘀血有り亦た怔忡あり,火にて其の血擾ミダせば則ち懊憹し,神清明ならずば,則ち虚煩不眠,動悸驚惕す,水飲にて火を克し,心亦た動悸す,血が心を攻むれば則ち昏迷し,痛むを欲し,死す。

痰入心则癫,火乱心则狂。
痰心に入らば則ち癲す,火は心を乱さば則ち狂す。

与小肠相为表里,遗热于小肠,则小便赤涩,火不下交于肾,则神浮梦遗。
小腸と相ひ表裏を為す,小腸に熱遺ノコらば,則ち小便赤く渋る,火下りず腎に交はれば,則ち神浮き夢遺す。

心之脉上挟咽喉,络于舌本。
心の脈上り咽喉を挟み,舌本に絡る。

实火上壅,为喉痹虚火上升,则舌强不能言。
実火上壅し,喉痺と為し虚火上升せば,則ち舌強コワばり言ふ能はず。

分部于胸前,火结则为结胸,为痞,为火痛。
胸前に部分け,火結さば則ち結胸と為す,痞と為す,火と為し痛む。

火不宣发,则为胸痹,心之积曰伏梁,在心下大如臂,病则脐上有动气,此心经主病之大旨也。
火が宣発せずんば,則ち胸痺と為す,心の積は伏梁と曰く,心下に在り大ひなる臂の如し,病めば則ち臍上に動気有り,此れ心経の主病の大旨なり。




脏腑病机论1-10

包络者,心之外卫。
包絡とは,心の外衛なり。

心为君主之官,包络即为臣,故心称君火,包络称相火,相心经宣布火化,凡心之能事,皆包络为之。
心は君主の官と為し,包絡は即ち臣と為す,故に心を君火と称し,包絡を相火と称す,相ひ心経を火化宣布す,凡そ心の能デキ事,皆な包絡を之と為す。

见证治法,亦如心脏。
証の治法を見るに,亦た心を臓する如し。




肝为风木之脏,胆寄其间,胆为相火,木生火也。
肝は風木の臓と為し,胆は其の間に寄り,胆は相火と為す,木は火を生ずるなり。

肝主脏血,血生于心,下行胞中,是为血海。
肝は臓血を主る,血は心に生ず,胞中を下行す,是れ血海と為す。

凡周身之血,总视血海为治乱,血海不扰,则周身之血,无不随之而安。
凡そ周身の血,総じて血海が治乱と為すを視る,血海擾ふざれば,則ち周身の血,随せざる無く之にて安ず。

肝经主其部分,故肝主脏血焉。
肝経は其の分つ部を主る,故に肝は臓血を主るや。

至其所以能藏之故,则以肝属木。
其の至る所以ユエンは能く之を蔵す故なれば,則ち肝を以て木に属す。

木气冲和条达,不致遏郁,则血脉得畅。
木気は条達を衝和す,遏郁に致さずば,則ち血脈は暢を得ウ。

设木郁为火,则血不和,火发为怒,则血横决,吐血错经血痛诸证作焉。
設カリに木郁し火と為せば,則ち血和せず,火発し怒と為り,則ち血横決す,吐血錯経血痛諸もろの証を作ナすや。

怒太甚则狂,火太甚则颊肿面青,目赤头痛。
怒り太甚なれば則ち狂,火が太甚なれば則ち頬腫れ面青く,目赤し頭痛す。

木火克土,则口燥泄痢,饥不能食,回食逆满,皆系木郁为火之见证也。
木火は土を克し,則ち口燥泄痢す,飢へて能く食らはず,食回りて逆満す,皆な木郁に系り火と為す之の証を見すなり。

若木挟水邪上攻,又为子借毋势,肆虐脾经,痰饮泄泻呕吐头痛之病又作矣。
若し木が水を挟み邪が上攻し,又た子が毋の勢を借ると為し,脾経を肆ホシイママに虐し,痰飲泄瀉嘔吐頭痛の病を又た作るや。

木之性主于疏泄,食气入胃,全赖肝木之气以疏泄之,而水谷乃化。
木の性は疏泄を主り,食気胃に入り,全て肝木の気に頼り以て之を疏泄して,而るに水谷乃ち化す。

设肝之清阳不升,则不能疏泄水谷,渗泻中满之证,在所不免。
設カリに肝の清陽が升らずば,則ち水谷を疏泄する能はず,中満の証を滲瀉す,免マぬがざる所在り。

肝之清阳,即魂气也,故又主藏魂,血不养肝,火扰其魂,则梦遗不寐。
肝の清陽,即ち魂気なり,故に又た魂を蔵すを主る,血は肝を養へず,火は其の魂を擾ふれば,則ち夢遺不寐す。

肝又主筋,瘈疭囊缩,皆属肝病。
肝は又た筋を主る,瘛疭ケイショウ嚢縮,皆な肝病に属す。

分部于季胁少腹之间,凡季胁少腹疝痛,皆责于肝。
季脇少腹の部に分つ間,凡そ季脇少腹疝痛す,皆な肝に責セむ。

其经名为厥阴,谓阴之尽也。
其の経は名づけて厥陰と為す,陰の尽きると謂ふなり。

阴极则变阳,故病至此,厥深热亦深,厥微热亦微。
陰極むれば則ち陽変き,故に病此に至る,厥深く熱し亦た深く,厥微熱し亦た微ビなり。

血分不和,尤多寒热并见,与少阳相表里,故肝病及胆,亦能吐酸呕苦,耳聋目眩,于位居左,多病左胁痛,又左胁有动气,肝之主病,大略如此。
血分和せず,尤トリワけ多く寒熱並び見られ,少陽と相ひ表裏す,故に肝病及び胆,亦た能く吐酸嘔苦,耳聾目眩,位に左に居り,多く左脇痛を病む,又た左脇に動気有り,肝の主病は,大略此の如し。



脏腑病机论1-12

胆与肝连司相火,胆汁味苦,即火味也。
胆と肝は連なり相火を司る,胆汁味苦,即ち火味なり。

相火之宣布在三焦,而寄居则在胆府。
相火の宣布は三焦に在りて,居ニン(任)じ寄ヨれば則ち胆府に在り。

胆火不旺,则虚怯惊悸,胆火太亢,则口苦呕逆,目眩耳聋,其经绕耳故也。
胆火旺せずんば,則ち虚し怯オビへ驚悸す,胆火太亢タコウせば,則ち口苦嘔逆,目眩耳聾す,其の経耳を繞マトふ故なり。

界居身侧,风火交煽,则身不可转侧,手足抽掣。
界サカイは身の側に居し,風火煽アオり交はへば,則ち身転側すべからく,手足抽掣す。

以表里言,则少阳之气,内行三焦,外行腠理,为荣卫之枢机。
以て表裏を言へば,則ち少陽の気,内は三焦に行り,外は腠理を行る,栄衛の枢機と為す。

逆其枢机,则呕吐胸满。
其の枢機逆せば,則ち嘔吐胸満す。

邪客腠理,入与阴争,则热出,与阳争,则寒。
邪が腠理を客し,入り陰争を与アズカれば,則ち熱出,陽争を与アズカへば,則ち寒コゴゆ。

故疟疾少阳主之,虚劳骨蒸,亦属少阳,以荣卫腠理之间不和,而相火炽其故也。
故に瘧疾は少陽之を主り,虚労骨蒸す,亦た少陽に属し,腠理の間なる栄衛を以て和せず,而るに相火熾ショクす其れ故へなり。

相火挟痰,则为癫痫。
相火が痰を挟めば,則ち癲癇と為す。

相火不戢,则肝魂亦不宁,故烦梦遗精。
相火戢オサマラずば,則ち肝魂亦た寧せず,故に煩し夢遺精す。

且胆中相火,如不亢烈,则为清阳之木气,上升于胃,胃土得其疏达。
且つ胆中の相火,如し亢烈せずんば,則ち清陽の木気と為し,胃に上升す,胃は土を得て其れ疏達す。

故水谷化。
故に水谷化す。

亢烈则清阳遏郁,脾胃不和。
亢烈せば則ち清陽遏エツ郁し,脾胃和せず。

胸胁之门骨尽处,乃少阳之分病,则其分多痛。
胸脇の門骨尽く処す,乃ち少陽の分病なれば,則ち其の分は多く痛む。

经行身之侧,痛则不利屈伸,此胆经主病之大略也。
経が身の側を行り,痛めば則ち屈伸不利す,此れ胆経の主病の大略なり。



脏腑病机论1-13

胃者,食廪之官,主纳水谷,胃火不足,则不思食,食入不化,良久仍然吐出,水停胸膈,寒客胃中,皆能呕吐不止。
胃とは,食廩の官,水谷を納むを主り,胃火不足せば,則ち食を思はず,食入りても化せず,良久ヨク(長い間)仍然ヤハり吐出す,水は胸膈に停トドマり,寒は胃中に客す,皆な能く嘔吐止まず。

胃火炎上,则饥不能食,拒隔不纳,食入即吐,津液枯竭,则成膈食,粪如羊屎。
胃火炎上せば,則ち飢へども食する能はず,隔は拒コバみ納せず,食入らば即ソく吐す,津液枯竭せば,則ち膈食カクショク(噎食イッショク)と成り,糞は羊屎の如し。

火甚则结鞭,胃家实则胆语,手足出汗,肌肉潮热,以四肢肌肉,皆中宫所主故也。
火甚しくば則ち結鞭し,胃家実せば則ち胆(どきょう)を語カタり,手足汗出て,肌肉潮熱す,四肢肌肉を以て,皆な中宮の主ツカサドる所の故なり。

其经行身之前,至面上,表证目痛鼻干,发痉不能仰,开窍于口,口干咽痛,气逆则哕。
其の経は身の前を行り,面上に至る,表証は目痛鼻干に,痙を発し仰アオむ能はず,口を開竅す,口乾き咽痛み,気逆せば則ち噦エツす。

又与脾相表里,遗热于脾,则从湿化,发为黄瘅。
又た脾と相ひ表裏し,脾に熱を遺ノコさば,則ち湿化に従り,黄瘅を為し発す。

胃实脾虚,则能食而不消化。
胃実脾虚せば,則ち能く食らふも消化せず。

主燥气,故病阳明,总系燥热。
燥気を主り,故に陽明を病む,総じて燥熱に系る。

独水泛水结,有心下如盘等证,乃为寒病。
独り水泛水結し,心下に盤等の如き証有り,乃ち寒病と為す。

胃之大略,其病如此。
胃の大略,其の病は此の如し。



脏腑病机论1-14

脾称湿土,土湿则滋生万物,脾润则长养脏腑。
脾は湿土と称す,土湿なれば則ち万物の生を滋す,脾潤さば則ち長く臓腑を養ふ。

胃土以燥纳物,脾土以湿化气,脾气不布,则胃燥而不能食,食少而不能化。
胃土は以て納物を燥す,脾土は以て気を化し湿す,脾気布シきずば,則ち胃燥して食ふ能はず,食少くして化す能はず。

譬如釜中无水,不能熟物也。
譬如タトエバ釜中に水無く,物が熟す能はざるなり。

故病膈食,大便难,口燥唇焦,不能生血,血虚火旺,发热盗汗。
故に膈食カクショク(膈食:噎塞に同じ 胃反で食物を吐出し、気が下らないもの)を病み,大便難,口燥唇焦げ,血を生ず能はず,血虚火旺し,発熱盗汗す。

若湿气太甚,则谷亦不化,痰饮泻泄肿胀腹痛之证作焉。
若し湿気太オオひに甚ハナハダしくば,則ち谷も亦た化せず,痰飲瀉泄腫脹腹痛の証を作すや。

湿气挟热,则发黄发痢,腹痛状热,手足不仁,小水赤涩。
湿気が熱を挟めば,則ち黄を発し痢を発す,状熱腹痛し,手足不仁,小水赤渋す。

脾积名曰痞气,在心下如盘。
脾の積は名づけて痞気と曰く,心下に在りて盤の如し。

脾病则当脐有动气,居于中洲,主灌四旁,外合肌肉。
脾病めば則ち当に臍に動気有り,中洲に居り,四旁を灌ナガシコむを主る,外は肌肉に合す。

邪在肌肉,则手足蒸热汗出,或肌肉不仁。
邪肌肉に在らば,則ち手足蒸熱し汗出,或ひは肌肉不仁す。

其体阴而其用阳,不得命门之火以生土,则土寒而不化,食少虚羸,土虚而不运,不能升达津液,以奉心化血,渗灌诸经。
其の体は陰にして其の用は陽,命門の火を得ず以て土を生ぜば,則ち土寒して化せず,食少虚羸す,土虚して運ハコばず,津液を升達する能はず,以て心は奉ホウじ血に化す,滲みて諸経に灌ナガシコむ。

经云;脾统血,血之运行上下,全赖乎脾。
経に云ふ;脾は血を統トウす,血は之れ上下に運行す,全て脾に頼る。

脾阳虚则不能统血,脾阴虚又不能滋生血脉。
脾陽虚さば則ち統血する能はず,脾陰虚は又た血脈を滋し生ずる能はず。

血虚津少,则肺不得润养,是为土不生金。
血虚し津少なば,則ち肺は潤養するを得ず,是れ土が金を生ぜずと為す。

盖土之生金,全在津液以滋之。
蓋し土は之れ金を生ず,全て津液在り以て之を滋す。

脾土之义有如是者。
脾土の義是の如き者有り。




脏腑病机论1-15

肺为干金,象天之体,又名华盖,五脏六腑,受其覆冒,凡五脏六腑之气,皆能上熏于肺以为病,故于寸口肺脉,可以诊知五脏。
肺は幹金と為し,天の体を象カタチドる,又た華蓋と名づく,五臓六腑,其の覆冒を受け,凡そ五臓六腑の気,皆な能く上り肺に熏じ以て病と為す,故に寸口肺脈に於ひて,診るを以て五臓を知るべし。(可以:~できる)

肺之令主行制节,以其居高,清肃下行,天道下际而光明。
肺の令は制節を行るを主る,以て其の居は高く,下行に清粛す,天道は際キワに下オりて光明す。

故五脏六腑,皆润利而气不亢,莫不受其制节也。
故に五臓六腑,皆な利リ潤ウルオひて気は亢せず,其の制節を受かず莫なきなり。

肺中常有津液,润养其金,故金清火伏。
肺中に常に津液有り,其の金を潤養す,故に金は火伏を清す。

若津液伤,则口喝气喘,痈痿欬嗽。
若し津液傷らば,則ち口喝気喘し,癰痿欬嗽す。

水源不清,而小便涩,遗热大肠,而大便难。
水源清せず,而るに小便渋り,大腸に遺熱して,大便難ナンす。

金不制木,则肝火旺,火盛刑金,则蒸热喘欬,吐血痨瘵并作。
金は木を製せず,則ち肝は火旺,火盛サカれば金を刑す,則ち熱蒸ムし喘欬し,吐血癆瘵ロウサイを並びて作る。

皮毛者,肺之合也。
皮毛とは,肺の合なり。

故凡肤表受邪,皆属于肺,风寒袭之,则皮毛洒淅,客于肺中,则为肺胀,为水饮冲肺。
故に凡そ膚表は邪を受け,皆な肺に属す,風寒が之に襲オソはば,則ち皮毛灑淅す,肺中に客せば,則ち肺脹と為す,水飲衝肺と為す。

以其为娇脏,故畏火,亦畏寒。
以て其れ嬌臓と為,故に火を畏イみ,亦た寒を畏イむ。

肺开窍于鼻,主呼吸,为气之总司。
肺は鼻に開竅し,呼吸を主る,気の総司と為す。

脏腑病机论1-16

盖气根于肾,乃先天水中之阳,上出鼻,肺司其出纳,肾为水,肺为天,金水相生,天水循环。
蓋し気は腎に根ざす,乃ち先ず水中の陽天にし,上りて鼻に出で,肺は其の出納を司る,腎は水と為り,肺は天と為る,金水相ひ生じ,天水循環す。

肾为生水之原,肺即为制气之主也。
腎は生水の原と為し,肺は即ち制気と為し之れ主るなり。

凡气喘欬息,故皆主于肺,位在胸中,胸中痛属于肺,主右胁,积日息贲。
凡そ気喘欬息は,故に皆な肺を主り,位は胸中に在り,胸中の痛みは肺に属し,右脇を主り,日の賁カザリ(光明)を積む。

病则右胁有动气。
病めば則ち右脇に動気有り。

肺为之义,大率如是。
肺は之の義と為し,大率リツ(大略)是の如し。



脏腑病机论1-17

肾者水脏,水中含阳,化生元气,根结丹田,内主呼吸,达于膀胱,运行于外则为卫气。
腎とは水臓,水中に陽を含み,化し元気を生ず,根は丹田に結し,内は呼吸を主り,膀胱に達す,外を運行せば則ち衛気と為す。

此气乃水中之阳,别名之曰命火,肾水充足,则火之藏于水中者,韬光匿彩,龙雷不升,是以气足而鼻息细微。
此の気乃ち水中の陽,別名之れ命火と曰く,腎水充足せば,則ち火は之を水中に蔵す者,韜トウ光コウ匿トク彩サイ(隠された計略),竜雷升らず,是れ以て気足りるも鼻息細微なり。

若水虚,则火不归元,喘促虚痨,诸证并作,咽痛声哑,心肾不交,遗精失血,肿满欬逆,痰喘盗汗。
若し水虚せば,則ち火は元に帰せず,喘促虚癆し,諸証並びに作ナし,咽痛声唖,心腎不交,遺精失血,腫満欬逆,痰喘盗汗す。

如阳气不足者,则水泛为痰,凌心冲肺,发为水肿,腹痛奔豚,下利厥冷,亡阳大汗,元气暴脱。
如へば陽気不足の者なれば,則ち水泛し痰と為り,心を凌リョウ(しのぐ)し肺を衝ツき,発し水腫と為す,腹痛奔豚,下利厥冷,亡陽大汗,元気暴脱す。

肾又为先天,主藏精气,女子主天癸,男子主精。
腎は又た先天と為し,精気を蔵すを主る,女子は天癸を主る,男子は精を主る。

水足则精血多,水虚则精血竭。
水足らば則ち精血多し,水虚さば則ち精血竭ツクす。

于体主骨,骨痿故属于肾。
体に於て骨を主り,骨痿ナふが故に腎に属す。

肾病者,脐下有,动气。
腎病む者は,臍サイ下に有り,動気す。

肾上交于心,则水火既济,不交则火愈亢。
腎上り心に交はれば,則ち水火既に済スみ,交はらずんば則ち火愈は亢す。

位在腰,主腰痛,开窍于耳,故虚则耳鸣耳聋。
位は腰に在り,腰痛を主る,耳に開竅し,故に虚すれば則ち耳鳴耳聾す。

瞳人属肾,虚则神水散缩,或发内障,虚阳上泛,为咽痛颊赤,阴虚不能化水,则小便不利。
人の瞳は腎に属す,虚すれば則ち神水散縮し,或ひは内障を発し,虚陽上泛す,咽痛頬赤を為し,陰虚し水化す,能はざれば則ち小便不利す。

阳虚不能化水,小便亦不利也,肾之病机,有如此者。
陽虚し水化す能はずば,小便亦た不利するなり,腎の病機,此の如く有る者なり。
脏腑病机论1-18

膀胱者,贮小便之器,经谓洲都之官,津液藏焉,气化则能出矣。
膀胱とは,小便を貯タむる器,洲都の官を謂ふを経て,津液を蔵すや,気化すれば則ち能く出ずるや。

此指汗出,非指小便,小便虽出于膀胱,而实则肺为水之上源。
此れ汗出を指し,小便を指すに非ず,小便が膀胱より出で雖し,而るに実せば則ち肺が水の上源と為す。

上源清,则下源自清。
上源清せば,則ち下源自オノズカら清す。

脾为水之堤防,堤防利,则水道利。
脾は水の堤防と為す,堤防利せば,則ち水道利す。

肾又为水之主,肾气行,则水行也,经所谓气化则能出者,谓膀胱之气,载津液上行外达,出而为汗,则有云行雨施之象。
腎は又た水の主と為す,腎気行らば,則ち水行るなり,経の所謂る気化せば則ち能く出ずる者は,膀胱の気を謂ふ,津液に載り上行し外達す,出でて汗と為れば,則ち雲有り行り雨を施すの象なりと。

故膀胱称为太阳经,谓水中之阳,达于外以为卫气,乃阳之最大者也。
故に膀胱は太陽経と称すと為す,水中の陽と謂ひ,外に達し以て衛気と為す,乃ち陽の最大なる者なり。

外感则伤其卫阳,发热恶寒。
外感せば則ち其の衛陽傷ヤブり,発熱悪寒す。

其经行身之背,上头项,故头项痛,背痛,角弓反张,皆是太阳经病。
其の経は身の背を行り,頭項に上る,故に頭項痛,背痛,角弓反張す,皆な是れ太陽経の病なり。

皮毛与肺合,肺又为水源,故发汗须治肺,利水亦须治肺,水天一气之义也。
皮毛と肺が合ガッし,肺は又た水源と為し,故に発汗し須べからく肺を治すべし,利水も亦た須べからく肺を治すべし,水天は一つの気の義なり。

位居下部,与胞相连,故血结亦病水,水结亦病血。
位は下部に居り,胞と相ひ連ツラなる,故に血と結し亦た水を病む,水結し亦た血を病む。

膀胱之为病,其略有如此。
膀胱は之れ病むと為し,其の略リャクは此の如き有り。



脏腑病机论1-19

三焦,古作膲,即人身上下内外相联之油膜也。
三焦は,古くは膲に作り,即ち人身上下内外相聯の油膜なり。

唐宋人不知膲形,以为有名而无象,不知内经明言焦理纵者,焦理横者,焦有文理,岂得谓其无象。
唐宋人は膲の形知らず,以て(以為:~と考える)名有りて象カタチ無しと為す,内経に焦は縦タトへ理トトノふ者と明言するを知らず,焦を横ムヤミに理する者,焦に文理有りと,豈に其れ無象と謂ふを得ウるか。

西洋医书,斥中国不知人有连网。
西洋医書は,中国人の連網有るを知らずを斥す。

言人饮水入胃,即渗出走连网而下,以渗至膀胱。
人が水を飲み胃に入り,即ち滲出し連網して下に走り,以て膀胱に至りて滲ニジムと言ふ。

膀胱上口,即在连网中也。
膀胱の上口は,即ち連網中に在るなり。

中国医林改错一书,亦言水走网油而入膀胱,观剖牲畜,其网油中有水铃铛,正是水过其处,而未入膀胱者也。
中国の医林改錯の一書に,亦た言ふ水は網油を走りて膀胱に入り,牲セイ(家畜)畜を剖ボウし観るに,其の網油中に水の鈴鐺トウ(鐺:縄)有り,正に是れ水が其の処を過カして,未だ膀胱に入らざる者なり。

此说近出力,斥旧说之谬。
此の説近ごろ出力し,旧説の謬マチガイを斥ハイす。

而不知唐宋后,古膲作焦,不知膜油,即是三焦,是以致谬。
而るに唐宋の後,古き膲を焦に作るを知らず,油の膜は,即ち是れ三焦なるを知らず,是れを以て謬マチガイと致す。

然内经明言三焦者,决渎之官,水道出焉。
然り内経に三焦と明言する者は,決涜の官,水道出ずや。

与西洋医法,医林改错正合。
西洋医法と,医林改錯は正合す。

古之圣人,何尝不知连网膜膈也哉。
古イニシエの聖人,何を嘗て連網膜膈を知らずなりや。

按两肾中一条油膜,为命门,即是三焦之原,上连肝气,胆气,及胸膈,而上入心,为包络,下连小肠大肠,前连膀胱,下焦夹室,即血室气海也。
按ずるに両腎中一条油膜は,命門と為す,即ち是れ三焦の原,上は肝気,胆気に連り,及び胸膈は,而るに上り心に入り,包絡と為し,下り小腸大腸に連り,前は膀胱に連り,下焦は室を夾む,即ち血室気海なり。

循腔子为肉皮,透肉出外,为包裹周身之白膜,皆是三焦所司。
腔子を循り肉皮と為し,肉を透し外へ出で,周身の白膜を裹ツツみ包ずと為す,皆な是れ三焦の司どる所。

白膜为腠理,三焦气行腠理,故有寒热之证。
白膜は腠理と為し,三焦の気は腠理を行り,故に寒熱の証有り。

命门相火布于三焦。
命門の相火は三焦を布シく。

火化而上行为气。
火化して上行し気と為す。

火衰则元气虚,火逆则元气损,水化而下行为溺,水溢则肿,结则淋。
火衰ふれば則ち元気虚す,火逆せば則ち元気損す,水化して下り行り溺ニョウと為す,水溢イツせば則ち腫れ,結せば則ち淋リンす。

连肝胆之气,故多挟木火,与肾心包相通,故原委多在两处,与膀胱一阴一阳,皆属肾之府也,其主病知矣。
肝胆の気連り,故に多く木火を挟む,腎と心包は相ひ通ず,故に原委ゲンイ(顛末)は多く両処に在り,膀胱は一陰一陽を与へ,皆な腎の府に属するなり,其れ主病を知るや。



脏腑病机论1-20

小肠者,受盛之官,变化出焉。
小腸とは,受盛の官,変化出ずや。

上接胃府,下接大肠,与心为表里,遗热则小水不清,与脾相连属,土虚则水谷不化。
上は胃府に接し,下は大腸に接す,心と表裏を為し,熱遺ノコせば則ち小水清ならず,脾と相ひ連なり属ず,土虚すれば則ち水谷化せず。

其部分,上与胃接,故小肠燥屎,多借胃药治之。
其の分ワカつ部は,上は胃と接す,故に小腸燥屎す,多く胃薬を借り之を治す。

下与肝相近,故小肠气痛,多借肝药治之。
下は肝と相ひ近く,故に小腸気痛し,多く肝薬を借り之を治す。



脏腑病机论1-21

大肠司燥金,喜润而恶燥,寒则滑脱,热则秘结,泄痢后重,痔漏下血。
大腸は燥金を司り,潤ウルオイを喜びて燥を悪イむ,寒すれば則ち滑脱し,熱すれば則ち秘結す,泄痢後重,痔漏下血す。

与肺相表里,故病多治肺以治之,与胃同是阳明之经,故又借多治胃之法以治之。
肺と相ひ表裏し,故に肺を治す病多く以て之を治す,胃と同じ是れ陽明の経なり,故に又た多く胃の法を治すを借り以て之を治す。



脏腑病机论1-22

以上条列,皆脏腑之性情部位,各有不同,而主病亦异。
以上条に列す,皆な臓腑の性情部位,各おの不同有り,而るに主病も亦た異なる。

治杂病者宜知之,治血证者,亦宜知之,临证处方,分经用药,斯不致南辕北辙耳。
雑病を治す者は宜しく之を知るべし,血証を治す者は,亦た宜しく之を知るべし,証に臨み方を処し,経に分け薬を用ふ,斯れは南轅北轍(ちぐはぐだ)を致さざるのみ。(南辕北辙:南へゆこうとして,車を北に走らせる。行動が目的に反していることにたとえていう。)



脉证死生论
脈証死生論

脉证死生论1-23

医者,所以治人之生者也,未知死,焉知生,知死之无可救药,则凡稍有一毫之生机,自宜多方调治,以挽回之。
医とは,所以る人の生を治す者なり,未だ死を知らず,焉ドウシて生を知る,死は之れ救薬す可き無きを知る,ひ則ち凡そ稍に一毫の生機有り,宜しく多くの方を調治すべき自ヨり,以て之を挽回す。

欲辨死生,虽明脉证。
死生を弁ずと欲し,雖ダが脈証を明アキラカにす。

高士宗以吐血多者为络血。
高士宗は吐血の多き者を以て絡血(網状血管)と為す。

吐血少者为经血。
吐血少き者は経血と為す。

谓吐多者病轻,吐少者病重。
吐多き者は病軽し,吐少き者は病重しと謂ふ。

而其实经散为络,络散为孙络,如干发为枝,又天有枝,要皆统于一本也。
而るに其の実経散は絡となし,絡散ずれば絡に孫りと,為し乾ホした発の如き枝と為り,又た天に枝有り,要は皆な一本に統すなり。

以经络之血分轻重,实则分无可分。
以て経絡の血分軽重は,実せば則ち分かつに分ワけ可ベき無し。

医旨又谓外感吐血易治,内伤吐血难疗。
医の旨カンガへは又た謂ふ外感吐血は治し易しと,内傷の吐血は療し難しと。

三指禅,谓齿衄最轻,鼻衄次之,呕吐稍重,欬咯唾血为最重,谓其病皆发于五脏,而其血之来最深,不似呕吐之血,其来出于胃间,犹浅近也。
三指禅サトリに,歯衄は最も軽く,鼻衄は之の次,嘔吐は稍に重く,欬咯唾血は最も重く為すと謂ふ,其の病を皆な五臓に発し,而るに其の血は之れ最も深く来たり,嘔吐の血に似ず,其の胃間に出来たるは,猶ほ浅く近しと謂ふなり。

此如仲景近血远血之义。
此れ仲景の近血遠血の義の如し。

以此分轻重,于理尚不差谬。
以て(だから)此れ軽重に分け,理を尚ほ謬ビュ(間違い)を差ツカワず。

第鼻衄呕吐血,虽近而轻,而吐衄不止,亦有气随血脱,登时即死者。
第ツギに鼻衄嘔吐血,近しと雖も而るに軽く,而し吐衄止まず,亦た気に随ひ血脱する有り,登時タチマチ即スぐ死す者や。

欬咯唾血虽远而重,亦有一哈便出,微带数口,不药可愈者。
欬咯唾血は遠くと雖も重く,亦た一イチ哈ノミ便ち出デる有り,帯微ワズか口数カズ,薬せず癒可ベき者なり。

仍不可执以定死生矣。
仍ほ死生を定むを以て執トるべからずか。

夫载气者,血也,而运血者,气也,人之生也,全赖乎气。
夫れ気に載る者は,血なり,而シカも血を運ハコぶ者も,気なり,人の生なり,全く気であるに頼る。

血脱而气不脱,虽危犹生,一线之气不绝,则血可徐生,复还其故。
血脱して気脱せず,危ふきと雖も猶ほ生イく,一線の気絶タへず,則ち血は徐オモムロに生く可し,復た還る其の故なり。

血未伤而气先脱,虽安必死。
血未だ傷れずして気先に脱すは,安ヤスきと雖も必ず死す。

以血为魄,而气为魂,魄未绝而魂先绝,未有不死者也。
以て血は魄ハクと為し,而るに気は魂コンと為す,魄ハク未だ絶えずして魂コン先に絶ゆ,未だ死せざる者有るなり。

故吾谓定血证之死生者,全在观气之平否。
故に吾れは血証の死生を定む者は,全て気の平タイラかなるを否アラざるかを観るに在すと謂ふ。
脉证死生论1-24

吐血而不发热者易愈,以荣虽病而卫不病,阳和则阴易守也。
吐血して熱発せず者は愈へ易し,栄を以て病むと雖も而るに衛病まず,陽和せば則ち陰守り易きなり。

发热者难治,以血病气亦蒸,则交相为虐矣。
熱を発する者は治し難し,血病を以て気は亦た蒸せば,則ち相ひ交はりて虐と為すや。

吐血而不欬逆者易愈。
吐血して欬逆せざる者は愈へ易し。




欬为气呛,血伤而气不呛,是肾中之水,能纳其气以归根,故易愈。
欬は気呛ムセルと為す,血傷れて気呛ムセらずは,是れ腎中の水,能く其の気を納め以て根に帰す,故に愈ゆ易し。

若欬不止,是血伤火灼,肾水枯竭,无以含此真气,故上气欬逆为难治,再加喘促,则阳无所附矣。
若し欬止まずは,是れ血が火灼に傷れ,腎水枯竭し,此の真気を含むを以て無し,故に上気欬逆は治し難しと為す,再び喘促を加ふれば,則ち陽は附く所無しや。




大便不溏者,犹有转机,可用滋阴之药,以养其阳。
大便溏とうせざる者は,猶ほ転機有り,滋陰の薬を用ひ,以て其の陽を養ふ可し。

若大便溏,则上越下脱,有死无生。
若し大便溏せば,則ち上越へ下脱す,死有り生無し。

再验其脉,脉不数者易治,以其气尚平。
再び其の脈を験シラべ,脈不数の者は治し易し,其の気を以て尚ほ平らかにす。

脉数者难治,以其气太疾。
脈数の者は治し難し,其の気を以て太ハナはだ疾す。

浮大革数而无根者,虚阳无依,沉细涩数而不缓者,真阴损失,皆为难治。
浮大し革数にて無根の者は,陽虚し依る無し,沈細渋数にして緩せざる者は,真陰損失す,皆な治し難しと為す。

若有一丝缓象,尚可挽回。
若し一糸緩象有らば,尚ほ挽回す可し。

若无缓象,或兼代散,死不治矣。
若し緩象無く,或ひは代散を兼ぬるは,死す治せずや。

凡此之类,皆是阴血受伤,而阳气无归,故主不治。
凡そ此の類,皆な是陰血が傷を受けて,陽気帰す無し,故に不治を主る。

若阴血伤,而阳气不浮越者,脉虽虚微迟弱,亦不难治,但用温补无不回生。
若し陰血傷て,而るに陽気浮越せざる者は,脈が虚微遅弱と雖も,亦た治し難ず,但だ温補を用ひ回生せざる無し。

盖阳虚气弱者亦治,惟阴虚气不附者为难治。
蓋し陽虚気弱の者は亦た治す,惟シカし陰虚の気が附かざる者は難治と為す。

所谓血伤而气不伤者,即以气之不伤,而知其血尚未尽损,故气犹有所归附,而易愈也。
所謂る血傷れて気傷れざらず者は,即ち気の傷れずを以て,而るに其の血尚ほ未だ尽き損ぜずを知る,故に気猶ほ帰附す所有りて,愈へ易きなり。

气之原委,吾于水火血气论已详言之,参看自见。
気の原委(一部終始)は,吾の水火血気論に已に詳しく之を言ふ,見アツて自カラ参看せよ。



用药宜忌论
用薬宜忌論

脉证死生论1-25

汗吐攻和,为治杂病四大法。
汗・吐・攻・和は,治し雑き病の四大法と為す。

而失血之证,则有宜不宜。
而るに失血の証ならば,則ち宜しき有り宜しからず。

伤寒过汗伤津液,吐血既伤阴血,又伤水津,则水血两伤,苶(nie)然枯骨矣。
傷寒にて過汗し津液を傷り,吐血し既に陰血を傷り,又た水津を傷らば,則ち水血両傷し,苶ニー(ぐったりする)然ゼンと骨枯るるや。

故仲景于衄家严戒发汗,衄忌发汗,吐咯可知矣,夫脉潜气伏,斯血不升,发汗则气发泄,吐血之人,气最难敛,发泄不已,血随气溢,而不可遏抑。
故に仲景は衄家の発汗を厳戒す,衄は発汗を忌む,吐咯は知る可しや,夫れ脈は気伏に潜み,斯ソの血升らず,発汗せば則ち気は発泄す,吐血の人,気は最も斂レンし難し,発泄已オワらず,血に随ひ気溢アフれ,而シカも抑遏すべからず。

故虽有表证,止宜和散,不得径用麻桂羌独。
故に表証有りと雖も,宜しく和散を止むべし,径サシワタし麻桂羌独を用ふを得ず。

果系因外感失血者,乃可从外表散,然亦须敛散两施,毌令过汗亡阴,盖必知血家忌汗,然后可商取汗之法。
果ハタシて系カカる因にて外感失血する者は,乃ち外表の散従り可なり,然り亦た須べからく斂散の両を施ホドコし,令過汗をして亡陰する毌ナカれ,蓋し必ず血家は汗を忌むを知り,然る後に取汗の法を商アキナふ(相談する)可し。



用药宜忌论1-26

至于吐法,尤为严禁,失血之人,气既上逆,若见有痰涎,而复吐之,是助其逆势,必气上不止矣。
吐法に至り,尤トリワけ厳禁と為す,失血の人,気が既に上逆す,若し痰涎有りが見らるれば,復た之れ吐す,是れ其の逆勢を助タスく,必ず気の上りを止めざるや。

治病之法,上者抑之,必使气不上奔,斯血不上溢,降其肺气,顺其胃气,纳其肾气。
治病の法,上の者は之を抑アツぐ,必ず気をして上奔せず,斯コの血上溢せず,其の肺気降り,其の胃気順し,其の腎気納む。

气下则血下,血止而气亦平复。
気下れば則ち血下る,血止みて気亦た平タイラカに復す。

血家最忌是动气,不但病时忌吐,即已愈后,另有杂证,亦不得轻用吐药。
血家の最も忌むは是れ動気なり,病時に吐を忌む(不但)だけでなく,即ち已癒イユ後に,別の雑証有り,亦た軽く吐薬を用ふ得ざるなり。

往往因吐便发血证,知血证忌吐,则知降气止吐,便是治血之法。
往往に吐に因て便ち血証を発す,血証は吐を忌むを知り,則ち降気は止吐を知る,便ち是れ治血の法なり。


或问血证多虚,汗吐且有不可,则攻下更当忌矣。
或ひは血証多く虚すを問ふ,汗吐で且スら不可有り,則ち攻下は更に当に忌むべきや。

予曰不然,血之所以上者,以其气腾溢也,故忌吐汗,再动其气。
予は不然(そうではない)と曰く,血の上なる所以ユエンの者は,其の気騰溢を以てなり,故に吐汗を忌み,再び其の気を動す。


用药宜忌论1-27

至于下法,乃所以折其气者,血证气盛火旺者,十居八九,当其腾溢,而不可遏,正宜下之以折其势。
下法に至り,乃ち其の気を折る所以ユエンの者,血証気火旺盛なる者,十に八九居り,当に其の騰溢すべき,而シカし遏アツべからず(不可遏:押さえきらず),正に宜しく之を下し以て其の勢を折る。

仲景阳明证,有急下以存阴法。
仲景の陽明証,急ぎ下し以て陰を存する法有り。

少阴证,有急下以存阴法,血证火气太盛者,最恐亡阴,下之正是救阴,攻之不啻补之矣。
少陰証,急ぎ下し以て陰を存する法有り,血証にて火気太盛の者,最も亡陰を恐る,之を下し正に是れ陰を救ふ,之を攻め啻タダ之を補はずや矣。

特下之须乘其时,如实邪久留,正气已不复支,或大便溏泻,则英雄无用武之地,只可缓缓调停,纯用清润降利,以不违下之意,斯得法矣。
特ワザわざ之を下し須べからく其の時に乗ず,如し実邪久しく留トドマり,正気が已スデに支ササへ復せず,或ひは大便溏瀉なれば,則ち英雄無用の武の地にて,只だ緩緩(ゆっくり)に調停すべき,純ジュンに清潤降利を用ひ,以て下へ違ソムかずの意は,斯ココに法を得るや(これは適切だ)。


至于和法,则为血证之第一良法。
和法に至れば,則ち血証の第一良法と為す。

表则和其肺气,里者和其肝气,而尤照顾脾肾之气,或补阴以和阳,或损阳以和阴,或逐瘀以和血或泻水以和气,或补泻兼施,或寒热互用,许多妙义,未能尽举。
表なれば則ち其の肺気を和す,裏なる者は其の肝気を和す,而るに尤も脾腎の気を照顧する,或ひは和陽を以て補陰し,或ひは和陰を以て損陽,或ひは和血を以て逐瘀し或ひは和気を以て瀉水し,或ひは補瀉を兼ね施し,或ひは寒熱互用す,許多タクサン妙義あり,未だ挙に尽す能はず。


四法之外,又有补法,血家属虚痨门,未有不议补者也。
四法の外,又た補法有り,血家は虚癆門に属す,未だ補を議ギ(協議する)せざる有らず者なり。

即病家亦喜言补。
即ち病家は亦た補と言ふを喜ぶ。

诸书重补者,尤十之八九,而不知血证之补法,亦有宜有忌。
諸もろの書に重き補の者,尤モットも十の八九に,而るに血証の補法を知らず,亦た宜ヨロシ有り忌イむ有り。

如邪气不去而补之,是关门逐贼,瘀血未阴而补之,是助贼为殃。
如し邪気去らずして之を補ふは,是れ関門逐賊(閉めて泥棒を追う)にて,瘀血が未だ陰ならずして之を補ふ,是れ賊を助け殃ワザワイと為す。

当补脾者十之三四,当补肾者十之五六,补阳者十之二三,补阴者十之八九。
当に補脾すべきの者は十に三四,当に補腎すべき者は十に五六,補陽の者は十に二三,補陰の者は十に八九なり。

古有补气以摄血法,此为气脱者说,非为气逆者说。
古イニシエに摂血法を以ての補気有り,此れ気脱者の説と為し,気逆者の説と為すに非ず。

又有引火归元法,此为水冷火泛者立说,非为阴虚阳越者立说。
又た引火帰元法有り,此れ火泛の者の立説にて水冷と為す,陰虚陽越の者の立説に為すに非ず。

盖失血家如火未发,补中则愈。
蓋し失血家は火が未だ発せずの如し,中を補ふれば則ち愈ゆ。

如火已发,则寒凉适足以伐五脏之生气,温补又足以伤两肾之真阴,惟以甘寒,滋其阴而养其阳血,或归其位耳。
如し火が已に発せば,則ち寒涼に適し足る以て五臓の生気を伐ウちて,温補又は両腎の真陰を傷るを以て足る(足以:十分だ),惟タだ(惟:思うに)甘寒を以て,其の陰を滋して其の陽血を養ふ,或ひは其の位(場所)に帰するのみ。

血家用药之宜忌,大率如是,知其大要,而后细阅全书,乃有把握。
血家は用薬の宜忌を,大率オオヨソ是の如くす,其の大要を知る,而る後に書全スベてを細閲サイランす,乃カクて把握有り。
本书补救论
本書補救論

本书补救论1-28


世之读朱丹溪书者,见其多用凉药,于是废黜热药,贻误不少,而丹溪不任咎也。
世の読む朱丹渓書は,其の涼薬多き用ふを見る,是れ熱薬を廃黜ハイシュツ(廃止)す,誤りを貽ノコすに少なからず,而るに丹渓を任ずを咎トガむなり(丹渓は責任をとらない)。

盖丹溪之书,实未常废热药。
蓋し丹渓の書,実に未だ常に熱薬を廃せず。

世之读陈修园书者,见其多用热药,于是废黜凉药,为害尤多,而修园不任咎也。
世の読む陳修園書は,其の熱薬多き用ふを見る,是れ涼薬を廃黜ハイシュツす,害と為す尤カシツ(過失)多く,而るに修園をも任ずを咎トガむなり。

盖修园之书,实未尝废凉药。
蓋し修園の書,実に未だ嘗て涼薬を廃さず。

两肾立论,不过救一时之偏,明一已之见,世之不善读者,得其所详,忽其所略,岂知两肾所略,亦曰人所已详,吾固不必详焉耳,初何尝废黜不言哉?
両腎の立論,一時の偏を救ふに過さず(不過:それに越したことはない),明アキらかに一已イ之コレを見て,世の善く読まざる者は,其の詳しき所と,忽タチマtち其の略す所を得て,豈に両腎の略す所を知るや,亦た人曰く所已スデに詳クワシく,吾れ必ずしも詳しく固むのみや,初めから何を嘗て廃黜ハイシュツと言はざるや?

即如予作此书,亦多用凉药,少用热药,然非弃热药而不用。
即ち如し予が此の書を作るは,亦た涼薬を多用し,熱薬を少用す,然り熱薬を棄スつるに非ずして用ひず。

特以血症宜凉者多,非谓血症全不用热药也。
特タだ血症を以て宜しく涼すべき者多く,血症の全スベて熱薬を用ひずと謂ふに非ざるなり。

予于每条当用热药者,未尝不反覆言之,慎毋误读是书,而有偏重凉药之弊。
予は毎条に熱薬を当用する者に,未だ嘗て之の言コトバを反して覆クツガへず,慎しみて是の書を誤読する毋ナカれ,而サラに涼薬の弊を偏重する有り。

总在分别阴阳,审症处方,斯无差忒。
総じて陰陽を分別する在り,審ツマビラカに症を処方し,斯ココに忒タガふ差は無し。

又予是书为血症说法,与杂症不同,泥此书以治杂症固谬,若执杂症以攻此书,尤谬。
又た予は是の書を血症説法する為に,雑症と同じからず,泥此の書を以て雑症の謬マチガイを固め治す,若し雑症を執トるに以て此の書を攻むらば,尤も謬アヤマチなり。

读吾书者,未知流弊若何,吾且为此论,先下一针砭。
吾が書を読む者,未だ流弊は若何イカン(どのようか)かを知らず,吾れ且つ(その上)此の論と為す,先に一針シン砭セキに下ウ(くだる、示す、生む)む。


血证论卷一终

巻2


血证论卷二
血証論巻二

吐血2-1

吐血
吐血

平人之血,畅行脉络,充达肌肤,流通无滞,是谓循经,谓循其经常之道也,一旦不循其常,溢出于肠胃之间,随气上逆,于是吐出。
平人の血,脈絡を暢行す,肌膚に充達し,滞り無く流通す,是れを循経と謂ふ,循は其の経常の道と謂ふなり,一旦其の常を循らずんば,腸胃の間に溢出し,気の上逆に随し,是れ吐出す。

盖人身之气游于血中,而出于血外,故上则出为呼吸,下则出为二便,外则出于皮毛而为汗。
蓋し人身の気は血中に遊オヨぎ,而るに血外に出る,故に上ノボらば則ち呼吸と為すに出で,下クダれば則ち二便と為すに出て,外なれば則ち皮毛に出て汗と為す。

其气冲和则气为血之帅,血随之而运行,血为气之守,气得之而静谧。
其の気が和に衝ススめせば則ち気は血の帥と為し,血は之に随して運行す,血は気の守マモリと為し,気は之を得て而るに静セイ謐シツなり。

气结则血凝,气虚则血脱,气迫则血走,气不止而血欲止,不可得矣。
気結せば則ち血凝す,気虚せば則ち血脱す,気迫ハクせば則ち血走ハシる,気止まらざれば而ち血止トまんと欲す,得ウべからずや(いけない)。




方其未吐之先,血失其经常之道,或由背脊走入膈间,由膈溢入胃中。
方は其れ未だ吐の先にならず,血失し其の経は常の道,或ひは背脊が膈間に走入する由カラに,膈溢し胃中に入るに由マカす。

病重者其血之来,辟辟弹指,漉漉有声,病之轻者,则无声响。
病重き者は其の血之れ来キたる,弾指ダンシを闢闢ヘキヘキと(避け),漉漉ロクロクと声有り,病の軽き者なれば,則ち声響無し。

(辟辟弹指)
(とても短い時間をすこし避ける)

(漉漉有声)
(すこし湿って声がする)

故凡吐血,胸背必痛,是血由背脊而来,气迫之行,不得其和,故见背痛之证也。
故に凡スベての吐血は,胸背必ず痛む,是れ血が背脊由カラ而るに来キたり,気迫の行メグり,其れを和すを得ず,故に背痛の証が見アラはるるなり。




又或由两胁肋,走油膜,入小肠,重则潮鸣有声,逆入于胃,以致吐出。
又た或ひは両脅肋由ヨり,油膜(三焦)を走り,小腸に入る,重オモくれば則ち潮鳴の声有り,胃へ逆入し,以て吐出を致す。

故凡失血,复多腰胁疼痛之证。
故に凡スベての失血も,復た腰脇疼痛の証に多し。




此二者,来路不同,治法亦异。
此の二者は,路ミチ来クるに同じからず,治法も亦た異コトナる。




由背上来者,以治肺为主。
背上由ヨりに来る者,肺を治すを以て主と為す。




由胁下来者,以治肝为主。
脇下由ヨり来る者,肝を治すを以て主と為す。




盖肺为华盖,位在背与胸膈,血之来路,既由其界分溢出,自当治肺为是。
蓋し肺は華蓋と為し,位は背と胸膈に在り,血の来キたる路(血の出所)にて,既に其の界カイ分ワカれに由ヨり溢出す,当に肺を治す自ヨり是と為す。

肝为统血之脏,位在胁下,血从其地而来,则又以治肝为是。
肝は統血の臓と為す,位は脇下に在り,血が其の地従ヨりて来キたれば,則ち又た肝を治すを以て是と為す。




然肝肺虽系血之来路,而其吐出,实则胃主之也。
然り肝肺は血の来路に系ると雖も,而し其の吐出,実すれば則ち胃が之を主るなり。

凡人吐痰吐食,皆胃之咎,血虽非胃所主,然同是吐证,安得不责之于胃。
凡オヨそ人の吐痰吐食,皆な胃の咎トガ(禍ワザワイ)なり,血は胃の主さどる所に非ざると雖も,然り同じ是れ吐証なり,之れ胃を責めず安じ得る(胃を責めずを得て安ず)。

况血之归宿,在于血海,冲为血海,其脉丽于阳明,未有冲气不逆上,而血逆上者也。
況んや血の帰宿は,血海に在り,衝は血海と為す,其の脈陽明に麗タヨる,未だ衝気が逆上せざる有らず,而るに血逆上する者なり。




血证论卷二
血証論巻二

吐血2-2


仲景治血以治冲为要,冲脉丽于阳明,治阳明即治冲也。
仲景の治血は衝を治すを以て要カナメと為す,陽明に麗タヨる,陽明を治すは即ち衝を治すなり。


阳明之气,下行为顺,今乃逆吐,失其下行之令,急调其胃,使气顺吐止,则血不致奔脱矣。
陽明の気,下行すを順と為す,今乃シカルノチ逆し吐し,其の下行の令を失す,急ぎ其の胃を調ふ,気をして吐止を順すれば,則ち血も奔脱を致さざるや。

此时血之原委,不暇究治,惟以止血为第一要法。
此の時血は之れ原モトに委マカせ,究治を暇イトマず,惟だ止血を以て第一要法と為す。




血止之后,其离经而未吐出者,是为瘀血,既与好血不相合,反与好血不相能,或壅而成热,或变而为痨,或结瘕,或刺痛,日久变证,未可预料,必亟为消除,以免后来诸患,故以消瘀为第二法。
血止の後,其の経を離しても未だ吐出する者は,是れ?血と為す,既に好ヨく血と相ひ合さず,反て与好く血と相ひ能はざる,或ひは壅フサぎて成熱し,或ひは変じて癆ロウと為り,或ひは結?,或ひは刺痛し,日久しく変証す,未だ預料ヨリョウ(預料:予測する)すべからず,必ず亟シバシバ消除ショウジョ(消除:消える)と為す,以て免じた後に諸患が来る,故に消?を以て第二法と為す。




止吐消瘀之后,又恐血再潮动,则须用药安之,故以宁血为第三法。
吐止み消?の後,又た血再び潮動するを恐る,則ち須べからく之を安ずる薬を用ふ,故に寧ネイ血を以て第三法と為す。




邪之所凑,其正必虚,去血既多,阴无有不虚者矣,阴者阳之寸,阴虚则阳无所附,久且阳随而亡,故又以补虚为收功之法。
邪の湊アツムる,其の正は必ず虚す,去血は既に多く,陰無くば虚せざる者が有るや,陰とは陽の寸,陰虚せば則ち陽は附く所無し,久しく且サへも陽は随して亡ボウす,故に又た補虚を以て収功の法と為す。




四者乃通治血证之大纲,而纲领之中,又有条目,今并详于下方云。
四者は乃ち血証の大綱を通治して,綱領の中に,又た条目有り,今並びに詳ツマビラカに下方に云ふ。





吐血・一止血2-3


一止血。
一止血。

其法独取阳明,阳明之气,下行为顺。
其の法独り陽明を取る,陽明の気,下行を順と為す。

所以逆上者,以其气实故也,吐血虽属虚证,然系血虚非气虚。
逆上する所以は,其の気を以て実なる故なり,吐血は虚証に属すと雖も,然り血虚に系り気虚に非ず。

且初吐时,邪气最盛,正虽虚而邪则实,试思人身之血,本自潜藏,今乃大反其常,有翻天覆地之象,非实邪与之战斗,血何从而吐出哉。
且つ初め吐す時,邪気は最も盛,正に虚すと雖も而るに邪すれば則ち実す,試しに思ふ人身の血は,本モと潜蔵自ヨり,今乃ち其の常を大反し,天を翻クツガエし地を覆オオふの象有り,実邪は之との戦鬥セントウに非ず,血ケツは何イズれに従ヨりて吐出するや。

故不去其邪,愈伤其正,虚者益虚,实者愈实矣。
故に其の邪去らずば,愈ホドホド其の正傷る,虚す者は益ます虚し,実する者は愈ホドホド実すや。

况血人胃中,则胃家实,虽不似伤寒证,以胃有燥屎,为胃家实。
況んや血が人の胃中ならば,則ち胃家実は,寒証に傷らるに似ざると雖も,胃を以て燥屎有り,胃家実と為す。

然其血积在胃,亦实象也。
然り其の血積は胃に在し,亦た実を象カタチどるなり。



吐血2-4


故必亟夺其实,釜底抽薪,然后能降气止逆,仲景泻心汤主之。
故に必ず亟シバシバ其の実を奪ひ,釜底の薪マキを抽ヌき,然る後に能く降気止逆す,仲景瀉心湯之を主る。

血多者,加童便茅根。
血多き者,童便茅根を加ふ。

喘满者,加杏仁厚朴。
喘満する者,杏仁厚朴を加ふ。

血虚者,加生地当归。
血虚の者,生地当帰を加ふ。

气随血脱不归根者,加人参当归五味附片。
気に随し血脱し根に帰らざる者,人参当帰五味附片を加ふ。

有寒热者,加柴胡生姜,或加干姜艾叶,以反佐之。
寒熱有る者,柴胡生姜を加ふ,或ひは乾姜艾葉を加へ,以て反ムシろ之を佐タスく。

随证加减,而总不失其泻心之本意,则深得圣师之旨,而功效亦大。
随証加減し,而るに総ソウじて其の瀉心の本意を失はざれば,則ち深く聖師の旨ムネを得て,功効亦た大なり。

盖气之原在肾水,虚则气热。
蓋し気の原モトは腎水に在り,虚すれば則ち気熱す。

火之原在心,血虚则火盛。
火の原は心に在り,血虚せば則ち火盛サカる。

火热相搏则气实,气实则逼血妄行。
火熱相ひ搏ウたば則ち気実し,気実せば則ち血妄行に逼セマる。

此时补肾水以平气,迂阔之谈也。
此の時に腎水を補ひ以て気を平タイラかにすは,迂闊の談ダンなり。

补心血以配火,不及之治也。
心血を補ひ以て火を配し,不及の治なり。

故惟有泻火一法,除暴安良,去其邪以存其正。
故に惟だ瀉火の一法有り,暴を除き良く安ヤスンず,其の邪を去り以て其の正を存す。

方名泻心,实则泻胃。
方名は瀉心,実なれば則ち胃を瀉す。

胃气下泄,则心火有所消导,而胃中之热气,亦不上壅,斯气顺而血不逆矣。
胃気下泄せば,則ち心火を消導する所有り,而るに胃中の熱気,亦た上らず壅フサぎ,斯ココの気は順にして血は逆せざるや。

且大黄一味,能推陈致新,以损阳和阴,非徒下胃中之气也。
且つ大黄一味は,能く陳フルきを推オし新アタラしきを致す,以て陽を損ソコね陰を和す,徒イタズラに胃中の気を下クダすに非ざるなり。

即外而经脉肌肤躯壳,凡属气逆于血分之中,致血有不和处,大黄之性,亦无不达。
即ち外にして脈は肌膚躯殻を経ケイし,凡そ血分の中に気逆するに属す,血和せず処有りと致す,大黄の性,亦た達せずに無アラず(無不~:二重否定 ~ざるニあらズ)。

盖其药气最盛,故能克而制之,使气之逆者,不敢不顺,既速下降之势,又无遗留之邪。
蓋し其の薬気最も盛,故に能く克して之を制す,気をして之れ逆なる者,敢アエて順ずんばあらず(不A不B:これも二重否定 ABずンバアラず ABしないことはない),既スデに下降の勢ひ速し,又た遺留の邪無し。

今人多不敢用,惜哉,然亦有病之轻者,割鸡焉用牛刀,葛可久十灰散,亦可得效。
今人は多く敢アエて用ひず,惜オシむかな,然り亦た病の軽き者有り,鶏を割サくに焉ドウシて牛刀を用ふるか(些細なことを大袈裟にする必要はない),葛は久しく十灰散にすべし,亦た効を得るべし。

义取红见黑即止之意,其妙全在大黄降气即以降血。
義は紅は黒に見られ即ち止トドめの意に取る,其の妙は全て大黄の降気に在り即ち降血を以てなり。



吐血2-5

吐血之证,属实证者十居六七,以上二方,投之立效。
吐血の証,実証に属す者十に六七居り,上二方を以て,之を投じ効を立つ。

然亦有属虚属寒者,在吐血家,十中一二,为之医者不可不知也。
然り亦た虚に属し寒に属す者有り,吐血家在り,十中に一二,為之れ医は(不可不知~:前出;二重否定;可知ずンバアらず)知るべからずんばあらざるなり(知るべからざることはない;分からなくなってはいけない)。

虚证去血太多,其证喘促昏溃,神气不续,六脉细微虚浮散数,此如刀伤出血,血尽而气亦尽,危脱之证也。
虚証の去血は太ハナハだ多し,其の証は喘促ゼンソク(=喘証)昏潰コンカイ(意識混乱し物事をはっきりつかめない症状),神気続かず,六脈は細微虚浮散数す,此れ刀傷出血の如く,血尽きて気亦た尽く,危脱の証なり。

独参汤救护其气,使气不脱,则血不奔矣。
独参湯にて其の気を救護し,気をして脱せずせば,則ち血は奔ホンソウせざるや。

寒证者,阳不摄阴,阴血因而走溢,其证必见手足清冷,便溏遗溺,脉细微迟涩,面色渗白,辱口淡和,或内寒外热,必实见有虚寒假热之真情,甘草干姜汤主之。
寒証とは,陽が陰を摂らず,陰血は因て走溢す,其の証必ず手足清冷に見アラはる,便溏し溺遺モれ,脈細微遅渋,面色白く滲シみ,辱口淡和,或ひは内寒外熱す,必ず実は虚寒仮熱の真情有りに見アラはる,甘草乾姜湯之を主る。

以阳和运阴血,虚热退而阴血自守矣。
以て陽は陰血を運び和す,虚熱退くれば而して陰血自ら守るや。

然血系阴汁,刚燥之剂,乃其所忌,然亦有阳不摄阴者,亦当用姜附也。
然り血は陰汁に系り,剛燥の剤なり,乃ち其の忌む所,然り亦た陽は陰を摂らざる者有り,亦た当に姜附を用ふるなり。

上寒下热,芩连姜附同用亦有焉。
上寒下熱は,芩連姜附を同用に亦た有るや。

吐血2-6

以上数法,用之得宜,无不立愈。
以上の数法,之を用ひ宜ヨロしきを得,愈に立てずこと無し(無不~:二重否定;~ざルなシ;~しないものはない=すべて~する)。

其有被庸医治坏,而血不止者,延日己久,证多杂见,但用已上诸方,未能尽止血之法,审系瘀血不行,而血不止者,血府逐瘀汤主之。
其れ庸医ヨウイ(藪医者)に被ヨり治壊ソンじる有り,而るに血止まざる者,己スデに久しく日延ノべし,証多く雑サマざまに見,但だ已スデに上の諸方を用ひ,未だ止血の法を尽くす能はず,?血の行らざるに系るを審シラべて,血止まざる者に,血府逐?湯之を主る。

火重者,加黄芩、黄连,痰多者,加云苓、瓜霜。
火重き者,黄?、黄連を加ふ,痰多き者,雲苓、瓜霜を加ふ。

欬逆,加杏仁、五昧、寸冬。
?逆には,杏仁、五昧、寸冬を加ふ。

盗汗身热,加青蒿、冬桑叶、黄柏、牡蛎。
盗汗身熱には,青蒿、冬桑葉、黄柏、牡蠣を加ふ。

喘者,加杏仁、苏子。
喘には,杏仁、蘇子を加ふ。

身痛,胸腹满,大便闭,为瘀结,加大黄。
身痛,胸腹満,大便閉には,?結と為し,大黄を加ふ。

如欲求详,参看痰瘀痨热等门,乃尽其治。
如し詳クワしきを求め欲せば,痰?癆熱等の門を参看し,乃ち尽く其れ治す。

又有审病之因,而分别以止其血者,治法尤不厌详。
又た病の因を審にする有りて,分別し以て其の血を止む者,治法は尤も詳しく厭イトはざるなり。

因于酒及煎炒厚味之物者,其证脉数滑,口干燥,胸中烦热,大小便不利,宜用白虎汤,加茵陈炒栀大黄藕节治之。
酒及び煎炒厚味の物に因る者は,其の証脈数滑,口乾燥,胸中煩熱,大小便不利なり,宜しく白虎湯を用ひ,茵陳、炒梔、大黄、藕節を加へ之を治す。

因于外感者,先见头痛恶寒发热,脉浮而紧者,为寒犯血分,外束闭而内逆壅,是以吐血,麻黄人参芍药汤治之。
外感に因る者は,先ず頭痛悪寒発熱が見られ,脈浮して緊なる者は,寒に血分が犯されると為す,外束閉じて内に壅ヨウ逆し,是れ以て吐血す,麻黄人参芍薬湯にて之を治す。

若脉浮而数者,为伤风,风为阳邪,宜小柴胡汤,加荆芥、防风、当归、白芍、丹皮、蒲黄、知母、石膏、杏仁治之。
若し脈浮して数の者は,傷風と為す,風は陽邪為タり,宜しく小柴胡湯に,荊芥、防風、当帰、白芍、丹皮、蒲黄、知母、石膏、杏仁を加へ之を治すべし。

若因瘟疫,外证颇似伤寒,而内有伏热攻发,口舌胎白,恶热羞明,小便短赤,大便浊垢,心中躁烦,脉见滑数,宜升降散,加桃仁、丹皮、花粉、生地、蒌仁、石膏、杏仁、甘草治之。
若し瘟疫に因り,外証頗スコぶる傷寒に似て,内に伏熱有り攻め発し,口舌胎白,悪熱羞シュウ明メイ,小便短赤,大便濁垢コウ,心中躁煩,脈は滑数を見はす,宜しく升降散に,桃仁、丹皮、花粉、生地、楼仁、石膏、杏仁、甘草を加へ之を治すべし。

犀角地黄汤亦治之。
犀角地黄湯も亦た之を治す。

若因于暑,则发热心烦,暑者,湿热二气合化之名也。
若し暑に因れば,則ち発熱心煩す,暑とは,湿熱の二気が合し化すの名なり。

以清热利湿为主,升降清化汤,加防己木通蒌仁治之,病轻者去大黄。
以て清熱利湿を主と為す,升降清化湯に,防己、木通、楼仁を加へ之を治す,病軽き者は大黄を去る。

吐血2-7


因于怒气逆上,血沸而吐者,宜丹栀逍遥散,加青皮牡蛎蒲黄胆草治之。
怒気逆上に因り,血沸きて吐す者,宜しく丹梔逍遥散に,青皮、牡蠣、蒲黄、胆草を加へ之を治すべし。

气火太甚者,则用当归芦荟丸,以平其横决。
気火太ハナハだ甚ジンなる者なれば,則ち当帰芦薈丸を用ひ,以て其の横決(よこしまな決断)を平タイラかにすべし。

因于劳倦困苦饥饱不匀,以及忧思抑郁,心神怔忡,食少气短,吐血虚烦者,宜用归脾汤主之。
労倦困苦飢飽に因り均ワケられず,以及び憂思抑欝,心神怔忡,食少気短,吐血虚煩する者,宜しく帰脾湯を用ひ之を主る。

中土虚寒者加煨姜,虚热者加柴胡、山栀。
土に中アタり虚寒の者には煨姜を加へ,虚熱の者には柴胡山梔を加ふ。

因于跌打损伤,以及用力努挣,而得失血之证者,法宜补气以续其绝,消瘀以治其伤,四物汤,加黄蓍、人参、续断、桃仁、红花、陈酒、童便治之。
跌打損傷に因り,以及び力チカラ努ダす挣シゴトに用ひて,失血の証を得る者は,法に宜しく補気すべく其の続きを絶すを以て(継続するのは比べるもののない),を消し以て其の傷を治す,四物湯に,黄蓍、人参、続断、桃仁、紅花、陳酒、童便を加へ之を治す。

因于色欲过度,阴虚火旺,其证夜则发热,盗汗梦交,耳鸣不寐,六脉细数芤革,宜地黄汤,加蒲黄、藕节、阿胶、五味治之。
色欲過度に因り,陰虚火旺し,其の証夜なれば則ち発熱,盗汗夢交,耳鳴不寐,六脈細数芤コウ革カクす,宜しく地黄湯に,蒲黄、藕節、阿膠、五味を加へ之を治す。

止血之法,此其大略。
止血の法は,此ココに其の大略す。

如欲变化而尽善,非参透全书,不能丝丝入彀。
如し変化を欲して善を尽くし,全書を透トウし参マジはるに非アラず,糸糸シシとして彀ヒき入イれること能はず(変化がもし最も良いたいならば、全書を十分悟らないで、ちくちくと規則に合致することができない。)。

总而论之,血之为物,热则行,冷则凝,见黑则止,遇寒亦止。
総じて之の論は,血の物と為し,熱さば則ち行メグる,冷ヒゆれば則ち凝コゴゆ,黒を見ミれば則ち止トどむ,寒に遇へば亦た止トドむ。

故有用热药止血者,以行血为止血,姜艾等是也。
故に熱薬を用ひ止血する者有り,行血を以て止血と為す,姜艾等ナど是れなり。


吐血2-8


有用凉水止血者,或用急流水,或用井华水,取冷则凝之义。
涼水を用ひ止血する者有り,或ひは急ぎ流水を用ひ,或ひは井の華水を用ひ,冷を取りて則ち之を凝すの義なり。

芩连诸药,亦即冷止之义。
芩連諸薬も,亦た即ち冷止の義なり。

有用百草霜京墨十灰散等,以止血者,取见黑则止之义,黑为水之色,红为火之色,水治火故止也。
百草霜京墨十灰散等を用ふる有り,以て止血する者,黒を見て取らば則ち之を止むの義,黒は水の色と為す,紅クレナイは火の色と為す,水は火を治オサむ故に止トドむなり。

此第取水火之色,犹能相克而奏功,则能知水火之性,以消息用药,何血证难治之有。
此れ第ジュンに水火の色を取り,猶ほ能く相剋して奏功す,則ち能く水火の性を知り,以て用薬を消息(便り)す,何ぞ血証は治し難し之れ有るや(どうして血証治療はし難いことか)。

又有用咸以止血者,童便、马通、扬尘水之类,此内经咸走血之义。
又た鹹を用ひ以て止血する者有り,童便、馬通、塵ホコリを揚アげたる水の類,此れ内経の鹹カンは血に走るの義なり。

童便尤能自还神化,服制火邪以滋肾水,大有功用。
童便は尤も能く自マた神化に還カエり(また神化から),火邪を制し服し以て腎水を滋し,大ひに功用有り。

故世医云,服童便者,百无不生,不服童便者,百无不死。
故に世の医云ふ,童便を服す者,百に生まれざる無く(百は全部生む),童便を服さざる者,百に死せざる無し(百は全部死ぬ)と。

本人小便,清晨每服一碗,名回龙汤。
本人の小便,清晨ソウチョウに一碗を毎服す,回竜湯と名づく。

各种随笔,赞回龙汤之妙者,甚伙,病家皆所当服也。
各種の随筆に,回竜湯の妙を賛ず者,甚だ夥オオし,病家は皆な当に服すべき所なり。

顾止血之法虽多,而总莫先于降气,故沉香、降香、苏子、杏仁、旋覆、枳壳、半夏、尖贝、厚朴、香附之类,皆须随宜取用。
顧カエリみるに止血の法雖多く,而るに総じて先に降気莫く,故に沈香、降香、蘇子、杏仁、旋覆、枳殻、半夏、尖貝、厚朴、香附の類,皆な須べからく随ひ宜しく用ひ取るべし(従って取って使わなければならない)。

吐血2-9

而大黄一味,既是气药,即是血药,止血而不留瘀,尤为妙药。
而シカるに大黄一味,既に是れ気薬,即ち是れ血薬,止血して瘀を留めず,尤ら妙薬と為す。

识得诸法,其于止血之用,思过半矣。
諸法を識シり得,其の止血の用,思ひ半ナカばに過スぐや。

夫所谓止血者,非徒止其溢入胃中之血,使不吐出而己也。
夫れ所謂イワユル止血とは,徒タダ其の胃中の血に溢れ入るを止むに非ず,吐せずして出だしめる而己ノミなり。

盖大吐之时,经脉之血,辐辏而至,其溢入胃中者,听其吐可也,下可也。
蓋し大吐の時,経脈の血,輻輳フクソウして至り,其の溢れ胃中に入る者,其の吐を聴キく可ベきなり,下す可ヨロシきなり。

即停留胃中,亦与糟粕无异,固无大害也。
即ち胃中に停留し,亦た糟粕と無異ムイ(違いなし)を与へ,固くも大害無きなり。

独动于经脉之中,而尚未溢出者,若令溢出,则不可复返矣。
独り経脈の中に動きて,尚ほ未だ溢出せざる者,若し溢出さすれば,則ち復た返るべからずや。

惟急止之,使犹可复还经脉,仍循故道,复返而为冲和之血。
惟だ急ぎ之を止め,猶ほ(まるで)経脈を復還せしむべく,仍ち故コの道を循り,復た返りて衝和の血と為す。

所谓止血者,即谓此未曾溢出,仍可复还之血。
所謂イワユル止血とは,即ち此れ未だ曽カツて溢出せざるを謂ひ,仍ち復た還カエるの血なるにべけん(できる)。

止之使不溢出,则存得一分血,便保得一分命。
溢出せずをして止むれば,則ち一分血を存ず得れば,便ち一分の命を保ち得る。

非徒止已人胃中之死血已耳。
(非徒:~だけでなく)ただ止ヤむばかりでなく已スデに人の胃中の死血已耳ノミ。

今医动言止血,先要化瘀,不知血初吐时,尚未停蓄,何处有瘀,若先逐瘀,必将经脉中已动之血,尽被消逐,则血愈枯而病愈甚,安能免于虚损乎?
今の医は止血を言ふ動は,先ず化瘀を要とし,血を初め吐す時を知らず,尚ほ未だ停蓄せず,何を処ドコに瘀有りや,若し先に瘀を逐さば,必ず将に経脈中に動の血は已ヤみ,尽く消ケし逐ツクシを被コオムり,則ち血が枯れる愈ホドにて病は甚だしく,安イズくに能く虚損を免マヌガるや(どうして免れることができるだろうか)?(〔“愈…愈…”の形で用い,“越…越…”と同じ〕…すればするほど)

惟第用止血,庶血复其道,不至奔脱尔,故以止血为第一法。
惟タだ止血に用ふる第ジュンに,庶オオく血は其の道を復し,爾コノヨウに奔脱トンダツに至らず,故に止血を以て第一の法と為す。


吐血·二消瘀 2-10
二消瘀。
二消瘀。

血既止后,其经脉中己动之血,有不能复还故道者,上则着于背脊胸膈之间,下则着于胁肋少腹之
际,着而不和,必见疼痛之证。
血既に止まりたる後,其の経脈中己スデに動く之の血は,復た還カエる能はず有り故に道は,上ノ
ボれば則ち背脊胸膈の間に着き,下れば則ち脇肋少腹の際キワに着く,着きて和せず,必ず疼痛
の証を見す。

或流注四肢,则为肿痛,或滞于肌腠,则生寒热。
或ひは四肢に流注し,則ち腫痛を為し,或ひは肌腠に滞り,則ち寒熱を生ず。

凡有所瘀,莫不壅寒气道,沮滞生机,久则变为骨蒸干血痨瘵,不可不急去之也。
凡そ瘀の所に有り,寒気道を壅ヨウせざるに莫し(壅フサがないのではない),滞を沮ハバみ機キを
生じ,久しくれば則ち変じて骨蒸乾血癆瘵と為し,之を去るに不可不急するなり(急ぎぜひ去
らなければならない)。

且经隧之中,既有瘀血踞住,则新血不能安行血恙,终必妄走而吐溢矣。
且つ経隧の中,既に瘀血の踞住キョジュウ(うずくまり住む)有らば,則ち新たに血が安行する能
はず血恙ケツシツ(血の病)し,終ツイに必ず妄走して吐溢トイツするや。

故以去瘀为治血要法,用花蕊石散,令瘀血化水而下,且不动五脏真气,为去瘀妙药。
故に去瘀を以て治血の要法と為す,花蕊石散を用ひ,瘀血をして水に化さしめて下クダし,且つ
五臓の真気を動ぜず,去瘀の妙薬と為す。

如无花蕊石,用三七、郁金、桃仁、牛膝、醋炒大黄,亦有迅扫之功。
如し無花蕊石に,三七、郁金、桃仁、牛膝、酢炒大黄を用ひ,亦た迅掃の功有り。

顾(故)旧血不去,则新血断然不生,而新血不生,则旧血亦不能自去也。
顧(故)ユエに旧血去らずんば,則ち新血断然し生ぜずし,而るに新血生ぜずんば,則ち旧血も亦
た自ら去る能はざるなり。

譬诸君子之道不长,则小人之道亦不消。
譬タトへ諸君子の道が長タケずとも,則ち小人の道は亦た消へず。

须知瘀血之去,乃新血日生,瘀血无处可留,迫之不得不去,故或化而走小便,或传而入大肠。
須べからく瘀血の去るを知る,乃ソコで新血日に生じ,瘀血は留トドむべき処無く,之れ不得不去
(どうしても去らなければならない)に迫る,故に或ひは化して小便に走り,或ひは伝へて大
腸に入る。
花蕊石,化血从小便去,醋黄散,下血从大便去。
花蕊石は、血が化けたる小便従り去る,酢黄散は、大便に去従りて血を下る。

但能去瘀血,而不能生新血,不知克敌者存乎将,袪邪者赖乎正,不补血而去瘀,瘀又安能尽去哉。
但だ能く瘀血を去り,而シコウして新血を生じ能へず,敵を克する者は将ヒキイルに存する(存する
でしょう)を知らず,袪邪する者は正に頼り(乎:疑問の語気詞, 反語の語気詞),補血せず
して瘀を去り,瘀は又た安イズクンぞ能く去り尽くすや(安能尽去哉:最もどうして去ることが
できるだろうか)。

治法宜用圣愈汤以补血;加桃仁、丹皮、红花、枳壳、香附、云苓、甘草,补泻兼行,瘀既去而正
不伤,治瘀之法,大指如是。
治法は宜しく聖愈湯を用ひ以て補血す;桃仁、丹皮、紅花、枳殻、香附、雲苓、甘草を加へ,
補瀉を兼ね行メグらせ,瘀は既に去りて正は傷れず,瘀を治すの法,大指は是の如し。

吐血·二消瘀2-11

然亦有宜用温药者,内经曰;血者喜阴而恶寒,寒则涩而不流,温则消而去之。
然り亦た宜しく温薬を用ふる者有り,内経に曰く;血とは陰を喜びて悪寒す,寒せば則ち渋りて流れず,温なれば則ち消へて之れ去る。

且有热伏阴分,凉药不效,而宜用从治之法,以引阳出阴者,方用仲景柏叶汤,为寒凝血滞之正治,亦瘀血伏于阴分之从治法也。
且つ熱伏が陰分に有り,涼薬効かず,而るに宜しく治の法従ヨり用ふべし,以て陽を引き陰を出イだす者,方は仲景柏葉湯を用ひ,寒凝血滞と為す之れ正治なり,亦た瘀血が陰分に伏し之れ治の法に従ヨるなり。

然三药纯温,设遇火烈之证,非其所宜,或略加柔药调之,则合四物汤用,又有合泻心汤用者,则直以此反佐之也。
然り三薬は純温,設カリに火烈の証に遇へば,其の宜しき所に非ざるべし,或ひは略ホぼ柔薬を加へ之を調トトノふれば,則ち四物湯を合せ用ふ,又た瀉心湯を用ひ合せ有る者は,則ち直ジカに此を以て反て之を佐くるなり。

以上通论治瘀之法,而瘀血着留在身,上下内外,又各有部分不同,分别部居,直探巢穴,治法尤百不失一。
以上の論を通じ治瘀の法は,而るに瘀血が身に在り留り着く,上下内外,又た各オノおの部分に同じからざる有り,分別は居に部ヒキい,直ジカに巣穴を探サガし,治法は尤トリワけ百に一を失ウシなはず(百に一つも失わない)。

吐血·二消瘀2-12

审系血瘀上焦,则见胸背肩膊疼痛麻木逆满等证,宜用血府逐瘀汤,或人参泻肺汤,加三七、郁金、荆芥,使上焦之瘀,一并廓清。
審ツマビラカな系カカワは上焦の血瘀なれば,則ち胸背肩膊疼痛麻木逆満等の証が見はる,宜しく血府逐瘀湯を用ひるべし,或ひは人参瀉肺湯に,三七、欝金、荊芥を加へ,上焦の瘀に使ひ,一併イッペイ(一緒に合わせて)に廓清カクセイ(きれいになる)す。

血瘀中焦,则复中胀满,腰胁着痛。
中焦の血瘀なれば,則ち腹中脹満し,腰脇痛み着く。

带脉绕脐一周,下连血室,女子以系胎,男子以束体,乃血之管领也。
帯脈は臍一週を繞マトひ,下へ血室に連なり,女子は以て胎に系はり,男子は以て体を束シメる,乃ち血の管領なり。

凡血证,未有带脉不病者。
凡そ血証は,未だ帯脈が病ヤマイならず有る者なし(病にならないことが者まだない)。

今瘀血滞于其分,则宜去之以安带脉,带脉在中焦脾之部分,即从脾治之。
今瘀血が其の分に滞さば,則ち宜しく之の安帯脈を以て去るべし,帯脈は中焦脾の部分に在り,即ち脾従ヨり之を治す。

观仲景肾着汤,可知治脾即是治带,带有瘀血,宜用甲己化土汤,加桃仁、当归、姜黄主之。
仲景の腎着湯を観ると,脾を治すは即ち是れ帯を治すと知るべし,帯に瘀血有り,宜しく甲キノエ己ツチノト化土湯を用ひ,桃仁、当帰、姜黄を加へ之を主る。

腰痛甚者,加鹿角尖,胁腹痛甚者,加蒲黄、灵脂。
腰痛甚しき者には,鹿角尖を加へ,脇腹痛甚しき者には,蒲黄、霊脂を加ふ。

吐血·二消瘀2-13

血瘀下焦,腰以下痛,小腹季胁等处胀满,是血瘀肝之部分,或积胞中血海为痛,宜归芎失笑散主之。
下焦の血瘀,腰より以下痛む,小腹季脇等の処が脹満す,是れ血瘀肝の部分に,或ひは胞中血海に積り痛と為す,宜しく帰芎失笑散にすべし之を主る。

大便闭结者,均加大黄,仲景逐瘀大剂,则有抵当汤,桃仁承气汤数方,皆若寒大破下,为治瘀能事。
大便閉結する者,均しく大黄を加へ,仲景の逐瘀大剤なれば,則ち抵当湯,桃仁承気湯数方有り,皆な寒を大破し下クダすの若し,瘀を治す能ヨき事と為す。

亦有当用温药下之者,生化汤及牛夕散主之。
亦た当に温薬を用ひべく之を下す者有り,生化湯及び牛夕散之を主る。

本女科治产后恶露,及胞衣不下之方。
本ホン女科の産後悪露,及び胞衣不下の方を治す。

余谓男女虽异,其血则同,同是下焦瘀血,故借用其方,往往有验。
余は男女異ると雖も謂ふ,其の血なれば則ち同じ,同じは是れ下焦の瘀血,故に其の方を借用し,往往に験ケン(証拠)有り。

且下焦原系阴分,上焦之瘀多属阳热,每以温药为忌,下焦之瘀多属阴凝,故产妇喜温而忌寒,以其血在下焦也,知此,则知以温药,治下焦瘀血,尤为合宜。
且つ下焦の原は陰分に系る,上焦の之れ瘀多くは陽熱に属す,毎ヨく温薬を以て忌イむと為す,下焦の之れ瘀多くは陰凝に属す,故に産婦温を喜びて寒を忌む,以て其の血下焦に在るなり,此を知らば,則ち温薬を以てを知る,下焦瘀血を治すは,尤トリワけ合宜と為す(合宜:適宜だ・あつらえ向きだ)。

吐血·二消瘀2-14

然亦须审系寒凝乃用温药。
然り亦た須べからく寒凝に乃ソコで温薬を用ふるに系カカるを審ツマビラカにすべし。

若血室热,则仍是桃仁承气之证。
若し血室熱せば,則ち仍カサねて是れ桃仁承気の証なり。

又有瘀血流注,四肢疼痛肿胀者,宜化去瘀血,消利肿胀,小调经汤,加知母、云苓、桑皮、牛膝治之。
又た瘀血の流注有り,四肢疼痛腫脹する者,宜しく瘀血を去り化し,腫脹を利し消す,小調経湯に,知母、雲苓、桑皮、牛膝を加へ之を治す。

又有瘀血客于肌腠,阻滞荣卫,发寒发热,似疟非疟,骨蒸盗汗,欬逆交作,用小柴胡汤,加当归、桃仁、丹皮、白芍主之。
又た瘀血が肌腠に客す有り,栄衛を阻滞し,発寒発熱,瘧に似たるが瘧に非ず,骨蒸盗汗し,欬逆交作す,小柴胡湯に,当帰、桃仁、丹皮、白芍を加へ用ひ之を主る。

寒甚者,再加芥穗、细辛。
寒甚しき者,再び芥穂、細辛を加ふ。

热甚者,再加花粉、粉葛、青蒿、知母。
熱甚しき者,再び花粉、粉葛、青蒿、知母を加ふ。

欬有痰火,加瓜霜、杏仁、寸冬、五昧、云苓、知母。
痰火有る欬に,瓜霜、杏仁、寸冬、五昧、雲苓、知母を加ふ。

水饮上冲,加葶苈子。
水飲上衝するには,亭歴子を加ふ。

盖小柴胡,原是从巾上疏达肝气之药,使肝气不郁,则畅行肌腠,而荣卫调和。
蓋し小柴胡は,原モと是れ巾上従ヨり肝気を疏達すの薬なり,肝気をして郁せずんば,則ち肌腠を暢行して,栄衛を調和す。

今加去瘀之品,则偏于去瘀,凡瘀血阻滞荣卫者,用之立验。
今去瘀の品を加へ,則ち去瘀に偏り,凡て瘀血が栄衛を阻滞する者,之を用ひ立験す。

总而论之,血瘀于脏腑之间者,久则变为干血,化为痨虫。
総じて之の論は,血瘀が臓腑の間に,久しく則ち変じて干血と為し,化して癆虫と為す。

血瘀于躯壳之间者,或病偏枯,或化痈脓。
躯殻の間に血瘀する者,或ひは偏枯に病み,或ひは癰膿と化す。

血瘀于肌腠之间者,则变骨蒸,毛发焦折,肢体瘦削。
肌腠の間に血瘀する者ならば,則ち変じて骨蒸す,毛髪焦げ折れ,肢体は痩削す。

一切不治之证,总由不善去瘀之故。
一切不治の証,総じて去瘀を善ばざる由ユエ之れ故へなり。

凡治血者,必先以去瘀为要,另详瘀血门。
凡そ治血する者,必ず先に去を以て要と為す,別に瘀血門に詳しくす。

吐血·三宁血2-15
三宁血。
三寧血。

吐既止,瘀既消,或数日间,或数十日间,其血复潮动而吐者,乃血不安其经常故也,必用宁之之法,使血得安乃愈。
吐既に止ヤみ,瘀既に消へ,或ひは数日間,或ひは数十日間,其の血復マた潮動して吐す者,乃ソコで血安ぜず其の経常に故モトなり,必ず寧ムシろ之を之の法を用ひ,血をして安ずを得せしめ乃ち愈ゆ。

其法于止吐消瘀中,已寓厥治,然前药多猛峻以取效,乃削平冠盗之术,尚非抚绥之政,故持将宁血旨意,重加发明,以尽其用。
其の法は止吐消瘀中に,已スデに厥治を寓ヤドり,然るに前薬の多く猛峻を以て効を取り,乃ち冠を盗むの術ワザを平タイラかに削り(冠の盗んだ技であることを投薬し),尚ほ綏ヤスラカに撫ナでるに非ずの政なり(非撫平安の政に尊び),故に将に寧血を持つ旨意なり,重くば明を発し加へ,以て其れを尽し用ふ。

有外感风寒,以致吐血,止后荣卫未和。
外感風寒有り,以て吐血を致し,止まりたる後に栄衛未だ和せず。

必有身痛寒热等证,香苏引,加柴胡、黄苓、当归、白芍、丹皮、阿胶治之。
必ず身痛寒熱等の証有り,香蘇を引き,柴胡、黄苓、当帰、白芍、丹皮、阿膠を加へ之を治す。

有胃经遗热,气燥血伤,而血不得安者。
胃経に遺熱有り,気燥し血傷らる,而るに血は安ヤスンずを得ざる者なり。

其证口渴哕气,恶闻人声,多躁怒,闻木音则惊,卧寐烦而不安,犀角地黄汤主之,重则合白虎汤,大清大凉,以清胃热。
其の証口渇噦気,人声悪アしく聞き,躁怒多く,木音を聞かば則ち驚す,臥し寐煩して安ヤスんぜず,犀角地黄湯之を主る,重きは則ち白虎湯を合せ,大ひに清し大ひに涼し,以て胃熱を清す。

轻则止用甘露饮。
軽くれば則ち甘露飲を用ひて止トドむ。

以生胃津,而血自愈。
以て胃津を生じ,而して血自ら癒ゆ。

吐血·三宁血2-16

有因肺经燥气,气不清和,失其津润之制节,而见喘逆欬嗽等证,以致其血牵动,清燥救肺汤主之。
肺経の燥気に因り有り,気清和せず,其の津潤の制節を失ひて,喘逆?嗽等の証を見す,以て其の血牽動(波及する)を致す,清燥救肺湯之を主る。

火甚,加犀角,血虚加生地,痰多加尖贝,润燥宁血,为肺痿等证之良方。
火甚はだしくば,犀角を加ふ,血虚せば生地を加ふ,痰多くば尖貝を加へ,潤燥寧血し,肺痿等の証の良方と為す。

葛可久《十药神书》,专医虚损失血,用保和汤亦佳,润肺利气,平燥解郁。
葛可久の《十薬神書》には,専ら医は失血虚損すに,保和湯を用ふるも亦た佳ヨし,潤肺利気し,平燥解欝すと。

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葛乾孫カツケンソン1305-1353は、字は可久、中国 元の医学者で、代々医師の家の出身.若い頃は好んで武術で治療し、効果を上げたと言われている.癆?ロウサイ(肺結核)の治療に豊富な経験があり、『十薬神書』では、肺結核を治療する経験方10種を紹介している.治療方剤は特殊だが、正用から逸脱せず、多くは実用的で有効である.味岡三伯アジオカサンパクの門下であり、尾張医学館を主宰した浅井家の基礎を築いた浅井周伯アサイシュウハク1643-1705は、『十薬神書』を校訂している.養志堂は周伯の私塾である。
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前方清纯,此方活动,随宜取用,血自安静而不动矣。
前の方は純に清し,此の方は動き活カツし,随シタガひ宜しく用ヨウ(体用の用)を取るべし,血は自ずから安静して動からざるや。

有因肝经风火,鼓动煽炽,而血不能静者,则见口苦咽干,目眩耳鸣,胁痛逆气,躁怒决裂,骨蒸妄梦,以逍遥散平剂和之。
肝経の風火に因り有り,鼓動熾サカンに煽オコりて,血静なる能はず,則ち口苦咽干,目眩耳鳴,脇痛逆気,躁怒決裂,骨蒸妄夢を見アラはす,逍遥散の平剤を以て之を和す。

审系肝经风气鼓动,而血不宁者,再加桑寄生、僵蚕、玉竹、枣仁、牡蛎、青蒿。
肝経の風気鼓動は審ツマビラカに系る,血不寧の者は,再び桑寄生、僵蚕、玉竹、棗仁、牡蠣、青蒿を加ふ。

此从仲景白头翁汤得来,仲景治产后血痢,取白头翁平木息风,盖肝为藏血之脏,风气散而不藏,则必平之使安,而从血乃得安也。
此れ仲景白頭翁湯従り来キたり得,仲景は産後の血痢を治すに,白頭翁の平木息風を取る(採用する),蓋し肝は蔵血の臓と為し,風は気を散じて蔵せず,則ち必ず之を平タイラカにさせ安アンぜしむ,而るに血従り乃ソコで安アンを得るなり。

又或肝火偏胜,横决而不可遏,致令血不能藏者,则宜加阿胶、山栀、胆草、胡黄连、蒌仁、牛膝、青皮、牡蛎。
又た或ひは肝火偏勝し,横決オウケツ(横暴)して遏スぐるべからず,血をして致モタラし(送る)蔵す能はざる者,則ち宜しく阿膠、山梔、胆草、胡黄連、?仁、牛膝、青皮、牡蠣を加ふべし。

当归芦荟丸,尤破泻肝火之重剂,但不如逍遥散加减之稳。
当帰芦薈丸は,尤も肝火を破瀉す重剤にて,但だ如シカし逍遥散加減の穏にならず(しかし及ばない)。

吐血·三宁血2-17

又有冲气上逆,其证颈赤头晕,火逆上气,咽喉不利,乳下动脉,辟辟弹指,颈上动脉,现出皮肤。
又た衝気の上逆有り,其の証は頸赤く頭暈し,火逆上気,咽喉不利,乳下に脈動き,闢闢ヘキヘキと(すこし避ける意味or擬音)指を弾ハジき,頸上に脈を動し,皮膚に現れ出ずる。

冲脉原不上头项,咽乾者,以冲为血海属肝,因肝脉而达于咽也。
衝脈は原モトより頭項に上らず,咽乾する者は,衝を以て血海と為し肝に属す,肝脈に因りて咽に達するなり。

颈脉动面赤色者,以冲脉丽于阳明,冲气逆,则阳明之气,随逆故也。
頸脈動き面赤色の者は,衝脈を以て陽明に麗レイし(付着する),衝気逆せば,則ち陽明の気,随ひて逆す故へなり。

内经谓冲为气街,又谓冲为血海,气逆血升,此血证之一大关键也。
《内経》に謂く衝は気の街と為す,又た謂ふ衝は血海,と為し気逆し血升ノボる,此れ血証の一大関鍵カンケン(肝心な点)なり。

故仲景治血以治冲为要,麦门冬汤主之。
故に仲景は血を治すに衝を治すを以て要ヨウと為す,麦門冬湯之を主る。

陈修园谓去粳米,加白蜜,尤能滋补其阴。
陳修園謂ふ粳米を去り,白蜜を加ふ,尤トリワけ能く其の陰を滋補す。


吐血·三宁血2-18

予谓治冲脉独取阳明,仲景既引其端,后人亦即当扩而充之。
予は謂ふ衝脈を治すは独り陽明を取るのみ,仲景は既に其の端を引き,後人も亦た即ち当マサに拡げて之を充ミつるべきなり。

审其冲阳太旺者,知母、枳壳、白芍、煆石膏,均可加入,以清折之。
審其の衝陽が太ハナはだ旺なる者は,知母、枳殻、白芍、煆石膏を,均しく加入すべし,以て之を清折す。

栀子、黄芩、木通、蒌仁、牛膝,利阳明之水者,尤可加入,以分消之。
梔子、黄?、木通、?仁、牛膝,陽明の水を利す者,尤トクに加入すべし,以て之を分消す。

此冲脉之气,上合阳明之治法也。
此の衝脈之気,上り陽明と合すの治法なり。

然冲为气街,气根于肾,血海即丹田,肾气之所藏也。
然り衝は気の街トリ(道)と為し,気は腎に根ざし,血海は即ち丹田に,腎気の蔵す所なり。

若冲脉挟肾中虚阳,上逆喘急者,宜用四磨汤,调纳逆气,是仲景桂苓甘草五味汤意。
若し衝脈が腎中の虚陽に挟まり,上逆喘急する者,宜しく四磨湯を用ひべく,逆気を納め調トトノふ,是れ仲景の桂苓甘草五味湯の意なり。

但仲景用桂枝化膀胱之寒水,谓气从少腹,上冲咽喉,面热如醉,或热流于两股,或小便难而昏冒,忽上忽下,如电光之闪灼无定,乃阴盛格阳,而阳气飞越,故以辛温化之。
但だ仲景が桂枝を用ひ膀胱の寒水を化す,謂ふに気は少腹従りと,咽喉に上衝し,面熱く酔ひたる如し,或ひは熱が両股に流れ,或ひは小便難くして昏冒コンボウ(めまい立つ),忽タチマち上り忽ち下る,電光の閃ヒラメき灼ヤくの如く定む無し,乃ソコで陰盛格陽して,陽気飛トび越コふる,故に辛温を以て之を化す。

今系失血,阴气既伤,再用桂枝,岂不犯阳盛则毙之戒。
今失血に系り,陰気既に傷れ,再サラに桂枝を用ふ,豈アに陽盛を犯さずして則ち斃タオるか之れ戒イマシむ。

故用沉香代桂,以纳浮阳,而即用人参以滋阴,沉香直走下焦,乌药治膀胱肾间之气。
故に沈香を桂に代カへ用ひ,以て浮陽を納オサめて,即ソく人参を用ひ以て滋陰す,沈香は下焦に直ジキ走ソウし,烏薬は膀胱腎間の気を治す。

吐血·三宁血2-19

冲为血海,居膀胱肾间之地,治阳明者,治其末,治膀胱肾间者,是治其本也。
衝は血海と為す,膀胱と腎間の地に居る,陽明を治す者は,其の末を治す,膀胱と腎間を治す者,是れ其の本を治すなり。

若肾中阴气大虚,而冲阳不能安宅,则用四磨汤,加熟地、枣皮、山药、五味、枸杞子,滋阴配阳以安之。
若し腎中の陰気大虚し,而るに衝陽宅タクに安から能はず(家をつけることができない),則ち四磨湯を用ひ,熟地、棗皮、山薬、五味、枸杞子を加ふ,陽を配し滋陰し以て之を安ず。

若其人素有水饮,格阳于上,因而动血者,仲景桂苓甘草五味汤,又为对证。
若し其の人素モトもと水飲有り,上に格陽し,因て而ち血を動かす者は,仲景の桂苓甘草五味湯,又た対する証と為す。

第其方,其血证本不相关,可加当归、白芍、丹皮、阿胶,或用苏子降气汤,利痰降气,以靖冲逆:
第ダイ(一番目)に其の方,其の血証は本ホンと相関ならず,当帰、白芍、丹皮、阿膠を加ふべし,或ひは蘇子降気湯を用ひ,利痰降気し,以て靖衝ヤスショウ(安らかと激しさ)逆す:

或用小柴胡汤,加龙骨、牡蛎,以导冲逆。
或ひは小柴胡湯に,竜骨、牡蠣を加へ用ひ,以て衝逆ショウギャクを導く。

桂苓苏子汤,是治痰饮以治冲之法,小柴胡,又是清火以治冲之法。
桂苓蘇子湯は,是れ痰飲を治すに衝治ショウチ(突き進んで治す)すの法を以て,小柴胡,又た是れ清火すに衝治すの法を以てなり。

本方治热入血室,血室者,肝之所司也。
本方の熱入血室を治す,血室とは,肝の司どる所なり。

冲脉起于血室,故又属肝,治肝即是治冲。
衝脈が血室に起き,故に又た肝に属し,肝を治すは即ち是れ衝を治すなり。

吐血·三宁血2-20

血室,在男子为丹田,在女子为子宫,其根系于右肾,肾中真阳寄于胞中,为生气之根,乃阴中之阳,肝木得之,发育条达,是为相火,其火如不归根,即为雷龙之火。
血室は,男子に在りて丹田と為す,女子に在りて子宮と為す,其の根は右腎に係り,腎中の真陽にて胞中に寄る,生気の根と為す,乃ソコで陰中の陽,肝木之を得て,発育条達す,是れ相火と為し,其の火は根に帰らざる如し,即ち雷竜の火と為す。

龙骨、牡蛎,乃阳物而能蛰藏,取其同气,以潜伏阳气,此尤治冲脉,更进一层之法。
竜骨、牡蠣は,乃スナワち陽物にして能く蟄蔵チュウゾウす,其の同気を取り,以て陽気を潜伏し,此れ尤トクに衝脈を治す,更に一層進むの法なり。

合小柴胡,大有清敛相火之功。
小柴胡を合せ,大ひに清斂相火の功有り。

若肾经阴虚,阳无所附,雷龙之火上腾者,用二加龙骨汤,加阿胶、麦冬、五味,以引归其宅亦妙。
若し腎経陰虚し,陽の附く所無く,雷竜の火上騰する者には,二加竜骨湯を用ひ,阿膠、麦冬、五味を加へ,以て其の宅を引帰(帰えさす)す亦た妙なり。

肾气丸,麦味地黄汤,皆可酌用。
腎気丸,麦味地黄湯は,皆な酌用(斟酌)すべし。

二方一以温药化气,一以阴药滋降,肾居滋脉之下,又为冲脉之根,安肾气,即是安冲气,冲气安而血海宁,自不至于潮上矣。
二方に一は温薬を以て化気し,一は陰薬を以て滋降す,腎は滋脈の下に居り,又た衝脈の根と為す,腎気を安じ,即ち是れ衝気を安ず,衝気安じて血海寧ネイす,自オノズカら潮上に至らざるや。

总而论之,血之所以不安者,皆由气之不安故也。
総じて之を論じ,血の不安を以ての所は,皆な気の不安に由ヨる故なり。

宁气即是宁血,以上所论各气治,法亦云详备,在临证者细审处之。
寧気は即ち是れ寧血なり,以上を論ずる所に各オノおの気治し,法も亦た詳しく備ソナへを云ふ,臨証に在る者は細コマかく審ツマビラカに之を処せ。

吐血·四补血2-21

四补血。
四補血。

邪之所凑,其正必虚,不独补法是顾虚,即止血消瘀,用攻治法,亦恐其久而致虚,故亟攻之,使邪速去,以免其致虚耳。
邪の凑まる所,其の正は必ず虚す,補法独つならず是れ虚を顧カエリみて,即ち止血消?は,攻む治法を用ひ,亦た恐らく其れ久しくして虚に致し,故に亟イソぎ之を攻む,邪を速く去らしめ,以て其の虚に致すを免る耳ノミ。

但彼时虽恐其虚,而犹未大虚,故以去邪为急,若延日已久,未有不虚怯者。
但だ彼カの時は恐らく其れ虚と雖も,而るに猶ほ未だ大虚ならず,故に去邪を以て急と為す,若し日延べして已スデに久しく,未だ虚せず怯オビへざる者も有り。

即血既循经,一如平人,而前次所吐之血,已属有去无回,其经脉脏腑,又系血所走泄之路,非用封补滋养之法,乌能完全。
即ち血が既に経を循メグり,一に平人の如く,而るに前次(前回)に吐す所の血,已スデに回マワる無き去り有るに属す,其の経脈臓腑は,又た血が走泄する所の路に系り,滋養の法を補ひ封ずに用ひるに非ず,烏ドウシて能く完全なるか。

吐血·四补血2-22

补法不一,先以补肺胃为要。
補法は一ならず,先ず補肺胃を以て要と為す。

肺为华盖,外主皮毛,内主制节,肺虚则津液枯竭,喘嗽痿燥诸证作焉,因其制节不得下行,故气上而血亦上,未有吐血,而不伤肺气者也。
肺は華蓋と為し,外は皮毛を主る,内は制節を主り,肺虚せば則ち津液枯竭す,喘嗽痿燥の諸証を作ナすや,其の制節に因ヨり下行を得ず,故に気上りて血亦た上る,未だ吐血有らずして,肺気傷れざる者なり。

故初吐必治肺,已止,尤先要补肺,用辛字润肺膏,滋补肺中阴液,肺既津润,则其叶下垂,气泽因之得以下降,利膀胱,傅大肠,诸窍通调,五脏受益。
故に初め吐すも必ず肺を治す,已スデに止まり,尤トリワけ先ず補肺を要とす,辛字潤肺膏を用ひ,肺中の陰液を滋補す,肺既に津潤せば,則ち其の葉ヨウ下垂し,気の沢は之を得るに因り以て下降す,膀胱を利し,大腸に傅ツタへ,諸モロもろの竅キョウを通調し,五臓は益を受く。

如肺叶枯焦,不能覆下,则翘举而气亦上逆,不得卧息,外应皮毛不荣,下则二便不调,足痿肠燥,百病俱生,惟此膏润津,为痿燥良剂。
如し肺葉枯焦せば,下に覆オオひ能はず,則ち翹モタげ挙アげて気も亦た上逆す,臥息を得ず,外は皮毛に応じ栄せず,下は則ち二便不調なり,足痿ナへ腸燥し,百病倶に生じ,惟だ此の膏は津を潤すのみ,痿燥の良剤と為す。

吐血·四补血2-23

近人黄坤载,所立地魄汤,补土生金,补金生水,于补肺之法颇得。
近人の黄坤に載る,立つ所は地魄湯,土を補ひ金を生ず,金を補ひ水を生ず,補肺に之の法頗スコブる得ウ。

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地魄汤
地魄湯

《血证论》卷八引黄坤载:地魄汤
《血証論》巻八引黄坤載:地魄湯

处方  甘草3克 半夏 麦冬 芍药 玄参 牡蛎各9克 五味子3克
処方  甘草3克 半夏 麦冬 芍薬 玄参 牡蠣各9克 五味子3克

功能主治  清火降逆,养阴生津。
功能主治  清火降逆,養陰生津。

主吐血、咯血、咳血日久,肺脏气阴两伤者。
吐血、咯血、咳血の日久しきを主る,肺臓気陰両傷る者。

用法用量  水煎服。
用法用量  水にて煎服す。

摘录  《血证论》卷八引黄坤载
摘録  《血証論》巻八引黄坤載

《血证论》卷八:地魄汤
《血証論》巻八:地魄湯

处方  甘草1钱,半夏3钱,麦冬3钱,芍药3钱,五味子1钱,元参3钱,牡蛎3钱。
処方  甘草1銭,半夏3銭,麦冬3銭,芍薬3銭,五味子1銭,元参3銭,牡蠣3銭。

功能主治  补阴,清君相之火,降肺胃之逆,益水敛神而生津。
功能主治  補陰,君相の火を清す,肺胃の逆を降す,水を益し神を斂して生津す。

主失血家,阴脉受伤,恍惚不宁。
失血家を主る,陰脈傷を受け,恍惚として寧ネイせず。

摘录  《血证论》卷八
摘録  《血証論》巻八

地魄汤
地魄湯

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地魄汤,中医方剂名。
地魄湯,中医方剤名。

出自《血证论》。
《血証論》自ヨり出イず。

具有清火降逆,养阴生津之功效。
清火降逆,養陰生津の功効を具有グユウ(持つ)す。

主治吐血、咯血、咳血日久,肺脏气阴两伤者。
吐血、咯血、咳血の日久しき,肺臓気陰両傷の者を主治す。

症见腰膝酸软头晕目眩,口燥咽干,舌红少苔,脉沉细。
症は腰膝酸軟頭暈目眩,口燥咽干,舌紅少苔,脈沈細を見はす。

临床上用于治疗肾炎,高血压,糖尿病,前列腺炎,神经衰弱,甲状腺功能亢进,红斑狼疮,中心性视网膜炎和视神经炎等,证属阴虚者。
臨床上は腎炎治療,高血圧,糖尿病,前列腺炎,神経衰弱,甲状腺功能亢進,紅斑狼瘡,中心性視網膜炎と視神経炎等に用ふ,証は陰虚に属す。

中文名地魄汤
中文は名づけて地魄湯。

出 处《血证论》
【出 処】《血証論》

组 成 甘草、半夏、麦冬、芍药、五味子、元参、牡蛎
【組 成】 甘草、半夏、麦冬、芍薬、五味子、元参、牡蠣

功 用 清火降逆,养阴生津
【功 用】 清火降逆,養陰生津

主 治 吐血、咯血、咳血日久,肺脏气阴两伤者
【主 治】 吐血、咯血、咳血日久しく,肺臓気陰両傷の者

目录 1 歌诀 2 组成 3 用法用量 4 功用 5 主治 6 方义 7 运用 8 使用注意 9 重要文献摘要 10 各家论述
【目録】 1 歌訣 2 組成 3 用法用量 4 功用 5 主治 6 方義 7 運用 8 使用注意 9 重要文献摘要 10 各家論述

1歌诀 地魄汤方治阴亏,半夏麦冬草五味。
1歌訣 地魄湯方治陰虧,半夏麦冬草五味。

芍药元参牡蛎加,助阴右降在肺胃。
芍薬元参牡蠣加,助陰右降在肺胃。

2组成 炙甘草3g,制半夏9g,麦冬(去心)9g,芍药9g,五味子(研)3g,元参9g,牡蛎(煅,研)9g。
2組成 炙甘草3g,制半夏9g,麦冬(心を去る)9g,芍薬9g,五味子(研ぐ)3g,元参9g,牡蠣(煅タン,研ぐ)9g。

3用法用量 水煎服。
3用法用量 水にて煎服す。

4功用 清火降逆,养阴生津。
4功用 清火降逆,養陰生津。

5主治 吐血、咯血、咳血日久,肺脏气阴两伤者。
5主治 吐血、咯血、咳血日久,肺臓気陰両傷の者。

6方义 麦冬、五味子养阴生津,兼以止血,元参、芍药清热养阴兼以凉血,牡蛎育阴潜阳,半夏降逆止咳,甘草温肺止咳调和药性。
6方義 麦冬、五味子は養陰生津,兼ね以て止血す,元参、芍薬は清熱養陰に涼血を以て兼ね,牡蠣は育陰潜陽,半夏は降逆止咳,甘草は温肺止咳し薬性を調和す。

7运用 症见腰膝酸软头晕目眩,口燥咽干,舌红少苔,脉沉细。
7運用 症は腰膝酸軟頭暈目眩,口燥咽幹,舌紅少苔,脈沈細を見はす。

临床上用于治疗肾炎,高血压,糖尿病,前列腺炎,神经衰弱,甲状腺功能亢进,红斑狼疮,中心性视网膜炎和视神经炎等,证属阴虚者。
臨床上の治療は腎炎,高血圧,糖尿病,前列腺炎,神経衰弱,甲状腺功能亢進,紅斑狼瘡,中心性視網膜炎和視神経炎等に用ふ,証は陰虚者に属す。

8使用注意 脾胃虚寒者忌用。
8使用注意 脾胃虚寒者忌用。

9重要文献摘要 《血证论》:“‘惟以止血为第一要法;止血之后,其离经而未吐出者,是为瘀血,……故以消瘀为第二法;止吐消瘀之后,又恐血:再潮动,则须用药安之,故以宁血为第三法;……去血既多,阴无有不虚者矣,……故又以补血为收功之法。
9重要文献摘要 《血証論》:“‘惟だ止血を以て第一要法と為す;止血の後,其れ離経にして未だ吐出せざる者,是れ瘀血と為す,……故に消瘀を以て第二法と為す;止吐消瘀の後,又た血を恐る:再び潮動せば,則ち須べからく用薬すべく之を安ず,故に寧血を以て第三法と為す;……去血既に多し,陰が無有不虚する者や,……故に又た補血を以て収功の法と為す。

四者乃通治血证之纲。
四者は乃ソコで血証を通治すの綱なり。

’本方即以宁血补虚、养阴生津为治。
’本方は即ち寧血補虚、養陰生津を以て治と為す。

方中麦冬、五味于养阴生津,兼以止血:元参、芍药清热养阴,兼以凉血:牡蛎育阴潜阳;半夏降逆止咳;甘草温肺止咳调和药性。
方中の麦冬、五味は養陰生津,兼ね止血:元参、芍薬は清熱養陰,兼ね涼血:牡蠣は育陰潜陽;半夏は降逆止咳;甘草は温肺止咳に薬性の調和。

诸药台用,共奏清火降逆,凉血止血,养阴生津之功。
諸薬の台用,共に清火降逆を奏し,涼血止血,養陰生津の功なり。

《云笈七签》“日者天之魂,月者地之魄。
《雲笈ウンキュウ七籤クジ》“日とは天の魂コン,月とは地の魄ハク。

故将月亮称为地魄。
故に将に月亮アカルく称し地の魄と為す。

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《云笈七签》是择要辑录《大宋天宫宝藏》内容的一部大型道教类书。
《雲笈七籤》是れ《大宋天宮宝蔵》を択要輯録し内容的一部は大型の道教類書。

北宋天禧三年(公元1019年),当时任著作佐郎的张君房编成《大宋天宫宝藏》后,又择其他认为的精要万余条,于天圣三年至七年(1025~1029)间辑成本书进献仁宗皇帝。
北宋天禧三年(公元1019年),当時任じらる佐郎の著作、張君房編成《大宋天宮宝蔵》の後,又た択其他の精要万余条の認と為す,天聖三年至七年(1025~1029)間に本書が輯成され仁宗皇帝に進献さる。
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清·黄景仁《月下杂感》诗曰:‘闻道垣娥嫁,于今是结璘,河山收地魄,宫阙烂天银。
清・黄景仁《月下雑感》詩曰:‘聞道垣娥嫁,於今是結璘,河山収地魄,宮闕爛天銀。

’《素问·八正神明论》月始生则血气始生,卫气始行;月郭满,则血气充实,肌肉坚;月郭空,则肌肉减,经络虚,卫气去,形独居。
’《素問・八正神明論》月始生則血気始生,衛気始行;月郭満,則血気充実,肌肉堅;月郭空,則肌肉減,経絡虚,衛気去,形独居。

是以因天时而调气血也。
是以因天時而調気血也。

《养生名方》随症加减若热伤肺气,不能化水,则用人参、黄芪益气生水,以培阴精之原;肝肾阴虚重者,可酌加枸杞子、龟板胶;骨蒸潮热盗汗明显者,酌加玄参、龟板以益阴潜阳。
《養生名方》随症加減若熱傷肺気,不能化水,則用人参、黄蓍益気生水,以培陰精之原;肝腎陰虚重者,可酌加枸杞子、亀板膠;骨蒸潮熱盗汗明顕者,酌加玄参、亀板以益陰潜陽。

10各家论述 ※ 唐宗海:惟以止血为第一要法;止血之后,其离经而未吐出者,是为瘀血,……故以消瘀为第二法;止吐消瘀之后,又恐血:再潮动,则须用药安之,故以宁血为第三法;……去血既多,阴无有不虚者矣,……故又以补血为收功之法。
10各家論述 ※ 唐宗海:惟だ止血を以て第一要法と為す;止血の後,其れ離経にして未だ吐出せざる者,是れ瘀血と為す,……故に消瘀を以て第二法と為す;止吐消瘀の後,又た血を恐る:再び潮動せば,則ち須べからく用薬すべく之を安ず,故に寧血を以て第三法と為す;……去血既に多し,陰が無有不虚する者や,……故に又た補血を以て収功の法と為す。

四者乃通治血证之纲。
四者は乃ソコで血証を通治する綱なり。

(《中医古方方名考》)
(《中医古方方名考》)

唐宗海:月者魄也,日者瑰也。
唐宗海:月者魄也,日者瑰也。

……月者坎水之精,日者离火之精。
……月者坎水之精,日者離火之精。

又曰:人身天癸之水,实与月应,女子称为月信,言其如潮水之有定期,男子亦有天癸,乃与月应。
又た曰く:人身の天癸の水,実は月と応ず,女子は称し月信t為す,其の言はれは潮水の如く定期に有り,男子も亦た天癸有り,乃ソコで月と応ず。

(《嵌医易通说》)
(《嵌医易通説》)

黄元御原著,吕宇剑点睛:原著:阳盛于上而生于下,水中之气,是曰阳根。
黄元御原に著す,呂宇剣は睛を点す(書き入れる):原著:陽盛に上りて下に生ず,水中の気,是れ陽根と曰く。

阳气长养,爰生木火,阳性浮动,其根一生,则浮动而亲上者,性也,是以木生而火长,而木火之生长,全赖脾土之升,脾土左升,木生于东而火长于南,纯阳之位,阴气萌滋,此金水收藏之根本也。
陽気長養,爰ソコで木火を生ず,陽性浮動し,其の根に一を生ずれば,則ち浮動して上に親しき者は,性なり,是れ木生を以て而るに火長じ,而るに木火の生長,全て脾土の升に頼る,脾土は左(東)に升る,木は東に生じて火は南に長ず,純陽の位,陰気萌モへ滋ふ,此れ金水収蔵の根本なり。

(《黄元御四圣心源点睛》)
(《黄元御四聖心源点睛》)

※唐宗海
※唐宗海

【原文】
【原文】

唐宗海(1862—1918)
唐宗海(1862―1918)

『血证论』1884
『血証論』1884

(中医约出版1996)p155-156
・・・(中医約出版1996)p155-156

【整理】 怔忡
【整理】 怔忡

(一)病机
(一)病機

「思虑过度、及失血家去血过多者、及有此证」
「思慮過度、及び失血家去血過多の者、及び此の証有り」

「挟痰瘀」
「痰瘀を挟む」

(二)治法
(二)治法

①无血以养心···安神丸(清)、归脾汤加减(补)
①無血以養心・・・安神丸(清)、帰脾湯加減(補)

②心中有痰····指迷茯苓丸加减、朱砂安神丸加减
②心中有痰・・・・指迷茯苓丸加減、朱砂安神丸加減

③胃火强梁····泻心汤、泻心汤加减使血、气、火三者皆平
③胃火強梁・・・・瀉心湯、瀉心湯加減血、気、火三者に使ひ皆な平タイラかなり
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平时代茶可用,生脉散,黄蓍糯米汤,加阿胶、麦冬,尤能充补肺脏。
平なる時に茶に代り用ふ,生脈散,黄蓍糯米湯に,阿膠、麦冬を加へ,尤トクに能く肺臓を充補す。

凡此皆滋补肺阴,为失血必有之证治也。
凡そ此れ皆な肺陰を滋補し,必ず失血と為す有りの証治なり。

而陈修园谓血虽阴类,运以阳和,心肺之阳一宣,如日月一出,爝火无光,诸般邪热俱除,血自不扰,而循经矣。
而るに陳修園は謂ふ血は陰類と雖も,陽を以て運ハコび和す,心肺の陽は一に宣ヒロがり,如し日月に一に出イず,火を爝テラすも光無く,諸般の邪熱倶に除く,血は自ら擾せずして,経を循メグるや。

吐血·四补血2-24


故又有温补肺阳之法,用保元汤,甘温除大热,使肺阳布濩,阴翳自消。
  故に又た肺陽を温補すの法有り,保元湯を用ふ,甘温にて大熱を除き,使肺陽をして布シキ濩ソウ(双:広げるshuang)せしめ,陰翳は自ら消ゆ。

设有痰饮欬嗽者,加五味、杏仁,或用六君汤,加炮姜、五味。
設し痰飲欬嗽有る者に,五味、杏仁を加へ,或ひは六君湯を用ひ,炮姜、五味を加ふ。

内经云,形寒饮冷则伤肺。
内経に云ふ,飲冷し形寒せば則ち肺傷らる。

上二方,为形寒者,主补肺之法。
上の二方,形寒と為し者,補肺の法を主る。

凡阳虚生外寒,及浊阴于上焦者,用以扶肺之阳,洵属良剂。
凡そ陽虚し外寒を生じ,及び濁陰上焦なる者,肺の陽を扶タスくを用ひ以て,洵マコトに良剤に属す。

然失血之人,多是阴虚,若执甘温除大热之说,妄投此等药料,鲜不致误。
然り失血の人,是れ陰虚多く,若し甘温を執り大熱を除くの説なれば,此れ等ラの薬料を妄ムヤミに投トウじ,鮮アマリにも誤まりを致さざるなり(誤ってもたらさない)。

故年来从修园法者,能医杂证,而不能医虚痨,以其偏于补阳故也。
故に年来(ここ数年)修園法に従る者は,能く医の雑証を,而シて医の能はざる虚癆とし,以て其の補陽に偏よる故へなり也。

第以理论之,原有气不摄血之义。
第ジュンは理論を以て,原モトもと気は摂血せざるの義有り。

故十百之中,亦有一二宜补阳者,因并列其方,使人参观,以尽其变。
故に十百の中,亦た一二宜しく補陽すべき者有り,其の方を並列すに因り,人をして参観せしめ,以て其の変を尽ツクす。

心为君火,主生血,血虚火旺,虚烦不眠,怔忡健忘,淋遗秘结,神气不安,用天王补心丹,启肾之水,上交心火,火不上炎,则心得所养。
心は君火と為し,生血を主り,血虚火旺せば,虚煩し眠れず,怔忡(動悸)健忘し,淋遺秘結,神気不安す,天王補心丹を用ひ,腎の水を啓ヒラき,上ノボり心火を交へ,火は上炎せずんば,則ち心の養ふ所を得る。

心经水火不相济者,以此补水宁心。
心経の水火が相ひ済スクはざる者は,此れを以て補水寧心す。

吐血·四补血2-25

若不关水虚,但由本脏之血虚火旺者。
若し水を関トジコめず虚すは,但だ本臓の血虚火旺なる者に由イダぬる。

则佣养血清心之药而己。
則ち養血清心を傭ヤトふ薬のみ。

朱砂安神丸,泻心火,补心血,并安心神,凡怔忡、昏烦、不寐之证,皆可治之。
朱砂安神丸は,心火を瀉し,心血を補ひ,並びに心神を安ヤスンず,凡スベて怔忡(動悸)、昏煩、不寐の証,皆な之を治すべし。

若心阳不收,汗出惊悸,以及心火不下交于肾,而为梦遗溺赤等证者,随用上二方,再加龙骨、牡蛎、枣仁、莲心、浮麦等,以敛戢之,此为心经血虚火旺之大法。
若し心陽が収まらずば,汗出驚悸す,以及オヨび心火下り腎と交はらず,而るに夢遺溺赤等の証と為す者は,随ひ上二方を用ふ,再サラに竜骨、牡蠣、棗仁、蓮心、浮麦等を加へ,以て之を斂戢(おさめる)レンシュウす,此れ心経血虚火旺の大法と為す。

其有心经火虚,不能生血,瘦削悸怯,六脉细弱,宜用人参养荣汤,补脾胃以补心。
其の心経に火虚有り,生血する能はず,痩削ソウサクし悸怯す,六脈細弱なり,宜しく人参養栄湯を用ひ,脾胃を補ひ以て補心すべし。

吐血·四补血2-26

内经云,中焦受气取汁,变化而赤是为血。
内経に云ふ,中焦は気を受け汁を取る,変化して赤セキす是れ血と為す。

是汤补心化血,以奉周身。
是の湯は心を補ひ血に化す,以て周身を奉ササぐ。

名养荣者,专主以阳生阴,和畅荣血。
栄を養ふと名づく者は,専ら陽が陰を生ずを以て主る,暢トドコオリナく和し血を栄す。

凡气血两虚,变见诸证,皆可服也。
凡スベて気血両虚は,諸証に見れ変ず,皆な服すべかるなり。

然女人血崩,及产后亡血过多,均以温补为主,因其血下泻,属于脱证故也。
然り女人の血崩,及び産後亡血過多は,均しく温補を以て主と為す,其の血下瀉するに因り,脱証に属す故へなり。

至于吐血,乃血脉奋兴,上干阳分,是为逆证,宜温补者最少。
吐血に至り,乃ソコで血脈奮興し,上り陽分を干す,是れ逆証と為す,宜しく温補すべき者最も少し。

然亦有阳不统阴,暴脱大吐,阴亡而阳亦随亡者,温补又为要法。
然り亦た陽有り陰に統スベらず,大吐を暴脱す,陰亡きて陽も亦た随し亡く者,温補又は要法と為す。

甚矣!
甚しきや!

医者,辨证不可不详,而用药不可执一也。
医とは,不可不詳に弁証して,薬を用ふるに一を執トるべからざるなり。

故近日从丹溪者,专用苦寒,从修园者,专用温药,皆是一弊。
故に近日丹渓に従ふ者,専ら苦寒を用ひ,修園に従ふ者,専ら温薬を用ふ,皆な是れ一弊ベツあり。

吐血·四补血2-27

脾主统血,运行上下,充周四体,且是后天,五脏皆受气于脾。
  脾は統血を主る,上下運行し,四体を週メグり充ミタし,且つ是れ後天なり,五臓皆な脾に気を受く。

故凡补剂,无不以脾为主。
故に凡(一般)に補剤は,脾を以て主と為さずなし(全部~とする)(無不:…ないものはない)。

思虑伤脾,不能摄血,健忘怔忡,惊悸盗汗,嗜卧少食,大便不调等证,归脾汤统治之。
思慮は脾を傷る,摂血する能はず,健忘怔忡(動悸)し,驚悸盗汗,嗜臥少食,大便不調等の証なり,帰脾湯は之を統治す。

脾虚发热,加丹皮、炒栀,兼肺气燥者,加麦冬、五味,胀满而水谷不健运者,加陈皮、煨姜,或加阿胶以滋血,或加柴胡、贝母以解郁,或加鱼胶以固血,独于熟地不可加入,以碍其统摄运行之用。
脾虚発熱は,丹皮、炒梔を加へ,兼ね肺気燥する者は,麦冬、五味を加ふ,脹満して水谷を健運せざる者は,陳皮、煨姜を加へ,或ひは阿膠を加へ以て滋血し,或ひは柴胡、貝母を加へ以て解欝し,或ひは魚膠コウを加へ以て血を固む,独り熟地を加入すべからず,以て其の運行を統摂する用を礙ソコナふ。

盖此乃以阳生阴,以气统血之总方,不似四物、六味,以阴益阴也。
蓋し此れ乃ち陽以て陰を生ず,気を以て統血の総方なり,四物、六味に似ず,陰を以て陰を益すなり。

且脾与肝肾,滋阴之法,亦各不同。
且つ脾は肝腎を与へ,滋陰の法にて,亦た各オノおの同じからず。

吐血·四补血2-28

若脾阴虚,脉数身热,咽痛声哑,《慎柔五书》,用养真汤,煎去头煎,止服二三煎,取无味之功,以补脾,为得滋养脾阴之秘法。
若し脾陰虚ならば,脈数身熱,咽痛声唖セイアし,《慎柔五書》には,養真湯を用ひ,頭に煎じ煎を去り,二三煎を服し止トドむ,無味の功を取り,以て補脾す,脾陰を滋養するを得ウると為す之の秘法,楊西山専ら主る

(慎柔五书)
(慎柔五書 著者: 胡慎柔 王朝: 明年: 1368-1644)

杨西山专主甲己化土汤,亦颇简当。
楊西山は専ら甲己化土湯を主る,亦た頗スコブる簡当(簡単)なり。

而人参、花粉,尤滋生津液之要药。
而るに人参、花粉は,尤トリワけ津液を滋ウルオし生ショウず要薬なり。

世但知砂、半姜、蔻,为扶脾进食之要药。
世は但だ砂、半姜、蔻を知り,脾を扶タスけ進食の要薬と為す。

不知脾阳不足,不能薰化水谷者,砂、半、姜、蔻,自系要药。
脾陽不足を知らざれば,水谷を薰化する能はず,砂、半、姜、蔻が,自ら要薬に系る。

若脾阴不足,津液不能融化水谷者,则人参、花粉,又为要药。
若し脾陰不足ならば,津液は水谷に融化する能はず,則ち人参、花粉は,又た要薬と為す。

试观回食病,水谷不下,由于胃津干枯,则知津液,尤是融化水谷之本。
試タメしに回食病を観る,水谷下らず,胃津乾枯に由ヨり,則ち津液を知る,尤トリワけ是れ水谷の本を融化するなり。

吐血·四补血2-29

近日西洋医法书,传中国与内经之旨,多有抵牾,实则内经多言其神化,西洋多滞于形迹,以内经之旨通观之,神化可以该形迹,然西人逐?
近日の西洋医法書は,中国の内経の旨を与へ伝へ,多く抵牾テイゴ(衝突)有り,実則(其実)内経に其の神化を多く言ふ,西洋は形跡の滞り多く,内経を以ての旨は之を通り観ミて,神化は形跡に該フクむを以(可以:できる)てすべしや,然り(しかしながら)西人に逐モトむるか?

细求,未尝无一二通于神化者也,内经之旨,谓脾主消磨水谷,肝胆之气,寄在胃中,以?
細求するに,未だ嘗て一二無かざる神化を通る者なけり,内経の旨は,脾は水谷を消磨(浪費)すを主ると謂ひ,肝胆の気は,胃中に在るを寄り(託す),以ヨリ(依)か?

泄水谷,西医则云,谷入于胃,有甜肉汁,来注以化之,又苦胆汁注于小肠以化之,与胃津合并,化其谷食。
水谷を泄し,西医は則ち云ふ,谷が胃に入り,肉汁の甜アマき有り,之を化すを以て注ソソギに来る,又た苦胆汁を小腸に注ソソぎ以て之を化す,胃と津が合併し,其の谷食を化す。

吐血·四补血2-30

内经所言,化谷以气,西医所言,化谷以汁。
  内経の言ふ所は,谷を化すに気を以てす,西医の言,ふ所は谷を化すに汁を以てす。

有此气,自有此汁。
此の気有り,自モチロン此の汁有り。

今人读内经,不知经文举精以该粗,竟至得用而遗体,反不若西医逐迹以求,尚知谷食之化,在于汁液也。
  今人内経を読み,経文に該粗を以て精を挙ぐを知らず,竟ツイに用ふるを得るに至りて体を遺ノコす,反て若からざる西医は跡アトを逐オウて以て求め(逐跡以求:跡を追ってねらう),尚ほ谷食の化を知る,汁液に在るなり也。

但西医有此论,而用药不经,不足为训。
但だ西医に此の論有りて,用薬を経ヘず,不足を訓と為す。

吾于滋胃汁,每用甘露饮,清燥养荣汤,叶氏养胃汤。
  吾れ胃汁を滋すに,甘露飲,清燥養栄湯,葉氏養胃湯を毎用す。

滋脾汁,用人参固本汤,炙甘草汤,去桂枝,加白芍。
  脾汁を滋し,人参固本湯,炙甘草湯を用ひ,桂枝を去り,白芍を加ふ。

滋胆汁,用小柴胡汤,去半夏加花粉,生津化谷。
  胆汁を滋し,小柴胡湯を用ふ,半夏を去り花粉を加へ,生津化谷す。

以拆衷中西之医法,而为补养脾阴要义。
  以て中西拆衷の医法にして,脾陰を補養と為すを要義とす。

知此,庶可补李东垣《脾胃论》之所不足。
此を知り,庶コウシテハジメて李東垣の《脾胃論》の足らざる所を補ふべし。

吐血·四补血2-31

若果脾阳不旺,不能磨化水谷者,则用六君子,加香砂以燥之。
若し果モシカして脾陽旺せず,水谷を磨化ケンカ(細かく砕く)する能はざる者には,則ち六君子を用ひ,香砂を加へ以て之を燥す。

如欲专意填补,则仲景小建中汤,尤胜。
如し専ら填補チンホ(埋める)の意を欲さば,則ち仲景の小建中湯が,尤トクに勝マサる。

补阳致阴,为虚痨圣方。
補陽は陰を致アタへ,虚癆の聖方と為す。

今即不能恪遵,但得其意,则于归脾、六君、补中益气诸方,可以变化神奇,用收广效。
今即ち恪遵カクソン(従う)する能はず,但だ其の意を得ウれば,則ち帰脾、六君、補中益気の諸方にす,変化を以て神奇すべく,収を用ひ広く効キけむ(可以:...できる)。

归脾汤,从建中汤重浊处用意。
帰脾湯は,建中湯従り重濁なる用ふ処の意なり。

补中汤,从建中汤轻清处用意,第此方,桂枝阳燥,于血证有宜不宜,用者审之。
補中湯は,建中湯従り軽く清きを用ふ処の意なり,第ダイに(順番に、最初に)此の方は,桂枝が陽燥,血証にて宜しくも有り宜しくもならず(有宜不宜:あったりなかったりする),用ふる者は之を審ツマビラカにす。

如命门真火,不能生土,吐利厥冷,阴火上冲,头面赤色,恶心逆满,用正元丹温补少火,而又无壮火食气之虞;
如し命門真火が,土を生じる能はずんば,吐利厥冷し,陰火上衝,頭面赤色く,惡心逆満す,正元丹温を用ひ少火を補ひて,又た壮火食気無しの虞ウレイなり;

是能得小建中之遗意者也,葛可久白凤膏,化平胃散之燥,变为柔和,又用酒送,取五谷之精,合诸药以养脾胃,治饮食不进,发热劳倦,和血顺气,功效最大。
是れ能く小建中の遺意イイを得ウる者なり,葛可久の白鳳膏,平胃散の燥を化し,変じて柔和と為し,又た酒送を用ひ,五穀の精を取り(採用し),諸薬を合せ以て脾胃を養ひ,飲食不進,発熱労倦,和血順気を治す,功効は最も大なり。

吐血·四补血2-32

肝为藏血之脏,血所以运行周身者,赖冲、任、带三脉以管领之,而血海胞中,又血所转输归宿之所,肝则司主血海,冲、任、带三脉,又肝所属,故补血者,总以补肝为要。
肝は蔵血の臓と為す,血の周身を運行する所以ユエンに,沖、任、帯の三脈に頼り以て之を管領し,而るに血海胞中は,又た血の帰宿転輸する所の所,肝なれば則ち血海を主シュと司ツカサどり,沖、任、帯の三脈は,又た肝の属する所なり,故に補血とは,総じて補肝を以て要と為す。

李时珍谓肝无补法,盖恐木盛侮土。
李時珍は肝に補法無しと謂ふ,蓋し恐らく木盛が土を侮アナドる。

故为此论。
故に此の論と為す。

不知木之所以克土者,肝血虚,则火扰胃中,肝气虚,则水泛脾经,其侮土也如是,非真肝经之气血有余也。
木の土を克カつ所を以てを知らず,肝血虚せば,則ち火は胃中に擾ウレひ,肝気虚せば,則ち脾経に水泛し,其の土を侮アナタドるや是の如し,真の肝経の気血に非ざれば有余なり。

且世上虚痨,多是肝虚,此理自东垣《脾胃论》后,少有知者。
且シカも世は虚癆(肺結核)を上アげ,多くは是れ肝虚とす,此れ東垣の《脾胃論》後に自ヨり理カカ(道理する)り,少ししか知る有る者なり。

吐血·四补血2-33

肝血虚,则虚烦不眠,骨蒸梦遗,宜四物汤,加枣仁、知母、云苓、柴胡、阿胶、牡蛎、甘草,敛戢肝魂,滋养肝血,清热除烦,为肝经阴虚滋补之法。
肝血虚せば,則ち虚煩不眠し,骨蒸夢遺す,宜しく四物湯にすべし,棗仁、知母、雲苓、柴胡、阿膠、牡蠣、甘草を加へ,肝魂を斂戢シュウし,肝血を滋養し,清熱除煩す,肝経陰虚の滋補と為すの法なり。

又有肝经气虚,脏寒魂怯,精神耗散,桂甘龙牡汤,以敛助肝阳,阳虚遗精,惊悸等证宜之。
又た肝経気虚有り,臓寒せば魂怯オビゆ,精神耗散す,桂甘竜牡湯は,斂を以て肝陽を助く,陽虚遺精,驚悸等の証も之に宜し。

独与失血未尽合宜。
独り(ただ)失血を与へ未だ合に尽きざるに宜し。

以其纯用气分药故也。
其の純以て気分薬を用ふる故なり。

仁熟散,用血分药较多,温润养肝血,功与炙甘草汤相近。
仁熟散は,血分薬が較多く用ひ,温め肝血を潤養す,功は炙甘草湯と相ひ近し。

若肝之血不畅和,亦可用滑氏补肝散,以酸味补肝体,以辛味补肝用。
若し肝の血が暢和せず,亦た滑氏補肝散を用ふべきにて,酸味を以て肝体(体用の体)を補ひ,辛味を以て肝用(体用の用)を補ふ。

妙独活一味,借风药以张其气,若去独活,加桑寄生,则又有宁息风气之妙,方意实从逍遥散套出,但此方气味厚,俱纯于补肝。
独活一味は妙なり,風薬を借り以て其の気を張る,若し独活を去り,桑寄生を加はば,則ち又た風気寧息有りの妙なり,方意は実に逍遥散従り套オオイを出し,但だ此の方の気味は厚く,倶に補肝を純ジュン(単独)する。

逍遥散气味较薄,故纯于和肝。
逍遥散の気味は較カクに薄し,故に和肝に純ジュンす。

吐血·四补血2-34

凡肝有郁火,胸胁刺痛,头眩心悸,颊赤口苦,寒热盗汗,少食嗜卧,无不治之。
凡そ肝に欝火有り,胸脇刺痛し,頭眩心悸,頬赤く口苦し,寒熱し盗汗す,少食嗜臥,之れ治らざる無し(二重否定:しないものはない=全てする)。

又有肝轻血脉大损,虚悸脉代者,法宜大生其血,宜仲景炙甘草汤,大补中焦,受气取汁,并借桂枝入心,化赤为血,使归于肝,以充百脉,为补血第一方。
又た肝に軽ひ血脈大損有り,虚悸脈代の者,法は宜しく其の血を大ひに生ショウずべし,仲景の炙甘草湯に宜ヨロし,大ひに中焦を補ひ,気を受け汁を取り,並びに桂枝を借り心に入り,赤く化し血と為す,肝に帰せしめ,以て百脈を充ミたす,補血の第一方と為す。

世医补血,而不得血之化源,虽用归、地,千石无益。
世医の補血は,而るに血の化源を得ず,帰、地の千石を用ふと雖も益エキ無し(無駄なことだ)。

果参透此旨,则归脾汤之用远志、枣仁,是入心理血之源也;
果ハたして此の旨を参透サントウ(参考に過ぎる)せば,則ち帰脾湯に之れ遠志、棗仁を用ふは,是れ心に入り理血の源なり;

逍遥散之用丹、栀,是入心清血之源也。
逍遥散の丹、梔を用ふは,是れ心に入る清血の源なり。

从此一隅三反,自有许多妙用,肾为水脏,上济君火,则水火既济,上交肺金,则水天一气,水升火降,不相射而相济,安有不戢自焚之患。
此の一隅三反(一石二鳥=1つの事から多くの事を類推する)従り,許タブン多くの妙用が有る自ヨり,腎は水臓と為し,上は君火を済タスく,則ち水火は既に済タスく,上は肺金と交マジワり,則ち水天一気にして,水升ノボり火降オる,相ひ射ウたずして相ひ済スクひ,安じ焚の患自ヨり戢アツマらざる有り。

设水阴之气虚,而火热之气亢,喘欬蒸灼,痰血痨瘵均作矣。
設モし水陰が之れ気虚なら,而ち火熱の気亢タカブり,喘欬蒸灼し,痰血癆瘵を均しく作ナすや。

凡人后天之病,久则及于先天。
凡そ人は後天に病ヤみ,久しくば則ち先天に及ぶ。

寇深矣,若之何?
寇テキ深シや,之れ何イズれに若オヨぶか?

凡治虚者,不可以不早也,地黄汤主之,补肾之阴,而兼退热利水,退热则阴益生,利水则阴益畅。
凡そ虚を治す者は,早からずを以てすべからざるなり(不可以不早:早くならなくなってはいけない),地黄湯之を主る,腎の陰を補ひて,兼ねて退熱利水す,退熱せば則ち陰は生じ益す,利水せば則ち陰は暢ナガれ益す。

盖膀胱化气,有形之水气下泄,则无形之水阴,如露上腾而四布矣。
蓋し膀胱化気は,有形の水気にて下泄す,則ち無形の水陰なり,露の如く上騰して四布すや。

以济君火,则加枸杞,元参。
以て君火を済スクふ,則ち枸杞、元参を加ふ。

以输肺金,则加生脉散。
以て肺金を輸ユす,則ち生脈散を加ふ。

火甚者再加黄柏、知母。
火甚しき者は再サラに黄柏、知母を加ふ。

如小便清和,无痰气者,只须专意滋肾,左归饮多服为佳。
如し小便清和し,痰気無く者は,只だ須べからく専ら滋腎を意モクロみ,左帰飲を多服して佳ヨきと為す。

回龙汤滋阴降火,同气相求,视无情草木尤胜。
回竜湯は滋陰降火す,気を同じく相ひ求め(意気投合して),草木の情(状況)無しを視ミて尤トクに勝る。

如阴虚火旺,足痿筋焦,骨蒸头晕,用丹溪大补阴丸,滋阴潜阳,以苦寒培生气,较地黄汤更优。
如し陰虚火旺し,足痿筋焦コげ,骨蒸頭暈すに,丹渓大補陰丸を用ひ,滋陰潜陽す,苦寒を以て生気を培ツチカひ,較アキラカに地黄湯更サラに優スグる。

以上补肾阴法。
以上が補腎陰法なり。

吐血·四补血2-35

又有宜补肾阳者,肾为水脏,而内含阳气,是为命火。
又た宜しく腎陽を補ふ者有り,腎は水臓と為し,而るに陽気を内含す,是れ命火と為す。

此火上泛,则为雷龙之火,下敛则为元阳之气。
此の火上に泛ウカベば,則ち雷竜の火と為し,下に斂レンせば則ち元陽の気と為す。

引雷龙之火以归根,则无上热下寒,头晕腰痛,肿喘癃闭之证。
雷竜の火を引き以て根に帰さば,則ち上熱下寒無く,頭暈腰痛し,腫喘癃閉の証なり。

用肾气丸,从阴化阳,补火济水以治之,再加牛膝、车前,或黄柏、知母,更能利水折火。
腎気丸を用ひ,陰従り陽に化し,火を補ひ水を済スクひ以て之を治す,再サラに牛膝、車前,或ひは黄柏、知母を加へ,更に能く利水折火す。

如不须化水,但须补阳者,则用黄氏天魂汤。
如し須べからく水に化せず,但だ須べからく陽を補ふ者は,則ち黄氏天魂湯を用ふ。

是从仲景附子汤套出,虽不及附子汤力量之厚,较附子汤药尤纯和。
是れ仲景の附子湯従り套ガイ出(引き出す)し,附子湯の力量の厚アツみ及ばざると雖も,較アキラカに附子湯は尤トクに純和に薬す。

血家忌刚燥,间有宜补元阳者,亦以此等为佳。
血家は剛燥を忌む,間トキに宜しく元陽を補ふべき者有り,亦た以て此れ等ラなど佳しと為す。

夫肾中之阳,达于肝,则木温而血和,达于脾,则土敦而谷化。
夫れ腎中の陽は,肝に達し,則ち木温して血和す,脾に達し,則ち土敦トン(手厚く)而シて谷化す。

筋骨强健,手足不清冷,卫气固,不恶寒,皆肾阳足故也,然肾水赖阳以化,而肾阳又赖水封之,此理不可偏废。
筋骨強健し,手足清冷せず,衛気固め,悪寒せず,皆な腎陽が足タる故ユエなり,然り腎水は化を以て陽に頼り,而るに腎陽又は水が之を封フウずに頼ヨる,此の理は偏ずべからず(片手落ちになってはいけない)廃す。

补肾者所宜细求。
補腎とは宜しく細サイに求モトむべき所なり(細く求めなければならない)。

吐血·四补血2-36

以上所论补法,轻重进退,各有法度,非如张景岳辈,多集补药而己也。
以上は補法を論じる所,軽重進退,各おの法度キマリ有り,如し張景岳輩ヤカラに非ずば,多く補薬を集むる而己ノミなり。

总而论之,血证属虚痨门,固宜滋补,第恐瘀邪未清,骤用补法,则实以留邪为患,而正气反不受益。
総而ツマり之を論じ,血証は虚癆門に属し,宜しく滋補すべきは固イウマデモない,瘀邪が未だ清ならずを恐るを第テイし,驟ニワカに補法を用ふれば,則ち実に邪を留むるを以て患ワズラウと為し,而るに正気は反て益を受けず。

历见干血痨瘵等证,皆系医人横用滋补,以致旧血不去,新血不生。
干血癆瘵等の証を暦見し,皆な医人の滋補の横ヨコしまな用に系カカる,以て旧血は去らずに致イタり,新血生ショウぜず。

不知旧血,客于经络脏腑之间,如木之有蛀,不急去之,非木死,其蛀不止也。
旧血を知らず,経絡臓腑の間に客し,如へば木に之れ蛀ムシクイ有り,之を去るに急がず,木ボクトツに死すに非シヨウトす(不是非:是非にあらず),其の蛀ムシクイを止まざるなり。

故仲景治干血,用大黄䗪虫丸。
故に仲景は干血を治すに,大黄䗪虫丸を用ふ。

夫既成虚痨之证,而内有干血,犹须峻药去之,则其虚未成者,更不可留邪为患。
夫れ既に虚癆の証成りて,内に干血有り,猶ほ須スベカラく峻薬之を去らば,則ち其の虚は未だ成らざる者,更に邪が留トドむべからず患ワズラふと為す。

故实证断不可用补虚之方,而虚证则不废实证诸方,恐其留邪为患也。
故に実証は断じて補虚の方を用ふべからず,而るに虚証なれば則ち実証の諸方を廃せず,恐らく其の邪を留め患ふと為すなり。

或虚中实证,则攻补兼用,或十补一攻,在医者之善治焉。
或ひは虚中に実証ならば,則ち攻補兼用し,或ひは十補ひ一攻め,医者の善ヨし在りて治すや。

以上所论吐血,始终治法略备,惟于兼证变证不及详言。
以上は吐血を論ずる所,始終治法の備ソナへを略し,惟だ兼証変証に及ばず詳しく言ふのみ。

另立门类,缕分条析,查证治者,可以鉤考而得之。
別に門類を立て,縷クワしく条析に分け,証治を査サす者,鉤考(鉤カギの考え)を以てすべく而て之を得る。

呕血2-37
呕血
嘔血

吐血者,其血撞口而出,血出无声。
吐血とは,其の血は口に撞ツきて出,血出イで声無し。

呕血者,血出有声,重则其声如蛙,轻则呃逆,气不畅遂而已。
嘔血とは,血出イで声有り,重くれば則ち其の声蛙カエルの如し,軽くれば則ち噦逆エツギャク(しゃっくり)す,気は暢チョウ遂トぎ(なしとげる)せざる而已ノミ。

同是血出口中,治与吐血无异,但吐无声,而呕有声,证既小异,而治法若不加详,安能丝丝入彀。
同じに是れ血が口中より出で,治は吐血と異なり無し(等しい),但だ吐は声無くして,嘔は声有り,証は既モトヨり小異にして,治法は詳く加へざる若し,安イズクニか(反語)能く糸糸として彀ゴウし入るか(どうして規則に合致することができるだろうか)。

以轻重论,则吐轻而呕重,吐则其气尚顺,呕则其气更逆也。
軽重論を以てすれば,則ち吐は軽くして嘔は重し,吐すれば則ち其の気尚ほ順,嘔すれば則ち其の気更に逆なり。

以脏腑论,吐血其病在于胃,呕血其病在于肝,何以言之。
臓腑論を以てすれば,吐血は其の病は胃に在り,嘔血は其の病は肝に在り,何を以て之を言ふ(どうして言うか)。

盖肝木之气,主于疏泄脾土,而少阳春生之气,又寄在胃中,以升清降浊,为荣卫之转枢。
蓋し肝木の気は,脾土の疏泄を主り,而るに少陽春生の気,又た胃中に寄り在り,升清降濁を以て,栄衛の転枢(変化した要)と為す。

故伤寒论少阳为病,有干呕呕吐不止之病,是少阳转枢不利,清气遏而不升,浊气逆而不降也。
故に傷寒論少陽は病と為し,干嘔(からえずき)有り嘔吐止まずの病,是れ少陽の転枢不利にて,清気遏ソしして升らず,濁気逆して降りざるなり。

金匮呕涎沫头痛胸满者,吴茱萸汤主之,取吴萸降肝之浊气,肝气降而呕自止,是肝木失其疏泄之常,横肆每侮,故成呕逆,主用吴茱萸,降肝之浊气,肝气不逆,则呕止矣。
金匱の涎沫を嘔し頭痛胸満する者は,呉茱萸湯之を主る,呉萸は肝の濁気を降すを取り,肝気降ろして嘔自ら止む,是れ肝木が其の疏泄の常を失ひ,侮アナドル毎ゴトに横ムヤミに肆キママなり,故に嘔逆を成し,呉茱萸を用ひ主ツカサドり,肝の濁気を降し,肝気逆せざれば,則ち嘔は止ヤむや。

呕血2-38

由此观之,可知凡呕皆属肝胆,而血又肝之所司,今见呕血之证,断以调肝为主。
此れ之を観るに由り,凡そ嘔は皆な肝胆に属すを知るべし,而るに血又は肝の司どる所,今嘔血の証を見て,断じ肝を調ふを以て主と為す。

诸家皆言呕血出于肝。
諸家は皆な嘔血は肝より出ずと言ふ。

而未详其理。
而るに未だ其の理を詳しくせず。

吾故旁引金匮伤寒,以证明之。
吾れ故に金匱傷寒に旁ボウを引き,以て之を証明す。

但金匮伤寒之呕,乃杂病之呕,属于气分者也,而失血之呕,则专主血分,治法自有不同耳。
但だ金匱傷寒の嘔は,乃ち雑病の嘔,気分に属す者なり,而シカし失血の嘔なれば,則ち専ら血分を主る,治法は自ら同じからざる有る耳ノミ。

先干呕,然后呕血,呕血后仍发干呕者,皆少阳之逆气也,用大柴胡汤,加蒲黄丹皮桃仁当归治之。
先に干嘔し,然る後に嘔血す,嘔血の後に仍ほ干嘔を発する者は,皆な少陽の逆気なり,大柴胡湯を用ひ,蒲黄、丹皮、桃仁、当帰を加へ之を治す。

呕血既止,再服小柴胡汤,以调和荣卫,转枢表里。
嘔血が既に止み,再サラに小柴胡湯を服す,以て栄衛を調和し,表裏を転枢す。

上焦得通,津液得下,胃气因和,呕哕自止,血自安静,而不上潮矣。
上焦が通るを得,津液も下るを得,胃気和すに因り,嘔噦自ら止む,血も安静するに自ヨりて,上潮せざるや。

然肝胆相连,胆病未有不及肝者,丹栀逍遥散,可并治之。
然り肝胆相ひ連なり,胆病は未だ肝に及ばざる者有り,丹梔逍遥散,並びに之を治すべし。

呕血2-39

但呕不吐,属少阳,呕吐兼有,属肝经。
但だ嘔し吐せずは,少陽に属す,嘔吐に兼ね有り,肝経に属す。

肝气善怒,其火最横。
肝気は善く怒す,其の火は最も横ヨコシマなり。

观伤寒论,肝气侮肺名曰纵,刺期门。
傷寒論を観るに,肝気は肺を侮アナドる名づけて縦ジュウと曰く,期門キモンを刺す。

肝气侮脾名曰横,刺期门。
肝気は脾を侮アナドり名づけて横オウ(よこしま)と曰く,期門を刺す。

皆取刺法以泻之,则知肝气怒逆,而为呕逆,尤宜攘除肝火,不可纵敌为患。
皆な刺法を取り以て之を瀉す,則ち肝気怒逆すを知る,而るに嘔逆と為す,尤トリワけ宜しく肝火を攘除ジョウジョ(取り除き)す,敵を縦ハナつ(抵抗する)べからず患ワズラふと為す。

今本仲景刺法之意,变用汤药,宜当归芦荟丸,加丹皮、蒲黄。
今本仲景の刺法の意は,湯薬を変り用ひ,宜しく当帰芦薈丸に,丹皮、蒲黄を加ふべし。

凡发怒呕血,以及肝气横逆,其证恶闻人声,欲死不欲生,欲按剑杀人,及惊狂骂詈,不认亲疏,皆肝经无情之火。
凡そ怒を発し嘔血すは,以及オヨび肝気横逆す,其の証は人声を聞くを悪イみ,死すと欲し生イくと欲せず,人を剣殺せんと按じ欲す,及び驚狂罵詈し,疏を親しく認めず,皆な肝経の無情の火なり。

非此大剂不能歼除。
此れ大剤に非ず殲除センジョ(殲滅)する能はず。

若此时因循,延至日久,病气未衰。
若し此の時に循に因り,日久しく至り延ノび,病気未だ衰へず。

正气先衰,虚中挟实,不攻不愈,欲攻不堪,是犹宋用贾似道,养奸为患,至国促而始去之,晚矣。
正気が先に衰へ,虚中に実を挟ハサみ,攻めず癒ユせず,攻むと欲すも堪だせず,是れ猶ほ宋の賈似道(賈似道は骨董の収集家としても知られ、所蔵品の数は南宋の朝廷以上だといわれている)は用ひ,奸ミダラを養ひ患ワズラふと為す,国の促に至りて始めて之を去る,晩オソキかな。

若审其病稍轻者,但须凉肝血,谓胃气,则呕血自止,犀角地黄汤,加柴胡枳壳,服后血止,再服逍遥散,加阿胶牡蛎香附以收功。
若し其の病の稍ワズカに軽きを審ツマビラカな者は,但だ須べからく肝血を涼し,胃気を謂へば,則ち嘔血自ら止む,犀角地黄湯に,柴胡、枳殻を加へ,服したる後に血ケツ止ヤむ,再サラに逍遥散を服し,阿膠、牡蠣、香附を加へ以て功を収む。

呕血2-40

有平时呕酸呕苦,以及失血之后,常呕酸苦者,呕酸是湿热,试观夏月热汤过夜,则变为酸味,便知呕酸是湿热。
  平時に酸を嘔し苦を嘔す有り,以及び失血の後,常に酸苦を嘔す者は,酸を嘔すは是れ湿熱なり,試みに夏月に熱湯夜を過すを観れば,則ち変じて酸味と為す,便ち嘔酸を知る是れ湿熱なり。

呕苦是相火,胆寄相火,胆汁苦,故相火之味,能变胃津使苦。
嘔苦は是れ相火なり,胆は相火に寄る,胆汁苦し,故に相火の味なり,能く変じて胃津を苦ニガくせしむ。

宜借用左金丸,再加血分药,以治血分为宜。
宜しく左金丸を用ひ借カるべし,再サラに血分薬を加へ,以て血分を治すを宜ヨロシと為す。

盖此二药,辛苦降泄,治血药中,以为引导尤效。
蓋し此の二薬,辛苦降泄にて,血薬中を治す,尤トクに効を引導と以為スル(…と思う)。

呕血止后,如肝胆火旺。
嘔血止まりたる後,肝胆火旺の如し。

血虚烦躁,颊赤口渴,胸胁刺痛,发热盗汗,魂梦不安,此乃相火内炽。
血虚煩躁し,頬赤く口渇し,胸脇刺痛,発熱盗汗,魂夢不安す,此れ乃ち相火内熾なり。

欲作骨蒸痨瘵,宜柴胡清骨散,以治之。
骨蒸癆瘵を作さんと欲す,宜しく柴胡清骨散にすべし,以て之を治す。

如兼咳嗽,喉间作痒,乃肝肺之气不相调协,宜用四逆散,香苏引,再加杏仁、枳壳、枯芩、知母、当归、白芍治之,如咽喉中常若有气哽寒,善哕气打呃者,乃肝与心之气不畅故也。
如し咳嗽を兼ね,喉間に癢カユミを作す,乃ち肝肺の気調協相ひせず,宜しく四逆散を用ふべし,香蘇を引ヌき,再に杏仁、枳殻、枯芩、知母、当帰、白芍を加へ之を治す,如し咽喉中に常に気の哽寒有る若ゴトく,善く噦気呃(しゃっくり)を打つ者は,乃ち肝と心の気が不暢なる故へなり。

香苏引,加柴胡、薄荷、射干、牛蒡子、尖贝、当归、旋覆花治之。
香蘇を引ヌき,柴胡、薄荷、射干、牛蒡子、尖貝、当帰、旋覆花を加へ之を治す。

逍遥散尤为治肝经之要药,加减得宜,皆能应手而取效也。
逍遥散は尤トリワけ肝経を治す要薬と為す,加減を宜しく得て,皆な能く手に応じて効を取るなり。

呕血2-41

呕虽属于肝胆,然亦未有不关胃府者也。
嘔は肝胆に属すと雖も,然り亦た未だ胃府に関せざる者有らずなり。

胃气逆上,治法已详吐血门,今并为医者补言之。
胃気逆上し,治法已スデに吐血門に詳クワシクす,今並びて医者の補と為し之を言ふ。

凡血证带呕者,但治其血,血止而呕自止。
凡そ血証にて嘔を帯ぶる者は,但だ其の血を治すれば,血止みて嘔自ら止む。

凡呕证带血者,有如回食病,呕后见血水,此胃逆血枯,难治之证,大半夏汤、麦门冬汤治之,玉女煎,加蒲黄、麻仁亦效。
凡そ嘔証にて血を帯ぶる者には,如し食を回カイし病有れば,嘔したる後に血水を見す,此れ胃逆血枯にて,治し難きの証なり,大半夏湯、麦門冬湯にて之を治す,玉女煎に,蒲黄、麻仁を加ふるも亦た効あり。

四物汤,加甘草、寸冬、枳壳、茯苓、藕汁、萝卜汁、生姜、荆竹油,皆清利胃气,养血止呕之药。
四物湯に,甘草、寸冬、枳殻、茯苓、藕汁、蘿蔔汁、生姜、荊竹油を加へ,皆な清利胃気,養血止嘔の薬なり。

呕血2-42

此篇论血,单以呕血论,然失血证,未有单见一证,而不兼见诸证者。
此の篇血を論じ,単に嘔血論を以て,然コノヨウに血証を失ひ,未だ単に一証を見アラワす有らず,兼ねて諸証を見はざす者なり。

今欲详其条目,不得不分门立说,至于用方,则须参考诸证而变化之,若拘守一门,以求方治,岂不胶柱鼓瑟。
今其の条目を詳しく欲さば,門を分け立説せざるを得ず,用方に至れば,則ち須べからく諸証を参考にして之を変化す,若し一門を守るに拘ハバカる(固執する)れば,方治を求むるを以て,豈に膠柱鼓瑟ビュウチュウコシツせざるか(膠柱鼓瑟:物事にこだわって融通がきかない)。


解説【膠柱鼓瑟】柱(ちゅう)に膠(にかわ)して瑟(しつ)を鼓(こ)す

《「史記」廉頗藺相如伝から》琴柱 (ことじ) を膠 (にかわ) で動かないようにして瑟を弾く。

状況の変化に対応できないことのたとえ。

呕血2-43
咯血
咯血

咯血者,痰带血丝也。
咯血とは,痰に血糸を帯ぶなり。

昔人谓咯血出于心,谓心主血脉,咯出血丝,象血脉之形故也。
昔人は謂ふ咯血は心より出ずと,心は血脈を主ると謂ひ,血糸を咯出す,象カタチは血脈の形故ユエなり。

又谓咯血出于肾,盖肾主五液,虚火上升,则水液泛上,凝而为痰。
又た謂ふ咯血は腎より出ずと,蓋し腎は五液を主り,虚火が上升せば,則ち水液も上に泛アフる,凝コリカタマりて痰と為す。

然第吐痰已也,而何以又带血丝哉?
然シカシながら第ジュン(順)にはすでに痰を吐いて、どうしてまた血を带オビた絲イト(細い線)を持つや?

盖肾气下行,则水出膀胱,今肾经之气不化于膀胱,而反载膀胱之水上行为痰。
蓋し腎気下行せば,則ち水は膀胱に出イで,今腎経の気は膀胱に化せず,而るに反て膀胱の水上行すに載り痰と為す。

膀胱者,胞之室,膀胱之水,随火上沸,引动胞血随之而上,是水病兼病血也。
膀胱とは,胞の室,膀胱の水,火に随ひ上沸す,胞血を引イン動ドウし之に随ひて上る,是れ水病に兼ね血ケツ病ヤむなり。

观女人先发水肿,然后断经者,名曰水分,是水病而连累胞血之一证。
女人の水腫を先発するを観て,然る後に経を断タつ者は,名づけて水分と曰く,是れ水病みて胞血の一証に累ルひ連ツラナる。

又观伤寒论,热结膀胱,其血自下。
又た傷寒論に観る,熱膀胱に結す,其の血自ら下オると。

夫热结膀胱,是水病也,而即能惹动胞中之血,从小便而下,又水病兼动胞血之一证也。
夫れ熱結膀胱は,是れ水病なり,而して即ち能く胞中の血を惹ヒキ動ウゴカす,小便従ヨりに而シて下クダる,又た水病に兼ねて胞血を動す之れ一証なり。

据此,可知水泛为痰,而亦能牵引胞血矣。
此れに拠ヨり,水泛を痰と為すを知るべし,而して亦た能く胞血を牽引するや。

呕血2-44

古法但谓咯血出于肾,而未能发明,致庸劣者竟谓其血出于肾脏非也。
古法は但だ謂ふ咯血は腎より出イずと,而シカし未だ能く明らかに発せず,庸ナンぞ(どうして)劣オトるを致す者は竟コトモアロウに其の血が腎臓から出ずに非アラざるなりと謂ふ。(根拠を示せと)

所谓咯血出于肾者。
所謂イワユる咯血は腎より出ずる者なり。

乃肾气不化于膀胱,水沸为痰,而惹动胞血之谓也。
乃ち(そこで)腎気は膀胱に化せず,水沸して痰と為す,而るに胞血を惹ジャク動ドウする之れ謂ふなり。

此论从古未经道及,而予从伤寒悟出,千虑一得,不容自秘。
此の論は古く従ヨり未だ経道に及ばずして,傷寒の悟サトリ(理解)従ヨり出だすを予アタへ,千慮の一得(愚かな者でも、多くの考えの中には一つぐらいよい考えがあるということ),秘自ヨり容せず(秘密を許さず、秘密だから許さない=秘密ではない)。

医者知此,则可知治咯之法,并可知治痰之原矣。
医は此を知り,則ち咯を治す法を知るべし,並びに痰を治す原モトを知るべけんや。

仲景猪苓汤,化膀胱之水,而兼滋其血,最为合法,再加丹皮、蒲黄,以清血分。
仲景の猪苓湯は,膀胱の水を化して,其の血を滋てすを兼ね,最も合法と為す,再サラに丹皮、蒲黄を加へ,以て血分を清す。

凡痰之原血之本,此方兼到。
凡そ痰の原は血の本,此の方兼ね到イタる。

或用地黄汤,加旋覆花、五味、天冬、寸冬、蒲黄。
或ひは地黄湯を用ひ,旋覆花、五味、天冬、寸冬、蒲黄を加ふ。

火甚者,用大补阴丸,加海粉、牛膝、云苓、丹皮、蛤蚧。
火甚しき者は,大補陰丸を用ふ,海粉、牛膝、雲苓、丹皮、蛤蚧を加ふ。

凡此数方,皆主利痰立法,是就肾主咯血之说,以出治也。
凡そ(すべて)此の数方は,皆な利痰立法を主る,是れ腎に就ツき咯血の説を主る,出イダすを以て治すなり。

肾水化于膀胱,故泻膀胱,即是泻肾。
腎水は膀胱に化し,故に膀胱を瀉す,即ち是れ腎を瀉す。

膀胱与血室同居一地,膀胱之水不泛,则自不动血室之血矣。
膀胱と血室は一地に同居す,膀胱の水が泛アフれずんば,則ち自ら血室の血は動かざるや。

数方皆治膀胱,兼治血室,故效。
数方は皆な膀胱を治す,兼ね血室を治す,故に効あり。

呕血2-45

夫痰为肾之所主,血实心之所主也。
夫れ痰は腎の主る所と為す,血実は心の主る所なり也。

况水火互根,肾病及心,心病亦及肾。
況イワンや水火の互根は,腎病み心に及び,心病も亦た腎に及ぶをや(況:抑揚 況A乎;ましてはAは、なおさらである)。

其有心经火旺,血脉不得安静,因而带出血丝,欬逆咽痛者,导赤饮,加黄连、丹皮、血余、蒲黄、天冬、寸冬、尖贝、茯苓治之。
其れ心経火旺に有り,血脈は安静を得ず,因て血糸が帯び出イで,欬逆咽痛する者,導赤飲に,黄連、丹皮、血余、蒲黄、天冬、寸冬、尖貝、茯苓を加へ之を治す。

地骨皮散,加茯苓、射干、旋覆花、牛膝,太平丸亦治之。
地骨皮散に,茯苓、射干、旋覆花、牛膝を加ふ,太平丸も亦た之を治す。

以上数方,皆就咯血出于心之说以立法。
以上の数方,皆な咯血に就ツき心の説より出イで以て立法す。

心主血脉,部居胸中,与肺为近,肺气欬逆,犹易牵动心部之血,故痰欬者,往往带出血丝,治血丝以心为主。
心は血脈を主る,部は胸中に居り,肺と近しと為す,肺気欬逆し,猶ほ心部の血を牽動し易し,故に痰欬なる者は,往往にして血糸を帯出す,血糸を治すに心を以て主と為す。

肺为水之上源,水不清而凝为痰,痰不降而牵动血。
肺は水の上源と為し,水清からざれば而ち凝りて痰と為す,痰は降りずして血を牽動す。

治肺之痰,又是治咯血捷法。
肺を治す痰は,又た是れ咯血捷シュン法にて治す。

盖痰血之来,虽由心肾,而无不关于肺者也。
蓋し痰血の来るは,心腎に由りと雖も,而るに肺に関せざる無き者なり。

太平丸为治肺通剂,紫苑散,保和汤,皆善能涤除肺痰,补泻兼到。
太平丸は治肺の通剤と為す,紫苑散,保和湯,皆な善ウマく能ヨく肺痰を滌除す,補瀉を兼ね到る。

另参欬血唾血门,可尽其治。
別に欬血唾血門を参ぜよ,其の治を尽すべし。

呕血·唾血2-46
唾血
唾血

脾主消磨水谷,化生津液,津液腾溢,水阴四布,口中清和,湛然如露,是以终日不饮,而口不渴,亦终日闭口,而唾不生。
脾は水谷の消磨ショウマ(すり潰す)を主る,津液を生じ化し,津液を騰溢フツエツ(立ち上らせ)し,水陰を四布す,口中清和し,湛ジン(清すること)然ゼンと露の如し,是れ終日を以て飲まず,而シカし口は渇せず,亦た終日口を閉ざし,而シコウして唾ツバを生ぜず。

唯脾之津液,不能清和散布,于是凝聚而为唾。
唯タだ脾の津液は,清和散布する能はず,是ココに凝聚して唾と為す。

是唾者,脾不摄津之故也。
是れ唾ダとは,脾が津を摂せずの故へなり。

知脾不摄津而唾津,则知脾不摄血而唾血矣。
脾は津を摂せずして津を唾ツバすを知る,則ち脾が不摂血せざるを知りて血を唾ツバすや。

唾津其常耳,而唾血则又甚焉。
津を唾ツバすは其れ常ツネになるのみ,而し唾血せば則ち又た甚しや。

盖津乃气分之阴液,其源即在胃中,凝而为唾,其来既近,其伤不多。
蓋し津は乃トコロが気分の陰液,其の源は即ち胃中に在り,凝カタマりて唾と為す,其れ既に近く来キて,其の傷ヤブれ多からず。

呕血·唾血2-47

至于唾血,则出于阴分。
  唾血に至り,則ち陰分を出す。

内经云,脾为阴中至阴,盖五脏俱属阴经,而脾独名太阴,以其能统主五脏,而为阴之守也。
内経に云ふ,脾は陰中の至陰と為す,五臓に蓋フタす倶に陰経に属す,而シコウして脾は独ヒトり太陰と名づく,其の統を能ノウすを以て五臓を主る,而して陰の守りと為るなり。

其气上输心肺,下达肝肾,外灌溉四旁,充溢肌肉,所谓居中央,畅四方者如是。
其の気は心肺に上輸し,下は肝腎に達し,外は四旁シボウに灌漑す,肌肉を充溢し,所謂イワユる中央に居り,四方ヨモに暢ノビヤカなる者是の如し。

血即随之,连行不息,所谓脾统血者,亦即如是。
血も即ち之に随ズイし,息ヤスまず連行す,所謂イワユる脾統血とは,亦た即ち是の如し 。

世医不识统血之义,几指脾为贮血之器,岂不愚哉。
世医は統血の義を識ミワけずに,幾イクツか脾は貯血の器と為すを指す,豈に愚かではなかろうか。

脾能统血,则血自循经,而不妄动,今其血走泄胃中,为唾而出,是脾之阴分受病,而失其统血之常也。
脾は能く統血す,則ち血は循経に自ヨりて,而るに妄動せず,今其の血走り胃中に泄し,唾と為して出イず,是れ脾の陰分が病を受けて,其の統血の常を失ふなり。

呕血2-48

审系脾经火重,唇口干燥,大便秘结,脉滑实者,宜用泻心汤,加当归、生地、白芍、花粉、寸冬、枳壳、蒲黄、甘草。
脾経の火重オモきに系るを審ツマビラカにす,唇口乾燥し,大便秘結,脈滑実なる者は,宜しく瀉心湯を用ふべし,当帰、生地、白芍、花粉、寸冬、枳殻、蒲黄、甘草を加ふ。

若是脾经阴虚,脉细数,津液枯,血不宁者,麦冬养荣汤,加蒲黄、阿胶;
若へば脾経陰虚は是れ,脈細数,津液枯れ,血寧せざる者に,麦冬養栄湯,蒲黄、阿膠を加ふなり;

甲己化土汤,加生地、花粉、人参、寸冬、藕节、侧柏叶、莱菔汁、枳壳,皆滋利脾阴之要药。
甲己化土湯に,生地、花粉、人参、寸冬、藕節、側柏葉、莱菔汁、枳殻を加ふ,皆な脾陰を滋利す要薬なり。

如或七情郁滞,脾经忧虑,伤其血而致唾血者,以脾主思虑,故每因思虑而伤脾阴,睡卧不宁,怔忡劳惓,饮食不健,宜用归脾汤,以补心脾,再加阿胶、柴胡、炒栀、棕灰、血余,以解郁火,清血分,此治脾兼治心。
如しくは七情郁滞に或マドひ,脾経憂慮し,其の血を傷りて唾血を致す者は,脾が思慮を主るを以モつ,故に思慮に因ヨる毎ゴトに而シて脾陰を傷り,睡臥スイガ寧ネイせず,労惓怔忡(動悸)し,飲食不健す,宜しく帰脾湯を用ひ,以て心脾を補ふ,再サラに阿膠、柴胡、炒梔、棕灰、血余を加へ,以て欝火を解し,血分を清サマす,此れ脾を治すに心を治すを兼ぬる。

呕血2-49

心脾为思虑所伤者,应手而效。
心脾は思慮と為し傷らるる所の者は,手に応じて効す。

又凡脾经忧抑,则肝木之气,遏于脾土之中,不能上达,故清阳不升,郁为内热。
又た凡そ脾経憂抑せば,則ち肝木の気,脾土の中に遏アツし,上達する能はず,故に清陽升らず,郁し内熱と為す。

不须清热,但解其郁,郁升而火不遏矣,逍遥散主之。
須べからく清熱せずんば,但だ其の郁を解し,郁は升ノボりて火は遏ソシせずや,逍遥散之を主る。

脾土阴而用阳,脾经阴虚火郁者,上法略备。
脾土は陰に而シて陽を用モチふ,脾経が陰虚火郁する者,上りて法は略ホボ備ソナふ。

又有脾之阳气不旺,无以统运阴血,心战脉弱,四肢清冷,饮食不健,自汗身热者,用归脾汤,补脾之阳以生血,人参养荣汤,正元丹,皆治之。
又た脾の陽気旺せざる有り,陰血を統スベり運ハコぶは以て無く,心戦脈弱し,四肢清冷,飲食健スコヤかならず,自汗身熱する者に,帰脾湯を用ひ,脾の陽を補ひて以て血を生ず,人参養栄湯,正元丹は,皆な之を治す。

亦有清晨唾血,每早初醒,血液满口,唾出即净,明晨又唾,乃卧后血不归经,溢出口中。
亦た清晨ソウチョウに唾血有り,毎早初醒に,血液口を満し,唾出即ソく浄し,明アスの晨アサに又た唾す,乃ち臥したる後に血は帰経せず,口中に溢アフれ出イず。

实证则由肝不藏血,必有头痛口渴便闭之证,用当归芦荟丸,治之。
実証なれば則ち肝が蔵血せず由ヨり,必ず頭痛口渇便閉の証有り,当帰芦薈丸を用ひ,之を治す。

虚证则由脾不统血,必有怔忡虚烦不眠等症,用归脾汤,加丹皮、山栀、棕灰、五味治之。
虚証なれば則ち脾不統血由ヨり,必ず怔忡(動悸)虚煩不眠等の症有り,帰脾湯を用ひ,丹皮、山梔、棕灰、五味を加へ之を治す。

此证与肾虚齿衄相似,宜参看之。
此の証は腎虚と歯衄相ひ似たるを与ふ,宜しく之を参看せよ。

呕血2-50

高士宗曰:偶然唾血,一哈便出者,不药可愈。
高士宗曰く:偶然に唾血し,一イツに哈ゴウ(ぱっと吐く)す便ち出ずる者には,薬せず癒べし。

谓其血近胃,如先血后便,为近血一般,故不药可愈,吾谓亦宜少用清味之药,可服甲己化土汤,加银花、竹茹、莱菔汁。
其の血近胃と謂ふ,如し先に血し後に便ヨひ(都合のよい)は,近血一般と為す,故に薬せず癒イゆ,吾れ亦た宜しく少し清味の薬を用ふべしと謂ふ,甲己化土湯を服すべし,銀花、竹茹、莱菔汁を加ふ。

丹溪又谓唾血皆属于肾,是混唾咯为一证。
丹渓は又た謂ふ唾血は皆な腎に属す,是れ唾ツバ咯ハキを混へ一証と為す。

而以肾血之来,其路最深,其证最重,用保命生地散治之。
而るに以て腎血の来たる,其の路ミチ最も深し,其の証最も重し,保命生地散を用ひ之を治す。

吾谓先唾痰水,唾久然后唾血者,此血来路远,其证深,可用丹溪法治之。
吾れ謂ふ先に痰水を唾ダすは,唾久しく然る後に唾血する者は,此の血遠き路ミチより来たり,其の証深く,丹渓法を用ひべく之を治す。

然亦有丹溪法所不能治者,即吾所定诸方,亦有不能尽治,别参吐欬诸门,自有治法,勿谓予论之不备也。
然り亦た丹渓法有るも治す能はざる所の者は,即ち吾が諸もろの方を定むる所なり,亦た治し尽す能はざる有り,別に吐欬諸門を参じ,治法有る自ヨり,予の論を謂ふ勿ナカれ之れ不備なり。

呕血·咳血2-51
咳血
咳血

肺主气,欬者气病也,故欬血属之于肺。
肺は気を主る,欬とは気病なり,故に肺においての欬血に属す。

肺之气,外合于皮毛,而开窍于鼻。
肺の気は,外は皮毛に合して,鼻に開竅す。

外证鼻塞,皮毛固闭,则其气反而内壅,呛出喉间,发为欬嗽,此外因之咳也。
外証の鼻塞は,皮毛が固閉し,則ち其の気反て内壅し,喉間に呛ムセり出で,発して欬嗽と為す,此れ外因の咳なり。

肺之气下输膀胱,转运大肠,通调津液,而主制节。
肺の気は膀胱に下輸す,大腸を転運し,津液を通調して,制節を主る。

制节下行,则气顺而息安。
制節下行せば,則ち気順にして息は安ヤスンず。

若制节不行,则气逆而欬,此内因之欬也。
若し制節が行らずんば,則ち気逆して欬す,此れ内因の欬なり。

夫外因之欬,不过其窍闭塞,肺气不得达于肤表,于是内奔喉间,而为欬,其于肺之本体,固未常受伤也。
夫れ外因の欬は,其の竅を閉塞過ぎず,肺気が膚表に達すを得ず,是れ内に於て喉間を奔ハシりて,欬と為す,肺の本体に其れ(疑問),未だ常に固まらず受傷するなるか。

至于内因之欬,则由于制节不行之故。
内因の欬に至れば,則ち制節に由り行らずの故なり。

盖肺为金体,其质轻清,肺中常有阴液,冲养其体,故肺叶下垂,如天道下际,其气泽之下降,亦如雨露之下滋,因之膀胱通,大便调,五脏六腑之气,皆得润利而不壅遏,肺气通调之益也。
蓋し肺は金の体を為し,其の質は軽清,肺中に常に陰液有り,其の体に養を沖ツく,故に肺葉は下垂す,如し天道際キワに下さば,其の気沢タクし下降す,亦た如し雨露が滋ウルオし下さば,之に因り膀胱通じ,大便調ふ,五臓六腑の気,皆な潤利を得て壅遏ヨウアツならず,肺気通調の益なり。

设肺中阴液不足,被火克刑,则为肺痿。
設し肺中に陰液不足せば,火克の刑を被コウムり,則ち肺痿と為す。

肺叶焦举不能下垂,由是阴液不能垂之下注,肺中之气,乃上逆而为欬,此内因之欬,难治之证也。
肺葉が焦げ挙り下垂す能はざれば,是の陰液由り之れ下注に垂る能はず,肺中の気,乃トウとう上逆して欬と為す,此れ内因の欬にして,難治の証なり。

以上二者,乃肺之本病,自致咳嗽者也。
以上の二者は,乃ち肺の本病にて,自ら咳嗽を致す者なり。

呕血·咳血2-52

又有为他脏所干,而亦欬嗽者,则以肺为华盖,诸脏皆居其下,故他脏痰饮火气,皆能上薰冲射,使肺逆欬。
又た他臓の干なる所と為す有りて,亦た欬嗽する者は,則ち肺を以て華蓋と為す,諸臓皆な其の下に居り,故に他臓の痰飲火気は,皆な能く上り沖射し薰クンじ,肺をして逆欬せしむ。

故内经欬嗽论,详别脏腑,而总言之曰,聚于胃关于肺。
故に内経の欬嗽論は,臓腑を詳別して,総じ之を言ふに曰く,胃関に聚アツマり肺干すと。

病虽由于他脏,而皆关于肺,此肺之所以主欬嗽也。
病は他臓に由ると雖も,而るに皆な肺に関し,此れ肺の所以ユエンは欬嗽を主るなり。

人必先知欬嗽之原,而后可治欬血之病。
人は必ず先ず欬嗽の原を知りて,後ノち欬血の病を治すべし。

盖欬嗽固不皆失血,而失血则未有不咳嗽者。
蓋し欬嗽は皆な失血せず固カタマりて,失血せば則ち未だ咳嗽せざるなし有らず者なり(失血すればまだ咳嗽しないわけではない)。

或外感失血,病由皮毛,内合于肺,自应欬嗽。
或ひは外感失血し,病は皮毛由り,内は肺に合ひ,自ら欬嗽に応ず。

或由胃中积热,火盛乘金,气上而欬。
或ひは胃中の積熱由り,火盛り金に乗じ,気上りて欬す。

或由肝之怒火上逆而欬。
或ひは肝の怒由り火が上逆して欬す。

此失血之实证,必致欬嗽者也。
此の失血の実証は,必ず欬嗽を致す者なり。

或由阴虚火旺,肺失清肃之令,痿燥作欬。
或ひは陰虚火旺由り,肺が清粛の令を失ひ,痿燥し欬を作ナす。

呕血·咳血2-53

或挟脾过忧郁,心经虚火,以致欬嗽。
或ひは脾を挟み憂欝を過ぐれば,心経の火虚し,以て欬嗽を致す。

或肾经阴虚,阳气不附,上越而欬。
或ひは腎経陰虚し,陽気が附かずんば,上越して欬す。

此失血之虚证,不免欬嗽者也。
此れ失血の虚証,欬嗽を免ぜざる者なり。

又有痰欬,界在半虚半实之间。
又た痰欬有り,界サカイは半虚半実の間に在り。

又有气欬,属在虚多实少之证。
又た気欬有り,虚多く実少しの証在るに属す。

或先咳而后失血,或先失血而后欬;
或ひは先ず咳したる後に失血す,或ひは先に失血して後に欬す;

或暂欬即愈,或久欬不止。
或ひは暫に欬し即スグに愈ゆ,或ひは久しく欬し止まず。

种种不一,必细推究之,而于失血虚劳,庶得调治之法。
種種あり一ならず,必ず細に之を推究し,血虚労に失ふを,庶ソウシて治を調ふの法を得るべし。

呕血·咳血2-54
一实欬:
一の実なる欬は:

外感风寒,先见头痛,恶寒发热等证。
外感風寒し,先ず頭痛,悪寒発熱等の証が見アラはる。

仲景云,欬而喘息有音,甚则吐血者,用麻黄汤。
仲景云ふ,欬して喘し息に音有り,甚しくば則ち吐血す,麻黄湯を用ふ。

李东垣师其意,用麻黄人参芍药汤。
李東垣師は其の意に,麻黄人参芍薬湯を用ふ。

可见欬嗽吐红之证,多有因外感者,古法用麻黄,乃劫病之剂,且是气分之药,于血分尚少调治。
欬嗽の紅を吐す証を見るべし,多く外感に因る者有り,古くの法は麻黄を用ひ,乃ソコで病を劫オビヤカす剤に,且つ是れ気分の薬をして,血分を尚ほ少し調トトノへ治す。

须知欬固气病,然使不犯血分,又何缘而失血也哉?
須べからく欬は気を固むる病と知る,然るに血分を犯さしめさざる,又た何れの縁エンにて失血するなるか?

故必以兼顾血分为宜。
故に必ず以て血分の兼顧ケンコ(配慮を加える)を宜(すべきである)ギと為す。

医宗金鉴用苏子降气汤,予则用小柴胡汤,加紫苏、荆芥、当归、白芍、丹皮、杏仁,于气分血分两兼治之,最得和表清里之法。
医宗金鑑には蘇子降気湯を用ひ,予ワレならば則ち小柴胡湯を用ひ,紫蘇、荊芥、当帰、白芍、丹皮、杏仁を加ふ,気分血分の両を之治すを兼ぬ,最も表を和し裏を清すを得る之法なり。

火重秘结者,加酒军,恶寒无汗者,加麻黄,胸胁腰背刺痛胀满者,为有瘀血,再加桃仁、红花。
火にて秘結を重ぬる者に,酒軍を加へ,悪寒無汗の者に,麻黄を加へ,胸脇腰背刺痛脹満する者は,瘀血有ると為し,再サラに桃仁、紅花を加ふ。

盖小柴胡,为通利三焦,治肺调肝,和荣卫之良方,加减得宜,左宜右有,凡血家兼有表证者,以此方为主,极为妥当。
蓋し小柴胡は,三焦を通利すと為し,肺を治し肝を調ふ,栄衛を和す之れ良方なり,宜を得て加減し,左は宜しく右に有るなくてはならぬべし,凡そ血家に表証を兼ぬる有る者は,此の方を以て主と為す,極めて妥当と為す。

呕血·咳血2-55

普明子止嗽散亦可用,但药力薄,不堪治重病,如咳嗽轻带血少者,又须用此轻剂以调之。
普シン明ミンの子は止嗽散も亦た用ふ可しと,但だ薬力薄く,重病を治すに堪タへず,如し咳嗽軽く血を帯びる少き者は,又た須べからく此の軽剤を用ひ以て之を調ふ。

斯为中病,而不致太过。
斯れ病に中ると為して,太過に致さず。(斯:文言助詞。这、这个。)

止血者,再加蒲黄、藕节。
血が止む者は,再び(さらに)蒲黄、藕節を加ふ。

清火者,再加枯芩、寸冬。
火を清する者は,再に枯芩、寸冬を加ふ。

降痰加尖贝茯苓。
痰を降すに尖貝茯苓を加ふ。

降气加杏仁、枳瞉。
降気に杏仁、枳穀を加ふ。

补血加当归、生地。
補血に当帰、生地を加ふ。

凡上两方,及加减之法,皆为新病欬血而设。
凡スベて上の両方は,加減の法に及ぶ,皆な新病と為し欬血をして設モウく。

其有外感既久,陈寒入肺,久欬喘满,因而失血者,乃欬嗽气逆,牵动诸经之火,以克肺金,肺气亦能牵动胸背脉络之血,随欬而出。
其れ外感既スデに久しく有り,陳フルき寒肺に入り,久しく欬喘満す,因て失血する者,乃ち欬嗽気逆し,諸経の火を牽動(波及)す,以て肺金を克す,肺気は亦た能く胸背脈絡の血を牽動し,随ひ欬して出ず。

是病虽生于寒,而实因寒动火,治法但温其寒,益动其火,宜清火疏寒,面面俱到,斯不差爽。
是の病は寒に生ずと雖も,而るに実は寒に因り火を動し,治法は但だ其の寒を温むば,其の火を動し益す,宜しく清火疏寒し,面面と倶に到り,斯ココに爽サワヤカに差イず。

用千金麦门冬汤,并小柴胡加苏子、冬花。
千金は麦門冬湯,並びに小柴胡加蘇子、冬花を用ふ。

盖寒中包火者,宜小柴胡加减,以清郁火。
蓋し寒中に火を包む者は,宜しく小柴胡加減にて,以て欝火を清すべし。

火中伏寒者,宜千金麦门冬汤,以搜陈寒。
火中に寒を伏す者は,宜しく千金の麦門冬湯にて,以て陳き寒を捜すべし。

或用细辛代麻黄,再加黑姜、五味,尤去肺寒要药。
或ひは細辛を用ひ麻黄に代へ,再サラに黒姜、五味を加ふ,尤トリワけ肺寒を去る要薬なり。

但血证多忌刚燥,更合枯芩、寸冬、玉竹、瓜霜以柔之,用去火中伏寒,庶几调剂得法。
但だ血証は多く剛燥を忌む,更に枯芩、寸冬、玉竹、瓜霜を合し以て之を柔ジュウし,火中の伏寒を去るを用ふ,庶幾ソウシて剤を調トトノふ法を得る。

然而寒在肺中,久亦变从火化。
然り而て寒は肺中に在り,久しく亦た火化に従り変ず。

既化为火,便当专治其火。
既に化し火と為し,便ち当に専ら其の火を治すべし。

兼温其寒,是犹抱薪救火矣。
兼ね其の寒を温アタタむ,是れ猶ほ薪を抱カカへ火を救ふや。

以上所论,外感风寒,变为欬血,此证最多,医者误治,往往酿成痨瘵,慎之慎之!
上の論ず所を以て,外感風寒は,変じ欬血と為す,此の証最も多く,医は治を誤アヤむ,往往に癆瘵と成るを醸カモす,之を慎ツツシみ之を慎ツツシめよ!

呕血·咳血2-56

此外又有内受瘟暑湿热者,亦能攻发而为欬血,其证身热口渴,小便不利,胸腹烦满,与外感风寒相似,治宜专清其里,忌发其表。
此れ外又は内に暑湿熱の瘟ウン(伝染病)を受くる者有り,亦た能く攻め発して欬血と為し,其の証は身熱口渇,小便不利し,胸腹煩満,外感と風寒に相ひ似る,宜しく専ら其の裏を清すべく治し,其の表を発すを忌む。

盖此病皆袭人口鼻,侵入脉络,伏留肠胃膜原5之间,不似伤寒,从肤表入者,故但用清里之药,不可发表,以张病势。
蓋し此の病は皆な人の口鼻を襲ひ,脈絡に侵入し,腸胃膜原の間に留り伏す,傷寒に似ず,膚表従ヨり入る者,故に但だ清裏の薬を用ひ,発表すべからず,以て病勢を張る。

里清则表自和,欬血自止,人参泻肺汤治之。
裏清せば則ち表自オノズカラら和し,欬血自ら止ヤむ,人参瀉肺湯にて之を治す。

若其人素嗜厚味,胃火炎上作欬者,用犀角地黄汤,加麦冬、五味、杏仁、枳谷、藕节。
若し其の人素モトもと厚味を嗜タシナみ,胃火炎上し欬を作す者に,犀角地黄湯,加麦冬、五味、杏仁、枳谷、藕節を用ふ。

呕血·咳血2-57

又或肝经怒火逆上,侮肺作欬,则用柴胡梅连散,加青皮、牡蛎、蒲黄、丹皮、生地。
又た或ひは肝経に怒火逆上し,肺を侮アナドり欬を作ナさば,則ち柴胡梅連散,加青皮、牡蠣、蒲黄、丹皮、生地を用ふ。

又有热邪激动水气,水上冲肺,欬逆不得卧,或其人面目浮肿者,仲景谓之风水,用越脾汤。
又た熱邪有り水気激動し,水スイ上ノボり肺を衝ツき,欬逆し臥するを得ず,或ひは其の人面目浮腫する者は,仲景の謂ふ之れ風水なり,越脾湯を用ふ。

血家风火相动,激水气上升者,毋庸以麻桂发表。
血家にて風火相ひ動き,水気の上升激しき者は,麻桂を以て庸ヨウ(平凡だ)に発表する毋ナカれ(…する必要がない)。

平肝风,宜柴胡、白芍、桑寄生、僵蚕、青蒿、荆芥、薄荷之属。
肝風を平タイラかに,宜しく柴胡、白芍、桑寄生、僵蚕、青蒿、荊芥、薄荷の属にすべし。

清肺火,宜枯芩、知母、石膏、天麦冬。
肺火を清すに,宜しく枯芩、知母、石膏、天麦冬にすべし。

清肝火,宜胆草、黄柏,清心火,宜黄连炒栀。
肝火を清すに,宜しく胆草、黄柏にて,心火を清すべし,宜しく黄連炒梔にすべし。

呕血·咳血2-58

治激动冲上肺中之水,宜葶苈、苡仁、防己、桔梗、杏仁、云苓。
激しく動き上ノボり衝ツく肺中の水を治すに,宜しく亭歴、苡仁、防己、桔梗、杏仁、雲苓にすべし。

合此数品药,以求方治,其于风火泪动水气冲肺,肺胀欬嗽之证,乃为合宜。
此の数品薬を合せ,以て方治を求む,其の風火なる涙動水気は肺に沖ソソぎ,肺脹ハれ欬嗽の証なり,乃ソコで合ガッし宜しき為タめなり(ふさわしいためだ)。

盖仲景越脾汤,是治外感肺胀之法。
蓋し仲景の越脾湯は,是れ外感肺脹の法を治す。

吾所论者,乃血证内伤肺胀之法。
吾れ論ずる所は,乃ソコで血証は肺脹の法が内傷すと。

吾曾治数人,有用泻白散,合葶苈泻肺汤而效者。
吾れ曽カツて数人を治す,瀉白散を用ひ,亭歴瀉肺湯を合して効有る者。

有用二陈汤,和知毋、石膏、荆芥、薄荷、防己、木通而效者,有用小柴胡,加荆芥、紫苏、杏仁、防己、木通、寸冬、兜铃而效者。
二陳湯を用ひ,知毋、石膏、荊芥、薄荷、防己、木通を和して効有る者,小柴胡,加荊芥、紫蘇、杏仁、防己、木通、寸冬、兜鈴を用ひて効有る者と。

呕血·咳血2-59

又丹溪云:
又た丹渓云ふ:

此证多系痰挟瘀血,碍气为病。
此の証多く痰に瘀血を挟むに系り,気を礙ガイし病と為す。

若无瘀血,何致气道如此阻塞,以致欬逆倚息,而不得卧哉?
若し瘀血無くば,何を気道を此の阻塞の如く致すか,欬逆倚息を致すを以て,而るに臥するを得ざるか?

用四物汤,加桃仁,诃子,青皮,竹沥,姜汁治之。
四物湯,加桃仁,訶子,青皮,竹瀝,薑汁を用ひ之を治す。

丹溪此论,洵中病情。
丹渓の此の論は,洵マコトに病情に中アタる。

盖失血之家,所以有痰,皆血分之火,所结而成,然使无瘀血,则痰气有消容之地,尚不致喘息欬逆,而不得卧也。
蓋し失血の家,所以イワユる痰有り,皆な血分の火,結ぶ所にして成る,然り瘀血無きをしても,則ち痰気が消キへ容イる地有り,尚ほ喘息欬逆を致さず,而るに臥するを得ざるなり。

血家病此,如徒以肺胀法治之,岂不南辕北辙。
血家の病は此ココに,如し徒イタズラに肺脹法を以て之を治さば,豈に(どうして)南轅北轍(行動が目的に反していることにたとえていう)にならずか。

丹溪此论,可谓发蒙振聩,第其用四物汤加减,于痰瘀两字,未尽合宜。
丹渓の此の論は,発蒙振聩(ぼけて奮い立って耳が聞こえない)と謂ふべきにて,第ジュンに其れ四物湯加減を用ひ,痰瘀の両字に,未だ合宜ゴウギ尽さず(まだ宜しくない)。

予谓可用通窍活血汤,加云苓、桔梗、杏仁、桑皮、丹皮、尖贝,小柴胡,加当、芍、桃仁、丹皮、云苓尤妥,此皆血家欬嗽属实证者,再参兼欬嗽条更详。
予は謂ふ通竅活血湯,加雲苓、桔梗、杏仁、桑皮、丹皮、尖貝,小柴胡,加当、芍、桃仁、丹皮、雲苓を用ふべきが尤トリワケ妥テキトウなり,此れ皆な血家の欬嗽は実証に属する者にて,再フタたび欬嗽条更を詳しく兼ね参ぜよ。

呕血·咳血2-60
一虚欬;
一虚欬;

肺为娇脏,无论外感内伤,但一伤其津液,则虚阴火动,肺中被刑,金失清肃下降之令,其气上逆,嗽痰欬血,变为肺痿重病,吐白沫如米粥,咽痛声哑,皮毛洒浙,恶寒憎热,皆金损之证,不易治也。
肺は嬌キョウ臓と為す,無論ムロン(…に関わらず)外感内傷に,但だ一つ其の津液傷られば,則ち虚陰火動し,肺中に刑を被コウムる,金は清粛下降の令を失ひ,其の気上逆し,嗽痰欬血す,変じて肺痿重病と為す,米粥の如き白沫を吐す,咽痛声唖カスれ,皮毛浙(江)を灑マキチラし(浙江みたいな撒き散らす様),悪寒憎熱す,皆な金損(肺虚)の証にて,治すに易ヤスからざるなり也

此病无论寒久变火,火郁似寒,总以十药神书保和汤治之。
此の病は,久しき寒が火に変ずるに無論カカワラず,火郁は寒に似る,総じて十薬神書(神農本草経読 十薬神書註解)の保和湯にて之を治す。

盖肺金火甚,则煎熬水液而为痰,水液伤,则肺叶不能腴润下垂,其在下之肝肾,气又薰之,肺叶焦举,不能制节,故气逆为欬,气愈逆,所以久欬不止也。
蓋し肺金の火甚しくば,則ち水液を煎センじ熬ニツメて痰と為す,水液傷るれば,則ち肺葉は腴アブラ潤ひ能はず下垂す,其の下に在る肝腎は,気又は之を薰カンカし,肺葉焦げ挙アガり,制節する能はず,故に気逆して欬と為す,気愈は逆し,所以イワユる久欬止まずなり。

此方润肺涤痰,止血和气,无论寒久变火,火郁似寒,痰血痿燥等证,皆统治之。
此の方は潤肺滌痰し,止血和気す,無論寒久変火し,火郁は寒に似る,痰血痿燥等の証,皆な之を統治す。

凡由外伤,变作虚欬劳证者,以此方为第一。
凡そ外傷に由り,変じて虚を作ナし欬労証なる者は,此の方を以て第一と為す。

呕血·咳血2-61

又有肺中阴虚,本脏气燥,生痰带血,发为痿欬,以及失血之后,肺燥成痿,痰凝气郁,久欬不止,此乃内伤所致,不必治其余病,但补其肺,诸病自愈。
又た肺中に陰虚有り,本臓の気燥し,生痰帯血し,発し痿欬と為す,以及オヨび失血の後,肺燥し痿と成り,痰凝気欝す,久しく欬止ヤまず,此れ乃ち内傷の致す所,必ずしも其の余病を治せず(不必…:一部否定、必ずしも…ず),但だ其の肺を補ひ,諸病自ら癒ゆ。

用清燥救肺汤,甘凉滋润,以补胃阴,而生肺金。
清燥救肺湯を用ひ,甘涼にて滋潤し,以て胃陰を補ひて,肺金を生ず。

肺金清润,则火自降,痰自祛,气自调,欬自止。
肺金清潤せば,則ち火自オノズカら降り,痰自ら去り,気自ら調ふ,欬自ら止トドむ。

血枯加生地,火甚加犀角,痰多加贝母,带血加蒲黄。
血枯に生地を加へ,火甚しきに犀角を加ふ,痰多きには貝母を加へ,帯血には蒲黄を加ふ。

以上二方,于肺经虚火治法綦详。
以上の二方は,肺経の虚火治法を綦ハナハダ詳しく於く。

失血之人,多是阴虚火旺,照上治法者,十居八九,亦有一二属肺经虚寒者。
失血の人,多く是れ陰虚火旺なり,上の治法を照らす者,十居ニ八九は,亦た一二肺経虚寒に属する者有り。

呕血·咳血2-62

内经云,形寒饮冷则伤肺。
内経云ふ,形寒飲冷せば則ち肺傷る。

肺恶寒,多漩唾上气。
肺悪寒せば,多く唾ダ漩ウズマき上気す。

仲景用甘草干姜汤治之,然金匮自言遗溺小便数,所以然者,以上虚不能制下故也。
仲景は甘草乾姜湯を用ひ之を治す,然り金匱は遺溺小便数を言ふ自ヨり,所以イワユる然なる者は,上を以て虚し下を制する能はず故へなりと。

则明见有虚冷遗溺之实据,乃用甘草干姜以温之,且其脉必沈弦迟微,痰必清稀泛溢,不似清燥保和二汤所治,故主温药。
則ち明らかに虚冷遺溺の実有る拠を見て,乃ち甘草乾姜を用ひ以て之を温む,且つ其の脈必ず沈弦遅微なり,痰は必ず清稀にして泛溢す,清燥保和二湯の治す所に似ず,故に温薬を主る。

吾谓可用六君子为主,再加当归、白芍、炮姜、五味,则于止欬止血皆宜。
吾は謂ふ六君子を用ふを主と為すべきと,再サラに当帰、白芍、炮姜、五味を加へれば,則ち止欬止血皆な宜ヨロし。

脾经虚寒,痰动欬嗽者,此方亦宜。
脾経虚寒し,痰動欬嗽する者も,此の方亦た宜し。

若脾经虚火,生痰带血,则宜逍遥散,加寸冬、藕节、蒲黄。
若し脾経虚火し,生痰帯血せば,則ち宜しく逍遥散,加寸冬、藕節、蒲黄にすべし。

若肝经虚火,生痰带血,亦宜逍遥散,加丹皮,山栀,五味。
若し肝経虚火し,生痰帯血すにも,亦た宜しく逍遥散,加丹皮,山梔,五味にすべし。

又有肾经虚火,生痰带血者,另详唾血咯血门。
又た腎経虚火有り,生痰帯血する者は,別に唾血咯血門に詳ツマビラかにす。

肝肾虚证,均详吐血门。
肝腎虚証は,均しく吐血門に詳にす。

降冲气条,并详见六卷欬嗽门。
降沖気条は,並びて六巻欬嗽門に見アラワし詳ツマビラかにす。

呕血·咳血2-63
一痰欬:
一痰欬:

肺中痰饮实热,气逆而欬血者,扬汤止沸,不如釜底抽薪,泻肺丸主之。
肺中の痰飲実熱にて,気逆して欬血する者は,揚湯止沸ヨウトウシフツし,釜底抽薪に如シカず,瀉肺丸之を主る(揚湯止沸:わいた湯を少しよそってからまた落として湯の沸騰を止めようとする)。

夫欬血之证,未有不与痰为缘者,人身之气以运血,人身之血,即以载气。
夫れ欬血の証,未だ痰を与へず有らず縁と為す者は,人身の気が運血を以て,人身の血は,即ち以て気を載ノす。

血少,则气多不能载之,壅于内而为热。
血少くば,則ち気多く之を載ノす能はず,内に壅して熱と為す。

热则水津被灼,煎熬成痰。
熱せば則ち水津は灼シャクを被コオムり,煎熬センゴウし痰と成る。

是以火旺则痰盛。
是れ以て火旺せば則ち痰盛サカる。

痰盛,则滞气之往来,气阻则壅积,而益生其热,故痰甚而火益旺。
痰盛れば,則ち気の往来を滞び,気が阻ソすらば則ち壅フサぎ積ツモりて,其の熱を生じ益す,故に痰甚しくは而シカるに火益マスます旺オウす。

此时补虚,则助邪,此时逐邪,则重虚,是惟攻补兼用,庶几两得其治。
此の時に補虚せば,則ち邪を助く,此の時に邪を逐せば,則ち虚重くす,是れ惟だ攻補兼用し,庶幾ソウシて其の治を両得す。

先用十药神书消化丸,临卧,用饴糖拌吞,以攻其实,即噙化太平丸,以补之,攻补兼施,为除暴安良之妙法。
先ず十薬神書の消化丸を用ひ,臥に臨み,飴糖を用ひ拌マぜ呑み,以て其の実を攻む,即ち噙化太平丸にて,以て之を補ひ,攻補兼ね施セす,暴を除く安良の妙法と為す。

时医但事滋补,岂不误了多人。
時の医は但だ滋補を事コトナし,豈に多き人を誤まらせざらむか(どうして多く人を誤るのではないだろうか)。

呕血·咳血2-64

若病家兢业,不敢用消化丸者,可用二陈汤以初解之。
若し病家が兢業,敢へて消化丸を用ひず,二陳湯を用ひ初めを以て之を解すべし(不敢:あえて…ず;否定の強調)。

二陈降气利水,为袪痰通剂。
二陳は降気利水し,袪痰の通剤と為す。

若欲兼利肺气,加杏仁、苏子、桑皮。
若し肺気を利すを兼ね欲さば,杏仁、蘇子、桑皮を加ふ。

欬逆倚息不得卧者,为水饮冲肺,肺叶不得下降,加葶苈,大枣。
欬逆倚息キソクし臥するを得ざる者は,水飲衝肺と為し,肺葉が下降するを得ず,亭歴,大棗を加ふ。

若火甚者,加瓜蒌霜、黄芩、老连。
若し火甚だしき者は,瓜楼霜、黄芩、老連を加ふ。

火轻者加寸冬,知母。
火軽き者は寸冬,知母を加ふ。

兼理风寒,加柴胡,荆芥,防风。
風寒を兼ね理オサむには,柴胡,荊芥,防風を加ふ。

兼理血分,加当归、白芍、丹皮、桃仁。
血分を兼ね理むには,当帰、白芍、丹皮、桃仁を加ふ。

上方皆是去实痰之治法。
上方は皆な是れ実痰を去る治法なり。

呕血·咳血2-65

又有虚痰,乃肺经阴虚,燥气生痰,粘着喉间,滞涩声音,喘欬发热,脉细数者,不宜渗利,再伤水津,但宜滋润以生津,津生则痰溪,宜保和汤,清燥救肺汤,紫苑散。
又た虚痰有り,乃トコロが肺経陰虚にて,燥気は痰を生じ,喉間に粘着す,声音に渋を滞び,喘欬発熱す,脈細数なる者,宜しく滲利すべず,再サラに水津を傷る,但だ宜しく滋潤し以て生津すべし,津生ずれば則ち痰渓ナガる,宜しく保和湯,清燥救肺湯,紫苑散にすべし。

如喉中有痰核气核,哽塞不得吞吐者,为梅核证,乃心火凝痰,宜溪痰丸,如牛蒡子。
如し喉中に痰核気核有り,哽塞し呑吐を得ざる者は,梅核証と為す,乃スナワち心火凝痰す,宜しく渓痰丸,如牛蒡子にすべし。

香苏饮加桔梗、枳壳、尖贝、云苓、旋覆、甘草,亦治之。
香蘇飲加桔梗、枳殻、尖貝、雲苓、旋覆、甘草,亦た之を治す。

呕血·咳血2-66

又有胃中疼气动膈,证见胸胁逆满,欬喘哕呃者,失血家往往有之,宜用礞石滚痰丸治之。
又た胃中に疼気が膈を動ウゴカす有り,胸脇逆満の証を見し,欬喘噦呃する者は,失血家に往往として之れ有る,宜しく礞石滾痰丸を用ひ之を治す。

若胃中气虚挟痰饮者,宜旋覆代赭石汤。
若し胃中に気虚し痰飲を挟む者は,宜しく旋覆代赭石湯にすべし。

兼治血分,则加当归、白芍、苏木。
血分を治すを兼ぬれば,則ち当帰、白芍、蘇木を加ふ。

兼治火热,则加寸冬、枯芩。
火熱を治すを兼ぬれば,則ち寸冬、枯芩を加ふ。

哕呃详六卷,兹论痰欬,未及备载。
噦呃は六巻に詳し,茲には痰欬を論ず,未だ備ひ載せるに及ばず。

痰欬之证,又在肝气上逆,干犯肺经,挟痰滞气,以致咳嗽。
痰欬の証,又た肝気上逆に在り,肺経を犯すに,痰を挟み気を滞す,以て咳嗽を致す。

其证口苦头痛,颊赤多怒,两胁作痛,宜温胆汤,加青皮、白芥、柴胡、山栀。
其の証口苦く頭痛し,頬赤く怒り多く,両脇に痛を作す,宜しく温胆湯,加青皮、白芥、柴胡、山梔にすべし。

呕血·咳血2-67

若肝火横决怒逆者,加姜黄大黄。
若し肝火横ヨコシマに決キり怒逆する者は,姜黄大黄を加ふ。

若肝经虚火郁而生痰,宜用丹栀逍遥散,加龙骨、牡蛎、阿胶、贝母。
若し肝経が火郁にて虚し痰を生ずるに,宜しく丹梔逍遥散,加竜骨、牡蠣、阿膠、貝母を用ふべし。

夫痰饮之病,其标在肺,其本在肾,肾水上泛,是为痰饮。
夫れ痰飲の病,其の標は肺に在り,其の本は腎に在る,腎水上泛し,是れ痰飲と為す。

痰饮冲肺,乃生欬嗽。
痰飲肺を衝ツき,乃ソウシて欬嗽を生ず。

故治痰饮以肾为主,肾经阳虚,不能镇水,水气泛上,振寒喘咳者,用真武汤,加细辛、干姜、五味。
故に痰飲を治すは腎を以て主と為す,腎経陽虚し,水を鎮む能はず,水気上に泛す,寒を振りて喘咳する者,真武湯,加細辛、乾姜、五味を用ふ。

若肾水因寒而动,上凌心火,心悸喘欬,虚阳上浮,咽痛面热,宜用苓桂术甘汤加细辛、五味,温寒利水。
若し腎水が寒に因りて動くば,上りて心火を凌アナドり,心悸喘欬す,虚陽上浮し,咽痛面熱きに,宜しく苓桂朮甘湯加細辛、五味を用ひ,温寒利水すべし。

然此乃单为痰饮立法。
然り此れ乃カクて痰飲立法の単為とす。

血家阴虚阳亢,多忌刚燥。
血家の陰虚陽亢は,多く剛燥を忌む。

往往以此等药剂为忌。
往往にして此れ等ラの薬剤を以て忌むと為す。

即系肾阳不能化水,以致便短。
即ち腎陽に系り化水する能はず,以て便スナワち短ミジカしを致す。

喘欬,痰饮上干,亦只宜肾气丸,从阴化阳,温而不烈。
喘欬,痰飲上を干ホし,亦た只だ宜しく腎気丸にすべし,陰従り陽と化し,温にして烈ハゲシからず。

此方自宋元来,莫不珍为至宝。
此の方宋元来より,珍メズらしからざる莫く至宝と為す(みな貴重な至宝だ)。

呕血·咳血2-68

谓失血虚痨,上热下寒,阳浮于外,阴孤于内,唯此方引阳入阴,用药神妙。
謂ふ失血虚癆は,上熱下寒す,外に陽浮し,内は陰孤りなり,唯タだ此の方は陽を引き陰に入る,神妙な用薬なり。

顾肾阳虚浮者,此方诚为至宝。
腎陽虚浮を顧る者,此の方誠に至宝と為す。

若肾阴虚浮者,此方又非所宜。
若し腎陰虚し浮なる者,此の方は又た宜し所に非ず。

夫失血之人,浮热昏烦,痰喘欬嗽,多是真阴内虚,阳无所守。
夫れ失血の人,熱浮き昏煩し,痰喘欬嗽す,多くは是れ真陰内虚し,陽は守る所無し。

究阳之所以不守,实由阴虚使然,非阳虚也。
陽の守らざる所以ユエンを究キワめ,実に陰虚由り然ソノヨウに使シて,陽虚に非ざるなり。

径投此方,阴未生而阳愈亢,名为以阳生阴,实则以阳促阴也。
径サシワタし此の方を投トウじ,陰は未だ生ぜずして陽愈ユし亢す,名づけて陽を以て陰を生ずと為す,実すれば則ち陽を以て陰を促すなり。

如果上热下寒,外阳内阴之证,则尺脉必微弱,大小便必溏泄,手足必清冷,即渴欲饮,亦是饮一溲二,乃用此方最为神效。
如果モシ上熱下寒にて,外陽内陰の証ならば,則ち尺脈必微弱にして,大小便必ず溏泄す,手足必ず清冷し,即ち渇し飲を欲す,亦た是れ飲一溲二なり,乃ち此の方を用ふるに最も神効と為す。

设纯是阴虚,则此方又不宜用。
設カリに純に是れ陰虚ならば,則ち此の方又た宜しく用ひずべきなり。

即欲以阳生阴,亦只可少用桂附,以反佐之。
即ち陽を以て陰を生ずを欲す,亦た只だ少し桂附を用ふべし,以て之は反佐なり。

如滋肾用知柏各五钱,而桂只五分,借以从阳引阴耳,岂可多用桂附,而助阳以敌阴哉。
如し滋腎に知柏各五銭を用ひて,桂只ノミ五分は,陽従り陰を引くを以て借カる耳ノミ,豈に桂附を多用すべきにて,助陽し以て陰を敵テキするか。

若是肾中阴虚,火上水升,凝滞为痰,则宜猪苓汤主之。
若し是れ腎中陰虚にて,火上り水升り,凝滞し痰と為さば,則ち宜しく猪苓湯之を主るべし。

地黄汤,加麦冬、五味、旋覆、阿胶、杏仁、蛤蚧、牛膝,亦仲景猪苓汤意,而滋补之功尤多。
地黄湯に,麦冬、五味、旋覆、阿膠、杏仁、蛤蚧、牛膝を加へ,亦た仲景の猪苓湯の意にして,滋補の功尤トリワケ多し。

参看咯血门更详。
更に詳しくは咯血門を参看せよ。

呕血·咳血2-69
一气欬:
一気欬:

无痰无血,但是气呛作欬。
痰無く血無し,但だ是れ気嗆ムセり欬を作す。

乃失血家真阴虚损,以致肺气不敛,肾气不纳,其病至重,最为难治。
乃ソコで失血家は真陰虚損し,以て肺気斂せずを致し,腎気不納す,其の病重きに至り,最も治し難きと為す。

审其由肺气不敛者,其人不能仰卧,卧则气逆而欬,欬则心下煽动,或肺叶偏枯,则侧卧一边,翻身则欬不休,俱宜用清燥救肺汤,加百合、五味、琥珀、钟乳石,以镇补肺金。
其の肺気斂せざる由を審にし,其の人仰臥する能はずして,臥すれば則ち気逆して欬す,欬すれば則ち心下煽動す,或ひは肺葉偏枯せば,則ち側カタワラ一辺に臥す,身を翻ヒルガエるも則ち欬休まず,倶に宜しく清燥救肺湯,加百合、五味、琥珀、鐘乳石を用ふべし,以て肺金を補ひ鎮シズむ。

金得保养,则能覆下收敛,而气自不欬。
金は保養を得れば,則ち能く下を覆ひ収斂して,気自ら欬せず。

审其由肾气不纳者,其人短气喘息,阴火上冲,两颧发赤,咽喉不利。
其の腎気不納の由ユエを審にす,其の人短気喘息は,陰火上衝し,両顴発赤,咽喉不利す。

呕血·咳血2-70

仲景谓失血脉数,发热而欬者,不治,即谓此阳不附阴,气不归元之重证,六味丸,加沉香、五味、麦冬、磁石,以滋补镇纳之,使气既吸引归肾,而肾水滋生,又有以封镇其气,则气自不欬逆矣。
  仲景は失血脈数を謂ふ,発熱して欬する者は,治らず,即ち此の陽は陰に附かずと謂ふ,気は元に帰せず重証なり,六味丸,加沈香、五味、麦冬、磁石にて,滋補を以て之を納め鎮む,気をして既に吸引腎に帰す,而るに腎水滋生す,又た其の気を封鎮すを以て有らば,則ち気は自ら欬逆せざるや。

或用肾气丸,加麦冬、五味、牛膝,借桂附以引气归元。
或ひは腎気丸,加麦冬、五味、牛膝を用ひ,桂附を借り以て帰元に気を引く。

陈修园谓肺肾不交,水天俱虚,用二加龙骨汤,加阿胶、麦冬、五味。
陳修園は謂ふ肺腎不交は,水天倶に虚す,二加竜骨湯,加阿膠、麦冬、五味を用ふ。

予按肾气丸,二加龙骨汤,皆是肾阳虚,肺阴虚,上热下寒之治法也。
予は腎気丸を按じ,二加竜骨湯,皆な是れ腎の陽虚,肺の陰虚,上熱下寒の治法なり。

呕血·咳血2-71

若肺肾之阳俱虚,元气不支,喘息困惫者,则宜用保元汤,加五味,上二方,又不恰切。
若し肺腎の陽倶に虚さば,元気支へず,喘息困憊す,則るに宜しく保元湯,加五味を用ふべし,上の二方,又た恰切ゴウセツならず(適切ではない 恰:適宜だ)。

若肺肾之阴俱虚者,上三方俱不中肯。
若し肺腎の陰倶に虚さば,上の三方倶に中肯チュウコウ(要点を突く)せず。

失血家气喘欬逆者,多是阴虚。
失血家にて気喘欬逆する者,是れ陰虚多し。

气生于肾而主于肺,肺阴足,则气道润而不滞;
気は腎に生じて肺を主る,肺陰足らば,則ち気道潤ひて滞トドコオらず;

肾阴足,则气根蓄而内涵。
腎陰足らば,則ち気根蓄タクワへて内に涵カン(潤す)す。

惟肺阴不足,是以气燥而欬;
惟だ肺陰不足は,是れ気燥を以て欬す;

肾阴不足,是以气浮而欬。
腎陰不足は,是れ気浮くを以て欬す。

此乃肺肾阴虚不交之证,治宜参麦地黄汤,及三才汤,以滋二脏之阴。
此れ乃ち肺腎陰虚不交の証なり,宜しく参麦地黄湯,及三才湯にて治すべし,以て二臓の陰を滋す。

纳肺气,则加百合、五味、钟乳石,纳肾气。
肺気を納すに,則ち百合、五味、鐘乳石を加へ,腎気を納む。

则加磁石、沉香、五味。
則ち磁石、沈香、五味を加ふ。

此外又有冲气上逆之治法,说详吐血,及六卷欬嗽门。
此の外又た衝気上逆の治法有り,吐血,及び六巻欬嗽門に詳クワシく説す。

呕血·咳血2-72
一骨蒸欬:
 一骨蒸欬:

失血证久欬不止,发热盗汗,世谓之骨蒸劳欬。
失血証にて久しく欬止まず,発熱盗汗し,世の之れ骨蒸労欬と謂ふ。

乃肝之血分,夹有瘀滞症结,则肝气郁而不和。
乃ち肝の血分,瘀滞症有り結び夾めば,則ち肝気欝して和せず。

肝寄相火,肝气即相火也。
肝は相火に寄り,肝気即ち相火なり。

相火内行三焦,外行腠理,血分无瘀滞,则腠理无阻,是以相火往来,温养肌肉,而不遏抑。
相火は内に三焦を行り,外は腠理を行り,血分に瘀滞無くれば,則ち腠理に阻ショウ無し,是れ相火を以て往来す,肌肉を温養して,遏抑エツヨク(抑圧する)せず。

故肌肉不寒冷,相火温之也,而亦不发热,相火不遏郁之故也。
故に肌肉は寒冷せず,相火は之を温むなり,而るに亦た発熱せず,相火が遏郁エツウツせざる故なり。

观妇人经不调,每遇行经必发寒热,为血分瘀滞所致。
婦人経不調を観るに,行経に遇アふ毎ゴトに必ず寒熱を発す,血分瘀滞の致す所と為す。

则失血骨蒸,为血分瘀滞,郁遏相火而使然也,小柴胡汤清理之。
則ち失血骨蒸は,血分の瘀滞と為し,相火を遏エツし郁して使然シゼン(そうさせる)なり,小柴胡湯にて之を理オサめ清す。

若延日既久,发热欬嗽不止,死成痨瘵,用团鱼丸,疏理肺气,滋利肝血,攻补兼用,方法最善。
若し日延べ既に久しく,発熱欬嗽止まず,癆瘵と成り死す,団魚丸を用ひ,肺気を理オサめ疏ソし,肝血を滋ウルオし利す,攻補兼用が,最善の方法なり。

呕血·咳血2-73
一痨虫欬:

一癆虫ロウチュウ欬:(痨 結核[けっかく], 疲れてやせる[つかれてやせる])

心中郁郁微烦,面色乍赤乍白,喉中痒不可耐,咳嗽不止,不知香臭,宜用月华丸,调肺杀虫治之。
心中欝欝微煩し,面色乍タチマち赤く乍ち白く,喉中の癢カユみ耐へがたく,咳嗽止まず,香臭を知らず,宜しく月華丸を用ふべし,肺を調へ殺虫し之を治す。

究虫之生,乃由瘀血停聚,热蒸湿腐,又被肝风扇动,是以化生痨虫。
虫の生を究オへ,乃ソコで瘀血に由り停トドめ聚アツマり,熱蒸湿腐す,又た肝風を被ウけ扇動す,是れ癆虫ロウチュウを化生すを以てなり。

既变成虫,则从虫治之,而亦须兼去瘀血以除其根,清湿热以涤其源,息风木以靖其机,聚毒药以杀其类。
既に成虫に変ずれば,則ち虫従ヨり之を治し,而ち亦た須べからく瘀血を去るを兼ね以て其の根を除く,湿熱を清サマし以て其の源を滌アラふ,風木を息ヤスめ以て其の機カラクリを靖シズむ,毒薬を聚アツめ以て其の類を殺コロす。

此方数法兼备,于治痨虫已得大概,另详痨虫门,参看自知。
此の方数法を兼ね備ソナふ,於癆虫ロウチュウを治すに已スデに大概を得,別に癆虫門に詳クワし,参看し自オノレを知る。

又有肺痈欬嗽,吐脓血者,另详吐脓门。
又た肺癰欬嗽有り,膿血を吐す,別に吐膿門に詳クワシくす。

呕血·咳血2-74

又有食积之火,冲肺作欬,其火多在五更,流入肺中而欬。
又た食積の火有り,肺を衝ツき欬と作ナす,其の火は多く五更に在り,肺中に流入して欬す。

此病不关血分,然虚人往往有之。
此の病血分に関せず,然り虚人は往往に之有り。

随用小柴胡逍遥散,加山查神曲、麦芽、莱菔子、山栀、麦冬。
小柴胡逍遥散,加山査神曲、麦芽、莱fu子、山梔、麦冬を随シタガひ用ふ。

黄昏欬嗽,为阳将入阴,浮火不能内敛,入肺而欬,宜用五味子、川蚊蛤、兜铃等治之。
黄昏タソガレ(夕方)欬嗽は,陽は将に陰に入ると為す,火は浮き内に斂レンする能はず,肺に入りて欬す,宜しく五味子、川蚊蛤、兜鈴等を用ひ之を治すべし。

其余杂血欬嗽,不关血证者,自有血证者,自有方书可查,兹不具论。
其の余ホカ雑血欬嗽は,血証に関はらず,血証有る自ヨり,方書有るを査サす可く自ヨり,茲ココに具に論ぜず。

呕血·鼻衄2-75
鼻衄
鼻衄ビジク

鼻为肺窍,鼻根上接太阳经脉,鼻孔下夹阳明经脉,内通于肺,以司呼吸,乃清虚之道,与天地相通之门户,宜通不宜塞,宜息不宜喘,宜出气,不宜出血者也。
鼻は肺の竅キョウと為す,鼻の根は太陽経脈に上接す,鼻孔は陽明経脈に下夾ゲキョウす,肺に内通し,以て呼吸を司ツカサどる,乃ち清虚の道,天地と相ひ通ずるの門戸なり,宜しく宜塞ざすべからず通すべし,宜しく喘すべからず息すべし,宜しく気を出さしめべく,宜しく出血すべからざる者なり。

今乃衄血何哉?
今乃トコロが衄血すは何ぞや?

金匮谓热伤阳络则衄血,热伤阴络则便血。
金匱に謂ふ熱が陽絡を傷らば則ち衄血すと,熱は陰絡を傷らば則ち便血す。

阴络者,谓躯壳之内,脏腑油膜之脉络,内近肠胃,故主便血。
陰絡とは,躯殻の内を謂ふ,臓腑油膜の脈絡なり,内は腸胃に近し,故に便血を主る。

阳络者,谓躯壳之外,肌肉皮肤脉络之血。
陽絡とは,躯殻の外を謂ふ,肌肉皮膚脈絡の血なり。

从阳分循经而上,则干清道,而为衄也。
陽従り分れ経を循メグりて上らば,則ち清道を干カワかし,而るに衄ジクと為すなり。

然则阳络者,火阳阳明之络脉也。
然則シカラバ陽絡とは,陽を火カす陽明の絡脈なり。

盖太阳阳明,统走人身躯壳之外,阳络之血。
蓋し太陽陽明,人身躯殻の外を走り統トウし,陽絡の血なり。

伤于太阳者,由背上循经脉,至鼻为衄,仲景所谓春夏发太阳者是也。
太陽に傷る者は,背上由り経脈を循メグり,鼻に至り衄ジクと為す,仲景の謂ふ所の春夏は太陽を発す者是れなりと。

伤于阳明者,由胸而上,循经至鼻,仲景所谓秋冬发阳明者是也。
陽明に傷る者は,胸由り而シて上り,経を循り鼻に至る,仲景の謂ふ所の秋冬は陽明を発す者是れなりと。

今分两条论之。
今両条を分け之を論ず。

呕血·鼻衄2-76


太阳主开,春夏阳气,本应开发,若一郁闭,则邪气壅而为衄。
太陽は開を主る,春夏の気は陽,本に応じ発を開く,若し一欝にて閉ずれば,則ち邪気は壅ヨウして衄と為す。

其证鼻塞头痛,塞热昏愦。
其の証は鼻塞頭痛し,塞熱昏愦コンカイ(乱れる)す。

或由素有郁热,应春夏开发之令而动,或由风瘟暑疫,攻发而动,又有伤塞失汗。
或ひは素モと由り欝熱有り,春夏に応じ開き之を発して動かせ,或ひは風瘟暑疫に由り,発を攻めて動き,又た塞ぎ傷り有り汗を失ふ。

邪无出路,因由血分泄而为衄,此名红汗。
邪が路に出る無し,因て血分由りて泄し衄と為す,此れ紅汗コウカンと名づく。

乃邪欲自愈,医者不可不知。
乃ち邪は自ら癒ゆを欲す,医は知らずべからず(分からなくなってはいけない)。

然即红汗论之,可知太阳之气,不得泄于皮毛,则发为红汗,即可知太阳之热,不得发越于外者,必逼而为鼻衄也。
然り即ち紅汗論の之は,太陽の気を知るべし,皮毛に泄を得ずして,則ち紅汗と為すを発し,即ち太陽の熱と知るべし,外に発越を得ざる者は,必ず逼セマりて鼻衄と為すなり。

皮毛者,肺之合,太阳之气,外主皮毛,内合于肺,鼻又为肺之窍。
皮毛とは,肺の合,太陽の気,外は皮毛を主り,内は肺に合す,鼻は又た肺の竅と為す。

欲治太阳之衄者,必以治肺为主。
太陽の衄を治すと欲さば,必ず肺を治すを以て主と為す。

呕血·鼻衄2-77

观伤寒论,治太阳,用麻杏理肺,则知治肺即治太阳矣。
傷寒論を観ると,太陽を治すに,麻杏を用ひ肺を理すれば,則ち肺を治すを知り即ち太陽を治すや。

治宜清泻肺火,疏利肺气,肺气清,则太阳之气自清,而衄不作矣。
宜しく肺火を清瀉すべく治すに,肺気を疏利し,肺気清せば,則ち太陽の気自ら清して,衄ジクは作さずや。

风寒外来,皮毛洒淅无汗者,麻黄人参芍药汤。
風寒外来し,皮毛が灑淅レイセキし無汗なる者,麻黄人参芍薬湯にす。

如肺火壅盛,头昏痛气喘,脉滑大数实者,人参泻肺汤,加荆芥、粉葛、蒲黄、茅根、生地、童便。
如し肺火壅盛し,頭昏痛気喘,脈滑大数実なる者,人参瀉肺湯,加荊芥、粉葛、蒲黄、茅根、生地、童便にす。

久衄血虚,用丹溪止衄散,加茅花、黄芩、荆芥、杏仁。
久しく衄し血虚には,丹渓の止衄散,加茅花、黄芩、荊芥、杏仁を用ふ。

以上数方,鼻塞者,俱加麝香、黄连。
以上数方の,鼻塞する者,倶に麝香、黄連を加ふ。

盖风寒杂证,鼻塞多是外寒闭之,此证鼻塞者尤多,乃是内火壅之,如用羌活,则鼻愈塞矣。
蓋し風寒の雑証,鼻塞多く是れ外寒之を閉ず,此の証鼻塞する者尤トリワケ多し,乃ち是れ内火にて之を壅フサぐ,如へば羌活を用ふれば,則ち鼻は塞ぐを愈ゆや。

故用黄连、麝香,以开火之闭,衄血既止,宜多服止衄散原方,及六味地黄汤以收功。
故に黄連、麝香を用ひ,以て火の閉を開く,衄血既に止み,宜しく多く止衄散原方を服す,及び六味地黄湯にて以て功を収む。

呕血·鼻衄2-78

又有肾经虚火,浮游上行,干督脉经,而衄血者,必见腰痛项脊痛,头昏足厥冷等证,所以然者,肾经虚火上行。
又た腎経に虚火有り,浮遊上行し,督脈経を干して,衄血する者,必ず腰痛項脊痛を見はす,頭昏足厥冷等の証,所以る然シカる者は,腎経虚火の上行なり。

故也,宜用止衄散,去黄蓍,加碎补、牛膝、续断、粉葛、鹿角尖、童便、元参治之。
故へ也,宜しく止衄散を用ひ,黄蓍を去り,砕補、牛膝、続断、粉葛、鹿角尖、童便、元参を加へ之を治す。

盖督脉丽于太阳,故以治太阳者,兼治督脉,亦犹冲脉丽于阳明,而以治阳明者,兼治冲脉也。
蓋し督脈は太陽を麗ウルヤカしくす,故に以て太陽を治す者は,督脈を治すを兼ぬる,亦た猶ほ衝脈が陽明に麗レイして,以て陽明を治す者,衝脈を治すを兼ぬるなり。

太阳为少血之经,督脉乃命元之主,其血均不可损。
太陽は少血の経と為り,督脈は乃ち命元を之れ主る,其の血均しく損ふべからず。

衄止后,即宜用地黄汤,加天冬、阿胶、血余、五味,以补之。
衄止みたる後,即スグに宜しく地黄湯,加天冬、阿膠、血余、五味を用ふべし,以て之を補ふ。

阳明主阖,秋冬阴气,本应收敛。
陽明は闔ガイを主り,秋冬の陰気,本は収斂に応ず。

若有燥火伤其脉络,热气浮越,失其主阖之令,逼血上行循经脉而出于鼻。
若し燥火有り其の脈絡傷らば,熱気浮越し,其の主闔の令を失ひ,血は上行し経脈を循るに逼セマりて鼻に出ずる。

其证口渴气喘,鼻塞孔干,目眩发热,或由酒火,或由六气之感,总是阳明燥气,合邪而致衄血。
其の証口渇気喘,鼻塞孔干き,目眩発熱,或ひは酒火に由り,或ひは六気の感に由り,総じて是れ陽明燥気に,邪が合して衄血と致す。

盖阳明本气原燥,病人此经,无不化而为燥,治法总以平燥气为主,泻心汤,加生地、花粉、枳壳、白芍、甘草。
蓋し陽明の本なる気は原モトもと燥す,人が此の経に病み,化せざるは無し(無不:しないものはない)にして燥と為し,治法は総じて以て燥気を平かにすを主と,瀉心湯,加生地、花粉、枳殻、白芍、甘草と為す。

或用犀角地黄汤,加黄芩、升麻,大解热毒。
或ひは犀角地黄湯,加黄芩、升麻を用ひ,熱毒を大解す。

鼻衄止后,宜用玉女煎,加蒲黄以滋降之,再用甘露饮,多服以调养之,肆饮黎胶、藕汁、莱菔汁、白蜜等,皆与病宜。
鼻衄止みたる後,宜しく玉女煎,加蒲黄を用ふべし以て之を滋降し,再サラに甘露飲を用ひ,多く服し以て之を調養す,肆ホシイママに黎膠、藕汁、莱菔汁、白蜜等を飲み,皆な病むに宜しく与ふ。

呕血·鼻衄2-79

以上两条,治法各异,然鼻总系肺经之窍,血总系肝经所属,故凡衄家,目必昏黄。
以上の両条は,治法が各オノおの異る,然り鼻の総は肺経の竅に系る,血は総じて肝経に属す所に系る,故に凡そ衄家は,目は必ず昏黄コンオウ(薄暗い)す。

仲景云:目黄者衄未止;目了慧者,其衄已止,以肝开窍于目,血扰肝经,故目黄也,治宜和肝。
仲景云ふ:目黄の者は衄未だ止まず;目の慧サトした者は,其の衄已スデに止む,肝の開竅は目に以て,血は肝経に擾ミダす,故に目黄なり,治は宜しく肝を和すべし。

而其血犯肺窍出,又宜和肺。
而るに其の血は肺竅を犯し出ず,又た宜しく肺を和すべし。

今且不问春夏,不分秋冬,总以调治肝肺为主,生地黄汤治之。
今且カつ春夏を問はず,秋冬を分たず,総じて調ひ治すを以て肝肺を主と為す,生地黄湯にて之を治す。

服后衄止,再服地骨皮散以滋之。
服したる後衄止る,再サラに地骨皮散を服し以て之を滋す。

盖不独衄血宜治肝肺,即一切吐咯,亦无不当治肝肺也。
蓋し衄血独ノミナラず宜しく肝肺を治すべし,即ち一切の吐咯を,亦た肝肺を治すに当らざるは無しなり(肝肺全部を治療する)。

肝主血,肺主气,治血者必调气,舍血者必调气,舍肝肺而何所从事哉。
肝は血を主る,肺は気を主る,血を治す者は必ず調気す,血を捨つる者は必ず調気す,肝肺を捨てて何れの所に事を従るか。

呕血·鼻衄2-80

又凡衄血,久而不止,去血太多,热随血减,气亦随血亡矣。
又た凡オオヨそ衄血は,久しくして止まず,血去ること太ハナジャだ多し,熱に随し血減り,気も亦た血に随し亡ボウすや。

此如刀伤,血出不止,则气亦随亡,而血尽则死也。
此れ如し刀傷にて,血出て止まずば,則ち気も亦た随し亡す,而るに血尽さば則ち死すなり。

急用独参汤救之。
急ぎ独参湯を用ひ之を救ふ。

手足冷,气喘促,再加附子,以引气归根。
手足冷へ,気喘促すに,再に附子を加へ,以て気を引き根に帰す。

如其人鼻口黑黯,面目茄色,乃血乘肺脏之危候,缓则不救,二味参苏引治之。
如し其の人鼻口黒黯し,面目茄色は,乃ち血が肺臓の危候に乗じ,緩まば則ち救へず,参蘇の二味を引き之を治す。

此等危证,在所不治,用参苏引,亦理应如是救济耳。
此れ等ラの危アヤふき証は,不治の所に在り,参蘇を用ひ引く,亦た是の如く救済すに理に応ずのみ。

其效与否,非敢期必。
其の効は否を与へ,敢アエて必ず期に非ず(否…非…:…とシテ…ざルニハあらズ どんな…しても…しないことはない)。(その効果はどんなに期待しても無い)

呕血·鼻衄2-81

按病在肠胃者,药到速。
按ずるに腸胃に在る病の者は,薬が速く到トドく。

病在经脉者,药到缓。
病が経脈に在る者は,薬が緩ユルく到く。

衄血病在经脉,兼用外治法,亦能取急效。
衄血の病は経脈に在り,兼ね外治法を用ふ,亦た能く急ぎ効を取る。

用十灰散塞鼻,并吞咽十灰散,为极稳妥;
十灰散を用ひ鼻に塞オシコみ,併せて十灰散を呑嚥ノむ,極めて穏妥オントウと為す;

或用人爪甲,煆为末,吹鼻止衄;
或ひは人の爪甲を用ひ,煆ヤひて末と為し,鼻に吹きて衄を止む;

或用壁钱窠塞鼻,取其脉络以维护之。
或ひは壁銭ヒラグモの窠スを用ひ鼻に塞オシコみ,其の脈絡を取り以て之を維護マモる。

龙骨吹鼻,能干结血孔免衄。
竜骨を鼻に吹き,能く血孔を乾結し衄を免マヌガる。

白矾吹鼻,性走窜截血。
白礬を鼻に吹き,性は走竄ソウザン(串クし抜ける)し血を截タチキる。

醋和土敷阴囊,囊为肝所属,肝主血,敷囊以收敛肝气,则肝血自止。
酢に土を和し陰嚢に敷シき,嚢ノウは肝の属す所と為し,肝は血を主る,嚢を敷き以て肝気を収斂せば,則ち肝血自ら止む。

上病取下,治尤有理。
上の病に下を取る,尤トクに理有る治なり。

鳝血滴鼻中;
鰻の血を鼻中に滴タラす;

衄血点鼻;
衄血を点鼻す;

温水浸足,使热气下行;
温水に足を浸し,熱をして気を下行せしむ;

捆病人中指;
病人の中指を捆タバねる;

用湿纸贴脑顶,熨斗熨纸令干,乃汤熨取火之法。
湿紙を用ひ脳頂に貼る,熨紙を熨斗ノシ(アイロンし)干カワかしむ,乃ち湯ユ熨ノし火を取る法なり。

数者或效,或不效,备录其方,以资采择。
数イクツかの者は或ひは効あり,或ひは効せず,其の方を備録し,以て採択と資シす。

衄家不可发汗,汗则额陷。
衄家は発汗すべからず,汗せば則ち額カチ陥0つ。

仲景已有明禁。
仲景已スデに明らかに禁ず有り。

以此例推,可知一切血证,均不宜发汗,医者慎之。
以て此の例推は,一切の血証と知るべし,均しく宜しく発汗すべからず,医者は之を慎めよ。

虽与吐欬诸证不同,然其为血一也,宜参看各门,庶治之百不失一。
雖タトへ吐欬と諸証同じからずとも,然り其れ血一と為すなり,宜しく各門を参看すべし,庶ソウシテはじめて治の百に一は失なはず。

呕血·脑衄2-82
脑衄
脳衄

脑衄者,口鼻俱出血也,乃鼻血多,溢从口出,非别有一道来血也,亦非真从脑髓中来,此不过甚言鼻脑衄之重,而因名之曰脑脑衄耳。
脳衄とは,口鼻倶に出血するなり,乃ち鼻血多く,溢アフれ口従ヨり出ず,別に一道より来たる有る血に非らざるなり,亦た脳髄中従ヨり真に来たる非アラず,此れ甚しく鼻脳衄の重と言ひ過ぎずして,因て之の名を脳脳衄耳と曰く。

盖吐血多者,血每呛入鼻,故脑衄血多者,血亦溢入口中。
蓋し吐血多き者,血が入鼻に入る毎につまる,故に脳衄血多者は,血は亦た溢アフれ口中に入る。

治法用白纸折十余叠,打湿贴脑顶用,熨斗熨令热气蒸腾,其脑衄自止。
治法は白紙を用ひ十余畳に折り,湿を打ち脳頂に貼りて用ふ,熨ノシを熨斗ノシ(アイロンする)て熱気をして蒸騰せしむ,其の脳衄自ら止む。

此乃因脑脑衄之名,望文生义而出。
此れ乃ち脳に因り脳衄の名なり,文を望み義を生じて出す(字面だけを見て憶測解釈する)。

熨脑止脑衄之法,非探本之治,故有效有不效。
熨は脳の脳衄止むの法,本を探すに非ずの治なり,故に効有り効なさず有り。

其实脑脑衄,只鼻衄之甚者耳,宜照鼻分经用药,乃不致循外失实。
其の実脳は脳衄し(脳実は出血する),只だ鼻衄の甚だしき者のみ,宜しく鼻を照らし用薬を分経す,乃ち外の循メグりを致さず実を失ふ。

脑脑衄治法,与鼻脑衄同,但脑脑衄(出血)既多,易成虚证,宜参苏引,用人参以补之,用苏木以行之。
脳の脳衄治法は,鼻と脳の衄は同じに与ふ,但だ脳の脳衄(出血)は既に多く,虚証に成り易し,宜しく参蘇を引き,人参を用ひ以て之を補ふ,蘇木を用ひ以て之を行るべし。

如(脑)衄甚不止,身热脉浮,喘促足厥者,乃气随血泄,阴脱肠亡,急危之候也。
如し(脳)衄甚しく止まず,身熱脈浮し,喘促足厥する者は,乃ち気は血泄に随マカせ,陰脱し腸亡きの,急危の候なり。

宜独参汤,加附子稠煎,服后得睡,汗不出,热稍退,气稍息,则命根乃定。
宜しく独参湯,加附子を稠コく煎ずべし,服したる後睡を得,汗出ず,熱稍ワズカに退シリゾき,気稍ワズカに息せば,則ち命の根は乃ソコで定サダむ。

此等虚脱之证,血家最少而最危,勿因其少,而误用凉泻。
此れ等虚脱の証,血家に最も少くして而るに最も危アヤウし,其の少きに因て,誤り涼瀉を用ふる勿れ。

呕血·目衄2-83
目衄
目衄

白珠黑珠,均无出血之窍,目下眼皮,只有泪窍,乃阳明经脉所贯注。
白珠黒珠,均しく出血の竅無し,目下眼皮,只だ涙の竅有り,乃ち陽明経脈の貫注する所なり。

春秋传,称蔡哀侯之泪尽,继之以血,则是血自泪窍出也。
春秋シュンジュウに伝ふ,哀侯アイコウの蔡マツリゴトに涙を尽くすと称す,之を血を以て継ぎ,則ち是れ血が自ら涙を竅より出ずなり。

阳明脉起于承泣穴。
陽明脈の承泣穴に起く。

泪窍出血,乃阳明燥热所攻发,犀角地黄汤,加归尾、赤芍、银花、白芷、粉葛、牛膝、石膏、草稍、治之。
涙竅の出血,乃ち陽明燥熱の攻め発す所は,犀角地黄湯,加帰尾、赤芍、銀花、白芷、粉葛、牛膝、石膏、草稍にて、之を治す。

如风热重,大便闭者,通脾泻胃汤治之。
如し風熱重く,大便閉トざす者は,通脾瀉胃湯にて之を治す。

阳明之脉,绕络于目,故凡治目,多治阳明。
陽明の脈は,目に繞マトひ絡カラむ,故に凡て目を治すに,多く陽明を治す。

吾尝观审视瑶函,外障目翳诸方,共一百零,而用大黄者七十余方。
吾れ嘗て『審視瑶函』(眼科専門書・明代)を観,外障目翳の諸方,共に一百零,而して大黄を用ふる者七十余方なり。

可知泻阳明胃经之热,是治目疾一大法门,治目衄者,可以类推。
陽明胃経の熱を瀉すを知るべし,是れ目疾を治す一大法門なり,目衄を治す者は,類推を以てすべき(可以:表示可能…ことができる)。

凡白虎汤,甘露饮,玉女煎,均治阳明方,医者审虚实先后而用之,罔不奏效。
凡そ白虎湯,甘露飲,玉女煎は,均しく陽明を治す方,医者は虚実先後を審にして之を用ひて,不奏効せざるは罔ナし(二重否定:すべて…する)。

呕血·目衄2-84

夫目虽阳明经所属,而实肝所开之窍也。
夫れ目は陽明経に属す所と雖も,而るに実の肝は開く所の竅なり。

血又肝之所主,故治目衄,肝经又为要务。
血は又た肝の主る所,故に目衄を治す,肝経又は務ツトメの要カナメと為す。

地骨皮散,加柴胡、炒栀、益母草、及丹栀逍遥散治之。
地骨皮散,加柴胡、炒梔、益母草、及び丹梔逍遥散は之を治す。

谨按:病发于肝者,多是怒逆之气火,耳鸣口苦,胸胁刺痛,宜从肝治之,可用上二方,及当归芦荟丸,龙胆泻肝汤治之。
謹按ず:病が肝に発す者,多くは是れ怒逆の気火にて,耳鳴口苦し,胸脅刺痛す,宜しく肝従り之を治す,上二方を用ふべし,及び当帰芦薈丸,竜胆瀉肝湯にて之を治す。

病发阳明者,发热口渴,目干鼻干,大便燥结,宜从阳明法治之。
病が陽明に発す者,発熱口渇し,目幹鼻干,大便燥結す,宜しく陽明法に従ひ之を治す。

小眼角,乃少阳经脉所络,原无出血之窍,少阳相火,随经脉而出,冲动肝经血分,则生血,筋窜入瞳珠,乃胬肉长出,亦见流血,但不多耳。
小眼角は,乃ち少陽経脈の絡カラむ所,原モトもと出血の竅無し,少陽の相火,経脈に随して出で,肝経血分を衝ツき動さば,則ち血を生ず,筋は瞳珠に竄ザン入す,乃ち胬肉ドニク(眼球の肉状突起)出で長チョウず,亦た流血が見らる,但だ多からずのみ。

宜小柴胡,加青皮、当归、红花、胆草、丹皮,外用杏仁、白矾、铜碌、点之。
宜しく小柴胡,加青皮、当帰、紅花、胆草、丹皮にすべし,外用には杏仁、白礬、銅碌、之を点(点眼)ず。

呕血·目衄2-85

大眼角,乃太阳经脉所络,名精明穴。
大眼角は,乃ち太陽経脈の絡カラむ所,精明穴と名づく。

太阳气血充足,眼角内结赤肉如珠,有大眼角内不起肉珠者,乃太阳之气不足故也。
太陽の気血充足し,眼角内結し赤肉は珠の如し,大眼角内に肉珠起きざる有り,乃ち太陽の気不足す故へなり。

太阳经有风热,则大眼角生血筋,胬肉或微渗血点。
太陽経に風熱有らば,則ち大眼角は血筋を生ず,胬肉ドニク或ひは微に血点を滲ニジむ。

外治总以血筋胬肉之法治之,内服防风通圣散,去麻黄、大黄、芒硝,再服防风归芎汤调之,点药如上。
外治は総じて血筋胬肉の法を以て之を治す,内服は防風通聖散,去麻黄、大黄、芒硝,再サラに防風帰芎湯を服し之を調ふ,点薬は上の如し。

以上两条,均非目衄正病,以其起血筋,以系血分为病,故兼及之。
上を以て両条は,均トモに目衄の正病に非ず,其の血筋起くを以て,血分を系るを以て病と為す,故に兼ね之に及ぶ。

此书为血说法,其有目疾膜翳等项,均有眼科专书,尽多可采,兹不具论。
此の書は血説法と為す,其れ目疾膜翳等の項有り,均しく眼科専書有り,尽く多く采すべし,茲ココに論を具ソナエず。

呕血·目衄2-86
耳衄
耳衄

耳中出血,谓之耳衄。
耳中の出血,之を耳衄と謂ふ。

肾开窍于耳,而肾脉却不能上头。
腎は耳に開竅す,而るに腎脈は却ケレドも頭に上る能はず。

肾与心交,假心之府小肠之脉,上贯于耳,为司听之神,所居。
腎は心と交を与ふ,心の府小腸の脈を仮イトマす,上は耳に貫き,聴の神を司ると為し,居る所なり。

其形如珠,皮膜包裹真水,是为神之所出,声之所入,内通于脑,为空虚之府,他物不得而扰之。
其の形は珠の如し,皮膜は真水を包裹ツツみ,是れ神の出ずる所と為す,声の入る所,内は脳に通ず,空虚の府と為す,他物を得ずして之を擾ふ。

即或肾虚,阴火上冲,则为耳鸣,神水不足,则为耳聋,亦断无血从此出者。
即ち或ひは腎虚にて,陰火上衝せば,則ち耳鳴と為す,神水不足せば,則ち耳聾と為す,亦た無血を断じ此れ従り出ずる者なり。

其有血从耳出者,则以足少阳胆脉,绕耳前后,手少阳三焦之脉入耳,相火旺,挟肝气上逆,及小肠相火内动,因得挟血妄行。
其れ血耳従り出ず有らば,則ち足の少陽胆脈を以て,耳の前後を繞ひ,手の少陽三焦の脈にて耳に入る,相火旺し,肝気を挟み上逆し,及び小腸相火内動し,因て血の妄行を挟み得る。

或因瘟疫躁怒,火气横行,肆走空窍,衄出于耳。
或ひは瘟疫躁怒に因り,火気横行し,肆キママに空竅を走り,衄は耳に出ずる。

总系实邪,不关虚劳。
総じて実邪に系り,虚労に関せず。

治法总宜治三焦,胆肝与小肠经,自无不愈。
治法は総じて宜しく三焦,胆肝と小腸経を治すべし,自ら癒へざるは無し(必ず自癒す)。

小柴胡汤,加五苓散统治之。
小柴胡湯,加五苓散之を統治す。

分治肝胆,宜龙胆泻肝汤;
肝胆を治し分くに,宜しく竜胆瀉肝湯にすべし;

治三焦,柴胡梅连散;
三焦を治すは,柴胡梅連散にす;

治小肠宜导赤饮,加黄芩、黄连、薄荷、川芎。
小腸を治すに宜しく導赤飲,加黄芩、黄連、薄荷、川芎にすべし。

三经皆司相火,治法大抵相同。
三経は皆な相火を司る,治法は大抵相ひ同じ。

愈后,皆宜常服六味地黄汤,补水济火。
癒へたる後,皆な宜しく常に六味地黄湯を服し,水を補ひ火を済スクふ。

外治法:用十灰散,吹耳中。
外治法:十灰散を用ひ,耳中に吹く。

麝香、龙骨末和吹耳中。
麝香、竜骨末を和し耳中に吹く。

壁钱窠烧灰吹入。
壁銭(平蜘蛛)の窠を灰に焼きて吹き入る。

燕窠泥涂耳前后。
燕窠の泥を耳前後に塗る。

呕血·齿衄2-87
齿衄
歯衄

齿虽属肾,而满口之中,皆属于胃,以口乃胃之门户故也。
歯は腎に属すと雖も,而して口の中に満ミつ,皆な胃に属し,口を以て乃ち胃の門戸故へなり。

牙床尤为胃经脉络所绕,故凡血,皆是胃火上炎,血随火动,治法总以清理胃火为主。
牙床は尤トクに胃経脈絡の繞ふ所と為す,故に凡て血,皆な是れ胃火上炎せば,血も火動に随す,治法は総じて胃火を清理すを以て主と為す。

胃中实火,火渴龈肿,发热便闭,脉洪数者,通脾泻胃汤,加蒲黄藕节治之。
胃中の実火にて,火渇し齦腫れ,発熱便閉し,脈洪数なる者は,通脾瀉胃湯,加蒲黄藕節にて之を治す。

如大便不闭者,不须下利,但用清凉解之,犀角地黄汤,加葛根、贯仲、枳壳、莱菔汁。
如し大便不閉なる者,須らく下利させず,但だ清涼を用ひ,犀角地黄湯,加葛根、貫仲、枳殻、莱菔汁にて之を解す。

胃中虚火,口燥龈糜其脉细数,血不足者,宜甘露饮,加蒲黄以止衄,玉女煎,引胃火以下行,兼滋其阴。
胃中虚火は,口燥齦糜タダレ其の脈細数,血不足する者,宜しく甘露飲,加蒲黄にすべし以て衄を止む,玉女煎,胃火を引き以て下行す,兼ね其の陰を滋す。

呕血·齿衄2-88


以上两条,所论齿龈虚实,二证均属于火,有火中挟风者,宜加防风、白芷。
上を以て両条は,論ず所歯齦虚実,二証は均しく火に属し,火中に風を挟む有る者は,宜しく防風、白芷を加ふべし。

火中挟湿者,宜加防己、木通。
火中に湿を挟む者は,宜しく防己、木通を加ふべし。

亦有肾虚火旺,齿豁血渗,以及睡则流血,醒则血止者,皆阴虚,血不藏之故,统以六味地黄汤,加牛膝、二冬、碎补、蒲黄。
亦た腎虚火旺有り,歯豁サけ血滲ニジみ,以及オヨび睡せば則ち流血し,醒サめば則ち血止む者は,皆な陰虚にて,血蔵せざるの故,統じて六味地黄湯,加牛膝、二冬、砕補、蒲黄を以てす。

上盛下虚,火不归元,尺脉微弱,寸脉浮大者,加桂附。
上盛下虚し,火が元に帰せず,尺脈微弱にして,寸脈浮大なる者は,桂附を加ふ。

外治之法:宜用冷水漱口,取血周冷则凝之义。
外治の法:宜しく冷水を用ひ口を漱ススぎ,血を取り周りを冷して則ち之を凝すの義なり。

醋漱,取酸以收之之义。
酢にて漱ユスぎ,酸を取る以て之を収オサむるの義なり。

百草霜糁,十灰散糁,取血见黑则止,亦以清降其火,火降则血降也。
百草霜を糁サン(ひきわり)じ,十灰散を糁じ,血を取り黒見アラはれば則ち止トドむ,亦た以て其の火を清降す,火降るれば則ち血降オるなり。

枯矾、五倍子、蚯蚓,同为末糁,更能固牙。
枯礬、五倍子、蚯蚓ミミズ,同じ糁に末と為し,更に能く牙を固む。

呕血·舌衄2-89
舌衄
舌衄


舌乃心之苗,观小儿吐舌弄舌,木舌重舌,皆以去心经风火为主,则知舌衄,皆是心火亢盛,血为热逼而渗出也。
舌は乃ち心の苗,小児の吐舌弄舌を観るに,木舌重舌,皆な心経風火を去るを以て主と為す,則ち舌衄,皆な是れ心火亢盛し,血は熱逼ハクして滲出と為すを知るなり。

治法总宜清泄心火,导赤饮,加黄连、大力、连翘、蒲黄、牛膝、元参治之。
治法は総じて宜しく心火を清泄す,導赤飲,加黄連、大力、連翹、蒲黄、牛膝、元参にて之を治すべし。

舌肿胀,衄血多者,为火太盛,泻心汤主之。
舌の腫脹,衄血多き者は,火太盛と為す,瀉心湯之を主る。

心烦神昏者,安神丸,加童便血余灰治之。
心煩神昏する者は,安神丸,加童便血余灰にて之を治す。

夫舌虽心之苗,然口乃胃之门户,舌在口中,胃火薰之,亦能出血。
夫れ舌は心の苗と雖も,然り口は乃ち胃の門戸,舌は口中に在り,胃火は之を薰じ,亦た能く出血す。

大便秘者,玉烛散,加银花治之。
大便秘する者は,玉燭散,加銀花にて之を治す。

口渴兼发热者,竹叶石膏汤,加蒲黄、藕节治之。
口渇に発熱を兼ぬる者は,竹葉石膏湯,加蒲黄、藕節にて之を治す。

舌本乃肝脉所络,舌下渗血,肝之邪热,四物汤,加桃仁、红花、炒栀、丹皮、牛膝、赤苓,重则宜用当归芦荟丸,龙胆泻肝汤。
舌本は乃ち肝脈の絡カラむ所,舌下の滲血は,肝の邪熱,四物湯,加桃仁、紅花、炒梔、丹皮、牛膝、赤苓にす,重くれば則ち宜しく当帰芦薈丸,竜胆瀉肝湯を用ふべし。

盖舌衄虽同,而此外所见之证,必显有分别,故分心、胃、肝三经治之,非强为区别也。
蓋し舌衄は同じと雖も,而して此れ外は見る所の証,必ず顕アキラカに分別有り,故に心、胃、肝の三経を分け之を治す,強ムリ非セず区別と為すなり。

外治之法,与齿衄同。
外治の法,歯衄と同じに与ふ。

呕血·大衄2-90
大衄
大衄

大衄者,九窍出血之名也。
大衄とは,九竅出血の名なり。

此非疫疠,即中大毒。
此れ疫癘に非ず,即ち大毒に中アタる。

人身止此九窍,而九窍皆乱,危亡之证,法在不治。
人身は此れ九竅に止みて,九竅皆な乱れ,危亡の証,不治在りと法マネる。

惟有猝然惊恐,而九窍出血者,可用朱砂安经丸,加发灰治之。
惟だ猝然驚恐有り,而して九竅出血する者,朱砂安経丸を用ふべし,発灰を加へ之を治す。

呕血·零腥2-91
零腥
零腥

零腥者,吐出星点,黄白色,细如米粟,大如豆粒,气极腥臭,杂在漩唾之中,而非漩唾,乃吐血之后,血分瘀热所化。
零腥とは,星点を吐出す,黄白色,細く米粟の如し,大なるは豆粒の如し,気極まりて腥臭す,雑は漩唾エンダ(漩:うずまき)の中に在り,而るに漩唾に非ず,乃ち吐血の後,血分の瘀熱が化す所なり。

或未吐血之前,血分之热化为星点,先吐星点,后乃吐血,总系血分瘀热变化而成,治宜清热化血,降气消痰。
或ひは未だ吐血せずの前,血分の熱化し星点と為る,先マず星点を吐し,後に乃ソコで吐血す,総じて血分瘀熱変化に系りて成す,治は清熱化血,降気消痰に宜し。

以其似痰,必假痰气而生故也。
以て其の痰に似たるは,必ず仮カリの痰気にて生ず故なり。

在未吐血之前,而见零腥者,总以降气消痰为主。
未だ吐血せずの前に在りて,零腥を見アラはす者は,総じて降気を以て消痰すを主と為す。

盖此时血尚未动,但当治其气分,气分清,而零腥自除,豁痰丸治之,小柴胡汤亦治之。
蓋し此の時の血尚ほ未だ動かず,但だ当に其の気分を治し,気分清して,零腥自ら除かる,豁痰丸にて之を治す,小柴胡湯も亦た之を治す。

在既吐血之后,而零腥见者,总以清热化血为主。
既に吐血の後に在りて,零腥見はる者は,総じて清熱化血を以て主と為す。

以其在吐血之后,乃瘀血壅热而出,故宜兼治瘀血,太平丸治之,生地黄散亦治之。
以て其れ吐血の後に在り,乃ち瘀血壅熱して出ずる,故に宜しく瘀血を治すを兼ぬる,太平丸にて之を治し,生地黄散も亦た之を治す。

此证古书不载,吾临证往往遇之,因撰其名,而论列之,以补血证之缺。
此の証古書に載らず,吾れ証に臨み往往之に遇ふ,因て其の名を撰びて,之を列し論ず,以て血証の之れを欠くを補ふ。

呕血·吐脓2-92
吐脓
吐膿

脓者血之变也。
膿とは血の変なり。

血不阻气,气不战血,则血气调和,疮疖不生。
血は気を阻せず,気は血と戦はず,則ち血気調和し,瘡癤ソウセツ(できもの)生ぜす。

血滞气则凝结为痛,气蒸血则腐化成脓。
血は気滞トドコオらば則ち凝結し痛と為す,気は血蒸ムして則ち腐化し膿と成る。

躯壳外者易治,至于吐脓,则出于脏腑之内,其证最危。
躯殻の外は治し易し,吐膿に至らば,則ち臓腑の内に出で,其の証最も危し。

在中焦以下,则便脓,在中焦以上,则吐脓,夫人身之气,乃水所化。
中焦以下に在り,則ち膿を便す(便ツイに膿す),中焦以上に在り,則ち膿を吐す,夫れ人身の気,乃ち水の化す所なり。

气即水也,故血得气之变蒸,亦化而为水。
気は即ち水なり,故に血は気の変を得て蒸し,亦化して水と為る。

不名曰水,而名曰脓者,以其本系血质虽化为水,而较水更浓也,当其未化,则仍是血,消瘀则脓自不生。
水と曰くに名づけず,而るに膿と曰くに名づく者は,其の本を以て血質に系り化し水と為すと雖も,而も水と較カクし更に濃ノウなり,当に其れ未だ化せず,則ち仍カサネて是れ血なり,瘀消ゆれば則ち膿自ら生ぜず。

及其既化,则同于水,逐水则脓自排去。
及び其れ既に化せば,則ち水に同じ,水を逐トぐれば則ち膿自ら排し去る。

呕血·吐脓2-93
一肺痈:
一肺癰:

乳上第三根肋骨间,名肺募穴,隐隐疼痛,食豆而香,是痈将成。
乳上の第三根肋骨間,肺の募穴と名づく,隠隠として疼痛す,豆を食ひて香る,是れ癰ヨウ将に成る。

仲景云:风舍于肺,其人则欬,口干喘满,咽燥不渴,时时吐浊沫,时时振寒。
仲景云ふ:風は肺に舍ヤドり,其の人則ち欬す,口乾喘満し,咽燥し渇せず,時時濁沫を吐し,時時振寒す。

热之所过,血为之凝滞,蓄结痈脓,吐如米粥,始萌可救,脓成则死。
熱の過ぐる所,血は之の凝滞と為す,癰膿を蓄結し,米粥の如きを吐す,萌モへ始むるは救ふべし,膿成れば則ち死す。

谓重者肺坏而死。
重き者は肺壊而シて死すと謂ふ。

若肺不坏,亦有可救。
若し肺壊れずば,亦た救ふべき有り。

故仲景又曰:口中辟辟燥欬,胸中隐隐作痛,脉数而实,喘不得卧,鼻塞不闻香臭者,葶苈大枣泻肺汤主之。
故に仲景又た曰く:口中闢闢ヘキヘキと燥欬し,胸中隠隠と痛みを作し,脈数にして実,喘し臥するを得ず,鼻塞し香臭を聞カがず者,亭歴大棗瀉肺湯之を主る。

吐脓如米粥者,甘桔汤主之。
米粥如き膿を吐す者,甘桔湯之を主る。

仲景此论,非谓除此二方,别无治法。
仲景の此の論は,此の二方を除き謂ふに非ず,別に治法無し。

不过分别未成脓者,当泻实,已成脓者,当开结。
未だ膿と成らむ者を分別過せずは,当に実を瀉すべし,已に膿と成る者は,当に結を開くべし。

指示两条门径,使人知所从事。
両条の門径を指し示し,人をして従事す所を知る。

且曰:以此汤主之,明明有加减之法,见于言外。
且つ曰く:以て此の湯之を主る,明明に加減の法有り,言外に見る。

余因即泻实开结二义,推而广之。
余は因て即ち瀉実開結の二義を,推して之を広ぐ。

其成脓者,用通窍活血汤,加麻黄、杏仁、石膏、甘草,从表以泻之。
其の膿成る者は,通竅活血湯,加麻黄、杏仁、石膏、甘草を用ひ,表従り以て之を瀉す。

无表证者,用人参泻肺汤,加葶苈、大枣,从里以泻之。
表証無き者,人参瀉肺湯,加亭歴、大棗を用ふ,裏従り以て之を瀉す。

如病势猛勇,急须外攘内除,则用防风通圣散。
如し病勢猛勇ならば,急ぎ須べからく外攘ジョウ(払いのける)内除ジョし,則ち防風通聖散を用ふ。

三方力量,雄厚于仲景泻实之法,庶尽其量。
三方の力量,仲景瀉実の法に雄厚(どっしりとゆたかな)にて,其の量庶コトゴトく尽くす。

如识力不及,只用甘桔汤,加荆芥、薄荷、杏仁、黄芩,亦许免疚,然而无功。
如し識力及ばずは,只だ甘桔湯,加荊芥、薄荷、杏仁、黄芩を用ふ,亦た疚キュウビョウを免れ許す,然して功無し。

其已成脓者,急须将脓除去。
其れ已に膿と成る者,急ぎ須べからく将に膿を除去すべきなり(急いで膿を除かなければならない)。

高者越之,使从口出,用千金苇茎汤:
高き者は之を越へ,口従り出です,千金葦茎湯を用ふ:

或用瓜蒂散,加冬瓜仁、桃仁、苡仁、栀子;
或ひは瓜蒂散,加冬瓜仁、桃仁、苡仁、梔子を用ふ;

或用泻白散,加黄连、瓜蒌。
或ひは瀉白散,加黄連、瓜蒌を用ふ。

皆取在膈上则吐,使脓远去,以免久延为患。
皆な膈上に在るを取れば則ち吐す,膿をして遠去せしめ,以て久しく延びるを免がる患と為す。

白散尤能吐能下,加升麻、郁金,以助其吐下之机,再加黄芩、瓜蒌,以解其火更善。
白散は尤トクに能く吐し能く下す,升麻、欝金を加へ,以て其の吐下の機キを助く,再サラに黄芩、瓜蒌を加へ,以て其の火を解すに更に善し。

如只须下泻,不宜涌吐,则合甘桔、泻肺二汤,再加赤豆芽、苡仁、防己、瓜蒌、杏仁、知母、枳壳,使从下降;
如し只だ須べからくも下瀉し(でさえあれば腹を下す),宜しく湧吐すべからず,則ち甘桔、瀉肺二湯を合せ,再に赤豆芽、苡仁、防己、瓜蒌、杏仁、知母、枳殻を加へ,下降従り使ふ(下ってから使用する);

或用桔梗宁肺汤,补泻兼行。
或ひは桔梗寧肺湯を用ひ,補瀉兼行す。

如此则于仲景开结之法庶尽,其妙。
如し此れならば則ち仲景開結の法に庶コトゴトク尽く,其れ妙なり。

惟收口之法,仲景未言,然亦可以义例求也。
惟だ収口の法は,仲景未だ言はず,然り亦た義の例を以て求むべけんなり(しかし同じく義の例は求めることができる)。

诸疮生肌,皆用温补。
諸瘡は肌に生ず,皆な温補を用ふ。

肺是金脏,温则助火刑金,只宜清敛以助金令,使金气足,而肺自生,人参清肺汤治之,后服清燥救肺汤以收功。
肺は是れ金の臓,温むれば則ち火を助け金を刑す,只だ宜しく清斂すべし以て金令を助く,金の気足らさしめて,肺自ら生ず,人参清肺湯之を治す,後に清燥救肺湯を服し以て功を収む。

呕血·吐脓2-94
一脾胃痈:
一脾胃癰:

与肺痈治法略同,但肺痈多由外感风邪而成,故有发表之法。
肺癰治法と略ホぼ同じ,但だ肺癰は外感風邪由り多く而して成る,故に発表の法有り。

脾胃痈,则由湿热酒毒,七情之火内蕴而成,故无发表之法。
脾胃の癰は,則ち湿熱酒毒に由り,七情の火が内蘊して成る,故に発表の法無し。

胃痈初起中脘穴,在脐上四寸,必隐隐作痛。
胃の癰は初め中脘穴に起く,臍上四寸に在り,必ず隠隠と痛みを作ナす。

脾痈初起章门穴(在脐上二寸,旁门六寸。)必隐隐作痛。
脾の癰は初め章門穴(臍上二寸,旁門六寸に在り。)に起く必ず隠隠と痛みを作す。

二病皆食豆而香,其证寒热如疟,皮肤甲错,腹满咽干,治宜攻热下血,热去而血不停,更自何地酿为痈脓哉。
二病は皆な豆を食ひて香る,其の証寒熱瘧の如し,皮膚甲錯し,腹満咽干す,治は宜しく下血の熱を攻め,熱去りて血停トまらずば,更に何自ヨり(自何:何から)地を醸カモし(形成する)癰膿と為すや。

故凡内痈脓未成者,以夺去瘀热为主,丹皮阳治之。
故に凡そ内癰の膿未だ成らざる者は,以瘀熱を奪ひ去るを主と為す,丹皮陽之を治す。

脓已成者,以排为主,脓即水也,逐水即是排脓,赤豆苡仁汤治之。
膿已スデに成る者,排すを以て主と為す,膿は即ち水なり,逐水し即ち是れ排膿す,赤豆苡仁湯にて之を治す。

脓血既去之后,则脏腑空虚。
膿血既に去りたる後,則ち臓腑空虚す。

见火象者,人参固本汤,加黄芪、茯苓,以清补之。
火象を見す者は,人参固本湯に,黄芪、茯苓を加へ,以て之を清補す。

若现虚寒之象,则用六君子汤,加黄芪、当归、煨姜,以温补之。
若し虚寒の象を現はさば,則ち六君子湯,加黄芪、当帰、煨姜を用ふ,以て之を温補す。

方外有方,视其所兼之证,随宜用之,笔楮难尽。
方外に方有り,其の兼ぬる所の証を視る,宜しく之を用ひべくに随ひ,楮カミに筆すに尽し難し。

呕血·吐脓2-95

此外,如胸、背、腰、胁、肝、膈、大小肠,凡有瘀热壅血,均能成痈,总以丹皮汤主之。
此の外,如へば胸、背、腰、脇、肝、膈、大小腸,凡そ瘀熱壅血有り,均スベて能く癰を成し,総じて丹皮湯を以て之を主る。

近上焦者,去芒硝,加葶苈、黄芪、桔梗、荆芥、甘草;
上焦に近き者は,芒硝を去り,亭歴、黄芪、桔梗、荊芥、甘草を加ふ;

中下焦者,加姜黄。
中下焦の者は,姜黄を加ふ。

余详便脓门。
余アトは便スデに膿門に詳し。

此书原专论血证,所以兼及内痈者,以痈脓之病,皆由血积而成。
此の書は原モと血証を専論とし,兼ねを以ての所及び内癰の者は,癰膿の病を以て,皆な血積由り而して成る。

知血之变痈脓,即可知血之能为干血,能变痨虫。
血の変癰膿を知るは,即ち血の能く干血と為すを知るべし,能く癆虫に変ず。

知内痈之生寒热,即可知血证之郁热矣。
内癰の寒熱を生ずるを知るは,即ち血証の欝熱を知るべきや。

但痈脓之证,系血家实积,与失血虚证有异,然不以此反观合勘,亦无以尽血证之情伪。
但だ癰膿の証は,血家の実積に系り,失血と虚証とは異なり有り,然ども此に反して観合を以て勘せず,亦た以て尽く血証の情偽り無し(動かぬの証拠の気持ちを尽くすものがないのが偽りだ)。

血证论卷二终
血証論巻二終


巻3

汗血3-1
血证论-卷三
汗血

汗者,气分之水,其源出于膀胱,内经云,膀胱者,洲都之官,津液藏焉,气化则能出矣。
汗とは,気分の水,其の源は膀胱より出ずと,内経云ふ,膀胱とは,洲都の官,津液を蔵すや,気化せば則ち能く出ずるや。

膀胱之气,从三焦,行腠理,充肌肉,达于皮毛,以卫外为固。
膀胱の気,三焦従ヨり,腠理を行り,肌肉を充ミタし,皮毛に達す,以て衛外を固むと為す。

阳气卫外,百邪不入,故其经称为太阳也。
陽気は外を衛り,百邪入らず,故に其の経は太陽と為すと称するなり。

其有盛暑天气,亢阳蒸动膀胱水气,腾布于外,则发为汗。
其れ盛暑天気有り,陽を亢し膀胱の水気を蒸動し,騰し外に布フせば,則ち発し汗と為す。

此犹天之有两,阳布阴和,自然无病。
此れ猶ほ天の両有り,陽は布シき陰和す,然る自ヨり病無し。

有时外感风寒,皮毛疏泄,发热汗出者,乃太阳之气,为邪所病,不能卫外,故汗得泄出。
時に外感風寒有り,皮毛疏泄し,発熱汗出ずる者は,乃ち太陽の気,邪と為し病む所,衛外に能はず,故に汗は泄出を得。

其有心、胃、肝、脾热湿之病,亦令汗出者,此犹土润溽暑,亦能蒸作云雨也。
其れ心、胃、肝、脾の熱湿なる病有り,亦た汗出ださしむ者は,此れ猶ほ土潤し暑を溽シめ,亦た能く蒸して雲雨を作すなり。

又有亡阳自汗者,则由膀胱肾中之元阳脱泄,故其水阴之气,随而奔溢,散涣不收。
又た亡陽自汗する者有らば,則ち膀胱由り腎中の元陽脱泄し,故に其の水陰の気は,随ひて奔溢し,散渙カン(散る)し収まらず。

气为水之所化,水即气也,汗即水也,气脱外泄,故汗出也。
気は水の化す所と為す,水は即ち気なり,汗は即ち水なり,気脱外泄するが,故に汗出ずるなり。

知此,则知汗出气分,不出血分矣。
此れを知らば,則ち気分に汗出ずるを知る,血分出ださずや。

然汗虽出于气分,而未尝不与血分相关。
然り汗と雖も気分より出で,而るに未だ嘗て血分と相関を与へず。

故血分有热,亦能蒸动气分之水,而为盗汗。
故に血分に熱有り,亦た能く気分の水を蒸動して,盗汗と為す。
汗血3-2

盖血气阴阳,原互根互宅,阴分之血盛,则阳分之水阴,自然充达。
  蓋し血気陰陽は,原モトもと互根互宅にて,陰分の血盛ならば,則ち陽分の水陰も,自然に充達す。

阳分之水阴,足以布护灌濡,则阴分之血,愈为和泽,而无阳乘阴之病矣。
陽分の水陰は,灌濡カンジュを布護すを以て足らば,則ち陰分の血は,愈ユひ沢と和すと為し,而るに陽乗陰の病無しや。

若阳分之水阴不足,则益伤血之阴,故伤寒汗出过多,则虚烦不寐,以其兼伤血分之阴,心主血分,血分之阴伤,则心气为之不宁矣。
若し陽分の水陰不足せば,則ち陰の血を傷るを益す,故に傷寒にて汗出過多なれば,則ち虚煩不寐し,其れを以て血分の陰を傷るを兼ぬる,心は血分を主り,血分の陰傷れれば,則ち心気は之れ不寧と為すや。

又有伤寒,即当从汗而解,今不得汗,乃从鼻衄而愈。
又た傷寒有り,即ち当に汗従りして解すべし,今汗を得ざずんば,乃ち鼻衄に従りて癒ゆ。

其衄名为红汗。
其の衄名を紅汗と為す。



巻6前半1-20

1痨瘵

癆瘵
癆瘵の証は,咯血痰嗽し,遺精泄瀉,潮熱盗汗する,痩ヤせ削ホソり疲倦する,鬼
交と夢ユメをみて,もしかすると夢より先に亡ナクナり,喜び人が過スぎるを見て,常に怒り
恨みを考える,明け方には病は減ヘり,午後に病は増す,発熱心煩し,ただ鼻乾燥し,
臉紅唇赤くなる,骨蒸肺痿する,咽痛み音を失する,もし瀉止ヤまなければ,治らない
かな。その原モトは酒色を得て損傷する,そうして失血の後に及ぶ,瘀血欝熱は,癆虫を
生ショウじ,人の臓腑の精血を蝕ムシバむ,変じて諸般の怪証を生ずる。病人の死後に,虫
気は家人に伝染する,伝屍デンシと名ずける,又た屍疰デンチュウと名ずける,それは上より
下へ注ソソぐといわれ,見証と前死の人と相ひ似てるわけである。弁虫の法は,または腹
中に塊カタマりが有り,もしくは脳後の両辺に小さき結核が有り,ある人は乳香を用いて
手の背を匂カぎ,帛を手心にして,しばらく手を上げ出イズる毛の長き寸許バカりに覆オオ
う。白黄になるは治すによろしい,紅い者は稍に難しい,青黒の者は死ぬ。もし手を匂
カぎ毛無いものは,癆虫証ではない。又たあるいは真の安息香を用い,焼き煙を吸わせ,
嗽セキしない者は伝屍ではない,煙入りすぐ嗽セキする者は,真の伝屍である。癆虫の形は,
ひょっとしたら蜣螂に似て,または紅糸の馬尾に似て,それとも蝦蟆カエル蝟鼠ハリネズミに
似て,あるいは鞠面に似て,あるいは足が有り頭無く,あるいは頭有り足無く,もしか
すると精血化して元気の内に帰る。もし三人に至り伝わるならば,その虫は霊怪であり
治してはならない(手を付けるな)。すべて虫を治す用薬は,病む者によって之を知っ
てはいけない,恐らく虫は悟サトリを覚オボえ,効を取るに難しいからであろう。
そもそも癆虫とは何の理由で生ずるのか?木は必ず先に腐る,しかる後に虫はこれ
に生じる。人身もまた必ず先に瘀血有り,虚熱欝蒸して,そこで癆虫を生じる。虫とは,
風木の気が変化する所である。人身の肝は風を主り,木は又マた蔵血を主る,肝臓の血
は,もし瘀積有れば,木の腐る先になるようである,この肝臓の風気は,郁遏蒸煽して,
将に瘀血が生じ変化しまさに虫となるのである。既に虫に変化してるときは,虫から治
す。天霊蓋散にて宜しく之を治さなければならない。しかしながら天霊蓋を得ることは
簡単でない,その上あまり用いない,川椒を用いて代用する,または金蟾丸キンセンガン
(蟾:ひきがえる・ つき)もまたよろしい。私は干漆、明雄、川椒、棟根皮、白頸蚯蚓
(ミミズ)を毎用して,升麻、欝金と,共に末と為して,白湯にて五更(午前 4 時から
6 時)時に服する,その虫は吐せず即スぐに下る。固い意味は殺虫に取って,特に干漆、 3
欝金に在る,瘀血を兼ねて治す,癆虫は瘀血の変化する所なので,殺虫はその標ヒョウを
治し,去瘀はその本を治すのである。諸書に但だ殺虫と言って,虫の生じる所を知らな
い,その治をまだ得られなくなるのみ。吾は指し出し,癆虫は是れ瘀血の所であり,変
化して瘀血を治すことでありこれはその本を治すことである。《弁証録》に用いる,移
屍滅怪湯,治は癆虫伝屍,方は去瘀をして主とする,ゆえに効がある。
---------参考-----------
移屍滅怪湯(死体を移すときに怪しき匂いを消す)
所属分類:解表剤
効能主治:死体を運び出す
構成:人参 1 両、山茱萸 1 両、当帰 3 銭、乳香末 1 銭、虻虫 14 個、水蛭(火煅死)14 条、
二蚕砂末 3 銭。
方剤の原典:《弁証録》巻八。
薬剤配方:人参, 山茱萸, 水蛭, 虻虫,
方剤用法:毎日 100 丸を服用する。

 癆虫の発生は,瘀血の変化す所による,しかるに癆虫は既に生ウマれ,人の精血を
蝕ムシバむ,人の正気は,日が経てば消耗し,その虚すを治せず,しかしその虫を殺し,
病が愈イユことができずに終る,月華丸これを主る。補虚の意味を取って,瘀と殺虫を去
ることを兼ねて施ホドコす,その治はすなわち万金の策である。鰻魚肉を常食するのもま
た佳ヨロしい,または鰻魚骨、鳖甲、知母、山茱萸、柴胡、当帰、青黛、桃梟(フクロウ)を
丸として,人参湯にて下ノむ,また攻補兼行の術である。

 又たすべて湿熱積痰は,皆な能く虫を生ウむ,小児の疳虫と等しい,金蟾丸を用
いて即スぐ愈ナオる。血化の虫に比べられず(不比:と違い),霊なる怪は治し難ガタい。
既に殺虫の後,しかし当にその虚を滋補しなければならない。陰虚の者は十のうちに八
九あり,瓊玉膏にてこれを主る,黄柏、知母、紫河車を加へ更に佳ヨし。陽虚の者は,
十のいちに二三なる,六君子湯にてこれを主る。
2欬嗽
欬嗽
 雑病の欬嗽は,別に方書があるので査シラべられる,用意して議論するに至らない。
ここで論ずるのは,虚癆失血の欬嗽である。失血家は,十のうち九に欬する,そのわけ
は,肺は華蓋と為す,肺中に常に津液があり,だから肺葉は肥え潤う,下に向って覆オオ
い垂タれ,まさに気は抑して収斂し,その気を下行させる。気が下れば津液も随して降
りる,そうして水津は四布し,水道通調する,肝気が逆しなければ,腎気は浮かばない,
欬嗽の病は無いからのみ。血とは火の変化した陰の汁である,津とは気の変化した水液
である,二者の本は互いに救って互いに養う,水が火を済スクわなければ,血傷れ,血が
気を養わなければ,水は尽きる。水が尽きれば津は潤ウルオさず,肺血傷れれば,火は金
を克する,金は火克を被コウムり,其の制節を行メグることができない,ここに下の気が在
って,始めに逆上を得て,気は既に逆上する。すなわち水津は気に随って下布すること
ができない,凝結して痰となる,下に水邪在り,又た気に随って升り泛アフれて水飲とな
る,皆な欬嗽になる。吾は欬血門においてすでにこの論を詳ツマビラかにし,ここに再び
左のごとく条に列して,それによって詳しく調査のうえ決裁する。

 一つ肺臓の津が虚してしまえば,火気はこれに乗じて,燥を成して欬になる。気
がむせると痰渋る,または血糸を帯び,久しくすれば肺痿と成る,清燥救肺湯にてこれ
を治す。
一つ痰火凝結し,欬逆発渇し,喉中痰滞する者は,津液散ずることができずによ
って,気道を阻塞する,治はその痰を清利するに宜しく,その津を滋養する,紫苑散に
てこれを主る。

 一つ水飲が肺を衝ツき,欬逆倚息し,臥するを得ない者は,これ人の失血によっ
て,肝経の風火太ハナハだ盛サカり,その水激動し,肺に上衝する。臥すれば肺葉は拡張し,
水飲は衝を愈ナオす,これにして臥息するを得られないときは,葶藶大棗瀉肺湯にてこれ
を治す。吾は二陳湯を用いる毎に蘇子、柴胡、白芥子、黄芩、石膏、杏仁、荊芥、薄荷、
枇杷葉を加えて飲み治ナオす,風火を兼ねて治すには,とりわけに効がある。これ雑病欬
嗽を与え,寒に因って水が動く者に異コトナりが有る。寒に因って水を動かせば,水飲は 5
肺を衝ツく,小青竜に宜し,及び真武湯にする。血証の欬嗽は,風火の内動によりの多
く,水激しくして上り,青竜真武等は,又たその嫌う所であると,医者はこれを弁ずる。

 そもそも虚癆欬嗽は,原モトより火克金において,水は肺に乗じ,そうしてその故
を切に究キワむる,病は皆な胃に在り。胃は水谷の海となる,津血が変化生ショウじる,血
が不足すれば火は旺する,津が生じじなければ肺燥する,水気変化しなければ,飲邪が
上り干カワカす。胃火を治すには,白虎湯加生地、百合、五味子に宜しい,または玉女煎
にする。胃痰を治すには,滾痰丸,指迷茯苓丸に宜しい;軽い者には豁痰丸を用いる。
胃中水飲を治すには,二陳湯加蘇子、白芥子、防已、枳殻、杏仁、生姜に宜しくする。
もし水飲に火を挟む者には,柴胡、黄芩、当帰、白芍を加える。

 《内経》に言う,五臓六腑に,皆な欬嗽がある,そして全部胃に集まり,肺に関し
てもである。上の条文は肺胃を分け治すことはすでに詳ツマビラカにしている。ここに一方
有る,肺胃を統治をできる者ならば,小柴胡湯にしたほうがいい。
肺火が盛なら,麦冬を加える。心火が盛なら,黄連、当帰を加える,肝火盛なら,
当帰、胡黄連を加える。
黄昏タソガレの欬嗽は,火が肺に浮くので,五倍子を加える,五味子は,これを収斂
する。
五更(午前 4~6 時)の欬嗽は,食積の火である,寅の時になって肺経に流入する,
莱菔子を加える。
痰凝気滞する者は,瓜楼霜、旋覆花、杏仁、桔梗、射干、川貝母を加える。
水飲が上に衝ツく者は,藶葶子、桑白皮、細辛、五味子を加える。

 寒が有るなら干姜、雲茯苓を加える。もし外感を兼ね,発熱悪寒,鼻塞フサガり頭痛
して欬嗽する者は,小柴胡湯加荊芥、紫蘇、杏仁、薄荷に宜しくする。
しかし小柴胡はよく水津を通し,欝火を散じ,升清降濁する,左は右になくてはな
らないので,加減を法に合アワせ,曲りを尽ツクすはその妙である。

 又た痰血が有って欬を作ナす,その証は欬逆倚息して,臥することできず,水飲衝
肺の証と相ひ似ている。しかし人身の気道は,閉塞してはいけない。内に瘀血が有るな
ら,気道を阻礙ソガイして,升降できない,これ壅ヨウにして欬とする。気が壅フサがれば水
も壅フサがる,気は即ち水であるからだ。水が壅フサがれば痰飲となる,痰飲は瘀血の阻害
する所となる,則ち突き上げが益マして肺経を犯す,坐立すれば肺を覆オオう,瘀血もま
た下墜する,それ気道は尚お大いに障害無く,ゆえに欬もまた甚ハナハだしくない。臥せ
ば瘀血は翻転し,更に阻塞する,肺葉は又た張ハり,収斂を止めて愈イえ難い,これで倚
息し臥することを得られない。もし重ねて水飲の衝肺を照合し,葶藶大棗湯を用いる,
これは治飲の法を得るが,しかしまだ治瘀の法を得ていない。痰水の壅フサぎを知らなけ
ればならなく、瘀血によってそうさせる,ただ瘀血を去れば,痰水自然に消える,抵当
丸に宜しく雲茯苓を加へ、法半夏に代へ,軽ければ血府逐瘀湯加葶藶、蘇子を用いる。
又た一辺に片側だけに臥ガして欬嗽有り,身を翻ホンすれば欬益ます甚しくなる者は,諸
書に皆な側臥一辺と言うと,そこで失血欬嗽は不治の証であると,しかしなおこれが瘀
血の病となることを知らないのだ。まさしく瘀血の一辺に偏り着くのは,一辺の気道を
通ることをして,一辺の気道を塞ぎ,気道の通りは半分となる,側臥でなる,気道の塞
ぎは半分である,側臥すれば則ち更に閉塞する,これは翻ホン身をして,ますます欬逆す
る,血府逐瘀湯加杏仁、五味子に宜しくこれを主る。左辺に側臥する者は,左辺に瘀血
が有る,だから右臥することができない。右に臥すれば瘀血翻ホン動して,益マスます壅塞
を加える,青皮、鰲甲、莪朮を加えるに宜しく,そうして左辺の瘀血を去る。右辺に側
臥する者は,右辺に瘀血有り,だから左に臥することができない,欝金、桑皮、姜黄を
加えるに宜しく,そうして右辺の瘀血を去らなければならない。すべて此の瘀血欬嗽の
証は,諸書に言及する者は少い,朱丹渓はほぼその端を引き,またまだ明らかに申して
いない。吾れは臨証に悟りが有る,大声にて疾を呼ぶ者をいとわない,正に死人を起し
て白骨に肉を付けると欲する,どうして敢へて秘密にすることができるだろうか、伝わ
らないのである。

 又た欬逆の衝気が有る者は,衝脈は血海に起きて,循行して陽明に上に麗ツく。血
海が傷を受ければ,衝脈気逆し,上りて陽明に合する,そして火逆燥欬の証となる,麦
門冬湯がこれを主る,玉女煎もまたこれを治す。二方は皆な陽明より,衝気の顛チョウを
抑へて,逆にならないなり。
又た衝気があり肝経の相火を挟む,上って肺金に乗ずる者は,その証は目眩口苦く,
嗆欬ソウガイすること数十声止まずに,欬は小腹を牽ヒき痛みを作ナす,発熱し頬赤くする, 7
四物湯,左金丸に宜しくするべきである,さらに人尿、猪胆汁、牡蠣、五味を加へてこ
れを治す。たしかに血室は肝の司どる所となり,衝脈は血室に起きる,だから肝経はこ
れを火とする。衝気に縁ヨり得て上り,小柴胡湯加五味子、青皮、竜骨、牡蠣、丹皮地
骨皮にてまたこれを治す。重い者は胡黄連を加える。

 衝脈の本は肝経に属する,このような其の標は陽明に在って,その根は腎に在る。
まさしく衝脈は胞中に起きて,そうして腎気は胞中に寄る,腎中の気は,肺に上りて呼
吸をする,また衝脈の路を借り,そのようにして上り循り肺に入る,これは臍旁衝脈の
穴となる,これ気衝という。《内経》に又た明らかに衝を気衝となると言う。衝脈はこ
れ腎経と交合する者として是コの様である。これは衝脈を,腎中の虚火を挟む毎に,上
逆して欬す,喘促咽干し,両顴発赤する,猪苓湯加五味子、知母、牛膝、黄柏、熟地、
亀版に宜しい,または麦味地黄湯にしてこれを安ヤスンずる,三才湯に鉄落を加えこれを
鎮シズめる,または大補陰丸合磁朱丸に,五味を加え衝気を吸ひ,腎に帰してやれば,
則ち欬逆しないのみ。又た胞中の水に内動が有る,衝気は水を挟み上逆して欬する者は,
その証上熱下寒し,竜雷火升する,面赤く浮腫し,頭暈咽痛し,発熱心悸する,大便は
反て滑し,腰痛遺溺する,桂苓甘草五味湯にてこれを治す,腎気丸もまたこれを治す。
吐血欬血門を更に詳しく参看せよ。

 欬嗽の病,その標は肺に在る,その本は腎に在る。血家の嗽の在るは,特に腎虚に
多く生ずる。腎は気の根である,腎経陰虚すれば,陽が附く所無く,気は根に帰えれず,
そのために浮いて喘し欬逆する,三才湯加五味子、沈香に宜しくしなければならない。
陳修園は二加竜骨牡蠣湯加阿膠、麦冬、五味子を用いて,その附子をぜひとも少し用い
る,単に引導を作すだけである(二加龙骨汤见于《金匮要略·虚劳》桂枝加龙骨牡蛎汤后
注文:“《小品方》云:虚弱浮热汗者,除桂加白薇、附子各三分,故曰二加龙骨汤”本方由白芍
药、炙甘草、白薇、大枣、附子、龙骨、牡蛎、生姜组成,以酸甘苦寒、益阴泄热与甘温扶
阳同用,敛降并存,刚柔相济,具有引阳入阴)。余は知柏地黄湯を用いる毎に,少し五味子、
肉桂を加え,そうして報使とする,常に都気丸を服すのもまた佳ヨろしい(報使:「引経
報使」「帰経」「昇降浮沈」説などいわゆる“金元薬理説”)。又た腎経に陽虚が有り,水に
変化できなければ,腰痛便短し,気喘欬逆する者に,腎気丸加五味にてこれを治す。更
に腎水泛上ハンジョウ有る,脾土が制御できず,そうして水飲欬嗽と為る者は,すなわち五
飲の雑病に属する,失血家は証有るに応じるに非ざる。各書に査する可きにより,ここ 8
に贅及しない(赘及:手がかからない)。
3发热
発熱
 吐血家は脈静にして身涼しい,薬をしないで癒ナオせる,陰を虧キすと言っても陽
はさらには亢しない,陰と陽はなお和を得られる,だから愈へ易いのである。ときには
身に微熱有り,皮毛に汗に似るものがある,此れは陽が陰を求めに来たことであり,水
は血を就ツこうとやって来る,また自ら癒ナオすことができる,所謂イワユる発熱とは,身に
微熱有るとは同じでない。失血家は陽気が血分の中に欝し,身熱欝冒する,ただ頭汗は
出ない。身熱とは,火が内に閉じて,外に達することができないからである。ただ頭汗
が出デる者は,火性炎上し,外に束タバねるからである,すなわち火は四達することが
できず,だから炎上に愈マサって,頭汗するのである。治法は其の郁を解すべきである,
偏身の微汗をだて,気は外に達する,そうして陽は陰に乗じなく,熱止む血もまた治る
のである。此のときに盛暑の遏熱は,汗を得ることで解する,小柴胡湯にてこれを主る。

 又た瘀血が有って発熱する者は,瘀血は肌肉に在る,だから翕翕キュウキュウと発熱す
る,証は白虎の象にて,口喝心煩し,支体刺痛する,当帰補血湯に宜しく,甲已化土湯
加桃仁、紅花、柴胡、防風、知母、石膏を合アわさなければならない,血府逐瘀湯もま
たこれを治す。瘀血が肌腠に在るならば,寒熱往来する,肌腠を半表半里と為し,内陰
外傷,互いに相い勝復するのである,小柴胡湯加当帰、白芍、丹皮、桃仁、荊芥、紅花
に宜しくこれを治さなければならない,桃奴散加黄芩、柴胡もまたこれを治す。瘀血が
腑に在れば,血室がこれを主る,証は日晡潮熱が現れ,昼日明瞭に,暮れれば譫語する,
以て衝は血海と為る,その脈は陽明を麗ウルワし,ゆえに陽明燥熱の証が有る,桃仁承気
湯にてこれを治す,小柴胡湯加桃仁、丹皮、白芍もまたこれを治す。瘀血が臓に在れば,
肝がこれを主る,そうして肝は血を司るわけなる。証は骨蒸癆熱をあらわし,手足心焼,
眼目青黒,手は摧タオれ折るを発する,世は難治も証と為す,しかも熱血が肝臓に然とし
て在るを知らない,柴胡清骨散加桃仁、琥珀、干漆、丹皮に宜しくしてこれを治す。

 以上を論じ,血家発熱に属するものは皆な実証である。又た発熱の虚証が有る,
血虚水虚の両類に分ける,別条は下のようである。血虚とは,発熱汗出でて,そうして
も血は気を配しない,則ち気が盛にして外泄するのである。または夜になれば発熱する,
そうして夜に血分を主るわけなのである。または寅トラ卯ウの時に発熱する,寅卯は少陽
に属し,肝血は既に虚して,少陽の相火となっている,当然に寅卯が旺の時に発熱する,
地骨皮散加柴胡、青蒿、胡黄連、雲茯苓、甘草にてこれを治す。はた又た胞中の火は,
血不足に因って,上り陽明燥気と合する,日晡潮熱する者である,犀角地黄湯にてこれ
を治す。

 水虚とは,水は気の化す所である,水津不足すれば,気は熱する,皮毛枯燥し,
口咽に瘡を生じ,遺精淋秘し,午後発熱する,大補陰丸にて,水を補い火を済スクう,ま
たは清燥救肺湯にして,肺胃より水津を生ずるに似ている,水足りて血濡ウルおえば,陽
気亢せなく,燥熱自ら除くかれる。五蒸湯もまたこれを統治する。

 また陰虚が内に有って,外においては陽が浮き,そうして発熱する者は,ぜひと
もその陰を大いに補って,再びその陽を納オサめる。だから産後発熱に,四物湯加黒姜を
用い,失血発熱にも,またこれを用いなければならない。火が重い者には,再サラに芩、
連を加える。もし腎陰不足し,真陽外浮し,発熱喘促する者は,これ陰と為して陽を恋
レンしない,陽は陰に入らず,陰に従い陽を引くに宜しく,二加竜骨湯加五味子、麦門冬、
阿膠,或ひは三才湯加塩炒肉桂を少し許バカり、桑葉、雲苓、白芍、冬虫草、山茱萸、
牛膝、五味子、知母、沈香、亀板を用いる。このほか又た食積にして発熱する者が有る,
手足の心腹熱し,胸満噦呃し,大便不調なる,日晡及び夜に発煩する,枳殻、厚朴、大
黄に宜しくして,これを消去すれば,則ち壅熱しなくなるのだ。虚した人に実証が無い
と言ってはいけない。
4厥冷
厥冷 
 雑病の四肢厥冷は,脾腎の陽虚となる,四末に達することができず,四逆湯にて
これを主る。もし失血の人で,しかもまた間に発厥が有る者ならば,この熱邪内陥する
こと多く,伏匿フットクは裏に在って,外見は仮寒をあらわし,身は冷水のようで,目昏神
暗し,脈伏して現れない;または冷ヒエが一陣にして,反て発熱する;または数日厥ケツし
て,反て数日発熱する。その厥は熱少い者多い,これは陽極まり陰に似る,熱の至キワメ
である。厥が少く熱深い者,これ伏熱猶お発泄を得て,熱なお浅いのである。これ即ち
《傷寒論厥陰篇》の,所謂イワユる“熱深くれば厥も亦た深し,熱微ワズカなれば厥も亦た微ワ
ズカなり”と是れなりや。まさしく厥陰肝経は,内は胆火に寄って,病めば火が陰中に伏
して,厥と為る,火が陽分に出れば反カエッて熱する。発熱が固まれば火甚しくなり,厥
を発すれば火は内に伏せる,そうして更サラに盛サカンになる。先ずその伏火を治するに宜
しく,火を発しさせて,厥に転じ熱と為る,次にそこで更にその熱を清し,このように
癒ナおすべきであるだけだ。

 誤って病気がもし出して発厥すとならば、熱薬を使って、その運命を促す。その
弁証法:雑病の厥は,吐利止まなく,脈は気微を脱し,寒が有り熱は無い。伏火の厥な
らば,則ち厥の後に微ワズカに露熱を形どる,口和さないで,便は溏しない,小便清にな
らない。心中の疼熱は,煩躁して寧ネイしない,悪を明にし暗を喜ぶ,渇を欲し飲を得て,
厥に随って吐衄し発する,皆な真熱仮寒の現象である。先ず清化湯を用いて,升降散を
合せ,その伏熱を攻める,または当帰芦薈丸にてこれを攻める。次ツいで五蒸湯にてこ
れを清す。

 厥とは熱が止まり退ぞかないる者である,再び大補陰丸,地黄湯を用いて滋陰す
る。発厥の証は,又た外に閉ざす寒が有る,しかるに火を発し得ないる者には,仲景の
四逆散加荊芥、黄連、枯芩を用い,その陽が内に陥いるを審ツマビラカにし,そうして出で
ない者には,白頭翁湯にて,清でこれを達せさせる,昇陽散火湯は,温にてこれを発す
る。二方を酌しそうして行メグラすに宜しくする。血家の発熱は,固モトより多い是れ真熱
仮寒である,然れどもまた真寒なる者も有る。去血は太ハナハだ多く,気は血に付随して
泄モれ,そうて中気は去るを致して旺せない,元気を損ねて不足し,四肢厥冷する,飲
食を思わず,大便溏瀉する,これ乃トウとう虚し則ち生寒の証となる,法は温補に宜しく
する,十全大補湯、参附湯、養栄湯にて,随ひて宜しくこれを用いなければならない。
5寒热
寒熱
 発熱悪寒は,外感にてその栄衛が傷られること多く,栄が傷られれば寒し,衛が
傷られれば熱す,平人の治法は,ぜひ麻桂を用いて発散する。失血は皆な陰血の大虧で
ある,再び汗してはならない,その気分の水液を耗す,けれども小柴胡湯加荊芥、防風、
紫蘇、杏仁、薄荷、前胡、葛根等を用いなければならない,和を以モッてこれを散じ,仲
景の血家が汗の戒イマシメを忌イみ犯オカすを免マヌガれるのである。もし外感に関せずに,本
身の栄衛不和に係わり,発して寒熱を為す,瘧に似て瘧に非ざる者は,瘧を作ナらずに
これを治す,小柴胡,または逍遥散を用いるだけ,その栄衛を和して癒ゆる。又た瘀血
有って寒熱を作ナす者は,その身必ず刺痛有り,血府逐瘀湯にてこれを治す。これ雑病
寒熱との違い有るのを,医者はぜひとも知らなければならない。
6出汗
出汗
 汗とは,気分の水である。血虚すれば気は熱す,だからその水を蒸発して,出て
汗と為る。しかし頭汗出て,身に汗を得ない者は,すなわち陽気内郁し,下に冒カカりて
汗と為る,小柴胡湯で,その郁を解すれば,身を通じて汗を得て癒ナオる。蒸蒸と汗出が
でる者は,そこで血虚気盛になり,沸溢し汗と為る,白虎湯加当帰、蒲黄、蝉蛻を用い
るに宜しくこれを治す。手足に濈濈シュウシュウと汗出る者は,胃中にひょっとすると瘀血食
積が有る,四肢は中州の応と為る,火熱中に結す,だから手足汗出に応ずるのである,
玉燭散加枳殻、厚朴に宜しくこれを攻め,結し去りて汗自ら止むのであるのだろうか。
睡中に盗汗する者は,睡ネむれば気は血分に帰る,血不足すれば気の帰る所無く,
そのために気は泄して汗出る,当帰六黄湯に宜しくこれを治す,または地骨皮散加棗仁、
知母、茯苓、五味子、黄耆、黄柏にする。

 以下に論ずる所,皆な失血家において陰血内虚,陽気発を遏コラエる病である。ま
た陰陽両虚有って,自汗盗汗する者は,帰脾湯加麦冬、五味子に宜しく,または当帰六
黄湯加附子にするべきである。又た大汗して亡陽する者が有る,雑病に在り,亡陽する
のは単に陽虚に属する,失血家が,大汗亡陽すれば,則ちこれ陰虚を兼ね,陽は附く所
が無い,大剤に非ざる参附湯は,回陽することができず,継きて独参湯を用いこれを養
ヤシナいて癒イゆ。此の論は血家の出汗にて,雑証の出汗と別が有る。汗血発熱門を更に詳
しく参看してください。
7发渴
発渇
 血虚すれば渇を発する,瘀血有れば渇を発する,水虚もまた渇を発する。血虚し
て発渇する者は,血は陰と為り,気は陽と為る,血少なくなれば気多くなる,陽亢して
陰無く汁にてこれを濡す,それで飲水を欲するのである。法は補血すに宜しく,血足り
れば気は熱せないだろう。聖愈湯加天冬、花粉にてこれを治す,または当帰補血湯加花
粉、苧麻根、玉竹、麦冬にする。瘀血し発渇する者は,津液にてこれを生ずる,その根
は腎水より出でる。水と血,交タガいに会アい運ハコび転テンずる,皆な胞中に在る。胞中に
瘀血有れば,気は血阻と為る,上升を得られず,水津は因て気に随い上布することがで
きない。但シカし下焦の瘀を去れば,水津上布して,渇は自ら止む。小柴胡加丹皮、桃仁
にてこれを治す,血府逐瘀湯も,またこれを治す,熱に挟まれる蓄血の者は,桃仁承気
湯にてこれを治す。寒に夾まれる瘀滞の者は,温経湯にてこれを治す。

 水虚し発渇する者は,肺胃は水津不足する,これは引水にて自ら救う。水津は水
谷の変化と言っても,しかしその気実は腎中に源を発する。腎中では天癸の水が,胞中
に至り,気衝を循り,呼吸に付随して,肺部に上る,肺金はこれを司り,その気を布シ
き達する,是れは水津四布することである,口舌胃咽は,皆な津液有りて,渇せないの
である。もし腎中の水不足すれば,よく上焦に升達できない,これで渇に引水を欲する。
下焦の陰を啓ウヤマうに宜しく,津液を滋す,地黄湯加人参、麦冬、訶子,または左帰飲
加児茶、人参、玉竹,三才湯加知母にてこれを治す。そもそも水津は腎に生ずるのだが,
そうして実し肺に宣布する。 

 又た腎中の水津は本モトもと足タりる,しかるに肺金郁滞すれば,散布することで
きず,そうして水結を致して痰と為る,咽干き口渇す,小柴胡湯に宜しくしなければな
らない,上焦の滞を通じ,肺気を通して調トトノえすれば,水津は四布するのだ。又た言
う,津液は腎に生ずるが,肺が宣布し,実は胃中水谷に頼りてその化源を滋す。胃中燥
結すれば,津生じない,三一承気湯にてこれを治す。胃中蘊熱すれば,津生じない,玉
泉散にてこれを治す。胃経の肌が熱するならば,津液灼シャクを被コウムる,人参白虎湯にて
これを治す。胃中虚熱すれば,津生じない,麦冬養栄湯にてこれを治す。上の三条に分
け,皆な失血は多くの証が有る,雑病の消渇水停不化と,津気不升の者と同じではない,
参看しなければならない。水が停止し変化しなければ,常に五苓、真武等の湯を用いる。
8心烦
心煩
 煩とは,心が安ヤスンじないことである。心は火臓と為る,血液を変化生ずる,転
じて血液に頼り火を養う,だから心の字モジは篆文テンブンにおいて,火を倒す形となる,
火降りれば心寧ネイする。失血家は亡血過多になり,心火はその滋養を失う,だから発煩
が多い。火が太甚タジンする者は,舌上に黒胎し,夜に寐ネることできず,黄連阿膠湯に
てこれを主る。心中懊憹する者は,火が宜しきを得られない,だから郁して楽しくない,
梔子豉湯加連翹、桔梗、大力、生地、遠志、黄連、草稍に宜しくこれを治す。もし火が
甚しくなければ,血太虚する者である,心中戻りし終わり,これは虚煩と為る,帰脾湯
加朱砂、麦冬、炒梔子にてこれを治す,逍遥散加竜骨、棗仁もまたこれを治す。仲景の
酸棗仁湯は,特にに煩を治す要薬と為る。もし煩して躁を兼ねれば,手足妄動する,比
れ虚中に実を夾ハサむとなる,内に燥屎有り,必ず二便不調,発熱口渇,脈数サク力有り等
の証を見アラワす。傷寒が存在して承気証と為る,失血家在り,ぜひともその虚を顧りみ
るを兼ねなければならない,玉燭散に宜しく,または玉女煎加元明粉を用いる。煩躁の
極キワみになって,循衣摸床ジュンイモショウし,小便利する者は,陰尚ほまだ尽きなく,猶お
一二救スくえる;小便利さないのは,不治にして死んでしまう。これ陰躁と同じでない,
陰躁し煩せず但だ躁するのは,しかも必ず陰寒現れこの証に拠ヨる可ベきにして,ぜひ
細くこれを弁しなければならない。

 又た産後の血虚が有り,心煩短気するのは,これ心煩同じと言っても,このよう
に産血下行し,気多く虚脱し,その血もこれ虚す,皆な気虚に由ヨる,ゆえに心煩して
必ず気は短気する,帰脾湯,当帰補血湯,養栄湯等に宜しくしなければならない,補気
は血を生じて,心煩自ら癒ナオる。吐血家に至れば,その気上逆し,気実血虚が多くなり,
証は心煩を現し,特に血は心を養ヤシナえないこと甚しい者となる。もし再サラにその気を
補なえれば,気は益ます甚しくして,血も益ます虚す,心はその安ヤスしを得られずして
愈イゆや。治は補血清火に宜しくする,朱砂安神丸にてこれを治す。ぜひとも臥寐怔忡
驚悸門を参看しなさい。
9卧寐 (梦寐附)
臥寐 (夢寐を附す)
 臥とは,身を席ゴザに着け,頭は枕に就ツくを言うのだ。寐ビとは,神を捨て返
す,息を根モトに帰カエすを言う,臥寐の証を得ないのは,雑病に猶お少く,失血家は往往
にしてこれ有る。臥を得られずには二証有る,一は胃病,一は肺病である。胃病にて臥
すを得られない者は,陰虚し邪は陽に並び,煩躁し臥することできず,これ《傷寒論陽
明篇》に,『微熱喘冒し,臥を得ざる者は,胃に燥屎有り』の義と同じと為る,三一承
気湯にてこれを治す。もし燥結無く,但だ煩熱に係る者は,竹葉石膏湯、白虎湯にてこ
れを治す。兼ねて血分を理リすれば,玉燭散に宜しく,玉女煎を用いる。又た胃中に宿
食が有り,脹悶し臥すを得られない者は,越鞠丸加山査、麦芽、莱菔子とする。まさし
く陽明は闔トビラを主り,胃気を和し,闔トビラを主る令をして還り得さしめる,斯コノヨウに
してよく臥せるのだ。

 肺病にて臥せない者,肺は華蓋と為る,主ツカサどり葉垂タれる,臥すれば葉張ハり,
水飲は肺に衝ツき,面目浮腫する,欬逆倚息し,臥せば肺葉挙げて気益ます上る,ゆえ
に欬して臥すを得られず,葶藶大棗瀉肺湯にて,その水を去り攻セめて,則ち臥を得る
のだ。または二陳湯加乾姜、細辛、五味子にて,水飲を温利するもまたよしろしい。も
し火逆の気によって,痰を挟み上衝する者は,又た水火を兼ねて瀉すに宜しくすべきで 15
ある。痰甚しい者は,消化丸これを主る。火甚しい者は,滾痰丸これを主る。平剤なら
ば則ち二陳湯加柴胡、瓜蒌、黄芩、旋覆花、杏仁、姜汁、竹瀝に宜しくしなければなら
ない,保和湯もまたこれを治す。もし痰飲無く,単に火気上衝する者は,その人は昼日
欬せず,臥すれば欬逆する,気は息を得られず,重ねて肺痿し葉焦コげ,臥すれば肺葉
は挙アげ翹ソるとなり,気は付随して上衝し,欬嗆已ナオらない,清燥救肺湯加生地黄、瓜
蒌根、百合、五味子に宜しくしてこれを収斂し,再び鐘乳石を加へこれを鎮降しなけれ
ばならない。しばらくの間肺の津は腎中に生じ,もし胃水が上り上焦を済スクうことでき
ず,衝気逆上し,欬し臥すをできない者は,まさに腎よりこれを治さなければならない,
六味丸加参麦散とする,さらに牛膝を加へ,気を引き下行し,磁石を加へ,金の気を吸
ひ,根を帰させる。

 不寐の証に二つ有る,一つは心病であり,一つは肝病である。心病において不寐
の者は,『心は神を蔵す』から,血虚の火妄動すれば,神は安ヤスンぜず,煩して不寐する,
仲景の黄連阿膠湯にてこれを主る。陰虚痰擾し,神が安ヤスんじない者は,猪苓湯にてこ
れを治す。一つ火を清し,一つ水を利する。しかしながら心神不安にして,痰はよしん
ば火に非ず(痰か火のどちらかなり)。我は朱砂安神丸加茯苓、琥珀を毎用し,または
天王補心丹を用いる。

 肝病において不寐の者は,『肝は魂を蔵』から,人寤サメれば魂は目に遊ユらぐ,寐
ビならば魂は肝に返ると。もし外に陽浮し,魂が肝に入らなければ,寐ネムられない。そ
の証並びて煩躁せず,清睡セイスイして寐ネムるを得られず,その陽魂を斂レンするに宜しく,
肝に入らせる,二加竜骨湯加五味子、棗仁、阿膠にてこれを治す。又たときには肝経に
痰が有る,その魂を擾ミダして寐ネムるを得られない者は,温胆湯加棗仁にてこれを治す。
肝経に火が有り,夢多く難寐の者は,酸棗仁湯にてこれを治す;または滑氏補肝散,去
独活,加巴戟にする;四物湯加法夏、棗仁、冬虫夏草、竜骨、夜合皮,もまた佳ヨろし
い。

 又た考えるに:魂は肝に蔵すのだが,昼には目に遊アソぶ,目は面部に在り,すな
わち肺胃の司どる所にて,肺胃の気,擾ミダして静ならない,またよく外に魂を格テキタイ 16
する,返り得られないのである。生地黄、百合、麦冬、知母、枳殻、五味子、白芍、甘
草、棗仁、天花粉、茯苓に宜しくしてこれを治すべし;人参清肺湯もまたこれを治す。
又た虚悸恐怖の不寐の証が有る,仁熱散にてこれを治す。思慮して終夜不寐する者は,
帰脾湯加五味にてこれを治す,ぜひとも怔忡煩悸門を参看しなさい。

 又た昏沈多睡の証が有る,雑病に在って邪が陰分に入ると為る,失血虚癆在り,
すなわち血脱の後に,元気支ササへられなく,したがって昏睡する。もし汗出気喘すれば,
危急の候である,参附湯にてこれを救ふ。寤メザメは陽に属する,だから寤メザメないのは
陽虚と為る,人参養栄湯,またこれを治す。もし身体沈重し,倦怠嗜臥する者は,すな
わち脾経に湿が有る,平胃散加猪苓、沢瀉にてこれを治す,六君子湯加防已、薏苡仁,
補中益気湯もまたこれを治す。この論は睡多く,多くは陽虚である。しかしながらまた
胆経火甚しいが有る,多く昏睡する者は,竜胆瀉肝湯にてこれを治す。

 夢はそこで魂魄の役物,恍ボンヤリ見られる所が有るからである。魂病と為れば,
女子、花草、神仙、歓喜の事を夢ユメみる,酸棗仁湯にてこれを治す。魄病と為れば,則
ち驚怪、鬼物、争鬥鬥の事を夢ユメみる,人参清肺湯加琥珀にてこれを治す。夢の中に見
られる所,即ち魂魄である,魂は善く魄は悪アクである,だから魂を夢ユメ多くは善ヨく,
魄の夢多くは悪である。しかしながら魂魄の主どる所の者は,神である。ゆえに安神は
夢の要訣を治すと為る,益気安神湯にてこれを治す,又た癆虫の生マサ夢が有る,癆虫法
に照しこれを治す。又た夢が有りて遺精する,遺精門に詳ツマビラカにしている。

 さらに考える:睡して悪明喜暗(明を悪イみ暗を喜ぶ)する者は,火邪である。
側臥に身を転じ得られない者は,少陽の枢機利することができない。側臥の一辺は,欬
嗽門に詳ツマビラカにしている。
10喘息
喘息 
 人が喘息しなければ,気は平静になるので,血は何を理由に付随して吐出するの
だろう,だから失血家は,まだ喘息しないに有らざる者は,実喘有り,虚喘有る。実喘
の証に二つ有る,一つは欝閉,一つは奔迫である。欝閉とは,気が外に達せず,そうし
て内に壅欝することである。失血家は陽が陰に乗じて来る,この証は多いと為る。傷寒
の喘息には,麻桂を用いこれを発する。血家は汗を嫌う,又た升発してその血を動すを
嫌う,傷寒の欝閉の法を与え開すとは同じでない,小柴胡湯加杏仁に宜しくしなければ
ならなく,そうして外達に転枢し,腠理を通し,栄を衝和し,斯ココに外に気を達しさせ,
内に壅せずして喘と為るのである。もし外感の閉束が有り,疏解しないことを得られな
い者は,香蘇飲加杏仁、枯芩、甘草,に宜しくまたは《千金》の麦門冬湯にするべきで
ある,麻黄を借りて外を解して,清裏の薬を兼用し,過汗亡陰を致さず,すなわち剤を
調トトノうと為るに適切である。奔迫する者は,上気喘息し,下より気盛に経由して,上
に逆する,失血家は火盛に血に逼セマり,往往にしてその気粗賁である,その火を大瀉す
るに宜しくし,火が平タイラかなれば気も平かなる,厚朴、枳殻、大黄を用い,本物を通
して,気を下瀉すれば,上逆しないのだ。もし内に瘀血有るならば,気道は阻塞し,升
降を得られずして喘する,また上三味に,当帰、白芍、桃仁、丹皮を加えるに宜しくこ
れを治す。もし痰気阻塞する者は,清化丸にてこれを主ツカサドり,もし小便閉じる者は,
下竅塞フサぎ,ゆえに上竅も壅フサぐのである,五淋散加防已、杏仁、桑白皮、葶藶子に宜
しくしなければならない。

 虚喘にまた二証が有る,一つは肺虚,一つは腎虚である。肺虚において喘を作す
者は,肺は上焦に居るので,五臓を制節し,鼻に開竅し,そうして外気を通じ,内気を
収斂させる。血虚すれば火盛にして津傷られる,肺葉は痿ナへて下垂できず,そのため
に気は降オりるを得られず,喘息し鼻張る,則ち鼻の廠レンがもし闌カンに関する無くし,
すなわち肺痿の重証である(関闌:不能通達; 関,即関閉;即阻攔〔気降りるを得ず〕)。
生津補肺する,清燥救肺湯に宜しくしなければならない;欝火痰滞を兼ねて治する者は,
保和湯に宜しく,または太平丸にするべきである。吾は肺葉下墜を言う,鎮斂の法を兼
用するに宜しく,三才湯合生脈散にすべきである,さらに百合、五倍子、白芨花粉杏仁、
川貝母、鐘乳石を加へこれを治す。又た喘息が有り鼻窒不通に由ヨる者は,肺中の火欝
をもって鼻管を閉トじる,だから気並びに口にて,喘と為るのである。太平丸加麝香は,
即ち上通して鼻竅の妙薬となる。傷寒の鼻寒と異りが有る,誤って治してはいけない。

 腎虚において喘息する者は,気の根原は腎である,失血家は,火甚しければ水枯
れ,気に変化できない,そうして気短し喘する,欬逆喘息し,頬赤く咽干く,大補陰丸
加牛膝、五味に宜しくしこれを潜降しなければならない。もし陰虚ならば,陽は附く所
が無い,気が根に帰られない者は,地黄湯合生脈散,加磁石、牛膝、沈香にする,そう
してこれを滋納する。もし小水化せなく,兼ねて腰痛する者は,しなわち腎中の陽であ
る,化気することできない,腎気丸に宜しくしてこれを治す,参附湯加五味、茯苓もま
た宜しい。

 上は肺腎分治の方法に系カカワる,もし兼治を欲してこれを治せば,すなわち諸方
から化裁(決める)すべきである。この外にたとえば蘇子降香湯,四磨湯は,皆な肺腎
を兼治する,但だまだ血証を能ヨく照顧していない,用いる者はぜひとも減ずるを知ら
なければならないことを加える。又た言う:中宮虚すれば気は少い,人参にてこれを主
る;中宮実すれば気は粗アラい,大黄にてこれを主る。
11呃哕
呃噦ヤクエツ
 久病にて呃(しゃっくり)を聞けば胃絶すと為る,ぜひとも脈証を審ツマビラカに
してこれを断タつ,ただ呃逆(しゃっくり)に拠ヨリを得られなければ,その死を断じ遂ツ
くなり(融通がきかない)。失血家は気が順利しないで,呃逆が多く有る。新病にして
形実なる者は,伏熱と為り発し攻める,大性は炎上し,気逆して呃エッする,清熱し気を
導く,三物湯に宜しく,または柴胡梅連散加枳殻、檳榔にしなければならない。もし膈
間に痰が有って閉滞する者は,滾痰丸,指迷茯苓丸に宜しくしなければならない。又た
瘀血阻滞が有りて,呃を発する者は,必ず刺痛逆満の証を現す,大柴胡湯加桃仁、丹皮、
蘇木にてこれを治す,血府逐瘀湯,もまたこれを治す。もし久病にて呃を発するは,形
虚し気弱な者である。胃中空虚と為り,客気動膈する。 いわゆる客せばすなわち痰、火、
気になる。痰気を治すには旋覆代赭石湯に宜しく,または二陳湯加丁香、枳殻にしなけ
ればならない。火気を治すには,玉女煎加旋覆花、赭石、柿蒂に宜しく,または梅連散 
加柿蒂、枳殻、五味子を用いなければならない。俗に呃逆を治すにところが丁香、柿蒂
を用いる,丁香の性は温にして痰を降す,柿蒂の性は寒にして火を清する,二物は騎牆
キショク(騎牆:ひよりみをする、二股をかける)を現す,だから多く効かず,ぜひとも寒
熱に分けて用いなければならない。

 噦とは,吐気である。血家の気盛に,此の証最も多い。其の治法は呃逆と同じ
である。ところで傷食が有り,胃中壅塞して,噦を発する者は,越鞠丸加覆花、枳殻、
莱菔子に宜しくしなければならない。以上皆な胃を治す方法である。しかるに心気不舒
は,また呃噦を発する者が有る,常に人に抑欝が見られ,心気不暢なれば,胸中喉間に,
常に物が哽塞有るがごとく,時に呃噦を発し,快利を得られない,治法はまさにその心
を清し,その気を調トトノえる,二陳湯加黄連、連翹、牛蒡子、桔梗、瓜蒌霜、当帰、川
貝母に宜しくしてこれを治す。余ホカは痰飲門に詳クワしくする。
13痞满 (积聚症瘕)
痞満 (積聚症瘕) 
 心下は陽門の部分と為る,すなわち心火を宣布する変化の地である。君火の気
は,血と化して下行する,衝脈に付随し肝に蔵する,すなわち心下より起きる。腎水の
陽は,気と化し上行する,衝脈に付随し肺に交マジワる,肺の散布により肌膚に達す,ま
た心下より出だす。しかし此の地は陽明中の土と為る,すなわち水火血気,上下往来の
都スベてに会うのである。火降り血下り,気升り水布シければ,これ地廓ヒロく然ゼンする。
もし火降オりずに設モウければ,血も下らず,しかるに此ココに滞トドまるのである。もし気
が宣布できなければ,水も散ずることできず,そして此ココに結ムスばるのである。《傷寒
論》を観ると,心下痞満の証を治すには,瀉心湯を用い,瀉火する,十棗湯を用い,水
を瀉する,甘草瀉心湯、生姜瀉心湯は水火に瀉を兼ねて,五苓散は水結を解す,柴胡湯
は火結を解す,これ地はぜひとも水升火降を知らなければならない,斯ソコで既スデニ済スク
ウの形と為る。仮に火を上げ水を下し,中宮を阻止すれば,逐に天地否象と成る,だか
ら名ずけて痞と曰く。血家の火が上に浮いて,水と交わらなければ,往往オウオウに痞満の
象を現す。火気を得られず下降に系る者を審ツマビラカにする,瀉心湯にてこれを治す;ま
たは生附子を加へ,その痞を開く。膀胱の水中の陽に系わるのを審ツマビラカにする,心下
に逆し,外に出るを得ない者は,小柴胡湯をもって,其の枢機を転じ,しかるに水火皆
な通達するのである。もし水火交結し,軽い者は結胸と為る,小結胸湯これを主る;重
い者は陥胸と為る,大陥胸湯これを治す。もし単に水気結聚する者は,二陳湯,枳朮丸
にてこれを治す。今の医は単に停食痞満を知って,しかし痞満の証を知らず,一つにだ
けでなくして足る(1 つだけではない)。この外ホカなお胸痺等の証が有る,皆ないまだ論
列していない。ここに論ずる者は,すなわち失血家間にこの証有るのである。すべて以
上の諸証に遇い,さらによく酌シンシャクし当帰、地黄、川芎、赤芍、丹皮等を加へ,以て
血証を顧カエリみ照テラし,このように面面メンメンと倶トモに到ると為る。

 又た積聚の証が有る,あるいは心下に互タガいに横ヨコタワり,または腹中に盤踞ト
グロし(盤踞:踞;うずくまる、盤;円形をつくる=とぐろ),これ凝痰に非アラず,すな
わち裏血である,通ツウずるに化滞丸にてこれを主る。凝痰は清茶を用いて送下する,裏
血は酢酒を用いて送下する,無論ムロン臍上臍下,左右を兼ねて治す。又たすべて臍下に
在る,多くは血積とする,抵当丸にてこれを治す。又た癓瘕が有る,臍下に見アラワれる,
または見ミえまたは没ボッする,瘕カと為る,常に没ボッしなく見アラワれるは,癓チョウと為る。
癓チョウは膈下逐瘀湯,抵当丸に宜しくする。瘕カには橘核丸にす宜しくする。痞満を考え
る者は,胸膈間を病ヤむ,積聚する者は大腹を病ヤむ。癓瘕する者は下焦の病である。す
べて真人化鉄湯加呉萸にてこれを治す,すべて逍遥散にてこれを和す。別に瘀血門に詳 22
クワしくする。
12痰饮
痰飲
 痰飲の証は,すでに欬血咯血欬嗽の諸条に詳ツマビラカにする,ここに失血の諸も
ろと人に因り,痰飲すべてを兼ねる,ゆえに更にこれを言う,煩複ハンフクを憚キラワなくす
る。痰飲とは,水の聚アツマる所である。人身飲食の水は,口より入り,膀胱より出る,
肺気はこれを布散し,脾気はぉれを滲利シツリする,腎気はこれを蒸化す,是れは瀉をも
って留まらざるなり。この水留めなければ,飲邪無きなるか,人身津液の水は,腎中に
生じ,胞室に寄居する,気に付随して上り,肺経に宣布する,是れが津液である。津液
散布すれば,凝結せずして痰と為るのである。

 上焦血虚して火盛んなれば,津液は,煉ネリ結し凝聚し痰と成る。肺が枯カれる
と為ると,欬逆発熱し,稠粘滞塞する,これ血虚より養心することできず,心火亢甚し
く,肺金を克制する,津液を散布し得られず,凝結に因りて痰と為る,豁痰丸にてこれ
を治す;二陳湯加黄連、黄芩、柴胡、瓜蒌霜もまたこれを治す。玉女煎加茯苓、白前、
旋覆花,または保和丸にて,滋肺する。胃は燥土と為る,燥気甚しければ,津結して痰
と為る,指迷茯苓丸にてこれを主る,頑痰壅塞する者は,滾痰丸にてこれを治す。

 喉中に痰粘し哽塞して下さない者は,梅核気証と名ずける。仲景は七気湯を用
い,理気除痰する。血家の病は此れ,欝火を兼ねること多く,指迷茯苓丸加甘草、桔梗、
紫蘇、香附、旋覆花、薄荷、射干、瓜蒌霜、牛蒡に宜しくしなければならない。余が考
えるに:咽中はすなわち少陰脈の繞メグる所にて,心経の火甚しく,往往にして結聚し
痰を成る,発して梅核と為る,甘桔湯加射干、山梔子、茯神、連翹、薄荷に宜しくし,
さらに半夏一大枚切片を用い,酢にて煮ること三沸し,半夏を去り,麝香を少し許バカ
り入れ,前薬に衝ナガシコみて服す。又た脈を衝ツきまた咽中に挟む,もし衝気上逆し,咽
中に壅フサガリて,そうして梅核と為る,必ず頬赤気喘等の証を現す,その水飲を挟みて
上る者を審ツマビラカにする,桂苓甘草五味湯にてこれを治す。果してその痰火を挟みて上
る者は,猪苓湯加梅粉、瓜蒌霜、旋覆花にてこれを治す。

 そもそも痰は津液の凝コラす所と為る,しかし津液は原モトは腎より生ずる。下焦
血虚し気熱し,津液升らず,火沸して痰と為る,猪苓湯,地黄湯加川貝母、五味子、麦
冬、旋覆花、款冬花、海蛤粉、牛膝、白前、竜骨、牡蠣、黄柏、知母等の薬とする。飲
は水気より停蓄し,その要求は膀胱に在る。もし膀胱の水,寒に因り上泛ハンすれば,胸
腹漉漉ロクロクと声有り,喉中に潮サワぎ響ヒビく,欬嗽哮吼する等なり,此れ土が水を治せ
ずと為る,肺はその憊ツカれを受ける,二陳湯を通用してこれを治す,六君子湯、真武湯、
小青竜湯,もこれを治す。考えるに:失血の人は,陰虚火旺により,少し寒飲を病む者
である。すなわちまたは欬し涎水を吐す,その脈滑数心煩熱する者を審ツマビラカにし,な
お火盛に水溢アフれる。火逆の至イタりは,水逆をしてこれ甚しい。その治法は清火瀉水に,
兼ねてこれを行メグらす,葶藶大棗瀉肺湯、消化丸に宜しくするべきである,及び二陳
湯加芩、連、柴胡、白前根とする。欬嗽諸条にそこで詳しく参看しなさい。
14肿胀
腫脹
 腫脹とは,水の病である,気の病である。失血家は往往にして水腫気腫ある,
抑オサえるに又た何をすべきか? たしかにに血は気を与え,水は火を与え,相い互いに
伏フせ倚タヨる,これ二つに一つなり,吾れは水火血気論に,調経去痰諸条に及び,すで
にこれを言う。ここに復た煩労ハンロウ憚ハバカらず言う,気はすなわち水である,血中に気
有るならば,すなわち水有る,だから肌肉中に汗が有り,口鼻中に津が有り,胞中に水
が有る,これ水と血とは,原モトもと並び行メグり悖ソムかない。失血家は,その血が既に
病みて,則ちまた水を累及マキゾエにする。水は胞中に蓄すならば,尿結と為る;水が脾
胃を淫ミダせば,脹満と為る,水が皮膚を浸オカせば,水腫と為る。

 治法;皮膚水腫する者は,肺よりこれを治すに宜し,肺が皮毛を主るからであ
る。肺は水の上原と為る,肺気行れば水行メグる,瀉白散加杏仁、桔梗、紫蘇、茯苓に
宜しくする,五皮飲もまたこれを治す。大腹脹満する者は,脾よりこれを治すに宜しく,
土を補い利水すれば,水行りて土を手厚くする,胃苓湯にてこれを主る,六君子湯加苡
仁、防已もまたこれを主ツカサドる。胞中に水結し,小腹脹満する者は,五苓散にてこれ
を治す,猪苓湯もまたこれを治す。諸モロもろの水は又た皆な腎の主どる所,腎気変化す
れば,上下内外の水を倶トモに化せる,六味地黄丸に宜しくする。

 以上これ挙アげる方は,皆な平剤である。医とは又たぜひとも陰陽を別に審クワシ
く,寒熱の品を加へ付随し,そこでよく奏効する。その口渇溺赤を審ツマビラカにする,涼
を喜び脈数の者は,陽水と為る,知、柏、芩、連、山梔、石膏、天冬、麦冬を,加入す
るによろしい。その口和し溺清きを審ツマビラカに,熱を喜び脈濡ナンは,陰水と為る,桂、
附、乾姜、呉萸、細辛を,加入するによろしい。失血家に陽水多く居る,陰水は最も少
い,医はぜひとも時に臨みて細コマカく審ツマビラカにする。

 又た瘀血の流注が有る,また腫脹を発する者は,すなわち血変じて水と成るの
証となる。これたとえば女子胞水に血が変じ,男子胞血に精が変ずる,瘡科血積の膿に
変ずるのである。血は既に水に変じる,そうして水よりこれを治す。上に諸方を挙ぐ所
を照らすに宜しく,寒熱を分け加減する,さらに琥珀、三七、当帰、川芎、桃奴、薄黄
を加へ,そうしてその血を兼ねて理オサめ,この水と血との源流を倶に治すのだ。古く称
するに婦人の錯経にして腫ハれる者は,水と化すと為る血と為る,名ずけて水分と曰く。
経水閉絶して腫ハれる者は,血化すと為る水と為る,名ずけて血分と曰く。その実治法
は,総じて水よりこれを治すに宜しく,方証を加減し,これを挙げる。婦人の水分血分
の説を観ミれば,血家の多く腫脹するゆえんを知る,また水分血分の病である。これ雑
証と水腫の別が有る,妄ムヤみに舟車丸を用いてはいけない,反て聖愈湯(四物湯加黄蓍、
人参)等にて水を消す。別に血臌門に詳しくする。
15怔忡
怔忡
 俗に心シン跳チョウと名ずける。心は火臓と為る,これを養って血無いならば,火
の気は衝動する,もって心跳する,安神丸にてこれを清する,帰脾湯加麦冬、五味子に
てこれを補オギナう。すべて思盧過度,及び失血家にして去血過多の者は,すなわちこの
虚証が有る。否サモナクば痰瘀を挟ハサむこと多く,宜しく細かくこれを弁じなければならな
い。心中に痰が有る者は,痰が心中に入り,心気を阻ソす,これにて心跳動不安する,
指迷茯苓丸加遠志、菖蒲、黄連、川貝母、棗仁、当帰に宜しくしてこれを治す,朱砂安
神丸加竜骨、遠志、金箔、牛黄、麝香にてこれを治す。

 又た胃火強梁リョウ(強梁:横暴)が有る,心に上攻して,跳躍するのは,その
心下に牆ショク然(牆:塀ヘイ)を築くように,これを聴くに声が有る,手でその心下を按
ずれば,復た気が有り抵拒を来キたる,これ心下に動気有ると為る,治は大いに心胃の
火を瀉すに宜しく,火が平タイラかなれば気も平タイラかなる,瀉心湯にてこれを主る; もし
くは玉女煎加枳殻、厚朴、代赭石、旋覆花にて,これを降し,さらに欝金、莪朮を加え 
これを攻める,血、気、火三者が皆な平タイラカにさせて,自ら強梁になるのである。
16惊悸
驚悸
 悸とは,懼怯グキョウ(懼:おそれ、怯:気が弱い)を言う。心は君火と為る,
君火が明く宣ヒロがれば,憂ウレイせず懼オソレない,どうして悸キが有るのか?心火足りなけ
ればば,気虚して悸すのである。血が心を養しなければ,神シン浮ウいて悸する。仲景の
建中湯は,心気虚悸を治す,炙甘草湯にて,心血不足して悸するを治す。今要するに養
栄湯を建中に代カへ,帰脾湯を炙甘草に代カえる,一つ気虚を治し,一つ血虚を治すので
ある。又た飲邪上り干カワく有り,水気凌心し,火が水克を畏オソれて悸する者は,桂苓甘
朮湯にてこれを治す。失血家は是れ気血虚悸すること多く,水気凌心する者は絶少ない。
又た言う:正虚の者は,邪は必ずこれに湊アツまる。すべて怔忡驚悸健忘慌忽の一切は,
多く痰火が心を沃カンガい,擾ウレイはその神明のする所,統て金箔鎮心丸を用いこれを主
る。

 驚とは,猝然ソツゼン(だしぬけに、突然)恐愓キョウテキ(恐れる)を言う。肝と胆
は連ツラなり,相火を司る。君火虚せば悸キして,相火虚せば驚く。たしかに人の胆は壮
なれば驚ろかず,胆気は壮しない,だから驚愓を発する,桂枝竜骨牡蠣甘草湯にてこれ
を治す。恐オソれ畏カシコまり敢オソレず(気兼ねなく)することなく独り臥する者は,虚の甚
だしいのである,仁熟散にてこれを治す。又たすべて胆経に痰有るならば,胆火は上越
する,これ胆気は内守を得られず,驚ろくゆえんである。温胆湯加竜骨、牛黄、棗仁、
琥珀、柴胡、白芍にてこれを治す。復た陽明火盛が有る,人声を悪く聞き,木音を聞き
て驚ろく者は,これ《内経》の言う気は陽に並ぶ,だから驚狂を発する者である。だか
ら肝胆木火脾土は,法に陽明の火を大瀉するに宜しくする,大柴胡湯にてこれを治す,
当帰芦薈丸もまたこれを治す。血家が驚を病み,これ陽明の火盛が多くして,病ヤマい虚
し驚ろく者は,また少なからず復フクす(多い)。以上諸方を用い,ぜひ兼ねて血証を顧カ
エリみ,そしてその化裁を尽くさなければならない。桂甘竜牡等湯に固執してはいけない,
しかしながら禁止するに宜しくすることを知らないのだ。
17健忘
健忘
 健忘とは適然テキゼン(気分が良く)であるがしかし事を忘れる,心力(気苦労)
を尽し思量(考え)が来られることなく,すべて言う所を行メグり,往往に首尾を知ら
ない,病ヤマイは心脾二経を主る。 しかし心の官なので思い,脾の官もまた思いを主る。
これ思慮過多によって,心血耗散して,しかし神は舎ヤドを守られず,脾気は衰憊し,
そうして意イは強ツヨくない。二者は皆な人は突然と忘ワスれる事である。治法は必ず先マず
心血を養い,脾気を理リ(整え)し,そうして凝神(心を凝コらす)定志の剤にてこれを
補う,また当に幽間の地を処さなければならない,その思慮を絶タえれば,日漸シダいに
安アンずるのである。 帰脾湯がこれを主る。もし心経火旺なる者は,火邪がその心神を擾
ミダす(煩わす),治は清火寧心に宜しくし,天王補心丹にてこれを治す。また痰が有り
心包に沈留し,心竅を沃塞ヨウセン(肥え、ふさぐ)し,そうして精神慌惚を致イタし,ほぼ
記憶しない事多い者は,温胆湯合金箔鎮心丸に宜しくしてこれを治し,朱砂安神丸加竜
骨、遠志、菖蒲、茯神、炒黄丹,もまたこれを治す。失血家の心脾血虚は,おのおの痰
を動かし火を生じ易い,健忘の証に特に多い。又たすべて心に瘀血が有る,また健忘を
せしめ,《内経》の言う血が下に在り狂う如ゴトく,血が上に在れば喜んで忘ワスれること
是コれである。そもそも人の忘れないゆえんの者は,神シン清キヨいからである。神とは何
物と為るのだろうか,すなわち心中数点の血液,湛キヨく然タダしく朗アキラかに潤ウルオす,
ゆえによく物を照テらし,明アキラカと為る。血が上に在れば,濁ニゴり蔽オオって明アキラカなら
ないのだ。すべて失血家が猝トン(急に)に健忘する者は,おのおの瘀血が有る,血府逐
瘀湯加欝金、菖薄,または朱砂安神丸加桃仁、丹皮、欝金、遠志とする。
18慌惚(癫狂见鬼)
慌惚 (癲狂見鬼)
 大病傷寒の後,食を欲するも食せず,臥を欲するも臥せず,行メグるを欲する
も行メグらず,精神慌惚として,もし鬼神が有りその体中に附く者は,名ずけて百合病
という。百脈一宗(宗:第一)を言い,その病を合する。肺は百脈を主り,肺魄が寧ネイ
(安らか)ならず,だからこのように病ヤむ。諸モロもろ慌惚多い,いまだ名状尽かず,
必ず溺赤脈数の証を現す,すなわち肺金が克を受けるこれ験ムクイである。仲景は生地、 
百合、滑石を用いこれを治す,これ専ら雑病の余邪を言い患ワズラう者と為るのである。
失血家が,陰脈に傷を受け,すべて慌惚不寧する,皆な百合病の類タグイ,総じて清金定
魄を主と為すに宜しくする,清燥救肺湯加百合、茯神、琥珀、滑石、生地、金箔治之,
地魄湯もまたこれを治す,または瓊玉膏加竜骨、羚羊角、百合,あるいは人参清肺湯加
百合、滑石にする。

 およそ夜に夢みて寧ネイ(安らか)ならぬ者は,魂コン安ヤスからないのである。魂
は陽と為る,夜になれば魂蔵して用いず,魂が蔵することできなければ,夜に夢ユメみて
寧ネイしない。寤サメる時に恍惚する者は寤サメて,魄ハク安ヤスンじない。魂コンは陰と為る,寤サ
メる時に陰気不足すれば,恍惚し定サダまらない。魂を治すのは肝を主シュと為る,魄を治
すのは肺を主と為る,二者の勘シラベに対し自明である。だが慌惚、驚悸、惑乱、怔忡、
癲狂は,皆な神の清明ならないの証である。人身に魂魄が有るだから魂魄を主る者は,
神シンである。だからすべて諸モロもろの証は,総じて安神を主シュと為る,安神丸,金箔鎮
心丸,にてこれを治す。

 語言錯乱を癲と為る,喪心失魄が多くにより,心竅が痰迷を致イタす所である,
統て金箔鎮心丸にてこれを治す。怒罵ドバ飛走し狂ョウと為る,火邪の逼迫セッパクにより,
心神迷乱し,四肢躁サワぎ擾ミダれる,滾痰丸にてこれを治す。鬼を見る者は,癲狂の類タ
グイである。陽明病にて,胃に燥屎有るならば,目中に鬼を見る,三一承気湯に宜しく
してこれを下さなければならない。失血家の瘀血が内に在り,また譫語し鬼を見ミて,
その同じを実邪と為る,だから倶によく目を擾ミダすこれ明かである,桃仁承気湯にて
これを治す。
19晕痛
暈痛
 傷寒雑病にて,頭暈痛する者は,風寒である。血家の暈痛は,これ痰火多くな
る,誤りて発散薬を用いれば,鮮アザヤカに劇を増せない。痰気が上攻し,頭目沈重昏花
し,幾幾キキ吐そうと欲し,首は物を裹ツツむようだ,右手は脈実,陰雨に痛み増す,これ
が痰の候である。二陳湯加防風、川芎、黄芩、薄荷、細辛、石膏にてこれを治す。病重 
い者は,消化丹にてこれを治す。火逆暈痛する者は,煩渇引飲する,火増劇が見られ,
頭を掉サげば更に痛む、口苦嗌乾干し,溺赤便閉じ,左手脈数サクとなる,火症である,
大柴胡湯にてこれを治す,当帰芦薈丸もまたこれを治す。軽ければ小柴胡湯加菊花とす
る。

 以上を論ずる所,皆な暈痛はこれ実証である。又た暈痛の虚証が有る,ぜひ暈
と痛の両門を分け,しかる後に治を施ホドコさなければならないことで別が有る。肝虚す
れば頭暈する,《内経》に云う,諸風掉眩は,皆な肝に属すると。肝血不足すれば,風
を生じる,風は動ドウを主る,ゆえに掉眩する。失血の人は,血虚生風する者が多い,
逍遥散加川芎、青葙子、夏枯草にてこれを治す。またけれども肝臓を滋し,息風の本と
為る,左帰飲加牛膝、巴戟天、杭菊花、細辛、枸杞にする。腎虚すれば頭痛する,《内
経》の言う頭痛巓疾では,下虚上実する,過カすれば少陰在るのである。六味地黄丸加
細辛、葱白、麝香にてこれを治す。これは腎厥頭痛のようである,そこで腎中濁陰が頭
に上逆する,上実下虚し,手足厥冷す,腎気丸加細辛、葱白に宜しくする。この証の痛
みは,歯に連ツラナり脳に入る,尋常微痛の者と同じでない。血家の頭痛は,これに似た
者少い,宜しく六味丸を用いるべきなる者多い。又た言う:頭暈病は両フタつの病と言っ
ても,失血の人である。往往にして二証を現し兼ねる。血虚に由ヨるならば,風動きて
眩マドむ,火動きて暈クラむ。吾れ暈痛を分けないという,また肝を治すと腎を治すとを
分けず,総じて四物湯加元参、枸杞、肉蓯蓉、玉竹、天麻、細辛、知母、黄柏、山茱萸、
牛膝とする。
20眼目(目黄出火见鬼昏花)
眼目(目黄に火を出し鬼昏花を見アラワす)
 眼は肝竅と為る,又た陽明脈絡の繞マトう,だから病めば,皆な肝胃両経の咎ト
ガとなる。眼珠黄となる者は,胃経に在って湿熱に属する,甚しければ身を通じ皆な黄
オウする,小便は必然として不利する,五苓散加茵陳、梔子、秦皮、黄柏、知母に宜しく
してこれを治さなければならない。肝経に在っての瘀熱は,仲景は言う:衄家の目黄と
なる者は,衄まだ止まなく,血中に熱有るからだと。すべての血熱は,その目黄多く,
四物湯加柴胡、黄芩、丹皮、蘇木、茵陳、紅花にてこれを治す。目珠紅もまた瘀血であ
る,治は上と同じ。 

 目中に火の出る者は,一つに胃火亢甚ハナハダしい,必ず口渇身熱等の証を兼ね
る,犀角地黄湯加石膏、天花粉、金銀花、枳殻にてこれを治す。一つに肝火外越ガイエツ
するは,必ず口苦耳嗚等の証を兼ねる,当帰芦薈丸にてこれを治す。目中に鬼が現れる
者は,一つ胃に燥屎が有る,目の神は昏花コンカ(ぼんやりかすむ)する,三一承気湯に
てこれを治す。一つに肝経血室である,蓄チクし瘀熱が有る,夜になれば譫語する,大柴
胡湯加桃仁、牡丹にてこれを治す。目を運ハコぶ者は,肝の風火である,羊角風(てんか
ん)を観て,目覚めできる,小柴胡湯加当帰、白芍、防風、菊花に宜しくしてこれを治
さなければならない。眼花する者は,腎の陰虚である,瞳神は腎に属し,客熱してこれ
を犯す,時に黒花現れ,ときには五色と成る,地黄湯加枸杞、朱砂、磁石、肉蓯蓉、石
決明、元参、知母、細辛に宜しくしてこれを治さなければならない。

 又た陽虚が有り,血を大吐の後,目が散大に光り,見ることできない者は,必
ず小便多くなる,腎気丸に宜しくしなければならない。上を以て挙げる所,皆な血間に
この病有がある,血家に無くとも有るを兼ねる者も,贅フヒツヨウではない(不必要ではな
い=必要である)。

血証論・巻六前半 11-20
翻訳 大曽根清朗

巻6後半21-40

21耳病
21耳病
 陳修園曰く:腎は耳に開竅する,そうするも腎脈はかえって頭に上らず,腎と心と交マジワ
り,心腑である小腸の脈に仮りの道を通して,耳中に入る,名づけて聴宮と曰く。神が居る所で
聴を司る,その形は珠タマのようである,皮膜は真水を裹ツツむ。もし真水が破れれば,耳は聾ロウと
なり,大声を震フルワす所となる聾は,皮膜破ヤブられる。
ときに聾し,または聾しない者は,心腎不交である,磁朱丸に宜しくする,そして心腎を
交マじわう。先に耳嗚あって後から聾する者は,腎虚して陰気を閉蔵することができず,陽の竅アナ
(通り道)を窒塞フサぐ,宜しく六味丸去丹皮,加磁石、五味、亀板にするべきである,陰気によ
って自ら本宮を盛サカンにする,陽竅に触れず(関わらず)して癒ナオる。

 もし外感に会って暴ニワカに聾するのは,総じて少陽一経だけではない,足少陽胆脈から耳輪
に繞マトって,手少陽三焦脈を通りて耳に入る,邪気が壅塞し,聴宮はそれを掩オオふ所となる,宜
しく逍遥散去白朮,加黄芩、半夏、生姜、竹黄、羚羊角、玉竹にてこれを治すことができる。
風火によって煽アオられる場合は,防風通聖散にするべきである。
肝火の作用が激しいなら,当帰芦薈丸にするべきである。
尺脈が弱い者は,桂附地黄丸にするべきである。
尺脈が数サクである者は,大補陰丸にするべきである。倶に磁石、菖蒲、肉蓯蓉を加える。
神であればこれを明アキラかにして,その人に存し,筆ヒつは楮カミ(紙)に尽さないのである。
考えるに:前に陳修園の最も明らかな説というのは,ただ又た久病の人がいて,産婦にに
およんで中宮が大いに虚し,肝腎の気を堵塞フサぐことができず,虚火が上衝して,耳嗚を発する
のである。胆と腎中の火にかかわると言っても,かえって脾胃を補オギナい填ミタすことを必要であ
る,そうしてふさぐには,帰脾湯加柴胡、山梔子、魚螵、蓮子、五味にてこれを治す,四君湯加
蓮米、芡実、薏苡仁、黄精、白芍、准山薬,もまたこれを治す。
22口舌
口舌
 五臓六腑は,皆な胃に気を秉モつ,五臓六腑の気も,また皆な胃にあらわれ発する。口とは,
胃の門戸である,だから五臓六腑の気は,皆なここにあらわれる。
口苦は胆熱となる,小柴胡湯加黄連にてこれを治す。
口甘は脾熱となる,甲已化土湯加天花粉、茵陳蒿、炒梔子、茯苓、枳殻、厚朴、黄芩、石
膏にてこれを治す。

 口酸は湿熱となる,炎天の羹肉は夜を過スぎれば酸サンを観アラワす,すなわち酸は湿熱が変化
したものを知る,葛根黄連黄芩湯加防已、茵陳、木通、滑石、花粉、雲苓にてこれを治す,ある
いは蒼朮、黄柏、黄連、呉茱萸もまたこれを治す。
口鹹は脾湿となり,潤下は鹹を作り,脾は水を変化できない,ゆえに鹹するのである。二
陳湯加旋覆花、藿香、白芍、檀香、呉茱萸にてこれを治す,胃苓湯もまたこれを治す。あるいは
六味地黄湯加旋覆花、牛膝、白前根として,腎中より水を変化して,これを納め下に行メグり,これ
をもって隔カク(離れ)治す。

 口淡は胃虚である,六君湯,寒熱に随ズイし加減してこれを治す。
口渋は風熱となる,通聖散去芒硝大黄にてこれを治す。
口麻は血虚となる,聖愈湯加薄荷にてこれを治す。
口臭は食積の火である,平胃散加山査、神曲、麦芽、黄苓、石膏にてこれを治す。
口中の糜爛は,小腸からの膀胱遺熱である,熱気が下泄を得ることがでこずして,ゆえに
糜タダレが口に及ぶ,導赤散加天花粉、天門冬、麦門冬、金銀花、灯芯、車前子、梔子にてこれを
治す。

 喉腥コウセイは肺火の痰滞である,瀉白散合甘桔湯に,さらに射干、馬兜鈴、黄芩、杏仁、川
母貝、天冬、麦冬、百合、瓜蒌霜を加へてこれを治す。
総じて論じると,口はすなわち胃の門戸である,胃を治すことを主とする,当然に舌熱を
分けなければならない,甘露飲平胃散を用いて,加減しこれを治す。 
舌は心の苗ナエとなる,そうして口中に居る,臓腑の気が,口に見アラワれ発することは,舌に
着くことが多い。だから舌苔に触れて,臓腑諸病を知り診察することができる。傷寒の邪が表に
在る者は,舌に胎が無い;半表半里に在る者は,舌はすなわち胎がある,裏に入ればすなわち胎
結するとなる。だからすべて胎があるのは,皆な内証にかかる。苔白は湿熱となる,小柴胡湯加
花粉、石膏、滑石、木通にてこれを治す。苔黄は燥熱となる,犀角地黄湯加知母、石膏、天花粉、
大黄、枳殻にてこれを治す。黒胎の芒刺は実熱となる,大承気湯にてこれを治す。もし胎が黒く
して舌滑潤する者は,すなわち水極まりて火に似る,真寒仮熱の証である,四逆湯加猪胆汁、人
尿、葱白にてこれを治す。血家の虚火は,又た地黄湯加肉桂、牛膝、五味子、竜骨にしなければ
ならない,そうしてこれを引導する。

 又た舌腫、舌裂、痛瘡などの証すべては,均しく心脾の火毒である,瀉心湯にてこれを治
す,大清涼散もまたこれを治す。もし舌根の木が強く,あるいは短縮を告知する者は,皆な少陰
経の風邪内動によって,陰火上騰する,地黄飲子加羚羊角にてこれを治す。上に論じた所の口舌
諸証は,血家間もまたこれがある。要するに血証をもって主とする,上の各法をもって参照する,
これは本末兼権の術となる。
23咽喉
咽喉
 咽喉は肺の関なので,胃の門,少陰心脈の絡マトう所で,肝経衝脈の夾ハサまる所である。
この四経すべては,皆な血の司どる所である。ゆえに失血家は,往往にして咽痛の証がある。
すべて咽痛して清利できない声の者は,肺火である。肺は気を主り,気管に痛み中アタる,ゆえに
声は清利できない,甘桔湯加馬兜鈴、黄芩、杏仁、川貝母、黄連、麦冬、百合、薄荷にてこれを
治す。
咽痛して飲食利することできない者は,胃火である。胃の上口は食管となる,食管が痛み,
そのために飲食利することできない者には,白虎湯加金銀花、大黄、桔梗、枳殻にてこれを治す。

 咽喉に痛みがあり,上気して頬赤き者は,肝経衝脈逆上の火である,玉女煎加旋覆花、射
干にするべきである,さらに塩炒安桂を少し許バカり用い,もって引火下行させる。
喉中が塞腫し,及び潰瀾するのは,皆な少陰心経の火である,瀉心湯加山豆根、牛蒡子、
桔梗、甘草、薄荷、細辛、胆南星、牛黄によろしくしてこれを治す。
腫塞する者は,外に人の爪甲、鶏内金、急性子,全蠍合巴豆を炒め過ごして用い,巴豆を
去り,さらに硝硼砂冰片、胆礬、青黛、黄連、枯礬に火を加へ吹き上げる,そうすれば痰血を吐
してすぐに愈イゆる。潰瀾の者は,外用に雄黄、黄連、珍珠、桑螵蛸、寒水石、牛黄、硼砂、麝香
を用いてこれを吹く。又た梅核の証があり,痰飲門に在るので参看せよ。

さらに考える:血家の咽痛は,多く肺胃虚火,及び衝脈火逆となる。吾れは欬嗽の諸条に,
甚だ詳しくこれを言っている。癆虫の蝕咽ショクインは,声音門にあらわす,宜しく集め参じぜよ。
24声音
声音
 失血家における失音の初病は,多くは風火である。声音とは,肺の主どる所である,肺金
清キヨく朗アキラカになるならば,声音は顕明ケンメイとなる。失血家は,肺金陰虚なので,火に克される,
肺竅通じなく,鼻塞し声閉トじてしまう。もし外感にかかり気が閉ざささない者には,小柴胡湯加
杏仁、桔梗、荊芥、薄荷にてこれを治さなければならない。もし肺中が実熱すれば,肺の竅を壅
遏して,声音閉トじてしまう,人参瀉肺湯にてこれを治す。また津液乾枯して,肺痿ナへ葉ヨウ焦コげ
て,声音嘶ムセび小さくなる者は,すなわち失血の虚弱証である,人参清肺湯、清燥救肺湯にてこ
れを治す。常に白密、川貝母、人参、胡桃、白合を用いて蒸し服す。また癆虫があり,肺間に居
る,噛カみ壊コワし肺に臓する,肺金は蝕ムシバみ嗚ない,喉中に欬喘、熱を癢ヨウしなおるのが難しい,
此れ癆瘵として難治の証である,百部、人参、明雄、獺瓜、白芨、百合、蚕砂、麝香、桔梗、甘
草、獺肝、鰻魚骨にしてこれを治さなければならない。またすべて癆瘵して,咽喉破爛する者は,
均しく治ナオらない。総じて上の方の外用に,珍珠、人参、牛黄、明雄を用いてこれを吹く。

 それら声音とは,気より出る所である。気の根は腎にある,ゆえに声音がここより出る,
腎に生じ実し,気は元に帰れない,則ち欬が甚しく愈ナオればするほど,気はなおらない(愈・・ 
愈:~すればするほど),そうして声は干カれる,都気丸をつかってこれを主り,人参、沈香、訶
子を加わえなければならない,腎気丸もまたこれを治す。
25腹痛
腹痛
 血家における腹痛は,多くは瘀血である,別に瘀血門に詳しくのべる。しかしまた気痛す
ることがある者は,失血の人で,気を先に和すことができず,血でもって平らかならないので、
そのために吐衄する。ただ血家の気痛というものは,雑病の気痛とは別である。雑病の気痛は,
痛みが甚しい。血家の気痛は,甚しくない,ただ胸腹の中に覚おぼへ,暢和を得られなく,郁滞
し聚アツマり結するの様相である,逍遥散加姜黄、香附子、檳榔、天台烏薬にてこれを治さなければ
ならない。さらに瘀血痞満門を詳しくあるので参考にせよ。
26痹痛
痺痛
 身体不仁,四肢疼痛は,現在は痛風という名前である,古くは痺証と言っていた。虚人が
外風を受けて,脈分にかかれば,血痺となる。仲景は黄耆五物湯を用いて,桂枝を血分に入れる,
行風に最も効果がある。失血家は血脈は既に虚している,往往にして外風を感受し,発して痺痛
となる,もしくは遊走不定して,または一ヶ所に滞着する,黄耆五物湯にすべきである,重いと
きには当帰、丹皮、紅花を加える。たとえば血虚火旺の人は,風中に火を兼ねて,外は痺証を現
し,内は便短、脈数、口渇等の証を現せば,それでは桂枝の辛温に宜しくなく,四物湯加防風、
柴胡、黄芩、丹皮、血通、秦艽、続断、羚羊角、桑寄生、玉竹、麦冬にて治さなければならない。
血虚の生風は,往往にして起こる,当帰、紅花、荊芥を,酒水に煎じて服す。瘀血は四肢を貫ツラヌ
き走る,また平行して疼痛を発する,証は血痺に似ている。ただし瘀血の痛みは,多くは錐刺の
ようであり,脈は浮かず拘急しない,此れは略ホぼ同じであない,別に瘀血門に詳クワシくする。
又た周りに痺脚気が有り,痰湿の走注する者は,皆な雑証にかかわり,此れ論ずるに値アタ
イしない。
27痿废
痿廃
 痿とは,足が廃し行アルくことができないものを言う,五痿に分けて治す。心気が熱すれば
脈痿イえて,筋縦ジュウして地に任マカせられない,天王補心丹加丹皮にてこれを治す。
肝気が熱すれば筋痿ナえて,筋は急に攣レンする,四物湯加羚羊角、続断、山茱萸、黄柏、地
骨皮にてこれを治す。
脾気が熱すれば肉は痿ナえ,胃かわきて渇する,肌肉不仁する,四物湯加人参、山薬、黄芩、
黄柏、沢瀉、雲苓にてこれを治す。
腎気が熱すれば骨は痿イえ腰脊挙アがらない,地黄湯,及び大補陰丸にてこれを治す。
肺気が熱すれば津は痿イえ,足に歓漑することできずに,疲乏して行アルけない,清燥救肺湯
にてこれを治す。

以上の治法は,五臓に分ワけると行っても,全体的に陰虚熱灼にかかわる,筋骨が用いない
所である。熱を退シリゾこうとしても,滋陰のようなものは無く,陰の生ショウじさせようとしても,
ただ陽明を取るだけである。陽明とは,五臓六腑の海であり,宗筋を潤すことを主る,宗筋は骨
を束ねるを主りてしかるに関を機利する。陽明虚すれば宗筋縦ハナつ,帯脈引けず,ゆえに足痿ナえ
て用いることできず,瓊玉膏加玉竹、煆石膏、石斛、花粉、珍珠、竹茹にてこれを治さなければ
ならない。玉女煎加犀角もまたこれを治す。このような痿廃の原モトは,胃にあると言っても,し
かしその病の見アラワし発するは,筋骨にあるのだ。虎骨、亀板、鹿筋、猪脊髄、牛骨髄、狗脊、骨
砕補、牛膝、苡仁、枸杞子、兎糸子、続断を凡スベて,皆な加入すべきである,そうして響導キョウド
ウ(導く)となる。痿証と脚気は違いがある,お願いだから誤って風薬を用いてはいけない。
28遗精
遺精
 一般に言われている上は吐血であり,下シモは遺精である,それらの病は治りません。それ
らは上逆下竭と言う,消耗が現れて出る。このように病む者は,但だまだ沈久しない,とくに治
法を図ハカるべきである。まさしく遺精失血は,両フタつの病ではあるが,その実は一つだけである。
精とは腎中陽気の化したもの,すなわち天一の生まれた癸水キスイ(みずのと)である。女子十四に
なれば,則ち癸水は胞中に至って,衝任の両脈は通じ,まさに心火の化した血が,転輸入胞して,
癸水と交合し,水より血と化す,これを月信とする。男子十六なれば,則ち癸水はまた胞中に至
って,衝任の両脈は,また輸血入胞して,癸水と合わさり,血より水と化す,これを精と言うの
である。胞とは精の舍ヤト(器)゙,即ち血の室シツ(部屋)である。吐衄とは,胞中血分の病である。
遺精とは,胞中水分の病である。血と水とは,上下内外,皆な相ひ済タスけて行メグる,私は已スデ
にこれを何度も言った。したがって血を病む者は,いまだに以前に水を病ヤまなく,水を病む者は,
またまだかつて血を病まないのである。この吐血をして,痰飲を兼ねることが多く,血もまた水
腫に変ずる,淋秘もまた鮮血を下すことがあり,血と水を以て原則は相タガいによりそうのである。
精というのは水の化したもの,遺精とは,水ミズが病ヤんだものである。しかもその上また吐衄は,
血もまた病むのである。先に吐血して後に遺精するのは,これ血病である,水に巻き添えする。
先に遺精したる後に吐血するのは,これ水病である,血に巻き添えする。治法は先後を論ずるこ
と無く,ひっくるめて肝を治すことを主とする。胞宮はそこで肝の司どる所は,精と血であり,
皆な此ココに蔵する。血を治す者は必ず胞を治す,精を治す者もまた必ず胞を治す,胞は肝の司ど
る所となる,従って皆な肝を治すことを主とする。肝は相火にたくす,気は疏泄を主る,火熾ショク
し気盛ならば,とりもなおさず上は吐血して下は遺精する,地骨皮散加柴胡、胡黄連、知母、黄
柏、牡蠣、竜骨、茯苓、蒲黄、血余にてこれを治する。丹梔逍逍散加阿膠、竜骨、牡蠣、薄黄に
より平タイラカにする。吐血甚しくしかし遺精軽い者は,吐血を治すことを主とする,生地黄散加金
桜子、牡蠣により治ナオす。遺精甚しくしかし吐血軽い者は,遺精を主とする,地黄湯加血余、竜
骨、牡蠣により治ナオす。

 仲景は遺精を治すにあたり,天雄附子法を用いることがあった。腎気不納して,心火腎に
下交できなければ,肉桂法を用いることがあった,皆な陽虚の証である。若し失血家であれらば,
とりもなおさず火を遺ナクすることが多く,さっそくに心腎不交である,また水は火を済スクうこと
できず,それは夢遺となる,十に八九となる。まさしく肝経火旺となれば,ただ魂は内を守れず
に,恍惚を現す。また夢が無くて遺イし,重ねて相火の甚しいものに属する,火甚しければそれで
は清することできない,これは昏沈して迷悶し,精の走失を覚えることができない。夢が有って
遺イす者を比較し,その火は更に甚しい,誤って陽虚の証となると認めてはいけない。大補陰丸加
生棗仁、牡蠣、竜骨、茯神にして治する。もし気が精を摂しない者は,その人は必ず虚寒の状態
を現す,ただ夢が無いのは別とする。
29淋浊
淋濁
 淋とは小便短数である,淋瀝不通することを言うのである。単にこの病ヤんでしまう者は,
自ら諸書を考えるべきである。血家が此れを病むのは,特に見れ兼ねる者だけである。しかしな
がら二便は消息ショウソク(記事、便り)の門戸である,もし一つ閉塞すれば,上中焦は消息を得られ
ない,だから《傷寒論》には,急下と言ふ者有り,当に其の小便利す者と言ふ有り,小便有らば
則ち生ショウずと言ふ有り,小便無くば死す者,此に吃緊キツキン(ひっ迫する)せざるに一つも無しと
書いてある。此れは水病である,水と血と相ひ倚伏として,吾れはすでにこれをしばしば言って
いる。単純に血が病ヤんで,水が病ヤまない者は愈ナオしやすい,水を調トトノえれば,その血病ヤむと
いえども,なお水が有って濡ヌらすからである。もし血が病ヤんで,さらに又た水に及オヨべば,上
って喘欬し,外は腫れ熱し,下っては淋濁する,ともに免がれることはできない。水が病ヤむれば
血を濡すことが無く,したがって血証もまた癒ナオしにくい原因となる。吾れは尿血腫欬の諸条に,
すでに詳しくこれを言った,看て参考にしなさい。
血家が淋を病ヤむるは,これ肺痿に多い。肺は制節を主り,下は水道を調トトノえる,肺は津
液流れなければ,気は下に行かず,その上に洲都に制節を達することできない,これ小便不利を
起こすのでわかる,生地、百合、天花粉、知母、杏仁、桑白皮、滑石、桔梗、猪苓、阿膠、甘草
梢にてこれを治さなければならない。

 血家の血虚火旺は,心の小腸に熱が遺ノコり,清濁を泌別することができない,そのため小
便赤短淋瀝する,導赤飲加炒梔子、車前子、黄連、白芍、灯芯にする。
脾土が化せなく,また能く湿を壅フサいでしまうと,小水不利を起こしてしまう,五苓散に
てこれを治す。湿の中に熱を挟ハサむ者は,桂尖を除去して,茵陳蒿、防已、黄柏、炒梔子を加え
る。
前陰は肝に属する,肝火が怒動して,茎中は利すことができず,甚しければ割痛する,あ
るいは血淋を兼ねる,竜胆瀉肝湯加肉蓯蓉,または地黄湯加肉蓯蓉、黄柏、車前子にして治さな
ければならない。もし血淋すれば,地楡、蒲黄を加える。
腎は水の臓である,膀胱は水の府となる。腎中の陰虚は,水源が枯竭して,小便に化せな
い,知柏地黄湯に,少し肉桂を加へて之を反佐ハンサす(反ってたすける)。もし陽虚に化すること
できない者は,金匱腎気丸にてこれを治す。

 以上の臓腑施治を分別する,すなわち三焦は決涜の義(意味)となるのである。陳修園は
五淋散を用いて,三焦を統治した,吾れは言いたい、中下を分別するには如オヨばず,そのうえに
又た各オノおの臓腑を区別し施治をして,特に精細となすと。
濁となる者は小水清くならない,ときには曰くあるときは黄,あるときは青あるときは赤
と,此れはもし暑天のときは,洪水泥潦の類となる,すなわち湿熱となるのである。湿が甚しい
ときに胃苓湯加黄芩、黄連、黄柏、白朮を用いてこれを治す。熱が甚しいときに茵陳蒿、梔子、
黄柏、秦皮、木通、車前子、防已、甘草梢を用いてこれを治す。
又た敗精があり濁となる者,あるいは淫を思い逐トげずに由り,あるひは淫に由って精は停
トドまる,萆薢分清飲加鹿角屑、桑螵蛸、白芍、肉蓯蓉にてこれを治さなければならない。
又た中気に虚弱が有り,小便を滴するが上の地にある,即ち変色する者は,六君子、帰脾
湯にてこれを治さなければならない。
30便闭
便閉
 二便は皆な脾胃の出口の路である,小便は清道にして気に属する,大腸は濁道にして血に
属する。失血家において,血虚にて便燥しなければ,特に応じ得られる,四得湯加麻仁にてこれ
を主る。血燥した者には桃仁川軍を加え,気燥する者には杏仁、枳殻を加え,風燥する者には皂
角、白芷、防風を加え,火燥する者には枳殻、厚朴、大黄、芒硝を加えなければならない。大腸
は重ねて胃の関門である,胃は燥土となる,もし胃に燥尿があって下らない者は,その責任は大
腸にあるわけでなく,胃にあるのである。それらの証は口渇,手足潮熱,あるいは譫語を発する,
三一承気湯にてこれを下す,または四物湯に麻仁、枳殻、厚朴、大黄を加へてこれを滋し降す。

又た小便数サクにして禁ずることできずに,大便は反て閉する者は,脾約と名ずける。脾の
津が下泄し,潤腸が無いというわけなのである。仲景は脾約丸を用いてこれを治し,丹渓は肺燥
を清し,肺清すれば小水に制限が有り,脾は灌漑を得らるべきという,清燥救肺湯を用いこれを
治べし。
腎は二陰を開竅する,腎虚し陰不足になれば,潤腸が無く,左帰飲加黒芝麻、肉蓯蓉にて
これを治さなければならない。
肺と大腸は相アい表裏する,肺が大腸に遺熱すれば,便結する、肺津が潤ウルオさなければ便
結する、肺気が降なければれば則ち便結する。肺の遺熱は,人参瀉肺湯にてこれを治す。肺津が 
潤さなければ,清燥救肺湯にてこれを治す。肺気が降りないならば,清燥救肺湯,合四磨湯とし
て,再サラに重ねて杏仁を加へ,または少ショウしょう葶藶子を加えてこれを治す。便血の条文と,合
せて明らかに看ミてください。

此の外に又た瘀血閉結の証がある,もしくは失血の後,血積がまだ去らない;もしくは跌
打損傷は,内に瘀血があり,停り積ツモり行らず,大便閉結する,時に通利して,なお下ること多
くなくず,下る所の糞は,又た黒色を帯び,腹中に時々刺痛し,口渇発熱,脈帯渋象する。桃仁
承気湯を用いてこれを治さなければならない,または失笑散加杏仁、桃仁、当帰、白芍にしなけ
ればならない。
31泻泄
瀉泄
 失血虚癆は,最も泄瀉を嫌う,脾胃を敗壊するので,薬に任してはいけない,その上殻を納
オサめることが少く,胃気はまさに絶してしまう訳である。雑病の泄瀉には,参、朮、姜、苓を用
いて,手段は効果を取りあげる。これなら姜朮は補胃し,転じてその陰を傷る,下嚥の後に,喘
熱が立ち現れ,ついに枯骨と成ってしまう。しかし滋陰の薬を使用すれば,脾はすでに瀉泄する,
陰を益せば瀉は動き愈ナオす,勢ひは必ず土を崩クズし救わないのである。病気が此に至る、吾は何
イズれもすでに、黄土湯を使うことを予定して、調停の計を行ひ、効果は必ず否定する。
以上を論ずる所は,すなわち虚を極め胃はまさに絶して瀉するのである。もし胃気がまさに
瀉を絶するに非ざるなら,すなわち当に証を按じてこれを治す,語を得て病人を恐れ騒がしてそ
の死を断じることをしてはいけない。
湿瀉とは水が上に傾く様子である,腸鳴して身重く,その腹は痛まず,胃苓湯にてこれを主
る。
風泄とは,大便が聚アツマらず,または清血を帯オびる,八珍湯加粉葛根、丹皮、防風、白芷と
する。

 寒泄とは,腹中切痛し,雷鳴鴨カモ溏し,清白色を下利する,附子理中湯にてこれを主る。六
君子湯加姜附もまたこれを治す。 
暑泄とは,煩渇尿赤して,暴瀉する。まるで水のようである,越鞠丸加竹茹、粉葛根、連翹、
車前子、牛蒡子、白芍、黄連、扁豆、枳殻、厚朴、生姜、藿香にする。
飧泄ソンセツとは,米殻を消化しないもの,香砂六君子にてこれを治す。
これは消化物の勢い集まる(暴注)からである(過食),肺気の迫下する場合と同じではない。暴
注すれば水と殻物,入り食し即ち熱が迫セマりながら下る,三一承気湯にする。
食積して泄する者は,瀉した後に痛みが減ずる,臭ニオイは鶏子を抱壊するごとく,噫気し酸を
作ナす。失血する虚人において,食が停り瀉をする者は特に多い,逍遥散,または小柴胡湯加山査、
神曲、麦芽、莱菔子にてこれを治さなければならない,越鞠丸、平胃散も皆なこれを治す。又た
泄血泄痢がある者は,別に便血門に詳しくする。

 又た腎泄があり,五更に泄を作ナす,一ヒトツに晨泄シンセツと名ける。そこで色欲過度し,足冷え
て気虚になる,四君子湯加熟地黄、枸杞子、兎糸子、巴戟天、杜仲、破故紙、肉豆蔲、五味子、
山茱萸にてこれを治さなければならない,猪腎一枚に故紙、小茴香、青塩を加へ焼き服すのもま
たよろしい。
32饮食
飲食
 水谷が胃に入り,その濁は渣滓ササイ(滓カス)となる,幽門ユウモンを下り,大小腸に達する,そし
て糞フンとなり,穀道より出る。その清は,たちまちこのように化し,脾気によって肺に上升する,
その清に至って精に至る者は,肺を経由して四体に灌漑する,汗液津唾となり,血脈を助けて,
気力を益し,生生(むざむざ)不息(止まらない)運用するとなる。その清中の濁となる者は,
下り膀胱に入りて溺ニョウとなる。これ虞天民の《医学正伝》に論じた所,それは水谷消化の道甚ハナ
ハだ明らかなりと言う,故にこれに全て録してある。すべての食し消化できない者は,これを脾に
責任にする,六君子湯にてこれを主る。水が消化しない者は,これを肺に責任にする,二陳湯加
防已、桑皮、桔梗、木通にてこれを治す。消渇は肺火である,甘露飲加花粉にてこれを治す。消
谷は胃火である,白虎湯加黄連、人参、枳殻、厚朴、生地黄にてこれを治す。一イチに飲み二回溲
ショウベンするのは,下消となる,腎虚である、腎気丸にてこれを主る。食入りて即スぐ吐すのは,火
逆とである,瀉心湯加生姜、竹瀝にてこれを治す。しかし水にて口を嗽ソソぎ用いて,飲ノむことを
欲しがらない者は,経脈中に瘀血あることが多い,四物湯加紅花、血通、干漆、冰片、葱白、桃
仁にてこれを治さなければならない。食ショク入ハイりて長い間,翻胃ホンイ(吐き気を催す)し吐出す 
る,または消化しないで疏泄する者は,食を磨マワセない脾である,六君子湯加肉豆蔲、破故紙、呉
茱萸、五味子にてこれを治す。

 そもそも人は食を思い食を消化することができるわけは(食を化して思い食べるのがなぜで
きるのかは),全スベて胃中の津液に頼るからである,吾れは総論にてすでに詳しくこれを言って
いる。津液が有れば良く消化することができ,食を納オサめられる,津液が無ければ食停トドマりて
消化できない。停食の病を観察すると,食入って反て吐し,糞は羊尿の様になるのを知らなけれ
ばならない,津液が無ければ食は消化できない訳である。噤口痢を観ると,咽かわき津竭ツきて,
食は下るを得られず,津液無きを知らなければならない,すなわち食が納ハイることができない訳
である。痢証噤口の者は,別に便血門に詳しくしている。食を膈ヘダて消化できず,および血虚津
枯して,飲食を思うことできない者には,左帰飲加天花粉、人参、玉竹、党参、蓮米、白芍、芝
麻を用いてこれを治さなければならない。

とある平人すべて飲食に内傷するのは,洞泄ドウセツの中寒なることが多い,治は理中湯,平胃
散にしなければならない,そしこれを温燥すべきである。もし失血の人が,飲食に内傷すれば,
反て壅実生熱の証多くなり,往往にして手足潮熱して,口干気逆し,衝脈欬を作るのである。も
し温燥の薬を用い,ただ飲食は消化しないことはない,ちょっと更に壅熱を加えるかな。小柴胡
湯加枳殻、厚朴、大黄を用い,軽ければ莱服子、麦芽を加える,越鞠丸加減もまたこれを治す。
33感冒
感冒
 血家は最も感冒を嫌う,陰血が傷を受け,発汗してはいけないからである。しかしながら血
家は又た感冒しやすい,人身は外の気を衛マモり,太陽膀胱に生じて,肺に散布する,血家の肺陰
不足は,壮火が気を食クラい,外に散達することができず,ゆえに衛気虚を索モトめて,外邪を召マネ
き易い,たまに感冒あり,即ち頭痛、寒熱、身痛等の証となる。もし常人の治法に照して,麻、
桂、羌、独を用い,肺津の傷を愈イヤせば,肺気は索サガスを益して達することできず,単に血分の
陰を涸カラさずに,気分の邪を助け愈イヤすなるのみ。治は惟タンに和解の一法だけである,補正祛邪
することができる,先に津を生じるべきであり,すなわち津足りて火は気を食クラうことなく,則 
ち肺気は皮毛に達することができ,そして衛気は充実するや。次にその気を疏し理トトノえて,血分
を和せれば,邪は患ワズラうとなり留まらず,而シカるに外邪は自ら解するのみ。小柴胡湯加杏仁、
荊芥、防風、紫蘇にてこれを主どらなければならない。口渇には花粉を加え,半夏を去る,身痛
には粉葛根を加える。痰火が内動する者は,さらに茯苓、旋覆花を加え,寒水が内動する者は,
別に蘇子降気湯を用いこれを治す。

 外感風寒が,肺中に客して,外証すでに退き,久欬して癒ナオらざる者は,失血家に往往にし
てこれれ有り。《千金》の麦門冬湯に宜しくするべきである,麻黄は茸(茸:細くて小さくて軟ら
かい)を搗ウち,蜜炙し,峻を変じて緩とする,そして陳寒を捜サガす。寒は肺中に客して,久し
くすれば変じて熱と為る,だから此の方を用いる。もしくは小柴胡に蘇子、薄荷、細辛を加える,
また麦門冬湯と相ひ彷仏ホウフツ(彷仏:さまよい戻る)する。感冒が甚だ重く,伝変して熱となる
者は,傷寒法を照らしこれを治すに宜しい,清熱攻裏し,量に任せられる。ただ失血家は,吐法
を軽く用ち得られない,このことを戒イマシメよ。失血の人にて,感冒に似る症状ある,実は感冒で
はない,肺痿気虚により,時時悪寒を灑淅レイセツ(まき散らす)し,鼻寒ヒへ清涕を流す,すなわち
金は火克カコクを被コウムり,内壅外閉し,衛気がこれを宣布できないからである。ただし肺金を清養
するに宜しく,妄ミダリに発散を用ちいてはいけない,火焔を張るからだ,太平丸にて補散し兼行
しこれを治す,《千金》の麦門冬湯,小柴胡湯も皆な宜ヨロしい。小柴胡湯は上焦の津液を通し,栄
衛を調和する,特に平穏になって神奇がある。
34痉掣 (拘急)
痙掣 (拘急)
 痙とは角弓反張,掣とは手足抽扯チュウシ(扯:引っ張る、裂く)である;拘急とは頭勾コウ(引
き起こす)足局マガり,肘膝相ひ構コウす(結ぶ)る。傷寒中風は,すべて此れ等ラに遇って,三面
に分ワカれてこれを治す。失血家はまた三面施治に分け宜しくして,薬を用い略ホぼ同じでない,下
に列挙する。
角弓反張は,太陽経の病である。無汗には葛根湯を用い,汗有る場合には桂枝加葛根湯を用
いる。血家が此れを病めば,血燥生風多くし,筋灼して攣レンする,麻、桂は皆なその忌イむ所であ
り,前方は与えてはだめである。四物湯加葛根、防風、荊芥、独活、羚羊角、桑寄生、続継、杏
仁に宜しくしてこれを治さなければならない。

 手足抽掣セイ(抽:引き出す、掣:引っ張る、引き寄せる)(抽搐:ひきつけ、けいれん),口
目斜引(口眼喎斜)する者は,少陽経の病である。傷寒中風には,大秦艽湯を用いる。此の方風
薬多いというものの,なお滋補を兼ねる。血家がこれを病めば,また借用すべきである,さらに
阿膠、羚羊角、人参、天花粉を加え,柔潤熄風すれば,血家に更に宜しいことを与える。しかし
ながら前の拘急は陽明経に属する,傷寒中風を得たる者は,三一承気湯にてこれを治す。血家は
これを得て陽明の津液大虚となる,筋はこの縮となる,法は大く津液を生ずるに宜しくしなけれ
ばならない,玉女煎加天花粉、玉竹、葛根、竹茹、人参、麦門冬、白芍、枳殻にてこれを治す。

 又た曰イワく:肝は筋を主り,肝病めば驚駭キョウガイ(駭:騒がす),筋攣する,今、且シカも縷ルイ(縷:
細かく)分ワカつ必要なく,総じて肝を治すことを主となる。四物湯加羚羊角、酸棗仁、木爪、荊
芥、黄芩にてこれを治す。
これすなわち血家発痙の治法である,諸痙法の通治ではなく,読む者はぜひとも知らなけれ
ばならない。
35暑疫
暑疫
 暑とは,湿熱の合気を言うのである。熱蒸すれば湿は動き,湿欝すれば熱は遏トまる,湿熱が
合さり化すのである。これを暑気となる。《月令》が謂う土は潤し暑に溽ジョク(湿る)する,これ
がこの謂うのであると。熱甚しければ心煩口渇し,脈数溺赤,湿甚しければ泄痢腫満し,喘急閉
悶する,病状は一つにならず,総じて熱湿二気に系カカるだけである。血家の陰虚湿熱の邪は,特
に感受し易い,大清涼飲を以て統しこれを治さなければならない。湿甚しい者は,その上に防已
を加へ,暑が尽くすことのできないこの治法と言っても,しかしながら本は此の方を広く推薦す
る,以て変へられるべき通りの妙である。

 又た陰暑が有り,実は暑に非アラずのである(暑ではないのである)。すなわちち夏月に伏陰内
動の寒症となる,名に循シタガふ毋ナカれ(名称にだまされてはいけない)そうして実を失ってしま 
う。疫とは四時(四季)に従順でない,臭穢の気が戻り悪化する,人に触れれば病んでしまう,
気を病ヤみ又た能ヨく伝染する,是れを名ずけて疫と言う,沈フカい冬になれば無く(発生しなく),
夏秋には常に有る(正常である)。その気は人に触れ,皆な口鼻から入る,内は臓腑の中に伏し,
発作すれば熱を状ダし頭痛する,虐に変じて下痢に動く,狂躁腫急し,その形は一つだけではな
い。外証が有ると言っても,発表を得ることはできない,ただその裏を解すれば,表気は清温敗
毒飲にて自ら和す,酒大黄を加えて治す(清瘟败毒饮:《疫疹一得》生地、黄连、黄芩、丹皮、石
膏、栀子、甘草、竹叶、玄参、犀角、连翘、芍药、知母、桔梗)。血家の陰虚は,疫邪(流行病)
を発し易い,よって並んでこれを言う。別に瘟疫の専門書が有る,詳しく明らかにする者多い,
細く査閲するに宜しい,此れ順にその大意を挙げるのみ。
36食复
食復
 失血家は,胃気消和して,津液自ら生じ,火自ら降オりる,痰自ら順トトノいて,病もまた自ら
癒イゆるなるか。もし飲食に傷られれば,中宮壅滞し,気と火は順利を得られない,上ノボり肺に
衝ツけば,欬嗽となる,外側の肌肉蒸すれば,発熱す,内に心が欝ウツすれば煩となる。血は安らか
を得られない理由である,これに因って復フタタび発する,名づけて食復ショクフクという,甲已化土湯
加枳殻、厚朴、炒梔子、麦芽を主ツカサドルとしなければならない。欬する者は紫苑、麦冬、五味子、
杏仁を加える。発熱する者は石膏、知母を加える。心煩する者は黄連、当帰を加える。腹痛する
者は酒大黄を加える。すでに血動く者は,桃仁、蘇木を加える,または逍逍散を用いる,加減法
は上に参照する,また胃気を調和する方を善ヨシとする,小柴胡湯もまた使用できる。仲景は食復
を治すときに,宿食が有ると言った,皆な芍薬、大黄を主る,義は二物を取り,能く推オし盪ユサぶ
り力ツクすからである。しかし宿食が去らなければ,独り新たな食の進ススみを阻害しないで,且つ
傷気が壅邪し,諸疾に転生する,だからに大黄にて速イソぎ之を去り,その正気が傷られるを免マヌ
がる,勝カツて功コウの千万から僅かな査をしなさい(勝って兜の緒を締めよ)。医者はぜひとも此の
理を知って,証に臨み胆力と識見を持ちなさい。

 さて失血の人で,停食し易い者は,胃中に熱があること多く,飲食を貪ムサボり多くする,既
に食したる後,脾津は枯れ少くなる,ぼろぼろになり消化できない,これは停食をし易い。四君
子湯加黄精、山薬、玉竹、天花粉、麦芽、白芍、生地黄、枸杞子、当帰、麦冬、山査、莱菔汁に
宜しく煎服する。これ等ラの治法は,只だ東垣の《脾胃論》を読むだけの者は,絶対に知ることが 
できない。
37劳复 (怒复)
労復 (怒復)
 静であれば気は平タイラカにして陰を生ウむ,動ドウであれば気躁サワぎて陽を生ずる,煩熱喘欬し,
これに付随して作ナす。失血病が,労動に因って復フたたび発する者は,十のうち五六あり,きわ
めて瞑目し調息(加減)チョウソクする宜しくしなければならない,収斂浮動の気をもって,陰を生じ
ることにより陽を秘カクす,そうして血はすなわち復マた動かないのだ。人参固本湯加蒲黄、蘇木に
てこれを治す。煩熱甚しい者は,地骨皮散加炒梔子、蒲黄を宜しく用いなければならない。喘欬
甚しい者は,人参清肺湯にて宜しくこれを治さなければならない,または三才湯加五味子、雲茯
苓、沈香、甘草とする;清燥救肺湯もまたこれを治す。血が復フたたび止ヤんだ後に,独参湯を多
く飲み,熟睡しこれを息ソクする。

怒復とは,怒気が肝を傷り,相火暴発して,血が奮興に因るものである,当帰芦薈丸にてこ
れを瀉し,竜胆瀉肝湯にてこれを清し,丹梔逍遥散にてこれを和し,小柴胡湯加牡蠣、青皮にて
これを抑ヨクする。
血の潮セキ止まない者は,瀉心湯加当帰、白芍、沈香、香附子、降真香にてこれを止トドめる。
十灰散は,香附子、檳榔、童便を用い、酢にて調服しこれを止む。
去血過多になれば,陰の傷は愈へ,陽は亢し愈ゆる,恕気は平タイラかできないものを愈ナオす,
当帰、人参、沈香、香附子、生地黄、五味子に宜しくする,この大補をもって,少しばかり食を
与へ,消息する。
これを総じて,失血の人は,労を戒め更によく怒を戒める。《医学考弁》に,怒を戒むの詩あ
りと言う:病家の誤りは,(忿怒)怒りを戒める,忿怒はただ些細なだけである。血は気の上りに
随して経を循らない,なお軽き車の就ツく熟路(よく知っている道)のようである。吾れは血証の
多くに臨み,十剤の功ある毎ゴトに,一つの怒に敗られる。病家は自ら誤り,医士(医師)は無駄
にして,一嘆タンするを発するに堪える。
38时复
時復
 時復とは,血家が春夏に病を得ることを言う,次年の春夏に至り復た発する;秋冬に病にな
り,次年の秋冬に至って,その病復マた発する。その時に値サイして重ねて病む,だから時復と言う。
そもそも人身五臓六腑は,天の気運を与へて,呼極り相い通ずる,原モとは一体である,ゆえに天
の陰陽は,よく人の疾病に媾マジワり,その実ジツ、天の病人ではない,すなわち人身の気血は,先
マず偏盛が有りゆえに天気の偏盛を感ずる,そうして病が逐に作られるのである。
血家が春に病を得エるのは,すなわち肝経血虚火旺である,春木の気は,肝に内通し,肝経は
木気を感じて,風動き火発つ,ゆえに春の時に値サイし,旧病が復マた作られる。
それすでに吐血を発する者は,地骨皮散加蒲黄、黄芩、竜胆草、杏仁、柴胡、荊芥に宜しく,
酢炒大黄にてこれを治さなければならない。

 なおまだ発作しない者は,ぜひとも五味逍遥散加牡蠣、阿膠、竜骨、香附子、五味子を服さ
なければならない,または左帰飲加阿膠、亀版、牡蠣、五味子を用いて,これを滋養して,肝腎
に陰を足るようにすれば,則ち火は伏して動からないのか。
すべて冬日春の時に,血病を得エる者は,均しく此の法を用いるに宜しい,そうして肝腎を養
し,陽気を封謐フウシツ(安謐 mi)させて泄モれなく,斯コの病は発しないのであるかな。又たすべて
肝経の火動する者は,必ず先に熱蒸口苦,魂夢不寧の諸証有り,柴胡清骨散もまた之を治す。
失血の病を,夏に得る者は,すなわち心経火旺する,次の夏月に逢いて復た発する,瀉心湯
加丹皮、蒲黄、生地黄、木通、甘草梢、降香、牛膝に宜しくするべきである。

 それはまだ発しない時である。もし煩熱が現らわれば,すなわち生地黄散を預服するに宜し
く,もってこれを遏クイ止トめる,あるいは天王補心丹にてこれを養する。
又た考えるに:夏月暑盛に,病は陽明に発することが多い,陽明は燥熱を主とする,暑熱相
い合さり,ゆえに多く陽明に属する。病が陽明に在る者は,口渇身熱し,煩燥便閉,人の声を悪
聞する,脈勢洪大,此を弁とする。そもそも吐出の血は,また必ず甚だ多い,犀角地黄湯加葛根、
金銀花、知母、蒲黄、大黄、枳殻に宜しくしなければならない。
もし尚ほまだ血を動かなく,初めに発熱口渇を覚える者は,玉女煎加蝉蛻、秦皮、茵陳、枳
殻とする。または先ず甘露飲を服し,そして胃陰を養い,燥気を動すを免マヌがれる。 

 秋はそこは金令キンレイ(令:季節)である,肺気はこれを主る。すべて失血家は,秋時に至っ
て皮毛を収斂する,まだ密にできず,往往にして風気と外合し,熱邪と内壅する,動血発欬し,
とりわけ容易となるのである。病家医家は,皆なぜひとも善く調理をする,そして補天ホテン再造サイ
ゾウす可きなり(どうにか 1 日の再生を補うことができる)。もし秋時に病を得エて,本を病み肺に
得エ,次に秋月に逢い,本臓は潤さなく,復た痿燥を発する,そうして欬血する者は,清燥救肺湯
加生地、蒲黄にてこれを治す,人参清肺湯加紫苑、当帰、蒲黄もまたよろしい。葛可久の太平丸
は,既に肺陰を滋し,風痰を清すを兼ね,特に治肺の良方である。
(391)时复 6-114(R3.11.7)
もし肺気欝して敷布できなければ,陽衛は外達できなく,津液は下降できない,皮毛は灑淅
レイセキ(とぎそそぐ)して,寒熱にて欬を作ナす者は,小柴胡加荊芥、防風、桔梗、杏仁、蒲黄、蘇
木、瓜蒌根、麦冬、桑皮、陳皮、枇杷葉に宜しくしてこれを治さなければならない。
風寒が肺中に客して,久欬止まない者は,《千金》の麦門冬湯に宜しくしなければならない。
その麻黄茸(茸:細く細かい様)を搗ウち炙り過スゴし,陳フルい寒を捜サガし,あるひは重ねて太平
丸を用い,重ねて薄荷を加え,また和散の法にする。

 冬令(令:季節)は水に属する,腎気はこれを主る。この時陰気は堅凝である,則るに陽気
は潜蔵し,竜雷を作さない。もし陰気不足すれば,陽気潜シズませず,どいして此の時陽気は皆な
内に入るだろうか,人身陰虚する者は,既に多く内熱する,陽気を加へ内に入り,両熱相ひ合わ
す,冬令に寒熱の象を失ひ致す,此コれと冬行夏令とは異りは無い,火迫血動をして,そうし復マ
た発するのである。治法は,腎陰を滋し,内熱を泄し,其の陰を凝して陽を秘すに宜しく,復た
大冬の令と成る,斯ココに病癒イゆなるかな。

 すでに動血する者は,玉女煎加蒲黄、丹皮、蘇木とし,大補陰丸、六味丸を継ツヅけ服し,そ
うして功を収める。そのいまだ発せないに乗じ,先ず麦味地黄湯を用いこれを滋す。火は之れを
蔵さない,三冬雪ふらず様な時は,臘月(12 月の別名)に鳴雷する。陽気が潜納には,皆な竜骨、
牡蠣を加わえるによろしい,吾れは衝脈においてこれを甚しく詳しく言う,ぜひとも参看サンカンし
なさい。
すべて物に根が有る,時に逢へば必ず発する。失血は何イズれの根だろうか,瘀血は即スナワち
その根である,だから凡スベて復た発する者は,その中に多く瘀血を伏する,及オヨび節気に遇い,
陰雨に遇いて,即ち蒸熱発動する者は,均しく瘀血を病ヤむとなる,血府逐瘀湯加干漆、桃奴に宜
しくしてこれを治さなければならない,または仲景の大黄䗪虫丸を用い,少少これを与える。此
の理はぜひ知られなければならなく,方は血証を瞞アザムく所と為さないのである。
39房劳复
房労復
 血の運行は,気の命を聴マカす。気はそこで先天腎水の中において,一点に陽を生じ,静にし
て復マた動き,変化して精血を生じる。もし房労をして,精血を傷イタめば,そのため水虚して火を
発する,気動いて血は升ノボる,どうして病があり発することができないであろうか?都気丸加麦
冬、亀鹿膠にて宜しくこれを治さなければならない。火盛の者は,大補陰丸加鹿膠、桑螵蛸にて
これを治す,または加味虎潜丸にして,脾腎を兼ねて治す。もしくは三才湯加桑螵蛸、秋石、海
粉、黄柏紫梢花にてこれを治す。失血の人は,息養をすることを第一とする。もし房労を避けら
れないのなら,これは命期を自ミズカら促ウナガす,医者に何ナンの罪があるだろうか。
40.附:抱儿痨论
附:抱児癆論
 (抱児癆ホウジロウ:姙娠の合併症に似た慢性消耗性疾患である。例えば合併心臓病、肺結核等である。)
世間では、胎が出来た婦人が発熱骨蒸・欬嗽が発生し、あるいは吐血したり夢交(鬼交)す
るのを抱児癆と称している。発症する妊婦は十ヶ月に満たず、七八月や五六月に起きる。胎はす
なわち萎縮、退堕して成長しない。満つ月を待たず度に産んだ後には、必ず命を落とす(死産)。
古い書物に、これらの名論が無く、俗医は治法が無い。世間は皆、死証を参照できず死に向かい
引き継ぐに際して果たして哀しむべきで良いだろうか。

 懐妊するということは、婦人の気血がすでに結して胎児を養っている。ここに病を受ければ
気血を消耗する。身体中の気血が少ないのに、どうして気と血との両方の消耗に堪えられるであ
ろうか。これでは胎児を養うことができず、そしてさらに母体は胎児によって病の侵入を受ける。
ふたつの斧(気血の消耗)が母体と胎児という枯樹に成り代わる。死を待つだけである。顧りみ
て其の受命を之れ重く,誠に云ふ所の如くして,果は治法を得ウるに,何ナンぞ起死回生し難きや?
命を受けたことは重く、まったく言う所のごとくして治法のの結果を得るに、どのように起死回
生の難しさをすべきか。我が妻はこの病になり、手を尽くして調え治し、ついに保全を得た。最
初、抱児癆が起きるゆえんを知り、失治の咎アヤマチばっかりだった。婦人の血が和して、その後に
子ができる。血はこの胎児病を病ヤむ。これを治す方法は、総じて(全体的に)その証を観察する。
時なるに安胎であるかを主る。胎児が安ずれば母体も安ずる。時なるに治病を主る。病が去れば
胎児は自ら固カタむ。その観察した証によって、病に合わせて薬を使い、癒えない者は無い。此の
病の大要は,世間に皆ながいう極めて虚の証とする,しかしながら此の病を知らない,多くは是
れは実邪である。

 どうしてそのように言えるのか?しかしながら身体は胃腸を除き、その他の臓腑は物が塞が
ると障害が出る。これは鍼灸の刺穴に刺し片時に留まり住まいする。すなわちその気を塞いでし
まう。況んや(言うまでもなく)胎児は頑然ガンゼンと一つの大物である。下部分を塞げば、気は
実して喘し、気逆して嘔する。気盛んにして火となる。皆、その壅塞をするゆえである。
それ、人の懐妊は、まるで貴重品を蔵すようだ。だから胎児は人(母体)を病み、あたかも
塊カタマリの積もるごとくなる。これで懐妊の脈証は沈分を打つを指し、また下焦に塊カタマリの積もる
脈証と似ている。塊を積ツめ攻めてこれを通さなければ、実邪は去りて人安ヤスんずる。胎児なら攻
通の法は無い。これすなわち治を施ホドコさず、そうして逆実の証があり、またぜひ消息(知らせ)
をしなければならない。補に攻を兼ね,ここに病を留め患と為すに至らない。しかしながら、一
切の拘禁を抜け出して、後から救はなければならない。皆、救えなければ死証となる。

 《内経》に書かれている;殞ソン(死ぬこと)無き故なり、すなわち拘禁を例タトエるを知る。一
つの意味は治病,安胎と為すことを最上の法とする《素問・六元紀大論》。
ゆえに抱児癆は,吐血逆満する。またぜひ胎を顧みなければならない,すぐに涼血泄瘀をす
べきで,丹皮、桃仁は泄瘀なので,だから忌ヤめない。瘀血が既に去り,壅熱しないなら,旧フルき
を去りて新しきを生ずる,胎は反カエって新血の養を得る。 
もし、気逆の火が甚だしければ普通でない。杏仁、枳殻、枯芩等にてよく治せる,酒炒大黄
もまた間に用いるべきである。

 また、すべてこの病は、胎気が下部に壅フサぎ、反って上に薫クンする。肺金は直接その気に当
たる。だから抱児癆を治すには肺金を第一の要法とする。清燥救肺湯,紫苑散にてこれを主る。
痰凝気阻して,欬逆が休まない者は,豁痰丸にてこれを治す。水飲が肺に衝ツキアガり,肺脹し
て欬嗽し,臥息を得られざる者には,葶藶大棗瀉肺湯にてこれを主る。桔梗寧肺湯は,補瀉を兼
ねて行メグラす;保和湯は,補が多く瀉は少い,皆な宜ヨロしく酌シャク(やりとり)して用うるべきで
ある。此の病が胞中に発すると,その本ホンは下に在アる,肺金の清理セイリは,標を治すに過ぎない
法だけである。

 しかしながら胎は下部に在って,すでに其の本を治すに攻めるをできず,すなわち其の標を
重ねて治とせず,肺金を保助し,そうして病気に抵抗し,病気が上薰すると言っても,また損な
うことはない。さらに肺は華蓋カガイとなり,位置は上に居るが,しかるに水道を通調し,下は膀
胱を送輸する,また制節を主り,下は大腸に達する。肺が調トトノうれば則ち大腸は滞トドコオらず,
気は大腸から得て泄セツすれば,すなわち胎は之コレを阻ソすと言っても,しかしながら上に薰クンし之
コレの勢は,また稍スこし殺すのである。肺が調トトのえば則ち小水は通利する,気は小水より得て泄
すれば,則ち胞中の気は,また小水より得て泄下する。

 しかし膀胱とは,胞の室ムロ,膀胱に暢ナガれれば,則ち胞気が之を借りるように借りることが
できるのは快適である,さらに上薰クンの勢は,また少し殺すのである。
もし大便燥結する者は,急ぎ宜しく清燥救腸湯加火麻仁、白芍、肉蓯蓉、枳殻、厚朴、当帰
を用いてこれを治すべきなり。
もし小便不利なる者は,急ぎ宜しく清燥救肺湯加草稍、生地、木通、防己、知母、桑皮を用
ひこれを治すべきなり。
その上に小便は膀胱から出でて,太陽経に属し,皮毛を主る;大便は大腸より出でて,陽明
経に属し,肌肉を主る。

 二経が調達すれば,則ち肌肉皮毛の気は,皆な清理して滞トドコおることできず,自ら寒を発
し熱を蒸ムさないのだ。皮毛肌肉の属に第ジュンじて気分の者は,すでに免マヌがれている,しかるに
腠理の熱,血分に属する者は,並ナラびて二経に関せざるのだ。
人身腠理の気は,すなわち三焦の司ツカサどる所にして,三焦は相火に属し,内は肝胆に寄りて,
下は胞室に蔵する。今、胞室がすでに胎の站タつ所となるならば,すなわちち相火は上ノボり壅フサ
ぎて嘔吐となる,失血する者は往往にして自然のままである。相火の気は,経の外に達し循メグり,
腠理を壅フサげば,すなわち寒熱を生ずる,甚しくなれば骨蒸する。原モトをただすと其の原因は,
胞室が站タつ所である胎となる,相火は任意に遊行することを得られず,これ壅ヨウ遏イツするのであ
る。この時に其の胎を奪ウバうことができず,只だ胞中の気を清泄し得エて,相火を使シて泄す所と
なる,斯コノヨウに大きな壅フサギを与へることができないだけである,宜しく四物湯加黄柏、知母、
赤茯苓、沢瀉、山萸肉、甘草稍、肉蓯蓉にするべきである,これは是の胞室を治し,しかるに相
火の本を滋すことである。外ガイは小柴胡湯を用い,そうして其ソの腠理を和すのである。蒸熱の
激しい者は,清骨散を用いそうして瀉すべき,これは是の少陽を治し,そうして相火の標を清す
のである。

 この時胞宮はすなわち治すことができず,ただ少陽を多く清し合アワす,そして其の標を重く
治す,すなわち全く愈ユせず,そうしてまた其の病気を殺すのである。もし胞室腠理を欲すれば,
面面と治を兼ねて,すなわち宜しく四物湯に,柴胡清骨散を合しこれを治さなければならない。
それなので抱児癆の病は,根が胞に在ると言っても,しかるに其の病を受ければ,すなわち肺に
在るのである。ただ其の肺金が津虚すれば,下に転輸をすること無く,これは胞中の水を使って,
皆な上に泛アフれさすを得て,病むとなる。
論ずること無く欬熱の諸証は,総じて宜しくその肺を大いに滋ウルオし,肺津を使シて調トトノわせ,
肺気は降コウを得ウる,すなわち胞中の水火は,上逆を欲すと言っても,而シカるにまた害をなさずに,
救肺湯,紫苑散、太平丸、保和湯、人参清肺湯、阿膠瀉白散にて之れに常服すべきなり。

 胞宮の第ジュンに水火が上逆すれば,すなわち病は肺に見アラワれて,水火の実は,又た腎中の根
に実する。胞宮の相火は,腎中の陽である。胞宮の水陰は,天癸の水である。ぜひとも力を極キワ
めて其の腎を滋補し,水を使シて化せばすなわち痰とならない,陰足らば則ち火動かず,此れ正本
清源の治となる。
腎中陰虚の時に,火が動けば,水結して痰となる,欬ともなり腫脹となり,淋閉における骨 
蒸となる,地黄湯加杏仁、五味子、麦冬、桑皮、黄柏、知母を使いこれを清サマす。

 腎中陽虚の時に水化できない者は,水停トドマって飲となる,欬ともなり腫脹となる,淋閉と
なる,清谷化すことできない,それには地黄湯加故紙、杜仲、艾葉、附片、台烏薬、沈香、木通
を使って其の陽を温めなければならない。
もし腎中の痰火が上逆して至るならば,喘欬止ヤまなく,胎にまた上逼ハクする,上に照らし六
味地黄湯加竜骨、牡蠣、鐘乳石、牛膝、半夏、五味子、麦門冬、川貝母を用いてこれを治す。
これは墜降の薬であって,各おのともに墜胎と言う,しかし病の無い胎は,これらをきらい
固持する。

 今すでに腎気逆上の病が存在して,高き者はこれを抑へる,病が墜を受きて,これを下オロす,
すなわ
ち胎の正位を当マサに適カナえることにより,胎はその位を反して,下クダり上に逼セマる,どうし
てこれを堕オロすと言うのであろうか?気逆が極わまって,吐血を発し,嘔欬噦噦(吃逆シャックリ)す
る,諸もろ一般な上逆の証である,当然、降気される者は,枳殻、厚朴、葶藶子、檳榔にしなけ
ればならない,量を任マカせて施ホドコすべきである;まさに降火すべき者は,酒大黄、胡黄連、知
母、黄柏、竜胆草とする,当然、用ひて随シタガふ,また妨がらず所なり。まして胎中の吐血は,
多く素モト因り瘀血阻滞があり,胎気は両方を相ひ容イれることができずず,そうして動血する。瘀
血を去ろうと欲して,桃仁、丹皮、五霊脂、紅花、延胡索などすべてにおいで,皆なまさにこれ
らを用いなければならない。もし只だ禁止を守れなければ,癰が養して患となるに違いないだろ
う。医者は果たして能く俗見を除き破り,その理由を参ミ透スカして,抱児癆を治すにあたり,何を
もって起死回生に難ムズカシいとなるであろうか。

 また言う、薬使用はむだに守って拘禁する必要はないが、しかし病気をも取り調べなければ
ならなくて、中はただ病気になりて、突然少しも気兼ねしなく、しかも軽重が分からない、用心
深くせよ。
産婦の胎胎にかかる所以ユエンは,帯脈である。帯脈を解せばすなわち胎墜するのか。もし腰痛
の証が見られれば,早く当帰、白朮、熟地、淮山薬、杜仲、故紙、山萸肉、亀膠、黄柏、黄蓍、
知母、免糸子、甘枸杞、続断、雲茯苓を用いてこれを治す。帯脈治法その余アマりは,経血、産血 25
門に詳しい。産母はすでに抱児癆を病んで,困憊(疲れ果てる)の極みになる。胎を保つことが
できなければ,また当然胎を存在できない,但だ産婦の安全保持を急ぐとする,帰芎湯加人参、
糯米、苧根、阿膠にして,その安を聴かなければならない,堕オツるもまたすべきなり。胎がすで
に下りたる後,ただ正産に照らし,これを治す法を考える,瘀を去りて新しきを生じ,なくては
癒へない。

 さらに抱児癆を考えるに,産前においてすでに大虚耗すれば,産後一旦に,必ず危険の証が
見れ,この尋常正産と較クラべ,更に当然ながら預防すべきである。
一たび汗出で止まなければ,独参湯にてこれを救ふ,浮熱脈大となる者には,附子を加へ,
そうして陽を引き陰に入れる。これ胎前に常なる病と言っても,火が燥じて,陽気の欲脱に至る,
重ねて火燥治法を照すを得られず。四物湯加炮姜,もまた陰引陽の法にしたがう,皆な審ツマビラカ
に用いなければならない。

 ひとつの喘促は気脱の候である,参附湯加五味、沈香にてこれを治す。
ひとつの血崩は血脱の候である,帰脾湯加血余灰、棕灰、海螵蛸、魚膠にてこれを治す。ま
た肝火の怒動が有って,血崩となる者は,帰脾湯,加柴胡、梔子にてこれを治す。
この三つの危キケンな証は,正産にもこれが有る,抱児癆を病む者は,必ず在る所である,医家
病家は,皆な当然に預防するべきである。
その胎前は実熱に属し,産後は虚寒に属する,平人は大抵そのままである。抱児癆を病む者
は,胎前の病は,無定型になりて熱に非ざるなり。産後に至れば,則ち虚寒を尽くさない。しか
しながら胎前に已スデに陰虚を病みて,産後には去血の過多なる,その陰は愈マサルが虚し,発熱発
欬する,とくに痿燥の極みに属する,もしただ産後を守るのみは温補の説にすべき,鮮アザヤカに運
命を促ウナガさないのである。左帰飲加阿膠、天花粉、百部、人参、麦門冬、玉竹、五味子にてこ
れを治す。骨蒸の欬逆は,団魚丸にてこれを治す。陰虚火動して,水飲を挟ハサみて上ウエ乾く者は,
四物湯合二陳湯とする,さらに柴胡、黄芩、姜汁、竹瀝、竺黄、胆南星、金箔、牛黄を加へてこ
れを治す。その雑証などは,均しく産科治法に照して,なくては癒へない。ここに論ずる所の者
は,すなわち抱児癆は,産後の治法である,正産とほぼ異る,しかしながらまたその端を順に挙ア
げる,なお医の士ココロザシを拡げるを待マちてこれを充ミたす。

 ある治抱児癆は,必ず先ず吾が書中を熟読し,経血、胎血産血諸門に,それに各女科を,又
た参酌する,庶コひねがわくは済スクいにこなすものだ。
ある抱児癆は,すべて初め病む時に在って,すなわち調トトノい行メグらし治すべきである。治
は時にはまだ癒せなく,そうして用薬を錯サクせさせない,幾イクつか産後の治癒をすべきなるを庶
ひねがふ。もし治法を知らなければ,すなわち産後に必ず亡ボウする。医家と病家は,両リョウ方と
も宜ヨロしくこれを慎ツツシめよ。

 以上にて抱児癆治法を論ずる所は,すでに大略を具ソナえる。しかるに内に中アタり又たは外感
に力すれば,則ち血家感冒の法に照合すると言っても,加減して之を治す;あるいは内傷を加わ
えれば,則ち血証飲食の諸法に照合すると言っても,加減し之を治す;あるいは怒気を添ソえて病
を増すれば,則ちよろしく怒をふたたび条内に照合する,諸薬を用いる所にて之を治す;あるい
は房労を加へて病が激しくなれば,則ちよろしく房労をふたたび条内に照合する,諸薬を用いる
所にて之を治す。法の外に法有アり,したがって筆伝するのは難しい。

血证论卷六(下)终
血証論巻六(下)終り
訓読・翻訳 大曽根清朗