「相生の松」
高砂には、上記の白砂蒼松の佳景の他に、もう一つ天下に名高い松に関わる名跡があります。それが、高砂神社の「相生(あいおい)の松」です。一つの根元から雌雄二本の幹が映えている様子から、夫婦和合の象徴として親しまれてきました。高砂染の文様は、この相生の松を主要なモチーフとして創り出されました。
現在、高砂神社の境内には、五代目相生の松が青々と根を張っていますが、江戸時代高砂染のモチーフにされたであろう三代目の相生の松も同社内の霊松殿に祀られています(タイトルバックの写真)。江戸初期から数百年の長きを生き、奇しくも高砂染と同じく昭和初期に枯死してしまったものの、現在も往時の威容を垣間見ることができます。
高砂染全面に施された複雑な松枝の文様を眺めていると、霊松として崇められた当時の相生の松の不思議な力が表現されているようにも見えてきます。