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旅行 - 長井廉

旅行愛好家の長井廉(ながい・れん)です。

北欧・ノルウェーといえば、フィヨルドです。それがどんなものか実際にこの目で見てみたい、そう考えて現地に飛びました。行き先は世界最長、最深のソグネフィヨルド。フィヨルド全体からみれば「象のしっぽ」をなでた程度の小さな旅でしたが、それでも太古以来の壮大な大自然のだいご味をたっぷりと味わうことができました。

ノルウェー・ソグネフィヨルド旅行記(1996年)- 長井廉

ノルウェー西端の港町・ベルゲンから200キロ北のソグネフィヨルド支水路沿いのグドバンゲンに向かい、フィヨルド巡りのフェリーに乗り込みました。

接岸した船の正面から見るフィヨルドは薄い霧の中、鏡のような海面に、両側の岩峰群がシルエットで浮かびます。まるで水墨画の世界です。

ソグネフィヨルドは全長約200キロ、最深部1300メートル。内陸部に奥深く切り込んだ本水路と、枝分かれしたような支水路からなっています。船旅は、フィヨルドの中で特に景観が素晴らしいといわれる東側支水路のアウールランまでの30キロ、1時間半かかります。

「ボオーッ」。フェリー「スカーガストール」(494トン)の出帆の汽笛が周囲の山の岩肌にこだました。

間もなく、幅500メートルの水路を挟んで両側に柱状節理の岩山が見えてきました。海面からほぼ垂直にそそり立つ絶壁。その高さはおよそ800メートル。息をのむ絶景です。連なる尾根のすぐ奥にそびえるバッカ岳(1,397メートル)は、万年雪の帽子をかぶり神秘的な姿を見せます。

両側の岩山の中腹から噴き出した水が滝になり、弧を描いてエメラルド色の海面に落ちていきます。例えていえば、放水して船上の旅人を歓迎している趣。「どうです。すごいでしょう。ここはノルウェーの自慢のフィヨルドですよ」。フェリーのクレップ船長は誇らしげに胸を張りました。

岩山の間の、猫の額ほどの土地に、小さな集落が点在しています。とがった赤い屋根の教会や郵便局が見えました。住宅は赤、青、黄色と、とてもカラフル。丸い板状の鉄平石を並べた屋根もユニークです。放牧の羊がのんびりと草をはんでいます。まるで絵はがきのような光景が広がっていました。

出港後40分。グドバンゲンからの支水路と本水路の合流点付近で雨が降り出しました。ノルウェーはとにかく雨が多いです。1年の3分の2、240日前後が雨天で、年間降雨量は約1,500ミリといいます。水路が1キロほどに広くなり、両岸がかすみます。

雄大な自然の大パノラマをみせるフィヨルドは、100万年も前に氷河が谷を浸食、その後の地球の温暖化で氷が解け、海水が流れこんでできました。

本水路からアウールランに向かう支水路に右折すると、水路幅がまた狭くなってきました。1,000メートル級の山の中腹から海面までは低木がぎっしり生えています。

ノルウェー西岸には暖流のメキシコ湾流が流れており、フィヨルドの海面が氷結することはないといいます。奥まった塩分の薄い所ではサケの養殖が行われ、大きな網イケスがいくつも浮いていました。

甲板上は風が冷たいです。船客の多くは船内の展望室で温かいコーヒーを飲みながら「天然の芸術」を堪能していました。雨あがりの向こう岸にアウールラン村が見えてきました。

山の斜面にリンゴ畑が広がっています。船が速度を落としました。船を下りて村のレストランへ。フィヨルドを眺めながらワインをグーッと飲み干しました。その一杯が最高にうまかったです。


長井廉