いちご葉でなにができるのか。まずは、農家さんから大量のいちご葉を調達し、大学との共同研究で成分を検証しました。
その結果、果実とはまた違った美容成分が、豊富に含まれていることがわかりました。
◇協力していただいている農家さん
(1時間で完売してしまう棟田さんのいちご直売所)
大阪府内で唯一の村、千早赤阪村。緑豊かなこの土地で、棟田さんはいちご栽培に情熱を注いでいます。きっかけは、ご自身が異業種の会社員だった数年前、友人のいちご農家を手伝ったことでした。その後、若きいちご農家として独立を果たしました。
「たくさんの人に喜びと感動を与えてくれる。これがいちごの魅力なんです。」
そう笑顔でお話しされる棟田さんのいちごは、農薬をほとんど使用していません。高設栽培という方法によって、極力自然に近い形で、温度・湿度・水分量の徹底的な管理をしているそうです。そのため、いちごの果実は肉厚で甘味たっぷり、凝縮したうまみが特徴です。
1日のいちごの出荷量の3割は、道の駅と一件の提携洋菓子店のみです。残りの7割は農場隣接の直売所での販売となっており、なんと1時間で完売してしまう、まさに幻のいちごです。
近畿大学大学院との共同研究で、いちご葉には下記のような成分が豊富に含まれている事が明らかになりました。
①アグリモニイン
千鶴草(せんかくそう)、別名:竜牙草/キンミズヒキとも言われているバラ科の多 年草に「アグリモニイン」が含まれており、効果効能については、止血、抗菌、抗炎 症作用、抗菌作用、抗酸化作用、腸内の改善やコレステロール上昇の抑制、血圧上昇の抑制、肥満抑制、虫歯や口臭の予防、などが挙げられます。また、漢方では止血、健胃、強壮作用等があり倦怠感や精力減退にも応用されています。
②ケルセチン配糖体
ケルセチンという化合物は、特に知られているのが「タマネギ」に多く含まれており血液がサラサラになるということで健康食品によく配合されています。そのケルセチンに糖が結合しているのがケルセチン配糖体です。抗酸化作用が高いことで知られており、水溶性で水やアルコールに溶けやすく体内への吸収が高いことが明らかにされています。お茶や、健康・美容飲料として利用することが効果的であると言えます。
③キルシロース/アラビノース
クマイ笹や米ぬかに含まれているのがアラビノキシランという化合物です。その化合物を構成しているのが「キシロース」と「アラビノース」です。そのアラビノキシランの効果効能として言われているのが、がんの予防、免疫力を上げ、自然治癒力を高める、白血球の増量を促す、血糖値を下げる、B型、C型肝炎の改善などです。
①美白効果(チロシナーゼ阻害活性)
チロシナーゼ(酵素)は、シミ等ができる原因物質と言われています。チロシナーゼを阻害することができればシミ等の発生を抑制し、結果として美白効果の評価の指標になります。
いちご葉に含まれている“アグリモニイン”の阻害率は、美白成分として知られている化合物アルブチンと比較して高い評価です。
②抗酸化効果(SODの活性)
老化や生活習慣病等の様々な疾病をつくりだすのが酸化という現象です。そこで、酸化を抑制する物質(抗酸化物質)を含んだ食品や化粧品が推奨されています。
その評価をする方法としてSOD様作用試験があります。
表の見方ですが、IC50値(half maximal(50%) inhibitory concentration:半数阻害濃度)とは、どの濃度で阻害したい物質の50%の働きを阻害できるかということで、より低い値を示す化合物が阻害剤としての活性が高いということになります。
いちご葉に含まれる“アグリモニイン”の値は、抗酸化作用が高いといわれている緑茶に含まれている“カテキン”と比べて21倍の抗酸化力を有しています。
お茶などに加工して飲料することは生活習慣病などの対策としてとても有効だと思われます。
ヒアルロニターゼ(酵素)は、ヒアルロン酸を破壊して保湿力を低下させ、乾燥肌やアレルギーといった多くの肌トラブルの原因を引き起こします。したがって、ヒアルロニダーゼを阻害することで、肌の良い状態を保つことができます。
いちご葉に含まれている“アグリモニイン”は効果があるといわれている緑茶に含まれている化合物“カテキン”に比べても高い数値を示しています。
以上のような成分の特性から、身近なスキンケア商品を製作しました。
鎌田靖志(かまたやすし)
1955年、鹿児島県出身です。
ミズノスポーツ、サンマーク出版、住地ゴルフを経て環境・健康に関する事業を目的に起業しました。「未利用資源(農産物の未利用部位)の有効活用」を主体に研究と商品開発に従事しています。
これからの時代の商品は、機能性の追求だけではなく、環境に配慮されているかどうかが問われるものと予想されます。これは日本だけではなく、地球規模の課題であると思います。
私たちのまわりでは、あまりにも多くのものが廃棄されています。これからの商品やサービスを供給する側の責任として、「ものとものの大切さを売る」という背景がなければならないと思っています。
今回は、本来全量が廃棄されてしまういちごの葉っぱを活用し、「エコプロダクト」としての商品を開発しました。これは、エシカル(倫理的消費:ものが作られる背景を知ってから買おうとするトレンド)という最近の動向にもマッチしていると考えます。
私たちにとってはここがゴールではありません。これからも天然資源である「いちご葉」を活用してエコプロダクトを制作していくことが、これからの時代に対してとても有意義な活動であると信じています。