上記でご紹介したセラリーニ教授が発表した論文は、後に科学界や医学界から大きな批判を浴びることになります。
このような結果に陥ったのは、以下の3つの理由があったからです。
■研究報告が不完全である
セラリーニ教授が実験で使用したラットは、腫瘍ができやすい血統でした。
つまり、ラウンドアップを使用していなかったとしても、ラットに発がん性個体が増えた可能性は十分に考えられたんです。また、実験に用いた個体数が少ないため、対照が不十分である点も大きな批判を受けました。
このような不完全な状態で行われた研究によるセラリーニ教授の論文を掲載した雑誌は、1年後の2013年に掲載が撤回される形となっています。
■方法論と再現性に問題がある
論文の正確性を証明する上で極めて重要となるのが、方法論と再現性です。
・ラウンドアップの発がん性を適切な方法によって検証されたか
・ラウンドアップの安全性を認めた毒性学的手法と全く同じ方法を再現して検証されたか
この2つを重要視する必要がありますが、ラウンドアップと発がん性を関連付けた論文の多くは、方法論と再現性に大きな問題があることが判明しています。
セラリーニ教授の論文に関しても、方法論と再現性に大きな問題があるといえるでしょう。
■IARCの分類を誤って解釈している可能性がある
ラウンドアップに採用されているグリホサートは、IARC(国際がん研究機関)において、グループ2Aに分類されています。
2Aは、「おそらく発がん性がある」のグループになることから、これを知った多くの人は、次のように考えてしまう傾向があるんです。
・国際がん研究機関において発がん性が高いと証明された
・グリホサートは癌になりやすいと分類された
しかし、グリホサートが2Aに分類された経緯は、発がん性を言及する論文の数が多かったからです。
論文の数が考慮され、「おそらく発がん性がある」といったグループ2Aに、2015年の段階で分類しました。IARCの分類は非常にわかりづらいため、誤解する人が多いのも仕方がありません。
しかし、グループに分類されている中身を確認すると、ラウンドアップと同じ2Aには、「熱い飲み物」や「紫外線」が存在します。
これを見ていただくとわかりますが、熱い飲み物を飲んだり、紫外線を浴びたりしただけで、誰もが癌になるわけではありませんよね。
ラウンドアップに関しても、正しい用法や容量を守ることにより、安全であると考えるのが正しいでしょう。