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連帯労働者組合・杉並
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日本政府による自治体22万非常勤の一方的労働基本権はく奪を許すな!

非正規公務員の 労働基本権 確 立 を 求 め て 

連帯・杉並
ILO提訴 アーカイブス

私たちは、2017年よりILOの取りくみを継続中です。
このたび資料編を充実させた新しいホームページを起ちあげました。すべての資料がPDFで取り出せます。ご活用ください。
https://rentai-suginami.wixsite.com/0001
2020年8月、9月 専門家委員会へ
追加の情報提供を行いました

2020年8月25日の情報提供

私たちは、さらなる「見解」を専門家委員会に求め、情報提供します。

  2020年4月、改訂地方公務員法が施行されました。私たちはILOからのたびたびの勧告を無視する日本政府によって、労働基本権を奪われました。専門家委員会からの「見解」は無視され、「期限を区切った行動計画」を検討する素振りすらありません。

  想起されるべきは、国連の国際人権(自由権)規約委員会の1998年報告書中「総括的所見32項」で、日本政府に対して「委員会は、裁判官、検察官や行政官に規約に定められた人権を研修させる法的条項がまったく存在しないことに懸念を有する。委員会は、このような研修が実施されることを強く勧告する。裁判官に関する限りでは、規約の規定に精通するために、司法界において研究集会及びセミナーが開かれるべきである。委員会の一般的意見及び、選択議定書に基づく個人通報に関して委員会によって表明された見解に関する情報は、裁判官に提供されるべきである。」と指摘していることです。私たちは特に「行政官」に注目します。日本政府の最大の問題点は、政府関係者がILO条約についての充分な理解がなく、「研修」が欠けていることにある、と考えています。

  私たちは、労働基本権確保を日本政府に実施させるためにも、政府関係者にILO条約の「研修」を強く促すことも含めた、さらなる「見解」を求めます。

  以下、各労働組合からの現状報告をします。

 
連帯労働者組合・杉並

2020年4月改定地方公務員法施行後の、杉並区での状況を報告します。

1 「1年契約(任用)」を理由に毎年雇用を打ち切り、「公募」によりふるいにかける制度を導入

 昨年に報告した表記制度が組合の反対を押し切り導入された。毎年1ヶ月の試用期間についても同時に導入された。

 「毎年度1ヶ月の試用期間」については、すでにこの5月に実施された。当組合には試用期間での解雇の情報は入ってないが、非常勤職員当事者はもとより評定を行う職員からも疑問の声があがっている。

2 団結権・団交権について

 当組合は杉並区に対し、改定地公法施行後も、現業組合員が存在するところから、混合組合であることをふまえた対応を杉並区に求めてきた。また最低限、地公労法に則した交渉対応が行われるべきだと主張してきた。

 杉並区は幸いにして、交渉を忌避したり、これまで積み上げてきた当組合との労働協約を破棄するなどはしていない。コロナ問題でブランクはあったものの、これまでどおりの交渉形態が確保されている。

 ただし杉並区は混合組合理論の理解が乏しいことを理由に、明快な回答は現時点でも表明していない。

3 労働条件の中核的事項が交渉困難である点について

 ① 非正規公務員にとって、最大の恐怖は「雇止め」である。

 当組合は労働協約で「雇止めの事前協議」を獲得している。現業組合員への地公労法適用により、幸いにもこの労働協約は維持されている。しかし、現業組合員のいない他の労組は職員団体への移行を余儀なくされ、労働協約はその効力を失うことが懸念される。スト権と労働委員会への申立権を奪われることもあり、「雇止め」に対抗する手段が大きく制限される。その被害は甚大である。

 ② 現在、一時金の交渉が特別区職員労働組合連合会(特区連)と23区区長会で行われているが、コロナ禍により、民間企業の一時金が下落していることから、一時金のカットが予想される。

 今回、一時金のカットがあった場合、非常勤に与える影響は甚大である。こうした措置がとられても、労働基本権が奪われた独立系労組・職員団体は制度的に反撃の余地に乏しい。

③ 前回の2019年報告で述べたように、改定地公法は、これまで私たちができていたことをできなくさせるものでしかなかった。その懸念が具体化してきているように感じる。

4 専門家委員会の皆さんから、前回に続き、労働基本権の確保を直ちに行うことを日本政府に対して強く働きかけていただけるよう希望する。

                                                       以上

 

ユニオンらくだ・非常勤嘱託職員部会

2017年、地方公務員法は改定され、2020年4月から施行されました。

私たちは、非常勤嘱託職員から、身分保障のないまま、労働基本権がはく奪されることを危惧し、ILOに申立てを行いました。そして、貴専門家委員会は、「自治体の労働組合が、長年保持してきた労働組合の権利を奪われないために、自律的労使関係制度の検討」するよう日本政府に対して要請する、という意見を出していただきました。

これに対して、日本政府は、「2019年9月10日のILO第87号条約(結社の自由及び団結権の保護に関する条約) に関する日本政府報告への追加情報」において、次のように強弁しています。

「特別職から一般職の非常勤職員へ移行することで、常勤の職員と同様に地方公務員法上の身分保障や必要な給付を受けることが可能となることから、今回の改正はむしろ臨時・非常勤職員の処遇改善に資する改正であると認識している」

しかし、身分保障や処遇改善に決して繋がっていないことは、全国の地方公共団体の会計年度任用職員が、2020年4月以降に置かれた実態を見てもらえればハッキリします。

 また、日本政府は、次のように言います。

「改正法で特別職の任用の適正の確保が図られたことにより、本来の制度趣旨に鑑みれば特別職として任用されるべきではなかった者については、一般職へ移行することとなる。これに伴い、労働基本権の態様が変化することとなるが、あくまで本来制度が想定していた任用の適正が確保されたことによるものである」

しかし、これまで地方自治体が脱法行為(本来想定していなかった任用)行い、劣悪な労働条件を強いてきたことについて、まず反省するべきところですが、それがありません。そしてなによりも、労働基本権を駆使して改善を勝ち取ってきた労働組合からすれば、「任用の適正の確保」という美名の下、以後の改善のための武器(労働基本権)を奪われることになります。

 

2020年4月改定地公法施行後、京都市では次のことが懸念されます。

 京都市では、常勤・一般職員(正規職員)の改善要求は、今年度の労働条件を巡って行われています。一方、会計年度任用職員(非正規職員)の改善要求は、そうはなっておらず、次年度の労働条件の改善要求を行うことになります。

 会計年度任用職員は、毎年ごとに「新たな任用」であり、次年度の雇用は保障されていません。ゆえに、次年度の雇用の保障もないまま、次年度の改善要求を行う、ことになります。

ここに大きな問題点があります。次年度の雇用保障がない、という心的状況と恫喝の下では、不充分な改善要求とならざるをえませんし、使用者による職員への支配の強化が危惧されますし、組合・組合員に対する不利益取扱い・支配介入につながりかねないことを危惧します。

 これまでは、来年度の雇用の更新(雇用継続)について、要求書を提出する際の団体交渉時に、「労働基本権を有する労働組合」として確認していました。その確認ののちに来年度の改善要求をし、回答を得てきました。

 しかし、会計年度任用職員制度の下では、そうならないことから、継続雇用の実現と、それを勝ち取るための自律的な労使関係と労働基本権がますます必要となります。

 

このようなことから、貴専門家委員会から、再度、会計年度任用職員の労働基本権の確保

について、日本政府に対して強く働きかけていたくようお願いします。

                                                         以上


連帯労働者組合・板橋区パート 

2020年度4月、新地公法施行により板橋区で働く特別職非常勤職員の大半は一般職「会計年度任用職員」に移行させられました。

地域の合同労組として民間企業組合員と共に、区で働く「非正規」労働者の雇用の安定と、「正規」

職員との労働条件格差是正を求め続け、一定の成果を得てきました、しかし、今回の移行によって大きく変わらざるをえなくなりました。板橋区の例を報告致します。

 

 会計年度任用職員は1年の任用が強調され、再度の任用の可否判断の人事評価制度や毎年度1か月の「条件付採用期間」があります。さらに板橋区は、戒告レベルでも懲戒処分を受けた場合は「再度任用不適格」にするとしています。 

正規職員の身分保障とは全く異なります。昨年度までの「原則更新可能」より後退した不安定な雇用関係になり、労働者は「働き続けられるのか?上司の評価はどうか?」を気にしながら働く状況に置かれました。

日本政府の一般職化が正規化であるような説明は全くのまやかしです。

 

 今回の地公法改定は、このような身分保障がない労働者から、団結して対抗する手段さえ奪うものです。

昨年度、当初板橋区当局は「移行内容については協議拒否」をしていましたが、さすがに労働組合に拒否し続けることはできなくなり撤回し協議に応じました。その結果、多くの継続課題は残りましたが、「再度任用は5回限り」という雇用年限制度導入提案を撤回させることができました。育児介護休業の国並みへの切り下げ提案も、労働協約を根拠に現職については現状を確保できました。これらは労働組合として団交打ち切りを許さず、「非正規労働者」の立場、思いを基本に、官民貫いて全力で取り組むことができた結果です。

 

 しかし、このような「労働組合」としての取り組みが、2020年度以降出来なくなりました。現業職員がいない板橋区パートは、争議権はおろか、労働協約権も奪われ、労働委員会提訴もできなくなりました。人事委員会が代償措置と言われますが、申立人は職員個人で、組合に申立権はありません。特別区人事委員会の委員には労働者を代表する立場の人はいません。年度末の雇止めで措置要求できるかどうかも不確かです。審査も書面のみで、労働委員会との違いは大きく救済機関とは言えません。

 

公務職場の一般職全員に労働基本権がないことは問題ですが、身分保障がなく、権力的業務を担当しない非正規職員から、労働基本権を奪う理由はなく大問題です。しかし、「国の決まりの通り」だから、労組法上の労働組合との交渉はできない、とする区の固い姿勢を崩すことはできませんでした。現在板橋区パートは交渉を維持するために、職員団体登録の準備をしています。「団結の自由」さえ奪われたのです。

さらに、審査機関である特別区人事委員会は、規則にも手引きにも記載されていない、「全組合員名簿の提出を希望する」と組合介入発言さえしています。

 

 4月に実施された全員への「条件付き採用」評価などからも、会計年度任用職員の雇用形態や労働条件などには多数の矛盾・課題が残されていることが明らかです。労働者自身が、その改善を獲得していくためには、労働基本権は絶対必要です。貴委員会が、再度日本政府に働きかけてくださるように訴えます。

                                                       以上

2020年9月25日の追加情報提供
8月31日に行った三省庁要請行動をふまえたもの

 追加の情報提供です。

 私たちは8月31日に外務省、厚生労働省、内閣人事局、総務省との質疑応答の場を持ちました。各省庁からの出席者は、国際人権規約やILOを担当している職員です。そのやり取りの中で、重要な問題が明らかになりましたので、報告します。

 

1 ILOについての研修がなされていないこと

 ① 各省庁ともに、ILO研修がほとんど行われていないことが明らかになりました。

特に、公務員の問題を担当する内閣人事局と総務省では全く行われていません。

 ② これでは、ILOからの勧告の意義を十分に理解することができません。国内法制を国際労働基準に合わせようとする意欲を生じさせることは困難です。

 ③ したがって、私たちはCEACR(組合註:専門家委員会)が日本政府に対して、ILOの研修を行うよう勧告することを求めます。各省庁の担当者が約2年で異動になってしまう現状の中では、喫緊の課題です。

 

2 裁判所にILOからの勧告を知らせていないこと

 ① ILOからの勧告などを、各省庁が裁判所に伝えていないことも明らかになりました。

 ② 日本国憲法の98条2項には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に順守することを必要とする」とあります。ILOからの勧告を知らずして裁判所が「誠実に順守する」ことは不可能です。ILOからの勧告は、裁判所の判決に反映されなければなりません。

 ③ したがって、私たちはCEACRが日本政府に対して、ILOからの勧告を裁判所に知らせるよう、勧告することを求めます。

3 労働基本権付与にあたって、「交渉コストが増加し、混乱を招くおそれがある」、「労使交渉の長期化により業務執行に影響を及ぼすおそれがある」などの課題を挙げて、「期限を区切った行動計画」を策定しようとしないことこれらの点についての私たちの質問に対する政府の回答要旨は以下のとおりです。

 ① 「交渉コストが増加し、混乱を招くおそれがある」についての回答

  ・(労働基本権制約の理由にはならない、という)ご意見があることは承知している
  ・国民の理解が得られない、ということで「慎重に検討」としている

・コストの比較資料はない。交渉コストの増加という点は、行政機関などのヒアリングで出ていた話である

・合意に達するまで団体交渉を重ね、労働協約を締結し、それに基づいて給与を支給しなければならなくなることが「コスト増」の原因となる

※この点に関する「現行制度でも合意を得るために交渉を重ねるのではないか?」という私たちの質問に、明確な回答はなかった。

 ② 「労使交渉の長期化により業務執行に影響を及ぼすおそれがある」についての回答

  ・交渉が妥結しないことにより、「混乱」や「業務執行に影響」が生ずる

※この点に関する「現行制度でも交渉が妥結しないことはあるのではないか?」という私たちの質問に、明確な回答はなかった

 

                            以上

2020年2月、ILO専門家委員会の画期的見解が出ました!

日本政府の非道を看破した専門家委員会

2020「ILO専門家委員会報告書」を受けて

私 た ち の 考 え

  2017年5月の申立から足掛け3年、私たちの取り組みがようやく結実しました。協力いただいた多くの皆さんと共に、この成果を今後に生かしていきたいと思います。

 

◆ ふたつの大きな成果!

1 「非正規公務員の労働基本権問題」が初めて取り上げられたこと!

   専門家委員会「見解」の要旨は、①非正規自治体公務員から労働基本権を奪わないよう、②「自律的労使関係システム」をすみやかに検討し、③取られた措置の詳細を報告するよう求める、というものです。ILOが初めて、真正面から非正規公務員の労働基本権問題を取り上げた点で画期的なものです。「任用の適正化と処遇改善」などと言い逃れようとした政府のダメージは大きいはずです。

 

2 「期限を区切った行動計画の緻密化と行われた進展の報告」を求めたこと!

   2018年のILO総会の「基準適用委員会」で、日本政府は「(労働基本権保障に向けた)期限を区切った行動計画」の策定を促されました。11回にも及ぶ勧告を無視し続ける日本政府に対して、ILOが業を煮やした(?)カタチです。しかしその後も2年間にわたり、政府は計画策定をサボり続けてきました。今回さらに「強く」ILOから、「非正規公務員の労働基本権問題」を含めた「行動計画」提出を促され、政府はさらに追い込まれています。

 

◆ この勧告を活かした取り組みを!

  私たちにとって充分な内容の勧告が出された、と評価しています。「公務員全体の労働基本権回復」の中に埋没することなく、非正規公務員に焦点を当てた具体的な勧告が出されたことを、皆さんと共に喜びたいと思います。

憲法98条2項に「条約及び確立された国際法規の誠実遵守義務」が定められているにもかかわらず、日本政府は、「勧告に法的拘束力はない」として、居直り続けてきました。しかし、11次の勧告に加えて「行動計画の策定」まで求められ、政府が国際的に追い込まれていることは確実です。今後の課題は、国内の運動の力を着実に積み上げて行くことにあります。

  新型コロナウィルス感染問題もあり活動が思うように進まず、私たちの具体的な取り組みが遅れています。ILO総会も来年に延期となりました。

まずはこの成果を多くの仲間と共有し、非正規公務員の労働基本権確立に向けた取り組みを着実に進めて行きたいと考えています。

 

★ 今後とも、ご協力~ご注目をよろしくお願いいたします。

専門家委員会の見解 —抜すい

<日本>
「結社の自由及び団結権保護」条約、1948(No. 87)
(批准:1965)

委員会は、政府の報告書とともに送信された日本労働組合総連合会(JTUC-RENGO)による見解と、政府のそれに対する回答に留意する。 JTUC-RENGOは、ILO100周年の機会に、2019年6月26日に国会により採択された「日本のILOへの貢献の増加に関する決議」の手始めとして、政府がこの条約実現の問題に取り組むことを当初は期待していたことを示した。決議において、国会は、「ILOの基本原理、国際労働基準、三者構成主義やディーセント・ワークの目標を達成するために果たすべき役割がますます大きくなっていることを認め、国はILOで活動するべき役割の新たな重要性を認識している。将来的にはこれらの原理の追求と実現に、世界の他の加盟国とともに最大限に貢献し続けることを決意する」と記している。しかし、JTUC-RENGOは、政府の報告書が現在の法制度内の問題を解決する意志の明らかな欠如を残念に思っている。
委員会はまた、連帯・杉並、あぱけん神戸(アルバイト・派遣・パート非正規等労働組合)、連帯労働者組合・板橋区パート、ユニオンらくだ(京都市自治体関連労働者自立組合)の地方公務員とその組合を組織する権利に関連して、2019年7月19日に受領した見解にも留意する。委員会は、2019年8月30日に受け取った国際使用者連盟(IOE)および日本経済団体連合会(日本経団連)の見解と、それに対する政府の回答に留意する。
(中略)
さらに、委員会は、連帯労働者組合とあぱけん神戸が2020年4月から施行する地方公務員法改正が彼らの組織する権利に及ぼす衝撃について、次のように述べていることに留意する。
(i)非正規の地方公務員とその組合は、労働基本権と不当労働行為が疑われた場合に労働委員会に訴える能力を規定する一般労働法の適用対象ではない。(ii)恒常的業務にパートタイム職員の使用を制限することを目的とした法改正は、労働基本権を剥奪された労働者を増加させる効果がある。 (iii)これらの状況は、すべての公務員に対する労働基本権の緊急の回復をさらに要求する。
委員会は、地位の変更がパートタイム職員の待遇を改善するのに役立つと主張する政府の回答に留意する一方で、これらの法改正は、もはや条約に基づいた権利を完全に保障されない公共部門労働者のカテゴリーを広げる結果になるとみている。

したがって、委員会は、自治体の労働組合が、これらの法改正の導入を通じて彼らが長年保持してきた労働組合の権利を奪われないようにするために、自律的労使関係システムのすみやかなる検討を政府に要請する。この点に関して取られたまたは想定される措置に関する詳細情報を提供するよう政府に要請する。
自律的労使関係システムに関する必要な措置を講じる上で有意義な進展がないことを含む総会委員会の結論を想起し、委員会は政府に対し、関係する社会的パートナーと協議して、上記の勧告を実施するための「期限を区切った行動計画」を緻密化し、とるべきあるいは想定されるあらゆる方策について示すこと、及びこの点で行われた進展を報告すること、を強く促す。

※太字部分が「専門家委員会の見解」です

翻訳:4労組、監修:Charles Weathers

※英文が欲しい方は下記アドレスまでメールをください。
 PDF版の専門家委員会見解の報告パンフを送ります。
 メールアドレス:
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これまでの歩み 結社の自由委員会申立て~不受理~専門家委員会へ

【結社の自由委員会申立て不受理を受けて
 2019年7月ILO専門家委員会へ申立て】

<「専門家委員会」とは?>
 ILO条約を批准した国は、3年ごとにその条約の適用状況をILOに報告しなければなりません。この政府報告を受けて審査し「必要な勧告」を行うところが「専門家委員会」です。正確には「ILO条約勧告適用専門家委員会(CEACR)」と言います。委員会は20名の法律の専門家で構成され、毎年11月に開催されます。日本からの委員は吾郷立命館大学教授です。
 日本政府の87・98号条約についての報告は2017年に行われましたが、その審査が2019年も続いています。
 結社の自由委員会からの11回にも及ぶ「公務員に労働基本権を認めるべき」とする勧告にもかかわらず、未だ認めていない政府に業を煮やしてか(?)、2018年の総会委員会で「2018年秋の専門家委員会までに『期限を区切った行動計画』を策定するように」との勧告が出されました。しかし、政府がこの勧告を無視しているため、「専門家委員会」での審査が継続されることになっているのです。
 労働団体であれば、この審査に向けて「情報提供」することができます。委員会は政府の報告と労働団体からの「情報提供」とを受けて審査をします。そこで、私たち4団体(連帯・杉並、ユニオンらくだ、連帯・板橋区パート、あぱけん神戸)は「専門家委員会」への「情報提供」を行いました。

<申立の内容は?>
 申立の趣旨は、「地方公務員法改定によって、非正規地方公務員の労働基本権が奪われる。この法改定は日本政府の批准しているILO87号、98号条約に違反する」というものです。
 具体的には以下の勧告を求めています。
1 非正規公務員の労働基本権を確保することは喫緊の課題であり、直ちに「非正規公務員に労働基本権を確保すべき」旨の勧告をしていただきたい。

2 消防職員・刑事施設職員の団結権問題と同様に、
 非正規地方公務員の労働基本権問題を優先して取
 り上げていただきたい。そして「非正規地方公務員
 には、最低限、地方公営企業労働関係法を適用して、
 団交権と労働委員会活用とを確保すべき」旨の勧告
 をしていただきたい。
◆ その理由として、以下の項目について述べました。
1 地公法改定は非正規公務員の正規公務員化ではない
 ① 日本政府の説明はミスリード
2 労働基本権の剥奪に合理的理由はなく、ILO
87号・98号条約に明白に違反する
 ① 労働基本権剥奪の根拠とされる措置がないこと
 ② 背景には政府の合同労組忌避があること
◆ その後の特徴的な動きとして以下を挙げました。
1 総務省の動き
 ① 詳細なマニュアルの発出と自治体への説明会
 ② 「3年公募制」を全国的に導入することを促す
 ③ 「3年公募制」は労働組合つぶしを可能にする
2 改定法施行をめぐる自治体での交渉の特徴
 ① 労働組合の団交権を否定
 ② 「3~5年公募制」を強行導入
 ③ 労働組合であっても団交拒否、職員団体ではなおさらである
※1965年ドライヤー報告書にもある「統治権者としての政府」と「使用者としての政府」の立場を区分して考えることが、決定的に欠けていること、を指摘しました。
◆ 最後に申立4団体のそれぞれから、法改定と交渉の中で明らかになった問題点について、具体的な説明と主張を述べました。
★4団体で作成したパンフレットがあります。必要な方はご連絡ください。
 メールアドレス:
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<今回の申立に至る経過は?>
1 結社の自由委員会から「不受理通知」が・・・・・
 私たちは、2017年5月24日にILO結社の自由委員会に申し立てて以降、受理に向けて力を尽くしてきました。326団体の署名をILOに届け、来日したカレン事務局長に面会し、ILO関係者の方に多大な協力をいただきジュネーブを訪問して労働者側理事などの関係者と事務局に要請してきました。
 しかし、全く残念なことに2019年年明け早々にILOから「不受理通知」が送られてきてしまいました。理由は「全国的地位を有する組織からのものでない」とのことです。

不受理通知書から抜粋(日本語訳文)
(前略)
しかしながら委員会は、それが全国的地位を有する組織から発したものではないという理由で皆さんの苦情を受理しないことを決定しました。委員会はさらに、皆さんが提起した問題は、第2177号(※連合申立て)および第2183号(※全労連申立て)の枠組みの範囲内で日本国政府への勧告に含まれており、したがって地方公務員法の改正が同様に皆さんの構成員の組織し団体交渉する権利を否定する限りにおいて、これらの勧告は皆さんの構成員に関しても同様に有効であるということも考慮しました。
(後略)
 
 私たちは全く納得できず、ILOの大原則や最新の取扱を踏まえて「なぜ受理されないのか?」質問書を届けましたが、返事はありませんでした。
 
2 ILO関係者との相談~申立4団体会議
 そこで、次善の策としてあった「専門家委員会」への申立ての本格的な準備に入りました。様々な関係者の方に会ってアドバイスをいただき、4団体の会議を持ち、申立て文書を共同作成し、翻訳をお願いして、ようやく2019年7月19日、ILOに送ることができました。

<今後に向けて>
 普通で行けば、次回の87・98号条約の専門委員会審査は2020年となってしいます。しかし、日本政府の不手際もあり、2019年秋の専門家委員会で審査がなされます。そこに非正規公務員の労働基本権問題を提起できることは、思わぬ幸いと言えます。
 しかし、専門家委員会報告書が公開されるのは、2020年3月の理事会を経て6月総会で確認後となります。つまり勧告内容を私たちが把握できるのは、改定地公法の施行後(2020年4月)となってしまいます。何とも歯がゆいことです。
 私たちは専門家委員会に対して、非正規公務員への労働基本権の勧告を求め続けます。

2017年 結社の自由委員会への申立て

結社の自由委員会 申立書 目次

1 提訴にあたって
2 申立て組合の紹介(提訴の仲間たち)
  連帯労働者組合・杉並
  京都 ユニオンらくだ
  連帯・板橋区パート
  あぱけん神戸
3 2017年5月24日 ILOへ提訴
  ――申立ての趣旨
4 申立書 (日本語全文)

1 提訴にあたって

全国の自治体では常勤職員(正規公務員)の数は年々減少し現在273万人、一方、臨時・非常勤職員(非正規公務員)は年々増え続け64万人にのぼる仲間が地域を支えています(2016年4月時点の総務省数値)。
総務省は増え続ける自治体非正規公務員の取り扱いをめぐって、2度にわたる全国調査と通知の発出(2009年、2014年)を行ってきました。

これらを踏まえ、総務省の研究会「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」は2016年末に報告書をまとめ、地公法・地自法を改定する法案の上程へと至った経過は皆さんもご承知の通りでしょう。
5月11日、改定2法案は衆議院本会議で可決、成立しました。私たち連帯・杉並はこの総務省研究会のさなかから法改定の動きを警戒し、申入れを行ってきました。

改定された法律の目玉は一般職非常勤職員と位置づけられる「会計年度任用職員」なる1年任期の職を創設し、ボーナスなどを支給することができる、とした点です。

法改定でボーナスが支給されると約束されたわけではありません。「支給できるとされる根拠規定」が明白になっただけで、支給のための財政措置はなく、個別自治体の力量や判断に委ねられます。
この新たに創設される「会計年度任用職員(一般職非常勤職員)」への移行は、自治体64万の臨時職員、非常勤職員のうち、三分の一を占める特別職非常勤職員と位置づけられた22万人もの仲間から、何の代償措置もなく一方的に労働基本権をはく奪することを意味します。

私たちは、この政令201号以来の暴挙にILO提訴で対抗することにしました。
そもそも雇用不安定で劣位の賃金・労働条件に置かれ続けている、すべての非正規公務員に労働基本権を保障すべきことをILOに訴えていきます。

特別職非常勤でつくる労働組合の仲間の皆さん!特別職非常勤が加入する合同労組やユニオンの仲間の皆さん!
ILOの闘いをともに!

 2017年6月 連帯労働者組合・杉並

2 申立て組合の紹介

 連帯労働者組合・杉並

私たち連帯労働者組合・杉並は、地域に基礎を置く合同労組である連帯労働者組合の杉並地域支部として1989年に発足しました。杉並区で働く地方公務員と地域の民間労働者とで構成する混合労働組合です。組合結成の主要な目的は、非常勤職員の雇用契約を1年とし、更新限度を5回までとする杉並区の「雇用年限制度=6年で雇用を打ち切る制度」を撤廃させ、継続して働く道を確保することにありました。

結成と同時に杉並区に団交を申し入れましたが、杉並区は、「杉並区の職員が主体となっていない労働組合の団交には応じられない」と、職員団体の論理をもって団交を拒否してきました。私たちは共闘関係にある仲間達に支えられて抗議行動やストライキを重ね、団交に応じるように杉並区に求め続け、東京都労働委員会に不当労働行為申し立てを行い、1997年にようやく団交に応じさせることができました。しかし、この8年の間に、組合結成当初の6名の非常勤組合員は「6年の雇用年限」により、全員職場を追われてしまっていました。新たに加入してくれた非常勤組合員も、団交は行われたものの、98年に雇用年限により職場から排除され、再び団交を拒否されました。

その後、新たな非常勤職員の組合加入を受けて団交を積み重ね、労使関係を安定させることができたのは2008年でした。実に組合結成から20年を要したのです。それも労働基本権が保障され、労働法や労働委員会を活用した取組があってこそ、です。労働基本権がなければ私たちの組合はその存続さえ難しかったといわねばなりません。

2 申立て組合の紹介

 提訴の仲間たち
 京都 ユニオンらくだ

私たち「ユニオンらくだ」は、京都市の一般職員のみならず、特別職非常勤嘱託職員や一般職臨時的任用職員、公務職場で働く民間労働者のための自立した組合を目指して、1989年に結成されました。
結成当初から、一般職員との均等待遇を勝ち取るべく闘っていた特別職非常勤嘱託職員が参加していましたが、結成後数年を経て、様々な職種、様々な職場の非常勤嘱託職員が加入したことを受けて、1994年に、労働組合法上の非常勤嘱託職員部会をユニオンらくだ内に立上げ、京都市当局に団体交渉を申入れました。
しかし、京都市当局が、不誠実団交に終始したので、ストライキや京都府労働委員会への救済申立てなどを行いました。労働委員会では、京都市側に誠実団交を義務付ける和解を勝ち取り、正常な労使関係を確立させたのち、労働条件の改善を漸進的に勝ち取ってきました。

京都市の非常勤嘱託職員の労働条件の大きな改善は、京都市側が、事後誠実な対応をしてきたということもありますが、なによりも、ユニオンらくだ・非常勤嘱託職員部会が、労働組合法上の労働組合として、労働基本権を生かして、20年以上闘って来たからだと考えています。労働基本権がなければ、いまだに劣悪な労働条件が続いていたことでしょう。

今回の、政府の地方公務員法の改定案は、これまで特別職非常勤嘱託職員が保持していた労働基本権を奪うものであり、公務員としての身分保障もしないという、無権利状態の労働者を作り出すものです。この法案が成立してしまうと、ユニオンらくだ・非常勤嘱託職員部会も解散に追い込まれてしまいます。権利を主張するという当たり前のことさえもできなくなり、これから均等待遇を目指して頑張ろうとしていたところだったので、許すことは出来ません。  

この日本に無権利状態の労働者を生み出してはなりません。21世紀に身分制度や奴隷制度を復活させてはなりません。

2 申立て組合の紹介

提訴の仲間たち
 連帯・板橋区パート

連帯労働者組合は、公務職場職員でも民間労働者でも解雇などで争議中の労働者でも、誰でも1人で入れる地域の合同労組です。「板橋区パート」は1994年3月区立児童館で働いていた「幼児教室指導員」が加入して発足した職場組織です。

一方的に通告された雇用日数削減の説明を区に求めたところ、「有償ボランティアであるから説明不要」と門前払いされたことがきっかけでした。当該は「委嘱される」という1年期間の承諾書を毎年交わしていましたが、既に15年継続勤務していました。それにもかかわらず、区は雇用関係を否定し話し合いさえしようとしなかったのです。1人の非正規労働者への行政の対応はこのようなものでした。
契約書類提出期限ギリギリの3月末、当該は組合加入を通告、区は日数削減を撤回し交渉開始を約束しました。5月の交渉で区と「労基法・労組法上の労働者である。特別職非常勤職員にしたい。有給休暇付与、労災保障、健康診断実施。」などの確認書を交わし、9月に「非常勤」発令がありました。

2005年には雇用が不安定な学童クラブ「臨時職員」が組合に加入し、経験者優先で非常勤職員に切り替えることができました。2010年以降の学童クラブ廃止や児童館数削減などの動きに抗して、時限ストも構えて取組み、学童・児童館非常勤更新希望者全員の雇用保障を獲得しています。 
時間内組合活動に関する覚書は1995年3月に交わし、現在まで継続されています。各種休暇・休業、業務上の名称、時間外勤務、異動基準、経験給導入など多岐に亘る課題を交渉し、改善を獲得してきました。交渉での確認点は協定書を交わし、継続課題も付記することで引き続き交渉テーマにできています。

当初説明さえ拒否された児童館の非正規労働者が、合同労組としての取り組みで、労働条件格差を詰め、安心して働くことができる状況にしてきました。継続的に働けていることで経験を積み職場でもしっかりと役割を果たすことができています。弱い立場におかれ声を出しにくい労働者が、自らの雇用や労働条件改善を求めるためには、労働基本権が不可欠です。

今回の改定がそのまま実施されれば、連帯労働者組合・板橋区パートは解散しなくてはならなくなります。合同労組として取り組む権利が奪われます。地方自治体で働く非正規労働者から労働基本権を剥奪することは許されません。

2 申立て組合の紹介

提訴の仲間たち
あぱけん神戸

私たちの組合は、2004年に非正規労働者を中心に結成されました。官・民を問わず誰でも加入できます。私たちの経験した自治体での事例を紹介します。

【20年以上長期勤続してきた図書館臨時職員を一斉に大量解雇した加古川市での問題】
2005年当時、兵庫県加古川市では図書館の運営を市の外郭団体である「加古川市総合文化振興公社」に委託していました。20年を超えて委託してきた図書館を、突然市の直営に戻すとの動きが生じたため、長期に継続勤務してきた図書館司書の人達が、雇用の継続と安定を求めて私たちの組合に加入しました。私たちは直ちに団体交渉で雇用の継続と安定を求めました。しかし市は、1年限りの「臨時職員」として雇用し、2007年に29人全員を雇い止め解雇したのです。そのあとには退職した正規職員を「再雇用嘱託職員(特別職)」として配置しました。つまり、退職金と共済年金の保障された市の退職者と、29人の長期臨時職員の「首をすげかえ」たのです。

始めの交渉は、当事者がまだ公社の職員であったことにより労働組合の団交として行えました。しかし市の一般職臨時職員とされてからは、市当局が「登録する職員団体でなければ交渉に応じる義務はない」と主張してきました。このため「登録職員団体」を結成し交渉を行いましたが、不誠実な対応に終始しました。職員団体は不誠実な交渉を労働委員会に訴えることができません。職員個人として、地公法上の公平委員会に「勤務条件の(改善)措置要求」ができるだけです。
そこで当事者組合員は個人として「図書館業務は長期継続するのに、任期1年限りの臨時職員として雇用することはおかしい」と公平委員会に申し立てました。しかし公平委員会は、雇い止め解雇後の2007年4月25日に棄却する決定を通知しました。市当局の主張をそのまま追認する「臨時的任用職員としての勤務条件を提示され、それを了解して雇用されたものと認められるから、要求者らの要求は認められない」との判定でした。

本件では、加古川市で20年以上の長期勤務の臨時職員が、「外部」の地域労組である当該組合加入後に、市当局の人事政策により最長で1年限りの短期雇用の「臨時職員」(地方公務員法22条適用)として雇用され、「職員団体として登録しなければ団体交渉に応じない」として団体交渉を拒否されたうえ、雇用主が任命した公平委員会(弁護士と大学教授が委員)に対して「措置要求」するしか選択支が無く、形式的な審査で棄却されるという結末となった。このため職員団体は解散を余儀なくされました。

以上に述べたように、権利保障が不充分な職員団体制度ではなく、非正規公務員に労働基本権を保障する勧告が必要です。

3 2017年5月24日 ILOへ提訴
申立書のあらまし

<申立ての趣旨>

 日本政府は今国会に「地方公務員法改正案」を提出し、5月11日に可決された。施行は2020年4月1日である。
 私たちの組合は、今回の法改正はILO87、98号条約に違反し、逆行するものであると考える。ILOが日本政府に対し、以下の勧告を行うように求めるものである。

① 地方公務員法改正およびその執行を中止するよう勧告すること
② 一般職の非正規地方公務員に対し、直ちに労働基本権を付与するよう勧告すること
③ 最低限、一般職の非正規地方公務員に対し、現業地方公務員(公営企業職員および技能・労務系職員)と同様に「地方公営企業労働関係法」を適用し、直ちに団結権・団体交渉権を保障するよう勧告すること。

<申立にいたる背景と経過>

 今回の地方公務員法改正は非正規地方公務員の処遇の改善に焦点を当てたものであるにもかかわらず、非正規当事者および労働組合の念願である「雇用の安定」と「均等待遇の実現」、「労働基本権の確立」から、大きくかけ離れたものと言わざるを得ない。
特に、労働基本権に関して労働組合に引き起こされる事態はおおむね以下のとおりである。
① 現在、労働基本権を完全に有している22万人もの特別職非常勤職員が一般職に組み入れられ、地方公務員法を適用されることにより、労働基本権を奪われること
② 具体的には、特別職非常勤職員の加入する労働組合が解散(職員団体への組織変更)を余儀なくされ、ストライキ権と団体交渉権がなく、団結権さえ制限された職員団体制度に組み込まれること
③ 以上の事態を引き起こす今回の法改正が、日本政府が批准しているILO87号、98号、(151号)条約に逆行するものであること

<自治体非正規職員の現状>

1 自治体非正規職員の人数と割合

① 47都道府県と1,735の市・区・町・村ごとに独自に職員を採用している。
② 2016年の資料では、正規職員約2,737,000人、非正規職員約645,000人で、
全体に占める非正規率は19.1%である。(財政基盤が脆弱な)町村においては34.7%にのぼっている。
③ 非正規職員は事務、教員、保育士、学童クラブ、給食調理、図書館、各種相談員など、広く様々
な職種に採用されている。保育士は非正規職員が約6万人、正規職員が約8万人で、非正規率は43%にものぼっている。図書館は約6割、学童クラブや各種相談員はそのほとんどが非正規職員によって担われている。

2 自治体非正規職員の種類と人数

① 特別職非常勤職員
地方公務員法3条3項3号に基づき、「恒常的職」に各自治体で採用されている職員(約22万人)。これらの特別職非常勤職員には地方公務員法が適用されないため、労働組合法の適用があり、ストライキ権を含めた労働基本権を有している。
② 一般職非常勤職員
地方公務員法17条により、「恒常的職」に各自治体で採用されている職員(約17万人)。地方公務員法が適用されることにより労働組合法が適用されず、ストライキ権・団体交渉権を有しない。但し、現業職員については「地方公営企業労働関係法」が適用され、ストライキ権はないが団体交渉権・労働協約締結権を有する。
③ 一般職臨時職員
地方公務員法22条により「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に各自治体で採用されている職員(約26万人)。労働基本権については②と同様である。

4 申 立 書
  (日本語全文)

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 日本語版か、実際に提出した英語版かを指定してください。
 
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申 立 書


<申立の趣旨>

 日本政府は今国会に「地方公務員法改正案」を提出し、5月11日に可決された。施行は2020年4月1日である。

私たちの組合は、今回の法改正はILO87、98号条約に違反し、逆行するものであると考える。ILOが日本政府に対し、以下の勧告を行うように求めるものである。

① 改正地方公務員法の施行を中止するよう勧告すること

② 一般職の非正規地方公務員に対し、直ちに労働基本権を付与するよう勧告すること

③ 最低限、一般職の非正規地方公務員に対し、現業地方公務員(公営企業職員および技能・労務系職員)と同様に「地方公営企業労働関係法」を適用し、直ちに団結権・団体交渉権を保障するよう勧告すること。

 

<申し立てに至る背景と経過>

 今回の地方公務員法改正は非正規地方公務員の処遇の改善に焦点を当てたものであるにもかかわらず、非正規当事者および労働組合の念願である「雇用の安定」と「均等待遇の実現」、「労働基本権の確立」から、大きくかけ離れたものと言わざるを得ない。

特に、労働基本権に関して労働組合に引き起こされる事態はおおむね以下のとおりである。

① 現在、労働基本権を完全に有している22万人もの特別職非常勤職員が一般職に組み入れられ、地方公務員法を適用されることにより、労働基本権を奪われること

② 具体的には、特別職非常勤職員の加入する労働組合が解散(職員団体への組織変更)を余儀なくされ、ストライキ権と団体交渉権がなく、団結権さえ制限された職員団体制度に組み込まれること

③ 以上の事態を引き起こす今回の法改正が、日本政府が批准しているILO87号、98号、(151号)条約に逆行するものであること

1 国および自治体の公務員制度のあらまし

  公務員の雇用(任用)・賃金・労働条件・服務などについては、国の場合は国家公務員法、自治体の場合は地方公務員法によって規律されている。これら2つの法律は、ほぼ同様の仕組みとなっているものの、一部に重要な違いがある。申立との関係では以下の点が挙げられる。

① 労働関係法の適用について

   労働関係法の公務員への適用関係は複雑に入り組んでおり、全体を正確に理解することは至

難の業である。

(「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」の所長である濱口桂一郎さんの論文「地方公務員と労働法」と「非正規公務員問題の原点」をぜひお読みいただきたいと思います。そこでは「労働法は公法私法二元論に立っていない」、「公務員は現在でも労働契約である」と明確に指摘されています。ちなみに、この2論文は総務省自治行政局公務員部公務員課が編集する「地方公務員月報」に掲載されたものです。したがって政府・総務省から入手してお読みいただけたら幸いです。)

私たちが強調したい点は、非正規地方公務員は労働契約であるにもかかわらず、パート労働法や労働契約法が適用されないことである。ここでは、労働基準法及び労働組合法に絞って説明したい。

a) 国家公務員は労働基準法が適用されないが、地方公務員には原則適用される。特に自治体の現業公務員と特別職公務員には全面的に適用される。

b) 労働組合法は国・自治体とも非現業公務員には適用されない。しかし、独立行政法人に従事する国家公務員は「独立行政法人労働関係法」により労働組合法が適用される。公営企業や技能・労務系業務に従事する地方公務員には、「地方公営企業労働関係法」により労働組合法が適用される。

② 非正規公務員の類型について

a) 臨時職員について

臨時職員については、国家公務員法60条、地方公務員法22条に同様の規定がある。「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に限って採用される職員であるが、以下

の違いがある。

   ・国の場合、国家公務員法60条による臨時職員採用は人事院規則8-12により「常勤官

職に欠員を生じた場合」に限定されている。このため、極めて稀にしか採用されていない。

・自治体の場合は国のような欠員補充に限定されておらず、季節的業務や繁忙期対応など

一時的な業務に約26万人の臨時職員が採用されている。

「臨時の職」ではなく「恒常的な職」に脱法的に採用されている場合も多く、不合理な取り扱いがなされている。人件費を削減しつつ、人手不足を補うためである。

b) 非常勤職員について

非常勤職員とは、フルタイムではなくパートタイムで働く職員である。これについても国と自治体では大きな違いがある。

・国の場合、フルタイム職員の3/4以下の時間で働く者を非常勤職員としているが、業務

上の都合に合わせて、多数のフルタイムで働く者をも非常勤職員として扱っている。このフルタイム職員の取り扱いは、業務上の必要性を優先させて、無原則に非常勤職員の枠を拡大してきたことが主な原因である。

・自治体の場合、非常勤職員の採用は、地方公務員法17条に基づく一般職としての採用と、

地方公務員法3条3項3号に基づく特別職としての採用との2種類がある。

多くの自治体では、国にならってフルタイム職員の3/4以下の時間で働く者を非常勤職員としている。自治体臨時職員と同様に、人件費を削減しつつ、人手不足を補うためである。

③ 正規・非正規職員の人数と割合

a) 国の場合

2016年の資料では、正規職員数は約266,000人、非正規職員数は約145,0

00人である。全体に占める非正規率は35.3%である。

b) 自治体の場合

  日本では、47の都道府県と1,735の市・区・町・村が置かれ、それぞれ独自に職員を採用している。

2016年の資料では、正規職員約2,737,000人、非正規職員約645,000人で、全体に占める非正規率は19.1%である。(財政基盤が脆弱な)町村においては34.7%にのぼっている。非正規職員は事務、教員、保育士、学童クラブ、給食調理、図書館、各種相談員など、広く様々な職種に採用されている。保育士は非正規職員が約6万人、正規職員が約8万人で、非正規率は43%にものぼっている。図書館は約6割、学童クラブや各種相談員はそのほとんどが非正規職員によって担われている。

 

2 非正規地方公務員の状況

  正規地方公務員数は年々減り続け、総務省調査によれば2016年4月1日現在で2,737,263人と、20年前に比して約54万人、2005年からでも約30万人減っている。

  一方、非正規地方公務員は年々増え続け、総務省調査によれば2005年に約456,000人だったものが、11年後の2016年には約645,000人と約19万人も増加している。つまり、正規地方公務員の削減を補う形で非正規地方公務員が採用されているのである。

 

 (1)非正規地方公務員の類型と人数

   ① 特別職非常勤職員

     地方公務員法3条3項3号に基づき、「恒常的職」に各自治体で採用されている職員(約22万人)。これらの特別職非常勤職員には地方公務員法が適用されないため、労働組合法の適用があり、ストライキ権を含めた労働基本権を有している。

   ② 一般職非常勤職員

     地方公務員法17条により、「恒常的職」に各自治体で採用されている職員(約17万人)。地方公務員法が適用されることにより労働組合法が適用されず、ストライキ権・団体交渉権を有しない。但し、現業職員については「地方公営企業労働関係法」が適用され、ストライキ権はないが団体交渉権・労働協約締結権を有する。

   ③ 一般職臨時職員

     地方公務員法22条により「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に各自治体で採用されている職員(約26万人)。労働基本権については②と同様である。

 

 (2)非正規地方公務員の置かれた状況

    これら非正規地方公務員の置かれた状況については、多くの共通した問題が山積している。

   ひとことでいえば、不安定な雇用と低位の賃金・労働条件である。このため、私たち労働組合の基本要求は「雇用の安定」と「均等待遇の実現」である。

   ① 不安定な雇用

    a) 不安定な雇用

     ・大多数の自治体では雇用期間は長くて1年で、雇用継続の保障が充分ではない。業務が継続するにもかかわらず一方的に雇止めとされるケースが少なからず存在する。

・総務省は2009年の通知で、従来の考え方である「更新」を改め、「(毎年度の予算で職の設置について査定される)新たな職に改めて任用されたものとして整理される」とした。このことから、1年ごとに公募と採用手続きを行うことを原則とした。つまり総務省は、「更新への期待権」を失わせるために、「1年契約を終了させ、改めて公募し、新たな応募者と競わせた上で採用する方式」へと変更したのである。

・この総務省通知は、当事者である非正規地方公務員からすれば、毎年の公募に応募し、採用されなければ働き続けることはできず、不採用となっても争うことは困難となる。つまり、総務省は雇用がより一層不安定になる政策を推進している。

・公務員には労働契約法が適用されないため、「契約通算期間が5年を超える労働者」が「期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」とする「無期転換条項」を活用することができない。総務省通知は、政府が進める雇用安定化政策(有期雇用を無期雇用に転換させる)に逆行している。

    b) 不安定雇用を促進する雇用年限制度

・杉並区においては、1991年に657人だった特別職非常勤職員が2016年には2,125人と、25年間で3倍を上回る人数にまで増えてきている。これら特別職非常勤職員は1年契約を5回までは更新されるものの、6年ごとに全員一律に雇止めされることが20年を超えて行われてきた。この仕組みのことを私たちは「雇用年限制度」と名付けてきた。

・この雇用年限制度によって杉並区では、業務が継続するにもかかわらず、毎年約200名もの雇止めが繰り返されてきた。私たち労働組合の取り組みにより、2010年から、6年目の雇用期間満了者も公募に応募することができるようになった。採用されれば6年を超えて継続して働ける道が切り開かれたのである。しかし、応募しても採用されるか否かは人事当局の裁量となることから、当事者の精神的不安は計り知れないものとなっている。現実に不採用となった人も少なくない。

     ・この雇用年限制度の背後には、政府の考え方が抜きがたく存在する。「臨時職員、非常勤職員を長期間にわたって雇い続けてはならず、短期間で雇用を打ち切るべき」との考え方である。2014年総務省通知においても、「同一のものが繰り返し任用されることは避けるべき」ことが強調されている。

・この政府の考え方は、自治体臨職闘争への否定的総括から導き出されたものである。1950年代半ばから、自治体において臨時職員の正規職員化闘争が巻き起こった。当時、正規職員定数が削減される中で多くの臨時職員が採用され、継続して働いていた。これらの臨時職員が労働組合を結成し、正規職員化を要求して闘いに立ち上がったのである。政府および自治体もこの問題を解決せざるを得なかった。1950年代後半以降、多くの臨時職員が正規職員化をかちとっていく。東京都においては、事務補助員、土木作業員、学校給食調理員、学校警備員、学童擁護員、学童クラブ員、などである。

・つまり政府は「長期にわたって雇用継続がなされれば、雇用の安定と処遇改善を求める声が大きくなり、労働組合結成につながりかねない。そうなると簡単に雇止めできなくなり、処遇改善を余儀なくされる」と総括したのである。この政府の考え方を受けて、長期の継続雇用をすることのないように一定の年数で雇用を打ち切る雇用年限制度を自治体人事当局が編み出したのである。

・2014年の総務省調査によれば、この雇用年限制度は都道府県と政令市では約半数、市町村でも3割近い自治体が導入している。3年若しくは5年に雇用年限を設定している自治体が多いことが分かる。

    c) 雇用年限制度は団結破壊の制度

・雇用年限制度は雇用不安定化にとどまらず、団結破壊の性格をも持っている。非正規公務員が採用されて、仕事や職場の人間関係に慣れるのに2、3年はかかる。職場に慣れてきてまわりを見渡せるようになり、職場の矛盾や賃金・労働条件の格差に気がつく。非常勤同士で処遇について話合い、改善を図ろうとする頃には雇用年限が間近に迫っている。労働組合をつくっても、雇用年限により雇止めされて職場を追われることとなる。つまり、非正規公務員に労働組合を結成する時間的・心理的ゆとりを与えず、結成されても職場から合法的に排除できる仕組みでもある。

・私たち連帯労働者組合・杉並の経験は、このことを裏付ける。結成直後からの団交拒否に対して、東京都労働委員会に不当労働行為申し立てを行い、ようやく団交に応じさせることができたのは約9年後であった。この9年の間に、組合結成当初の6名の非常勤組合員は「6年の雇用年限」により、全員職場を追われてしまっていた。(団交を拒否されているにもかかわらず)新たに加入してくれた非常勤組合員の存在もあり、団交を行わせるところまではできた。しかし、その組合員も1年後には雇用年限により職場から排除され、再度の団交拒否をされることとなった。

・その後、新たな非常勤職員の組合加入を受けて団交を積み重ね、労使関係を安定させるまでに、実に組合結成から20年を要したのである。多くの仲間達の支えがなければ、合同労組でなければ、組合が消滅していたと言っても決して過言ではない。

② 賃金・休暇などの差別的取り扱い

a) 正規地方公務員の半分以下の賃金

  非正規地方公務員の賃金水準は、正規地方公務員のおおむね半分以下と言われている。加えて、正規地方公務員に支給されている期末手当をはじめとした諸手当(退職手当・地域手当・扶養手当・住宅手当など)が、非正規地方公務員には支給されない場合が多い。正規地方公務員の期末手当は約4ヶ月分の月例賃金に相当する。

b) 休暇でも大きな格差

  各種休暇に関しても正規地方公務員との間に大きな格差がある。

 ・2016年総務省調査では、特別職非常勤職員を採用している320自治体中、法定の休暇を付与していない自治体数及びその割合は以下のとおりである。

   年次有給休暇:13自治体(4.1%)

   産前・産後休暇:82自治体(25.6%)

   育児時間休暇:109自治体(34.1%)

   生理休暇:87自治体(27.2%)

   子の看護休暇:144自治体(45.0%)

・杉並区の例でいえば、常勤職員との格差が以下のとおり存在する。

育児休業:正規職員は子が3歳まで取得できるが、非常勤職員は1歳6カ月まで

介護休業:正規職員は6ヶ月間取得できるが、非常勤職員は93日間(約3ヶ月)

産前産後休暇:正規職員は有給だが、多くの非常勤職員は無給

生理休暇:正規職員は有給だが、非常勤職員は無給

病気休暇:正規職員は90日間有給だが、非常勤職員は5日間有給でしかない。

私たち以外にも非常勤職員の労働組合があり、30年近く均等待遇を求めて取り組んでいる杉並区でもこれだけの格差がある。

   ③ 不安定雇用を必然化する「任用」というイデオロギー

a) 雇用安定化政策の対象外

 政府は「任用は労働契約ではない」として、民間労働者に適用される労働契約法やパート労働法を公務員に適用していない。

このため労働契約法18条(無期転換条項)、19条(合理的理由のない雇止めはできない)、20条(有期雇用であることによる不合理な労働条件の禁止)などが適用されない。同様に、パート労働法8条(不合理な待遇の禁止)、10条(通常の労働者と均衡した賃金)、13条(通常の労働者への転換措置)、14条(事業主の説明義務)、22条(苦情処理機関の設置)なども適用されない。つまり、雇用安定と均等待遇に向けた政策の枠外に置かれているのである。

b) 自由に雇止めできる

  公務員の雇止め裁判はことごとく原告敗訴となっている。その原因は「任用は行政処分」で「公法上の勤務関係」であるから、「任期満了により当然退職する」という独特のイデオロギーにある。労使対等原則と実態を重視した労働法ではなく、行政優位で形式論理の行政法の世界がこの判決を支えている。

c) 裁判所も任用イデオロギーを追認

  非正規公務員の雇止めをめぐっては、大阪大学事件の最高裁判決がリーディングケースとされる。大学図書館で更新を繰り返して約5年間働いてきた非常勤国家公務員が、その意に反する雇止めを争った事件である。最高裁は1994年に「任用予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできない」と判示し、原告を敗訴に導いた。この最高裁判決が、以降の裁判で踏襲されている。

d) 政府の不作為

  2007年11月28日、東京高裁は中野区保育士事件において以下の通り判示した。

「本件においては、一審原告らの主張するように私法上の雇用契約の場合と、公法上の任用関係である場合とで、その実質面で差異がないにもかかわらず、労働者の側にとってその法的な扱いに差が生じ、公法上の任用関係である場合の労働者が私法上の雇用契約に比して不利になることは確かに不合理であるといえる」、「反復継続して任命されてきた非常勤職員に関する公法上の任用関係においても、実質面に即応した法の整備が必要とされるところである」と。

しかし政府は指摘された法整備を怠り、2009年通知に見られるようにこの判示に逆行する「新たな地方公務員法解釈」を推し進めている。

e) 私たち組合の考え

  同じ非正規公務員であっても、国家公務員と地方公務員の場合では大きな違いがある。国家公務員は労働基準法が適用除外とされているが、地方公務員の場合は原則適用である。

非現業の地方公務員には第2条の「労使対等原則」が適用除外されてはいるものの、「第2章 労働契約」が適用されていることに留意する必要がある。現業の地方公務員には「労使対等原則」も含めて労働基準法が全面的に適用されている。特別職非常勤職員の場合においては労働基準法・労働組合法が全面的に適用され、その法的地位は民間労働者と同一である。

  つまり実定法上、地方公務員は「労働契約」なのである。一方「任用」は戦前の天皇大権に基づく官吏の登用に際しての概念である。敗戦後、「天皇の官吏」から「全体の奉仕者」へと大転換が行われ、公務員も労働基本権を有する労働者となったことを再確認する必要がある。確かに戦後の公務員法においても「任用」という文言が登場する。しかし、この文言は公務員も含めた戦後労働法制に従って解釈されねばならない。「任用」という文言は公務員法制に残った残滓にすぎず、公務員関係の基本は「労働契約」に置かれるべきである。労働基準法上「労使対等」とされている現業職員およびストライキ権さえ有する特別職非常勤職員さえ「任用」とされ、自治体当局に従属するというようなイデオロギーは直ちに退場させなければならない。

  そもそも政府の「公法・私法」の二分論が官・民労働者の分断を生み、労働組合法が適用されない上に、公務員法も極めて不充分にしか適用されない無権利の非正規公務員を生み出していることに最大の問題がある。

 

 3 労働基本権を有する地方公務員=特別職非常勤職員

   これまで、労働基本権に関する日本の公務員組合からのILO申し立ては、正規常勤職員の立場からのものに限られていたと理解している。ストライキ権を含む労働基本権を有している非正規地方公務員が存在し、労働組合を結成し闘ってきたことを強調しておきたい。

   その一方で100号条約に関して、非正規公務員の賃金差別をILOに訴え続けていることにも留意してほしい。

 

 (1)労働基本権を有する特別職非常勤職員

① 特別職非常勤職員には地方公務員法が適用されない。

労働組合法を適用除外としている地方公務員法58条が適用されないため、労働組合法が適用される特別職非常勤職員は、民間労働者と全く同様にストライキ権を含めた労働基本権を有している。

    (地方公務員法制定以来の45年間、失業対策事業に従事していた技能・労務系の職員も特別職職員として位置付けられ、労働基本権を全面的に有していたことも指摘しておきたい)

   ② 労働基本権を行使した合同労組・ユニオンの結成

1985年の中曽根内閣による「行政改革」の推進以降、正規地方公務員の削減が進められている。それを補う形で臨時職員、非常勤職員が多数雇用される事態が引き続いている。

これらの非正規公務員は雇用が不安定で、低賃金、劣位の労働条件のもとに置かれ続けている。新たに生み出された非正規公務員の中心は特別職非常勤職員である。これらの特別職非常勤職員が活用されることついては、以下に述べるような歴史的背景がある。

a) 歴史的背景

・先述の臨時職員闘争は、一般職としての臨時職員の闘いであった。本来、臨時職員は「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に採用されるべきものである。これに反して「恒常的職」に採用してきた負い目が政府・自治体にはある。このこともあり、政府・自治体は正規職員化を余儀なくされたのである。

・1985以降の非正規公務員の活用に当たっては、臨時職員の正規職員化闘争の再現を避けるための工夫が凝らされた。そのひとつが臨時職員としてではなく、特別職としての非常勤職員採用である。

・そもそも臨時職員を恒常的な業務には採用できない。非常勤職員であれば、恒常的な業務に採用できる。しかし、一般職の非常勤職員は地方公務員法17条に基づく競争試験若しくは選考を経なければ採用できない。また地方公務員法を素直に解釈すれば、賃金や労働条件について差別的な取り扱いはしにくい。つまり、手続き的に面倒で人件費の削減も簡単にはいかない。そこで活用されたのが特別職非常勤職員としての採用である。特別職であれば、労働関係法の枠内でさえあれば、自由に採用し、賃金・労働条件も任意に設定できからである。

b) その一方で、特別職であれば労働組合が結成できる。1980年代末以降、これら特別職非常勤職員の加入する労働組合結成が相次ぐ。その一翼を担ったのが「誰でも、一人でもはいれる」合同労組・ユニオンであった。

私たち連帯労働者組合・杉並は、地域に基礎を置く合同労組である連帯労働者組合の杉並地域支部として1989年に発足した。ほぼ同時期に、東京都では東京公務公共一般労働組合、京都市ではユニオン「らくだ」(京都自治体関連労働者自立組合)、大阪府では大阪教育合同労働組合など、特別職非常勤職員の加入する労働組合の結成が相次いだ。

 

 (2) 合同労組の団交権確立の闘い

   ① 連帯労働者組合・杉並の結成と団交権確立の闘い

私たち連帯労働者組合・杉並は結成と同時に杉並区に団交を申し入れた。しかし杉並区は、「杉並区の職員が主体となっていない労働組合の団交には応じられない」と、職員団体の論理をもって団交を拒否した。私たちはストライキや抗議行動を重ね、団交に応じるように杉並区に求め続け、1993年には東京都労働委員会に不当労働行為申し立てを行った。当時は特別職非常勤職員の加入する合同労組が少なかったこともあり、1997年、東京都労働委員会は、命令ではなく和解による団交開催を労使に勧め、双方ともに受け入れた。

団交開催後の組合員の解雇を受けて、2000年に再度不当労働行為申し立てを行い、杉並区が団交応諾義務を有することを確定する命令を獲得できた。私たちは団交獲得後も粘り強く取り組みを進め労使関係を安定させ、雇用継続、賃金・労働条件の改善を一歩一歩前進させてきている。

杉並区の団交拒否が続く中で、結成当初の組合員は「6年雇用年限」により全員が解雇された。団交を拒否されている組合に加入しようとする非常勤職員は極めて稀である。私たちは力の限りを尽くして組合加入の働きかけを継続した。新たな組合員の加入を受けて労使関係の安定に至るまで、私たちは2次にわたる解雇撤回闘争と2度の労働委員会申し立てなど、20年の歳月を要したのである。

   ② 東京公務公共一般労働組合と大阪教育合同労働組合の団交拒否を打ち破る闘い

     総務省の2009年通知を受けて、東京都と大阪府が、それまで受け入れてきた特別職非常勤職員の労働条件に関する団体交渉を拒否してきた。双方とも2009年総務省通知に示された「(毎年度の予算で職の設置について査定される)新たな職に改めて任用されたものとして整理される」を論拠とした団交拒否である。いずれも中央労働委員会が東京都と大阪府の主張を退け、最高裁で確定している。以下、それぞれについて簡略に述べる。

    a) 東京都

      東京都は、消費生活相談員に関する東京公務公共一般労働組合との団交を「(相談員は、次年度の任用が確定していないから)次年度の賃金・労働条件は団交事項ではない」、「任用は行政行為であり、東京都は次年度の使用者には当たらない」などの理由で拒否してきた。しかし中央労働委員会は「相談員は、次年度に任用される可能性が高く、次年度の組合員に都の任用する相談員が存在する可能性は現実かつ具体的に存するということができる」として、次年度の労働条件は義務的団体交渉事項であり、東京都が労働組合法上の使用者に該当することを認めた。

b) 大阪府

  大阪教育合同労働組合は「組合員の次年度の継続雇用」を求めて大阪府に団交を申し入れた。大阪府は「会計年度を超えた継続的な任用、更新は法律上も認められておらず、常に新たな任用である」として団交を拒否した。大阪府労働委員会は府の主張を認めてしまったが、中央労働委員会はこれを退けた。中央労働委員会では「(組合員は)任用が繰り返されて実質的に勤務が継続することに対する合理的な期待を有する」として「本件団交事項は義務的団体交渉事項である」と組合の主張を認めた。

 

(3) 合同労組を忌避する政府

  ① 総務省通知発出の経過と背景

   a) 2009年通知

     先述の中野区保育士事件高裁判決は、2007年11月28日に言い渡された。この判決により、原告である4名の保育士の「(再任用への)期待権侵害」が認められ、約200万円の損害賠償が命じられた。ちなみに4名の原告はいずれも東京公務公共一般労働組合の組合員である。この高裁判決を受けて東京公務公共一般労働組合は中野区との独自交渉を積み上げ、原告の職場復帰を実現するという、自治体においては極めて稀な成果を獲得している。

     この判決を契機に、総務省は2008年に非正規公務員について全国調査を行い、2009年に通知を発出した。この通知の最大の狙いは「雇用継続への期待権」が発生しないように手立てを講じることにあった。そのために、この通知で新たにひねり出した屁理屈が「(毎年度の予算で職の設置について査定される)新たな職に改めて任用されたものとして整理される」という、更新を期待させないための新たな法解釈である。

b) 2014年通知

  先述の東京公務公共一般労働組合の中央労働委員会命令は2011年11月8日であり、2014年2月7日に最高裁で確定した。大阪教育合同労働組合の中央労働委員会命令は2012年11月30日で、2015年3月31日に最高裁で確定している。これら中央労働委員会命令と最高裁確定判決とを契機に総務省は、2012年に再度の全国調査を行い、2014年に再度の通知を発出した。この通知の最大の狙いは特別職非常勤職員を一般職に切り替え、労働基本権を剥奪する点にあった。特別職非常勤職員について、2009年通知では「特別職として任用することが妥当なのかという点について検証すべきである」としていたところを、2014年通知では「本来、一般職として任用されるべきであり、特別職として任用することは避けるべきである」と一般職化を各自治体に強く促したのである。

c) 2017年法改正

  2014年通知に直ちに従い、一般職に切り替えた自治体は東京都と大阪府であった。いずれも2009年総務省通知の論理に従って団交を拒否した自治体である。合同労組の闘いにより団交拒否を打ち破られた自治体にとって、一般職化は労働委員会申し立てを封じる絶好の手立てとなる。加えて地方公務員法の職員団体制度の枠に収まらない合同労組の労働基本権行使を制限できる。この二つが東京都・大阪府が一般職化を急いだ理由である。

  しかし、全体として一般職化は簡単には進まなかった。そこで総務省は2016年、3回目となる全国調査と研究会を設置し、法改正による一般職化の強制に向かうこととした。全国調査結果の中で、注目すべきは特別職の一般職化の進展状況である。1,165自治体中、新たに一般職化を実施したのは29自治体にとどまっている。

「各自治体ごとの判断に任せていては、一般職化は進まない」、「法改正により強制しなければならない」と総務省が考えたことは想像に難くない。

   ② 合同労組の闘いを忌避する政府

     以上に述べたように、総務省通知の発出は合同労組の闘いの前進に過敏に反応し、逆行する対応をしてきている。

a) 中野区保育士判決を受けて総務省は、「期待権の保護」や「法の整備」に向かうのではなく、「期待権を持たせないように法解釈を変更する」道をとったのである。これが2009年通知である。

b) 東京公務公共一般労働組合の中央労働委員会命令が最高裁で確定し、大阪教育合同労働組合の中央労働委員会命令が出されて発出されたのが2014年通知である。

特に大阪教育合同労働組合の中央労働委員会命令が「雇用継続要求は義務的団交事項」と判断したことに、総務省が大きな危機感を抱いたことは想像に余りある。「任用予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできない」とする大阪大学最高裁判決が、実態を重視する労働法の世界で「雇用継続要求は義務的団交事項=任用を要求する権利も法的利益もある」と覆されたからである。そこで総務省は、労働基本権を有し労働法を活用できる(=労働委員会申し立てのできる)特別職非常勤職員を一般職に移行させ、労働委員会を使えないようにすること、任用イデオロギーを防衛すること、を一層推進することとしたのである。

c) しかし、一般職化は総務省の期待するようには進まなかった。多くの自治体は、一般職化すれば採用手続きが面倒で正規常勤職員との均等待遇が必要とされ、賃金や休暇などの労働条件を大きく改善しなければならないと考えている。つまり人件費が飛躍的に増大することを避けるために、今まで通り特別職非常勤職員として雇い入れる道を選んだのである。特別職であれば一般職とは異なり、地方公務員法で必要とされる手続き抜きに採用や賃金・労働条件を定めることができるからである。

  一向に進まない一般職化を前にして、総務省が法改正によって自治体に強制しようと考えたものが今回の法改正である。

e) 以上の経過を見れば明らかなように、今回の法改正は労働法を活用する労働組合の活動を忌避し、解散させることを狙った「労働組合つぶし=団結破壊の支配・介入」とさえ言いうるものであることを強調しておきたい。

 

4 今回の地方公務員法改正のあらまし

 (1)労働基本権を剥奪する「一般職化」

   ① 先行する東京都・大阪府の「一般職化」を、法改正により全国的に強制するもの

    a) 特別職非常勤職員は一般職に移行されることによって、地方公務員法が適用されることとなる。地方公務員法では現業職員を除いて、労働組合を結成することはできない。同一自治体の職員のみによって構成される「登録職員団体」にならなければ、交渉することさえ確保できない地位に置かれる。この職員団体制度の背景には「(地方公務員でない)外部勢力排除=合同労組排除」のイデオロギーが存在する。

b) 自治体への「助言」だけでは一般職化が進まないことを目の当たりにした総務省が、全国の自治体に強制することを求めて、今回の法改正を行おうとしていることは明らかである。

   ② 労働基本権剥奪の根拠とされる措置が全くなされていない

     しかし、法改正によっても労働基本権を奪うことはできないはずである。政府は労働基本権を制限できる根拠として「身分保障」、「法定の労働条件」、「代償措置の存在」の3つを挙げている。一般職化されても、しかし、非常勤職員にはこれらの根拠が成立しない。

     正規常勤職員でさえILOから労働基本権の確保が勧告されている状況下で、勧告に逆行し、一般職化して労働基本権をはく奪する法改正を行おうとする政府の考え方は私たちの理解を超えている。

    a) 身分保障

      地方公務員法28条では、法定された事由でなければ免職や懲戒処分などを受けることがないとされ、この条項は一般職非常勤職員にも適用される。しかし、「期間満了を理由にいつでも雇止めできる」との政府の考え方を変更しない限り、1年任期の一般職非常勤職員にとっては全くと言ってよいほど意味を持たない。

b) 法定の勤務条件

  一般職非常勤職員の賃金や休暇などの労働条件は条例で定めることとなっている。しかし具体的な金額や休暇に関して、ほとんどすべての自治体条例では首長の裁量で定める規則などに委ねている。東京都・大阪府ともに規則で定めている。労使交渉で決めるべき余地が常勤職員に比べてはるかに大きいと言える。

c) 代償措置の存在

  総務省の見解は、人事委員会の勧告などについては非常勤職員にも適用される、というもののようである。しかし東京都・大阪府での人事委員会勧告は、一般職非常勤職員には全くと言ってよいほど触れておらず、賃金や労働条件についての改善勧告は一切なされていない。そもそも全国1,782自治体中、人事委員会設置は47都道府県、20政令指定都市、和歌山市、の68自治体にすぎない。圧倒的多数の96%の自治体は人事委員会勧告制度の枠外にある。

③ 非正規地方公務員との協議が充分になされていない

  今回の法改正に当たり、非正規当事者組合との協議は極めて不十分であることを指摘しなければならない。法改正を提言した「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」は非公開で行われ、私たちの組合が法改正に対して意見書(資料1)を提出したものの、まともに検討される時間的余裕もない中で法案の国会上程がなされている。

  そもそもこの研究会の委員9名中、労働者側委員はわずか1名のみである。厚生労働省の「労働政策審議会」と同様に、公・労・使の三者構成による検討・審議を経て法改正を行う仕組みを早急に確立すべきである。

 

(2) 「会計年度任用職員」として「任期1年以内」を法定

   ① 入口規制の地方公務員法を変質させる

     地方公務員法は「任期の定めなし(無期)」を原則としている。例外は「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に採用される臨時的任用職員のみである。この意味において地方公務員法は、臨時的業務についてのみ有期雇用を認める「入口規制」を採用している。

     今回の法改正は「恒常的に継続する業務」に従事する非常勤職員を「会計年度任用職員」として「任期1年以内」を法定し、法律により雇用を不安定にするものである。労働基準法の規定に従い2年あるいは3年の任期を定めている自治体に、1年任期を強制しようとする法改正と言わねばならない。

2012年の労働契約法改正により「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換させる」仕組みが法定された。政府は自ら定めた雇用を安定させるための政策に逆行する地方公務員法改正を行おうとしていることを強調しておきたい。

   ② 毎年度ごとの公募・採用を繰り返す

     これまで「更新」として雇用継続されてきた非常勤職員を、「毎年の公募に応じて競わされ、採用されなければ継続して働くことはできない状況が繰り返される」状況に落とし込むことになる。当事者は毎年「採用されるか否か」の不安にさいなまれ、「雇止め」は「採用の自由」のもとに合法化される。

   ③ 賃金で差別と分断が持ち込まれる

     法案では「会計年度任用職員」を「フルタイム職員」と「パートタイム職員」とに二分する。「フルタイム職員」には給料と諸手当を支給するが、「パートタイム職員」には報酬と期末手当のみの支給となる。同じ雇用形態で同じ業務に従事しながら、勤務時間のみによって賃金に差をつけることは、明らかに「不合理な差別」である。ILO100号条約に違反する法改正と言わねばならない。

 

<違反の具体的内容>

日本の労働組合法はILO条約に適合している。自由設立主義を採用し、事前の認可や届け出などの必要はない。様々な業種・法的地位の労働者が自由に団結することができ、労使対等原則にのっとり団体交渉を行い、労働委員会に不当労働行為を申し立てることができる。

その一方、公務員法の「職員団体」はILO条約に適合していない。具体的には以下の通り。

① 労使対等原則が否定されていること

② 自治体職員が多数を占めなければならないこと

③ 自治体当局を交渉に応じさせるためには、「同一の自治体の一般職職員によってのみ組織される」ことを要件とし、事前に「登録」しなければならないこと

④ 団体交渉権がなく、労働協約を締結できないこと

⑤ 予備交渉で「議題・時間・場所」を決めなければ交渉できないこと

⑥ 交渉打ち切り規定が法定されていること

⑦ 労働委員会に不当労働行為申し立てができず、あっせん・調停・仲介などを求めることもできないこと

 今回の地方公務員法改正により、労働組合を結成している特別職非常勤職員は、労働組合の解散を余儀なくされ、職員団体結成を強制される。これまで自治体当局と締結した労働協約の無効化も強制される。

 

1 違反の具体的内容

 私たちは今回の法改正が、以下の点においてILO条約に違反していると考え、申し立てに及んだものである。

(1)87号条約

   ① 事前の認可(登録)を余儀なくされること:2条違反

   ② 自ら選択する団体を設立(加入)できない(労働組合を解散し新たに職員団体を結成しなければならない)こと:2条違反

   ③ 行政的権限(法改正)によって労働組合が解散させられること:4条違反

   ④ 日本政府が「団結権を自由に行使するための必要にして適当な全ての措置を取る義務」に逆行する法改正を行っていること:11条違反

 

(2) 98号条約

   ① 反組合的な差別待遇に対する保護を受けられなくなること(労働委員会に救済申し立てができなくなること):1条違反

   ② 使用者からの干渉(支配・介入)からの保護が無くなること(労働委員会に救済申し立てができなくなること):2条違反

   ③ 労働協約締結権が剥奪されること:4条違反

 

2 労働基本権が奪われることによる具体的な影響

 ① 交渉力が削がれる

   私たちの組合を含め、非正規公務員当事者組合の基本要求は雇用の安定と均等待遇の実現である。この要求実現のためには労使対等の団体交渉権の確保が欠かせない。当事者組合は(ストライキを構えて)交渉を積み上げ、労働協約を締結し、少しづつではあっても、一歩一歩着実に要求実現に向け前進してきた。団交権を奪われることは労働組合の生命線を断たれることにも等しい。

 ② 労働委員会が使えなくなること

   私たちの組合を含め、非正規当事者組合は様々な形で団交拒否、組合への支配・介入などを受けてきた。不誠実な団交で要求が全く前進しないことも経験してきた。このような場合、労働委員会に不当労働行為を申し立て、あるいは斡旋や仲介を申し出ることによって事態の打開を図ってきた。このような取り組みができなくなれば、要求の前進が大きく阻害されることはあまりにも明らかである。

 

3 最低限、地方公営企業労働関係法を適用すべき理由

 ① 非正規公務員は、技能・労務系公務員と同様の地位にある

   総務省によれば、非常勤職員は「本格的業務」には従事しない、とされる。「本格的業務」とは、「組織の管理・運営自体に関する業務や権力的業務など」と説明されている。

また、課長級以上に昇任することは予定されていない。

   このような地位は、技能・労務系の職員と同様である。したがって、技能・労務系職員と同様に地方公営企業労働関係法を適用しなければならないはずである。

 ② 民間委託できる業務

   近年、市民課や税務課などの窓口業務を民間会社に委託する自治体が増えてきている。委託を受けて働くのは民間労働者であり、当然のことながら労働基本権を持っている。つまり、いざとなればストライキを打つこともできるのである。同様の業務に従事する非常勤職員の労働基本権を剥奪しなければならない理由は見出せない。

 

以上です。審査をよろしくお願いします。

4 申 立 書
  (日本語全文)

※ 下記にメールをくださればPDF版を送ります。
 日本語版か、実際に提出した英語版かを指定してください。
 
 rentai-suginami(あっとまーく)palette.plala.or.jp

 (あっとまーく)は@に変えてください​。


申 立 書


<申立の趣旨>

 日本政府は今国会に「地方公務員法改正案」を提出し、5月11日に可決された。施行は2020年4月1日である。

私たちの組合は、今回の法改正はILO87、98号条約に違反し、逆行するものであると考える。ILOが日本政府に対し、以下の勧告を行うように求めるものである。

① 改正地方公務員法の施行を中止するよう勧告すること

② 一般職の非正規地方公務員に対し、直ちに労働基本権を付与するよう勧告すること

③ 最低限、一般職の非正規地方公務員に対し、現業地方公務員(公営企業職員および技能・労務系職員)と同様に「地方公営企業労働関係法」を適用し、直ちに団結権・団体交渉権を保障するよう勧告すること。

 

<申し立てに至る背景と経過>

 今回の地方公務員法改正は非正規地方公務員の処遇の改善に焦点を当てたものであるにもかかわらず、非正規当事者および労働組合の念願である「雇用の安定」と「均等待遇の実現」、「労働基本権の確立」から、大きくかけ離れたものと言わざるを得ない。

特に、労働基本権に関して労働組合に引き起こされる事態はおおむね以下のとおりである。

① 現在、労働基本権を完全に有している22万人もの特別職非常勤職員が一般職に組み入れられ、地方公務員法を適用されることにより、労働基本権を奪われること

② 具体的には、特別職非常勤職員の加入する労働組合が解散(職員団体への組織変更)を余儀なくされ、ストライキ権と団体交渉権がなく、団結権さえ制限された職員団体制度に組み込まれること

③ 以上の事態を引き起こす今回の法改正が、日本政府が批准しているILO87号、98号、(151号)条約に逆行するものであること

1 国および自治体の公務員制度のあらまし

  公務員の雇用(任用)・賃金・労働条件・服務などについては、国の場合は国家公務員法、自治体の場合は地方公務員法によって規律されている。これら2つの法律は、ほぼ同様の仕組みとなっているものの、一部に重要な違いがある。申立との関係では以下の点が挙げられる。

① 労働関係法の適用について

   労働関係法の公務員への適用関係は複雑に入り組んでおり、全体を正確に理解することは至

難の業である。

(「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」の所長である濱口桂一郎さんの論文「地方公務員と労働法」と「非正規公務員問題の原点」をぜひお読みいただきたいと思います。そこでは「労働法は公法私法二元論に立っていない」、「公務員は現在でも労働契約である」と明確に指摘されています。ちなみに、この2論文は総務省自治行政局公務員部公務員課が編集する「地方公務員月報」に掲載されたものです。したがって政府・総務省から入手してお読みいただけたら幸いです。)

私たちが強調したい点は、非正規地方公務員は労働契約であるにもかかわらず、パート労働法や労働契約法が適用されないことである。ここでは、労働基準法及び労働組合法に絞って説明したい。

a) 国家公務員は労働基準法が適用されないが、地方公務員には原則適用される。特に自治体の現業公務員と特別職公務員には全面的に適用される。

b) 労働組合法は国・自治体とも非現業公務員には適用されない。しかし、独立行政法人に従事する国家公務員は「独立行政法人労働関係法」により労働組合法が適用される。公営企業や技能・労務系業務に従事する地方公務員には、「地方公営企業労働関係法」により労働組合法が適用される。

② 非正規公務員の類型について

a) 臨時職員について

臨時職員については、国家公務員法60条、地方公務員法22条に同様の規定がある。「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に限って採用される職員であるが、以下

の違いがある。

   ・国の場合、国家公務員法60条による臨時職員採用は人事院規則8-12により「常勤官

職に欠員を生じた場合」に限定されている。このため、極めて稀にしか採用されていない。

・自治体の場合は国のような欠員補充に限定されておらず、季節的業務や繁忙期対応など

一時的な業務に約26万人の臨時職員が採用されている。

「臨時の職」ではなく「恒常的な職」に脱法的に採用されている場合も多く、不合理な取り扱いがなされている。人件費を削減しつつ、人手不足を補うためである。

b) 非常勤職員について

非常勤職員とは、フルタイムではなくパートタイムで働く職員である。これについても国と自治体では大きな違いがある。

・国の場合、フルタイム職員の3/4以下の時間で働く者を非常勤職員としているが、業務

上の都合に合わせて、多数のフルタイムで働く者をも非常勤職員として扱っている。このフルタイム職員の取り扱いは、業務上の必要性を優先させて、無原則に非常勤職員の枠を拡大してきたことが主な原因である。

・自治体の場合、非常勤職員の採用は、地方公務員法17条に基づく一般職としての採用と、

地方公務員法3条3項3号に基づく特別職としての採用との2種類がある。

多くの自治体では、国にならってフルタイム職員の3/4以下の時間で働く者を非常勤職員としている。自治体臨時職員と同様に、人件費を削減しつつ、人手不足を補うためである。

③ 正規・非正規職員の人数と割合

a) 国の場合

2016年の資料では、正規職員数は約266,000人、非正規職員数は約145,0

00人である。全体に占める非正規率は35.3%である。

b) 自治体の場合

  日本では、47の都道府県と1,735の市・区・町・村が置かれ、それぞれ独自に職員を採用している。

2016年の資料では、正規職員約2,737,000人、非正規職員約645,000人で、全体に占める非正規率は19.1%である。(財政基盤が脆弱な)町村においては34.7%にのぼっている。非正規職員は事務、教員、保育士、学童クラブ、給食調理、図書館、各種相談員など、広く様々な職種に採用されている。保育士は非正規職員が約6万人、正規職員が約8万人で、非正規率は43%にものぼっている。図書館は約6割、学童クラブや各種相談員はそのほとんどが非正規職員によって担われている。

 

2 非正規地方公務員の状況

  正規地方公務員数は年々減り続け、総務省調査によれば2016年4月1日現在で2,737,263人と、20年前に比して約54万人、2005年からでも約30万人減っている。

  一方、非正規地方公務員は年々増え続け、総務省調査によれば2005年に約456,000人だったものが、11年後の2016年には約645,000人と約19万人も増加している。つまり、正規地方公務員の削減を補う形で非正規地方公務員が採用されているのである。

 

 (1)非正規地方公務員の類型と人数

   ① 特別職非常勤職員

     地方公務員法3条3項3号に基づき、「恒常的職」に各自治体で採用されている職員(約22万人)。これらの特別職非常勤職員には地方公務員法が適用されないため、労働組合法の適用があり、ストライキ権を含めた労働基本権を有している。

   ② 一般職非常勤職員

     地方公務員法17条により、「恒常的職」に各自治体で採用されている職員(約17万人)。地方公務員法が適用されることにより労働組合法が適用されず、ストライキ権・団体交渉権を有しない。但し、現業職員については「地方公営企業労働関係法」が適用され、ストライキ権はないが団体交渉権・労働協約締結権を有する。

   ③ 一般職臨時職員

     地方公務員法22条により「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に各自治体で採用されている職員(約26万人)。労働基本権については②と同様である。

 

 (2)非正規地方公務員の置かれた状況

    これら非正規地方公務員の置かれた状況については、多くの共通した問題が山積している。

   ひとことでいえば、不安定な雇用と低位の賃金・労働条件である。このため、私たち労働組合の基本要求は「雇用の安定」と「均等待遇の実現」である。

   ① 不安定な雇用

    a) 不安定な雇用

     ・大多数の自治体では雇用期間は長くて1年で、雇用継続の保障が充分ではない。業務が継続するにもかかわらず一方的に雇止めとされるケースが少なからず存在する。

・総務省は2009年の通知で、従来の考え方である「更新」を改め、「(毎年度の予算で職の設置について査定される)新たな職に改めて任用されたものとして整理される」とした。このことから、1年ごとに公募と採用手続きを行うことを原則とした。つまり総務省は、「更新への期待権」を失わせるために、「1年契約を終了させ、改めて公募し、新たな応募者と競わせた上で採用する方式」へと変更したのである。

・この総務省通知は、当事者である非正規地方公務員からすれば、毎年の公募に応募し、採用されなければ働き続けることはできず、不採用となっても争うことは困難となる。つまり、総務省は雇用がより一層不安定になる政策を推進している。

・公務員には労働契約法が適用されないため、「契約通算期間が5年を超える労働者」が「期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」とする「無期転換条項」を活用することができない。総務省通知は、政府が進める雇用安定化政策(有期雇用を無期雇用に転換させる)に逆行している。

    b) 不安定雇用を促進する雇用年限制度

・杉並区においては、1991年に657人だった特別職非常勤職員が2016年には2,125人と、25年間で3倍を上回る人数にまで増えてきている。これら特別職非常勤職員は1年契約を5回までは更新されるものの、6年ごとに全員一律に雇止めされることが20年を超えて行われてきた。この仕組みのことを私たちは「雇用年限制度」と名付けてきた。

・この雇用年限制度によって杉並区では、業務が継続するにもかかわらず、毎年約200名もの雇止めが繰り返されてきた。私たち労働組合の取り組みにより、2010年から、6年目の雇用期間満了者も公募に応募することができるようになった。採用されれば6年を超えて継続して働ける道が切り開かれたのである。しかし、応募しても採用されるか否かは人事当局の裁量となることから、当事者の精神的不安は計り知れないものとなっている。現実に不採用となった人も少なくない。

     ・この雇用年限制度の背後には、政府の考え方が抜きがたく存在する。「臨時職員、非常勤職員を長期間にわたって雇い続けてはならず、短期間で雇用を打ち切るべき」との考え方である。2014年総務省通知においても、「同一のものが繰り返し任用されることは避けるべき」ことが強調されている。

・この政府の考え方は、自治体臨職闘争への否定的総括から導き出されたものである。1950年代半ばから、自治体において臨時職員の正規職員化闘争が巻き起こった。当時、正規職員定数が削減される中で多くの臨時職員が採用され、継続して働いていた。これらの臨時職員が労働組合を結成し、正規職員化を要求して闘いに立ち上がったのである。政府および自治体もこの問題を解決せざるを得なかった。1950年代後半以降、多くの臨時職員が正規職員化をかちとっていく。東京都においては、事務補助員、土木作業員、学校給食調理員、学校警備員、学童擁護員、学童クラブ員、などである。

・つまり政府は「長期にわたって雇用継続がなされれば、雇用の安定と処遇改善を求める声が大きくなり、労働組合結成につながりかねない。そうなると簡単に雇止めできなくなり、処遇改善を余儀なくされる」と総括したのである。この政府の考え方を受けて、長期の継続雇用をすることのないように一定の年数で雇用を打ち切る雇用年限制度を自治体人事当局が編み出したのである。

・2014年の総務省調査によれば、この雇用年限制度は都道府県と政令市では約半数、市町村でも3割近い自治体が導入している。3年若しくは5年に雇用年限を設定している自治体が多いことが分かる。

    c) 雇用年限制度は団結破壊の制度

・雇用年限制度は雇用不安定化にとどまらず、団結破壊の性格をも持っている。非正規公務員が採用されて、仕事や職場の人間関係に慣れるのに2、3年はかかる。職場に慣れてきてまわりを見渡せるようになり、職場の矛盾や賃金・労働条件の格差に気がつく。非常勤同士で処遇について話合い、改善を図ろうとする頃には雇用年限が間近に迫っている。労働組合をつくっても、雇用年限により雇止めされて職場を追われることとなる。つまり、非正規公務員に労働組合を結成する時間的・心理的ゆとりを与えず、結成されても職場から合法的に排除できる仕組みでもある。

・私たち連帯労働者組合・杉並の経験は、このことを裏付ける。結成直後からの団交拒否に対して、東京都労働委員会に不当労働行為申し立てを行い、ようやく団交に応じさせることができたのは約9年後であった。この9年の間に、組合結成当初の6名の非常勤組合員は「6年の雇用年限」により、全員職場を追われてしまっていた。(団交を拒否されているにもかかわらず)新たに加入してくれた非常勤組合員の存在もあり、団交を行わせるところまではできた。しかし、その組合員も1年後には雇用年限により職場から排除され、再度の団交拒否をされることとなった。

・その後、新たな非常勤職員の組合加入を受けて団交を積み重ね、労使関係を安定させるまでに、実に組合結成から20年を要したのである。多くの仲間達の支えがなければ、合同労組でなければ、組合が消滅していたと言っても決して過言ではない。

② 賃金・休暇などの差別的取り扱い

a) 正規地方公務員の半分以下の賃金

  非正規地方公務員の賃金水準は、正規地方公務員のおおむね半分以下と言われている。加えて、正規地方公務員に支給されている期末手当をはじめとした諸手当(退職手当・地域手当・扶養手当・住宅手当など)が、非正規地方公務員には支給されない場合が多い。正規地方公務員の期末手当は約4ヶ月分の月例賃金に相当する。

b) 休暇でも大きな格差

  各種休暇に関しても正規地方公務員との間に大きな格差がある。

 ・2016年総務省調査では、特別職非常勤職員を採用している320自治体中、法定の休暇を付与していない自治体数及びその割合は以下のとおりである。

   年次有給休暇:13自治体(4.1%)

   産前・産後休暇:82自治体(25.6%)

   育児時間休暇:109自治体(34.1%)

   生理休暇:87自治体(27.2%)

   子の看護休暇:144自治体(45.0%)

・杉並区の例でいえば、常勤職員との格差が以下のとおり存在する。

育児休業:正規職員は子が3歳まで取得できるが、非常勤職員は1歳6カ月まで

介護休業:正規職員は6ヶ月間取得できるが、非常勤職員は93日間(約3ヶ月)

産前産後休暇:正規職員は有給だが、多くの非常勤職員は無給

生理休暇:正規職員は有給だが、非常勤職員は無給

病気休暇:正規職員は90日間有給だが、非常勤職員は5日間有給でしかない。

私たち以外にも非常勤職員の労働組合があり、30年近く均等待遇を求めて取り組んでいる杉並区でもこれだけの格差がある。

   ③ 不安定雇用を必然化する「任用」というイデオロギー

a) 雇用安定化政策の対象外

 政府は「任用は労働契約ではない」として、民間労働者に適用される労働契約法やパート労働法を公務員に適用していない。

このため労働契約法18条(無期転換条項)、19条(合理的理由のない雇止めはできない)、20条(有期雇用であることによる不合理な労働条件の禁止)などが適用されない。同様に、パート労働法8条(不合理な待遇の禁止)、10条(通常の労働者と均衡した賃金)、13条(通常の労働者への転換措置)、14条(事業主の説明義務)、22条(苦情処理機関の設置)なども適用されない。つまり、雇用安定と均等待遇に向けた政策の枠外に置かれているのである。

b) 自由に雇止めできる

  公務員の雇止め裁判はことごとく原告敗訴となっている。その原因は「任用は行政処分」で「公法上の勤務関係」であるから、「任期満了により当然退職する」という独特のイデオロギーにある。労使対等原則と実態を重視した労働法ではなく、行政優位で形式論理の行政法の世界がこの判決を支えている。

c) 裁判所も任用イデオロギーを追認

  非正規公務員の雇止めをめぐっては、大阪大学事件の最高裁判決がリーディングケースとされる。大学図書館で更新を繰り返して約5年間働いてきた非常勤国家公務員が、その意に反する雇止めを争った事件である。最高裁は1994年に「任用予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできない」と判示し、原告を敗訴に導いた。この最高裁判決が、以降の裁判で踏襲されている。

d) 政府の不作為

  2007年11月28日、東京高裁は中野区保育士事件において以下の通り判示した。

「本件においては、一審原告らの主張するように私法上の雇用契約の場合と、公法上の任用関係である場合とで、その実質面で差異がないにもかかわらず、労働者の側にとってその法的な扱いに差が生じ、公法上の任用関係である場合の労働者が私法上の雇用契約に比して不利になることは確かに不合理であるといえる」、「反復継続して任命されてきた非常勤職員に関する公法上の任用関係においても、実質面に即応した法の整備が必要とされるところである」と。

しかし政府は指摘された法整備を怠り、2009年通知に見られるようにこの判示に逆行する「新たな地方公務員法解釈」を推し進めている。

e) 私たち組合の考え

  同じ非正規公務員であっても、国家公務員と地方公務員の場合では大きな違いがある。国家公務員は労働基準法が適用除外とされているが、地方公務員の場合は原則適用である。

非現業の地方公務員には第2条の「労使対等原則」が適用除外されてはいるものの、「第2章 労働契約」が適用されていることに留意する必要がある。現業の地方公務員には「労使対等原則」も含めて労働基準法が全面的に適用されている。特別職非常勤職員の場合においては労働基準法・労働組合法が全面的に適用され、その法的地位は民間労働者と同一である。

  つまり実定法上、地方公務員は「労働契約」なのである。一方「任用」は戦前の天皇大権に基づく官吏の登用に際しての概念である。敗戦後、「天皇の官吏」から「全体の奉仕者」へと大転換が行われ、公務員も労働基本権を有する労働者となったことを再確認する必要がある。確かに戦後の公務員法においても「任用」という文言が登場する。しかし、この文言は公務員も含めた戦後労働法制に従って解釈されねばならない。「任用」という文言は公務員法制に残った残滓にすぎず、公務員関係の基本は「労働契約」に置かれるべきである。労働基準法上「労使対等」とされている現業職員およびストライキ権さえ有する特別職非常勤職員さえ「任用」とされ、自治体当局に従属するというようなイデオロギーは直ちに退場させなければならない。

  そもそも政府の「公法・私法」の二分論が官・民労働者の分断を生み、労働組合法が適用されない上に、公務員法も極めて不充分にしか適用されない無権利の非正規公務員を生み出していることに最大の問題がある。

 

 3 労働基本権を有する地方公務員=特別職非常勤職員

   これまで、労働基本権に関する日本の公務員組合からのILO申し立ては、正規常勤職員の立場からのものに限られていたと理解している。ストライキ権を含む労働基本権を有している非正規地方公務員が存在し、労働組合を結成し闘ってきたことを強調しておきたい。

   その一方で100号条約に関して、非正規公務員の賃金差別をILOに訴え続けていることにも留意してほしい。

 

 (1)労働基本権を有する特別職非常勤職員

① 特別職非常勤職員には地方公務員法が適用されない。

労働組合法を適用除外としている地方公務員法58条が適用されないため、労働組合法が適用される特別職非常勤職員は、民間労働者と全く同様にストライキ権を含めた労働基本権を有している。

    (地方公務員法制定以来の45年間、失業対策事業に従事していた技能・労務系の職員も特別職職員として位置付けられ、労働基本権を全面的に有していたことも指摘しておきたい)

   ② 労働基本権を行使した合同労組・ユニオンの結成

1985年の中曽根内閣による「行政改革」の推進以降、正規地方公務員の削減が進められている。それを補う形で臨時職員、非常勤職員が多数雇用される事態が引き続いている。

これらの非正規公務員は雇用が不安定で、低賃金、劣位の労働条件のもとに置かれ続けている。新たに生み出された非正規公務員の中心は特別職非常勤職員である。これらの特別職非常勤職員が活用されることついては、以下に述べるような歴史的背景がある。

a) 歴史的背景

・先述の臨時職員闘争は、一般職としての臨時職員の闘いであった。本来、臨時職員は「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に採用されるべきものである。これに反して「恒常的職」に採用してきた負い目が政府・自治体にはある。このこともあり、政府・自治体は正規職員化を余儀なくされたのである。

・1985以降の非正規公務員の活用に当たっては、臨時職員の正規職員化闘争の再現を避けるための工夫が凝らされた。そのひとつが臨時職員としてではなく、特別職としての非常勤職員採用である。

・そもそも臨時職員を恒常的な業務には採用できない。非常勤職員であれば、恒常的な業務に採用できる。しかし、一般職の非常勤職員は地方公務員法17条に基づく競争試験若しくは選考を経なければ採用できない。また地方公務員法を素直に解釈すれば、賃金や労働条件について差別的な取り扱いはしにくい。つまり、手続き的に面倒で人件費の削減も簡単にはいかない。そこで活用されたのが特別職非常勤職員としての採用である。特別職であれば、労働関係法の枠内でさえあれば、自由に採用し、賃金・労働条件も任意に設定できからである。

b) その一方で、特別職であれば労働組合が結成できる。1980年代末以降、これら特別職非常勤職員の加入する労働組合結成が相次ぐ。その一翼を担ったのが「誰でも、一人でもはいれる」合同労組・ユニオンであった。

私たち連帯労働者組合・杉並は、地域に基礎を置く合同労組である連帯労働者組合の杉並地域支部として1989年に発足した。ほぼ同時期に、東京都では東京公務公共一般労働組合、京都市ではユニオン「らくだ」(京都自治体関連労働者自立組合)、大阪府では大阪教育合同労働組合など、特別職非常勤職員の加入する労働組合の結成が相次いだ。

 

 (2) 合同労組の団交権確立の闘い

   ① 連帯労働者組合・杉並の結成と団交権確立の闘い

私たち連帯労働者組合・杉並は結成と同時に杉並区に団交を申し入れた。しかし杉並区は、「杉並区の職員が主体となっていない労働組合の団交には応じられない」と、職員団体の論理をもって団交を拒否した。私たちはストライキや抗議行動を重ね、団交に応じるように杉並区に求め続け、1993年には東京都労働委員会に不当労働行為申し立てを行った。当時は特別職非常勤職員の加入する合同労組が少なかったこともあり、1997年、東京都労働委員会は、命令ではなく和解による団交開催を労使に勧め、双方ともに受け入れた。

団交開催後の組合員の解雇を受けて、2000年に再度不当労働行為申し立てを行い、杉並区が団交応諾義務を有することを確定する命令を獲得できた。私たちは団交獲得後も粘り強く取り組みを進め労使関係を安定させ、雇用継続、賃金・労働条件の改善を一歩一歩前進させてきている。

杉並区の団交拒否が続く中で、結成当初の組合員は「6年雇用年限」により全員が解雇された。団交を拒否されている組合に加入しようとする非常勤職員は極めて稀である。私たちは力の限りを尽くして組合加入の働きかけを継続した。新たな組合員の加入を受けて労使関係の安定に至るまで、私たちは2次にわたる解雇撤回闘争と2度の労働委員会申し立てなど、20年の歳月を要したのである。

   ② 東京公務公共一般労働組合と大阪教育合同労働組合の団交拒否を打ち破る闘い

     総務省の2009年通知を受けて、東京都と大阪府が、それまで受け入れてきた特別職非常勤職員の労働条件に関する団体交渉を拒否してきた。双方とも2009年総務省通知に示された「(毎年度の予算で職の設置について査定される)新たな職に改めて任用されたものとして整理される」を論拠とした団交拒否である。いずれも中央労働委員会が東京都と大阪府の主張を退け、最高裁で確定している。以下、それぞれについて簡略に述べる。

    a) 東京都

      東京都は、消費生活相談員に関する東京公務公共一般労働組合との団交を「(相談員は、次年度の任用が確定していないから)次年度の賃金・労働条件は団交事項ではない」、「任用は行政行為であり、東京都は次年度の使用者には当たらない」などの理由で拒否してきた。しかし中央労働委員会は「相談員は、次年度に任用される可能性が高く、次年度の組合員に都の任用する相談員が存在する可能性は現実かつ具体的に存するということができる」として、次年度の労働条件は義務的団体交渉事項であり、東京都が労働組合法上の使用者に該当することを認めた。

b) 大阪府

  大阪教育合同労働組合は「組合員の次年度の継続雇用」を求めて大阪府に団交を申し入れた。大阪府は「会計年度を超えた継続的な任用、更新は法律上も認められておらず、常に新たな任用である」として団交を拒否した。大阪府労働委員会は府の主張を認めてしまったが、中央労働委員会はこれを退けた。中央労働委員会では「(組合員は)任用が繰り返されて実質的に勤務が継続することに対する合理的な期待を有する」として「本件団交事項は義務的団体交渉事項である」と組合の主張を認めた。

 

(3) 合同労組を忌避する政府

  ① 総務省通知発出の経過と背景

   a) 2009年通知

     先述の中野区保育士事件高裁判決は、2007年11月28日に言い渡された。この判決により、原告である4名の保育士の「(再任用への)期待権侵害」が認められ、約200万円の損害賠償が命じられた。ちなみに4名の原告はいずれも東京公務公共一般労働組合の組合員である。この高裁判決を受けて東京公務公共一般労働組合は中野区との独自交渉を積み上げ、原告の職場復帰を実現するという、自治体においては極めて稀な成果を獲得している。

     この判決を契機に、総務省は2008年に非正規公務員について全国調査を行い、2009年に通知を発出した。この通知の最大の狙いは「雇用継続への期待権」が発生しないように手立てを講じることにあった。そのために、この通知で新たにひねり出した屁理屈が「(毎年度の予算で職の設置について査定される)新たな職に改めて任用されたものとして整理される」という、更新を期待させないための新たな法解釈である。

b) 2014年通知

  先述の東京公務公共一般労働組合の中央労働委員会命令は2011年11月8日であり、2014年2月7日に最高裁で確定した。大阪教育合同労働組合の中央労働委員会命令は2012年11月30日で、2015年3月31日に最高裁で確定している。これら中央労働委員会命令と最高裁確定判決とを契機に総務省は、2012年に再度の全国調査を行い、2014年に再度の通知を発出した。この通知の最大の狙いは特別職非常勤職員を一般職に切り替え、労働基本権を剥奪する点にあった。特別職非常勤職員について、2009年通知では「特別職として任用することが妥当なのかという点について検証すべきである」としていたところを、2014年通知では「本来、一般職として任用されるべきであり、特別職として任用することは避けるべきである」と一般職化を各自治体に強く促したのである。

c) 2017年法改正

  2014年通知に直ちに従い、一般職に切り替えた自治体は東京都と大阪府であった。いずれも2009年総務省通知の論理に従って団交を拒否した自治体である。合同労組の闘いにより団交拒否を打ち破られた自治体にとって、一般職化は労働委員会申し立てを封じる絶好の手立てとなる。加えて地方公務員法の職員団体制度の枠に収まらない合同労組の労働基本権行使を制限できる。この二つが東京都・大阪府が一般職化を急いだ理由である。

  しかし、全体として一般職化は簡単には進まなかった。そこで総務省は2016年、3回目となる全国調査と研究会を設置し、法改正による一般職化の強制に向かうこととした。全国調査結果の中で、注目すべきは特別職の一般職化の進展状況である。1,165自治体中、新たに一般職化を実施したのは29自治体にとどまっている。

「各自治体ごとの判断に任せていては、一般職化は進まない」、「法改正により強制しなければならない」と総務省が考えたことは想像に難くない。

   ② 合同労組の闘いを忌避する政府

     以上に述べたように、総務省通知の発出は合同労組の闘いの前進に過敏に反応し、逆行する対応をしてきている。

a) 中野区保育士判決を受けて総務省は、「期待権の保護」や「法の整備」に向かうのではなく、「期待権を持たせないように法解釈を変更する」道をとったのである。これが2009年通知である。

b) 東京公務公共一般労働組合の中央労働委員会命令が最高裁で確定し、大阪教育合同労働組合の中央労働委員会命令が出されて発出されたのが2014年通知である。

特に大阪教育合同労働組合の中央労働委員会命令が「雇用継続要求は義務的団交事項」と判断したことに、総務省が大きな危機感を抱いたことは想像に余りある。「任用予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできない」とする大阪大学最高裁判決が、実態を重視する労働法の世界で「雇用継続要求は義務的団交事項=任用を要求する権利も法的利益もある」と覆されたからである。そこで総務省は、労働基本権を有し労働法を活用できる(=労働委員会申し立てのできる)特別職非常勤職員を一般職に移行させ、労働委員会を使えないようにすること、任用イデオロギーを防衛すること、を一層推進することとしたのである。

c) しかし、一般職化は総務省の期待するようには進まなかった。多くの自治体は、一般職化すれば採用手続きが面倒で正規常勤職員との均等待遇が必要とされ、賃金や休暇などの労働条件を大きく改善しなければならないと考えている。つまり人件費が飛躍的に増大することを避けるために、今まで通り特別職非常勤職員として雇い入れる道を選んだのである。特別職であれば一般職とは異なり、地方公務員法で必要とされる手続き抜きに採用や賃金・労働条件を定めることができるからである。

  一向に進まない一般職化を前にして、総務省が法改正によって自治体に強制しようと考えたものが今回の法改正である。

e) 以上の経過を見れば明らかなように、今回の法改正は労働法を活用する労働組合の活動を忌避し、解散させることを狙った「労働組合つぶし=団結破壊の支配・介入」とさえ言いうるものであることを強調しておきたい。

 

4 今回の地方公務員法改正のあらまし

 (1)労働基本権を剥奪する「一般職化」

   ① 先行する東京都・大阪府の「一般職化」を、法改正により全国的に強制するもの

    a) 特別職非常勤職員は一般職に移行されることによって、地方公務員法が適用されることとなる。地方公務員法では現業職員を除いて、労働組合を結成することはできない。同一自治体の職員のみによって構成される「登録職員団体」にならなければ、交渉することさえ確保できない地位に置かれる。この職員団体制度の背景には「(地方公務員でない)外部勢力排除=合同労組排除」のイデオロギーが存在する。

b) 自治体への「助言」だけでは一般職化が進まないことを目の当たりにした総務省が、全国の自治体に強制することを求めて、今回の法改正を行おうとしていることは明らかである。

   ② 労働基本権剥奪の根拠とされる措置が全くなされていない

     しかし、法改正によっても労働基本権を奪うことはできないはずである。政府は労働基本権を制限できる根拠として「身分保障」、「法定の労働条件」、「代償措置の存在」の3つを挙げている。一般職化されても、しかし、非常勤職員にはこれらの根拠が成立しない。

     正規常勤職員でさえILOから労働基本権の確保が勧告されている状況下で、勧告に逆行し、一般職化して労働基本権をはく奪する法改正を行おうとする政府の考え方は私たちの理解を超えている。

    a) 身分保障

      地方公務員法28条では、法定された事由でなければ免職や懲戒処分などを受けることがないとされ、この条項は一般職非常勤職員にも適用される。しかし、「期間満了を理由にいつでも雇止めできる」との政府の考え方を変更しない限り、1年任期の一般職非常勤職員にとっては全くと言ってよいほど意味を持たない。

b) 法定の勤務条件

  一般職非常勤職員の賃金や休暇などの労働条件は条例で定めることとなっている。しかし具体的な金額や休暇に関して、ほとんどすべての自治体条例では首長の裁量で定める規則などに委ねている。東京都・大阪府ともに規則で定めている。労使交渉で決めるべき余地が常勤職員に比べてはるかに大きいと言える。

c) 代償措置の存在

  総務省の見解は、人事委員会の勧告などについては非常勤職員にも適用される、というもののようである。しかし東京都・大阪府での人事委員会勧告は、一般職非常勤職員には全くと言ってよいほど触れておらず、賃金や労働条件についての改善勧告は一切なされていない。そもそも全国1,782自治体中、人事委員会設置は47都道府県、20政令指定都市、和歌山市、の68自治体にすぎない。圧倒的多数の96%の自治体は人事委員会勧告制度の枠外にある。

③ 非正規地方公務員との協議が充分になされていない

  今回の法改正に当たり、非正規当事者組合との協議は極めて不十分であることを指摘しなければならない。法改正を提言した「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」は非公開で行われ、私たちの組合が法改正に対して意見書(資料1)を提出したものの、まともに検討される時間的余裕もない中で法案の国会上程がなされている。

  そもそもこの研究会の委員9名中、労働者側委員はわずか1名のみである。厚生労働省の「労働政策審議会」と同様に、公・労・使の三者構成による検討・審議を経て法改正を行う仕組みを早急に確立すべきである。

 

(2) 「会計年度任用職員」として「任期1年以内」を法定

   ① 入口規制の地方公務員法を変質させる

     地方公務員法は「任期の定めなし(無期)」を原則としている。例外は「(1年以内に廃止が予定されている)臨時の職」に採用される臨時的任用職員のみである。この意味において地方公務員法は、臨時的業務についてのみ有期雇用を認める「入口規制」を採用している。

     今回の法改正は「恒常的に継続する業務」に従事する非常勤職員を「会計年度任用職員」として「任期1年以内」を法定し、法律により雇用を不安定にするものである。労働基準法の規定に従い2年あるいは3年の任期を定めている自治体に、1年任期を強制しようとする法改正と言わねばならない。

2012年の労働契約法改正により「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換させる」仕組みが法定された。政府は自ら定めた雇用を安定させるための政策に逆行する地方公務員法改正を行おうとしていることを強調しておきたい。

   ② 毎年度ごとの公募・採用を繰り返す

     これまで「更新」として雇用継続されてきた非常勤職員を、「毎年の公募に応じて競わされ、採用されなければ継続して働くことはできない状況が繰り返される」状況に落とし込むことになる。当事者は毎年「採用されるか否か」の不安にさいなまれ、「雇止め」は「採用の自由」のもとに合法化される。

   ③ 賃金で差別と分断が持ち込まれる

     法案では「会計年度任用職員」を「フルタイム職員」と「パートタイム職員」とに二分する。「フルタイム職員」には給料と諸手当を支給するが、「パートタイム職員」には報酬と期末手当のみの支給となる。同じ雇用形態で同じ業務に従事しながら、勤務時間のみによって賃金に差をつけることは、明らかに「不合理な差別」である。ILO100号条約に違反する法改正と言わねばならない。

 

<違反の具体的内容>

日本の労働組合法はILO条約に適合している。自由設立主義を採用し、事前の認可や届け出などの必要はない。様々な業種・法的地位の労働者が自由に団結することができ、労使対等原則にのっとり団体交渉を行い、労働委員会に不当労働行為を申し立てることができる。

その一方、公務員法の「職員団体」はILO条約に適合していない。具体的には以下の通り。

① 労使対等原則が否定されていること

② 自治体職員が多数を占めなければならないこと

③ 自治体当局を交渉に応じさせるためには、「同一の自治体の一般職職員によってのみ組織される」ことを要件とし、事前に「登録」しなければならないこと

④ 団体交渉権がなく、労働協約を締結できないこと

⑤ 予備交渉で「議題・時間・場所」を決めなければ交渉できないこと

⑥ 交渉打ち切り規定が法定されていること

⑦ 労働委員会に不当労働行為申し立てができず、あっせん・調停・仲介などを求めることもできないこと

 今回の地方公務員法改正により、労働組合を結成している特別職非常勤職員は、労働組合の解散を余儀なくされ、職員団体結成を強制される。これまで自治体当局と締結した労働協約の無効化も強制される。

 

1 違反の具体的内容

 私たちは今回の法改正が、以下の点においてILO条約に違反していると考え、申し立てに及んだものである。

(1)87号条約

   ① 事前の認可(登録)を余儀なくされること:2条違反

   ② 自ら選択する団体を設立(加入)できない(労働組合を解散し新たに職員団体を結成しなければならない)こと:2条違反

   ③ 行政的権限(法改正)によって労働組合が解散させられること:4条違反

   ④ 日本政府が「団結権を自由に行使するための必要にして適当な全ての措置を取る義務」に逆行する法改正を行っていること:11条違反

 

(2) 98号条約

   ① 反組合的な差別待遇に対する保護を受けられなくなること(労働委員会に救済申し立てができなくなること):1条違反

   ② 使用者からの干渉(支配・介入)からの保護が無くなること(労働委員会に救済申し立てができなくなること):2条違反

   ③ 労働協約締結権が剥奪されること:4条違反

 

2 労働基本権が奪われることによる具体的な影響

 ① 交渉力が削がれる

   私たちの組合を含め、非正規公務員当事者組合の基本要求は雇用の安定と均等待遇の実現である。この要求実現のためには労使対等の団体交渉権の確保が欠かせない。当事者組合は(ストライキを構えて)交渉を積み上げ、労働協約を締結し、少しづつではあっても、一歩一歩着実に要求実現に向け前進してきた。団交権を奪われることは労働組合の生命線を断たれることにも等しい。

 ② 労働委員会が使えなくなること

   私たちの組合を含め、非正規当事者組合は様々な形で団交拒否、組合への支配・介入などを受けてきた。不誠実な団交で要求が全く前進しないことも経験してきた。このような場合、労働委員会に不当労働行為を申し立て、あるいは斡旋や仲介を申し出ることによって事態の打開を図ってきた。このような取り組みができなくなれば、要求の前進が大きく阻害されることはあまりにも明らかである。

 

3 最低限、地方公営企業労働関係法を適用すべき理由

 ① 非正規公務員は、技能・労務系公務員と同様の地位にある

   総務省によれば、非常勤職員は「本格的業務」には従事しない、とされる。「本格的業務」とは、「組織の管理・運営自体に関する業務や権力的業務など」と説明されている。

また、課長級以上に昇任することは予定されていない。

   このような地位は、技能・労務系の職員と同様である。したがって、技能・労務系職員と同様に地方公営企業労働関係法を適用しなければならないはずである。

 ② 民間委託できる業務

   近年、市民課や税務課などの窓口業務を民間会社に委託する自治体が増えてきている。委託を受けて働くのは民間労働者であり、当然のことながら労働基本権を持っている。つまり、いざとなればストライキを打つこともできるのである。同様の業務に従事する非常勤職員の労働基本権を剥奪しなければならない理由は見出せない。

 

以上です。審査をよろしくお願いします。

2019年1月、申立てが不受理となる!

全国326団体からの署名提出、来日したカレン・カーチスILO結社の自由委員会事務局長との面談、パリ・ジュネーヴへの要請の旅など、私たち申立て団体は受理に向け、やれることは全てやりつくしました。
2019年1月、ILO結社の自由委員会は私たちの申立てを、ナショナルセンターからの申立てではないからという、とんでもない理由で不受理としました。
私たちはへこたれず、専門家委員会へ申立てを行い、2020年2月、同委員会の結論が公表された次第です。