この度は、「同・両性愛者のメンタルヘルスに関するアンケート調査結果報告」のページをご覧いただきありがとうございます。本調査を実施した、東北大学教育学部教育心理学コース4年の中澤恵と申します。
 このページは、私中澤が卒業研究の一環として2018年11月~12月に実施した「同・両性愛者のメンタルヘルスに関するアンケート調査」の結果報告のページです。
 調査の実施に際しましては、多くの皆様からご協力いただき、誠にありがとうございました。
 本調査結果に関するご質問、お問い合わせ等は、ページ最下部に記載の連絡先までご連絡ください。

本調査の目的

 同・両性愛者は、異性愛者と比べ、メンタルヘルスの問題を抱えている人の割合が高いことがこれまでの調査研究によって明らかとなっています1。異性愛を前提とした現代社会の中で、同・両性愛者は同・両性愛者特有のストレスを日々感じており、こうした過剰なストレスがメンタルヘルスに悪影響を及ぼしていると考えられています2
 一方、心理学の研究によれば、人はストレスを感じていても、自分にとって大切な人からの支えがあれば、メンタルヘルスを悪化させにくいということが分かっています3。これを踏まえると、同・両性愛者においても、大切な人から性的指向を受容されていれば、たとえストレスフルな環境下にあっても、その人から支えてもらったり支えを期待したりできることによって、メンタルヘルスの悪化を防げる可能性があるのではないかと考えました。

 以上より、本調査では、「大切な人」から性的指向を含めた自分自身が受容されていると感じることが、同・両性愛者のメンタルヘルスの維持に影響力を持つのかについて明らかにすることを目的としました。

方法

 無記名式のインターネットフォーム(Googleフォーム)を用いて、同・両性愛当事者を対象としたアンケート調査を行いました。(実施時期:2018年11月11日~12月2日)

・調査対象者
自分の性自認に対して同性の人が恋愛対象になると自認している者(本研究における同・両性愛者の定義)

・質問項目
年代、性的指向、異性愛者としての社会的役割を期待された際のストレスについて※1、自分にとって大切だと思う人からの性的指向受容感について、自己の主観的評価(自尊感情)※2

※1 日常生活において、「『結婚しないの?』と言われたとき」「好みの同性の人を見て『あの人タイプ』と言えないとき」など異性愛者的な役割を期待された場面において、どれほどのストレスを感じたかについて尋ねました。
※2 本調査では自尊感情を精神的健康の指標としました。

・データの操作

 240人の方からアンケートを回収し、そのうち、分析対象とならない回答、および欠損値の見られた回答を除いた、有効回答数203人を分析の対象としました。
 その上で、異性愛者的役割期待ストレス尺度得点(高群、低群)および「重要な他者」からの性的指向受容感尺度得点(高群、低群)を独立変数、自尊感情尺度得点を従属変数とした二要因分散分析を行いました。尚、群分けに関しては、理論的中央値3.5点から±0.25点の範囲内に属する回答を中群(n=54)として除外した上で、尺度得点3.25点以下を「低群」、3.75点以上を「高群」としました。

結果と考察

・調査協力者の属性
 10代の方から60代以上の方まで幅広い年代の方にご協力いただきました。全体としては20代が最も多く約4割を占めていました。

・同・両性愛者の自尊感情に関連する要因
①異性愛者としての社会的役割を期待された際、強いストレスを感じていた人は、あまりストレスを感じていなかった人よりも、自尊感情が低かったことが分かりました。

②自分にとって大切な人から性的指向を含めた自分自身が受容されていると強く感じていた人は、受容されているとあまり感じていなかった人よりも、自尊感情が高かったことが分かりました。
③大切な人から性的指向を含めた自分自身が受容されていると強く感じている人は、たとえ異性愛者としての社会的役割を期待された際にストレスを強く感じていたとしても、自尊感情が低くなりにくいということが分かりました。

 これらのことから、自分にとって大切な人から性的指向を含めた自分自身が受容されていると強く感じることは、同・両性愛者のメンタルヘルスの維持にとって影響力を持つということが明らかになりました。
 すなわち、自分の子どもや友人など身近な人から性的指向のカミングアウトをされた場合に、それを肯定的に受容することが、カミングアウトをした同・両性愛者のメンタルヘルスの維持につながるということが示唆されたといえます。

本調査の限界と課題

・調査協力者の性別について考慮していない点
 本調査では、調査協力者の性別(生物学的性、性自認)について尋ねていません。しかし、過去の調査研究において、同性愛への態度や捉え方に性差が多数報告されていたことを踏まえると4,5、本調査においても、回答傾向に性差が生じていた可能性があると考えられます。また、本調査では、回答者の生物学的性と性自認が一致しているかについて考慮していませんが、この違いによっても回答傾向に違いが生じていた可能性があると考えられます。よって今後は、このような性別についても考慮した調査の実施が必要であると思われます。

・「大切な人」として誰を思い浮かべたかによって、結果が大きく異なっていた点
 本調査では、大切な人として一人だけを思い浮かべてもらい、その人からの性的指向の受容感について尋ねたのですが、この際、恋人を思い浮かべた人(65人、32%)と、親を思い浮かべた人(55人、27%)を比べると、恋人を思い浮かべた人の方が性的指向受容感が有意に高いという結果が見られました。人にとって大切な人は、一人ではなく複数人いる場合が少なくないと考えられますが、今回はそのうちの誰を思い浮かべたかによって、結果が大きく異なっていたと言えます。よって今後は、「誰」からの性的指向の受容が同・両性愛者のメンタルヘルスにどのような影響を与えるのかについて、より詳細な検討が必要であると思われます。

参考文献

1) 日高庸晴(2000).ゲイ・バイセクシュアル男性の異性愛者的役割葛藤と精神的健康に関する研究.思春期学,18(3),264-272.
2) Meyer, I. H. (2003). Prejudice, social stress, and mental health in lesbian, gay, and bisexual populations: conceptual issues and research evidence. Psychological Bulletin, 129(5), 674-697.
3) 久田満(1987).ソーシャル・サポート研究の動向と今後の課題.看護研究,20(2),2-11.
4) 和田 実(2008).同性愛に対する態度の性差――同性愛についての知識,同性愛者との接触,およびジェンダー・タイプとの関連――.思春期学,26(3),322-334.
5) Herek, G. M., Cogan, J. C., Gillis, J. R., & Glunt, E. K. (1998). Correlates of internalized homophobia in a community sample of lesbians and gay men. Journal-Gay and Lesbian Medical Association, 2, 17-26.

お問い合わせ

 本調査は、調査実施者が東北大学教育学部教育心理学コース2018年度卒業研究の一環として行ったものです。
 本調査に関するご質問、お問合せは下記連絡先までお寄せください。

≪調査実施者≫
東北大学教育学部教育心理学コース4年
中澤恵
(指導教員:東北大学大学院教育学研究科 准教授 神谷哲司)
連絡先:naka.sotsuron1◎gmail.com(◎を@(半角)に置き換えてください。)