私は、子どもの頃から健康が取り柄でした。
毎年皆勤賞をとって当たり前。
社会人になってからも健康診断では、毎年異常なし。
それを当たり前だと思って生きてきて、それが簡単に
覆される時がくるなんて、夢にも思っていませんでした。
きっかけは、インテリアコーディネートの仕事を夢見て、
希望を抱いてシェアハウスの運営会社に転職したこと
でした。
数年前に都内から異動して郊外の企業で働いていた
私にとって、久々の東京での勤務、憧れのオフィスで
働ける嬉しさ、新しいことができるワクワク感、
自分の力を発揮したい想いで希望いっぱいに溢れていました。
その会社での勤務はたった1年間でしたが、その後の
自分の価値観、人生を大きく変える出来事になったのです。
配属先は営業部。
仕事は多岐にわたり、賃貸物件の掃除やハウスメンテナンス
・物件のご案内・契約手続き・入居者フォロー・新規物件の
オープン準備やインテリアコーディネート・家賃の回収…etc…
会社の本部から次々と更新されるGoogleカレンダーの
スケジュールを見て、動くスタイルでした。
物件のエリアは東京、神奈川、千葉、埼玉。
人生初めての営業職に、外回り。
地図を見るのが苦手な上に、道を覚えるのが苦手、
ずっと室内での仕事だったので体力もあまりないという、
ないない尽くしの私にとって、移動するのも一仕事でした。
そして現地に行ったら行ったで、想定外の業務が
降りかかってきます。
エアコン室外機に草が絡まって動かない、庭の草や木が
伸びすぎていて洗濯物につくので刈ってほしい、
TVがつかなくなった、シンク上の食器棚の扉が外れた、
風呂場の窓にカーテンをつけて欲しい…etc…
もともとインドアでしたが、草を刈るならまだしも、
私は、DIYが得意なわけでも機械に強いわけでもなんでもありません。
子供の頃から誰の目から見ても不器用なくらい
不器用でした。
真っ直ぐ切っているはずが、曲がっているというのは
ザラで、図工はペースが遅い割にお粗末で散々な成績。
社会人になってからはドライバーでネジを止める
くらいしかしていません。
そんな私でも、否応なく、会社の経費と時間を使ってるので、
時間の許す限り自力でなんとかしてこなさなくてはいけないのです。
しかも、次から次へとこなすべき案件は舞い込んできます。
とりわけお客様との約束がある場合には遅れるわけにはいきません。
いつもギリギリなんとか電車に飛び乗って次の予定に
間に合うという、綱渡りの毎日をしていました。
こうなると、当然のように削られていったのが昼食の時間でした。
お昼が16時過ぎになったり、昼食がとれなかったり、
電車の乗り換え待ちが10分の間に、駅構内のコンビニへ
走ってホームのベンチで人目を忍んで食べたり…
時には、一緒に物件に向かっていた同僚が都内の
ターミナル駅の交差点を渡りながら、「食べれる時ないから」と
おにぎりを食べ始めた時もありました。
たくさんの人とすれ違う中で、です!!
衝撃的でした。
普通に座って食べたい。
落ちついて食べたい。
それだけのことが、とても高い望みのように感じてなりませんでした。
お昼に食べるものは専ら、物件に行ったり、帰社する時に通る
コンビニのおにぎりパン。
パンと言っても、お惣菜パンより、ドーナツ系が好きだったので菓子パン。
食事が取れない時には、移動中に空腹しのぎにチョコレート。
時間の合間に、手っ取り早く食べられるものばかりでした。
夕方に帰社すると、お客様との契約に入居者の方とのメール対応業務に、
一番苦手だった家賃の回収。
口座振替されていなくて、メールや電話をしても解決に至らない方に
直接出向いて、滞納されている家賃をいただいてくる仕事です。
上司から「家賃受け取ったら帰ってきて」と言われるものの、
正直、素人の私が出向いて、家賃をいだだけるほど、甘くありません。
途中で泣きつくように、上司に連絡して指示を仰ぐものの、
うまくは行きません。
それでも、回収するまでは帰れないのです。
そうやって、毎日残業時間だけが増え、ゆうに150時間は
軽く超えていきました。
月間の労働時間は通常勤務と合わせて350時間になる
こともありました。
不思議なもので、残業が100時間超えてくると自分で何かを
考えようとかそういう意識がなくなって、
とりあえず目の前の仕事をこなすだけになっていました。