不思議なことに、訪れた客から
「ゆにわのごはんを食べて開運した!」
「たった一回の食事で、人生が変わった」
といった声がたえないのだ。
その評判を聞きつけ、多くの方が日本全国から足を運んでいる。
それだけではない。
なんと中には「毎日のごはんをゆにわで食べたいから」と、家族で近所に引越しをする人までいるのだ!
ゆにわの周りには、さながら大家族のように、毎日ゆにわでごはんを食べる人たちがたくさんいる。
年齢層も、職業も、出身地も、みんなバラバラ。
けれど、文字通り同じ釜の飯を食い、本当の家族のように仲がいい。
なにより、その空間はいつも幸せな空気に満ちている。
しかし、その裏舞台では、毎日のごはんを守るために、ドラマティックな挑戦の日々が繰り広げられていた。
「ごはんを大事にする」ということは、言葉にするのは簡単だ。
しかし、それを実践するとなると、そうはいかない現実がある。
だからこの場所では、〝みんなのごはんを、みんなで守る〟という輪ができているのだ。
なんと、本作の編集を担う奥田氏も、ゆにわの食事に感銘を受け、
「このごはんを家族に、子どもに、食べさせてあげたいから」と、
東京から、ゆにわの近くへ引っ越しをするという一大決心をする。
一人暮らしや核家族が多くなる中、本来の家族という枠を越えて協力し合い、
ゆにわというひとつの飲食店が、たくさんの家庭の食卓を担っている。
そして、その輪は年々大きくなり、食で人生を変えたいと望む人たちとの出会いがたえない。
ここに現代の食の理想の形があるかのように見えた。
ところが、その輪が大きくなるにつれ、
その背後に横たわる、大きな〝食の問題〟に直面するようになる。
安心安全な食材をつくっている生産者を尋ねるほど、
活躍する料理人たちと話すほど、食の世界の闇を知るようになる。
毎日ごはんをつくることに苦悩する主婦。
いい食材をつくっても理解されず、かつ適正価格で買ってもらえないために生活が苦しい生産者の葛藤。
美味しいものをつくるほど原価がかかって、お店を続けられなくなっている料理人の嘆き…。
など、お金の限界と、食産業の問題に直面。
本来は、美味しいごはんをつくる人も食べる人も幸せになるはずなのに、
逆に食に携わる人ほど、幸せから遠のいている・・・。
そういった現実と闘う人々と、料理人ちこが出会う中で、
「届け手(生産者)」、「作り手(お母さん&料理人)」、
「食べ手(消費者)」という枠を越えた、新たなコミュニティーが生まれていく。
これは彼女にとって、「日本の食を変える」という、新たな挑戦のはじまりでもあった・・・。