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 全国の信用金庫から次世代の経営を担うメンバーが集う「しんきんアカデミー」。11月開催の講師を務めて頂くのが日経FinTechの岡部一詩編集長(37歳)です。日経FinTechは2016年創刊で金融機関のほか、関連企業を読者に抱え、テクノロジーの潮流から金融の未来を読み解くメディアです。岡部編集長は10年近くIT業界の取材を重ね、直近の5年は特に金融とITをかけ合わせた「FinTech」領域に焦点を当ててこられました。しんきんアカデミー受講者と同世代で、金融機関への取材も豊富です。今回、アカデミーの皆さんと11月お会いする時に深くお話する金融機関におけるDXについてお話を伺いました。

 

――変化が激しい時代において、これから信金の競争力の源泉はどこにあると考えておられますか。 

岡部:10年スパンで金融機関の役割について考えると、信金は大きなチャンスが訪れるはずです。私はすべての金融機関がオンラインを主戦場とするような未来を描いてはいません。もちろん、金融分野でデジタルが占める割合はどんどん高くなっていきます。その一方で、オンラインサービスですべての企業のニーズを満たせるとは考えづらい。やはりハイタッチ営業といいますか、かゆいところに手が届く小回りが効いた金融機関は不可欠です。対面でしっかりと顧客のニーズを聞き、それに合わせた商品を提案するところは残るでしょうね。そして、それができる有力候補が信金だとみています。

 

――なるほど。競争力の源泉は「小回りが効き顧客との結びつきが強い」という点ですね。未来は明るいですね。 

岡部:はい。ただ現状維持のままで良いかといえば、そうではありません。インターネットを通じたサービスを当たり前のように享受している個人ユーザーの視点に立つと、今の金融サービスが不便に感じることが多々あるはずです。住所変更一つをとっても、窓口に出向かないといけないケースは少なくありません。新型コロナウイルス感染拡大により、メガバンクを中心に非対面の動きは加速していますが、地銀や信金ではまだ手が回っていないところも多いのではないでしょうか。

 対面重視の業態を貫くとしても、消費者にとって不親切な部分は改善しなければなりません。結果として、業務効率化にもつながるはずです。ただし、逆はないと考えています。業務効率化を主眼に、例えば手続きのオンライン化を進めたとしても、ユーザーの利便性が向上する可能性は低いと思っています。あくまで、入り口はユーザーであるべきです。お飾りの顧客志向では期待できる成果は得られません。

スマートフォンの普及で消費者は便利なサービスに慣れ、目は肥えています。そこでカギを握るのがスタートアップとの連携です。

 

――たしかにFinTech関連のベンチャー企業は増えています。信金をはじめとした地域の金融機関はどう関わりをもつべきだと考えられますか。 

岡部:地域の金融機関とスタートアップの親和性は極めて高いと考えています。理由は3つあります。まず、FinTech関連のベンチャー企業が、地域金融機関の力を求めています。ベンチャー企業は高い技術力や魅力的なサービスを持っていますが、特に地域での営業力を持ち合わせていません。地域金融機関は、自分たちに足りないものを補ってくれる最適なパートナーです。

 地域金融機関にとっても、ベンチャー企業は魅力的な協業先なはずです。ベンチャー企業が提供する商品を取引先に提供して手数料収入を得られますし、何より取引先のDX(デジタル・トランスフォーメーション)にも貢献できます。両者は蜜月関係にありますが、実際の成果につなげられるかは金融機関の担当者自身が、ベンチャー企業のサービスを深く理解できるかにかかっています。これができなければ、取引先に魅力を伝えられません。

最後にスタートアップ自身が取引先となるケースも考えられます。成長著しい融資先として伴走することもできるでしょう。

 

――DX領域の取り組みは、金融機関のなかで濃淡がでていると感じています。信金が取り組むべきことは何でしょうか。

岡部:私が取材している感覚ですが、金融機関の上層部は危機感もあり理解が進んでいます。課題は現場への浸透です。日々忙しい現場を引っ張るリーダークラスの方々が重要性を理解し、腹落ちすれば一気に進むと思います。

 先ほど申し上げたように、自分自身が一顧客という目線にたてば、何を改善しなければならないのかが見えてきます。メガバンクや大手地銀も、一昔前に「とりあえずオンライン化したサービス」のテコ入れに動いています。企業向けサービスを集約したポータルサイトを構築したり、個人向けスマートフォンアプリの利便性を高めようとしたりしています。皆さんもそうだと思いますが、消費者の立場に立つと、何でもかんでも窓口に行かなければならないとしたら困りますよね。やはり消費者が何を望んでいるのかを突き詰めることが最初のステップです。

 

――アカデミー受講生にひとことお願いします。

岡部:ぜひ生煮えでも構いませんので、アイデアを持ってきてください。皆さんとじっくりと話せる時間もあると伺っています。活発な議論ができることを楽しみにしています。

 5年ほど金融機関をはじめとしたFinTech関連の取材をしてきましたが、金融機関は変革の時期を生きており、その印象は大きく変わりつつあります。地域金融機関も同じです。岐阜県高山市にある飛騨信用組合が2017年12月から始めた電子地域通貨「さるぼぼコイン」はその好例です。外部から登用された古里圭史さんが中心となって取り組まれたものです。

 ポイントは行動力のある方が1人いれば一気に変えられることです。メガバンクのように大きな組織を1人で変えるには時間がかかりますが、コンパクトな組織である信金なら1人の力であっても大きなインパクトを与えられる可能性があります。当日、さまざまなお話ができることを楽しみにしています。

 

(インタビュアー 文野より)

岡部編集長、ありがとうございました。信金にとって今後10年間は大きな役割を担う可能性があるとのこと。信金の競争の源泉は小回りが効き、お取引様との距離が近いところだといえます。デジタル・トランスフォーメーションが進むと、より競争の源泉を磨く必要があります。私たちが提供するRebankがその一助になれば幸いです。岡部編集長をお招きした勉強会は、11月上旬に開催予定です。是非奮ってご参加ください。ご参加頂ける皆さまはご質問を頂ければと思います。

 

 11月上旬開催予定の勉強会では、「FinTechはどこから始め、どこまでやるのか」「金融業界の未来予測」といった岡部編集長が考える将来を語っていただきます。

またしんきんアカデミーは、貴庫に役立つ情報提供を目的としており、現在、日経FinTech岡部編集長に聞きたいことを募集しています。
ぜひ、皆様のお役に立てる情報提供がでればと思いますので、ぜひご要望をお寄せください。


第2回 しんきんアカデミー ゲスト講師 プロフィール

日経FinTech編集長
岡部 一詩
HITOSHI OKABE
東京大学 文学部 卒業

大手IT企業を経て2012年に日経BPに入社。「日経コンピュータ」編集部にてアジアのIT動向や金融機関のシステム導入事例などの取材を担当。「日経FinTech」創刊メンバーとして2016年3月より同編集部に所属。2019年4月より現職。主な著書に『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』、『アフターコロナ』、『FinTech革命』(日経BP)など。