コミュ力おばけになる~あがり症克服編

社内プレゼンでの失敗、ある男性との出会い。そこで男は人前での緊張とあがり症を克服していく物語です。完全オリジナル小説の中で、あがり症克服のためのコツを見つけて下さい。

著者:ハラサトシ(心理カウンセラー・コーチ)

第1話 当たり前の失敗
第2話 朝比奈がコミュ力おばけを作ります
第3話
第4話
第5話
第6話
第6話

コミュ力おばけ~ストーリーズ~あがり症克服編①当たり前の失敗


まだ残暑が厳しい9月のある日の朝。
入社してまだ半年の真島にとって、これほど出社したくない朝はなかったと思えるほど、体が重く、憂鬱な時間が過ぎていた。

それもすべて昨日のせいだった。

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初めての社内プレゼン。

結果は散々だった。

いや、結果以前に、最後まで発表する事すら出来なかった。

元々人前に出ることが苦手だったものの、自分を変えたいと思い営業職を希望した。

成績を上げることもほとんど出来ないまま9月になり、社内でプレゼンをする順番が周って来てしまった。

営業職の人間が、月替わりで社内プレゼンを行うというしきたりがあった。

社内プレゼンといっても、PRするのは自分自身。

入社してから自分がなにをしてきたか、これからどう活躍していきたいか、それをアピールする場。

とにかく準備だけはしようと、何を話すかを原稿にした。ろくに結果を残していないなりにも、精一杯書き記した。

それを毎日、丸暗記できるように、ひたすら読み上げたり、一言一言、頭の中に叩き込んで言った。
その甲斐もあって、空で話す事が出来るようにはなっていた。

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プレゼン当日、何度もトイレに駆け込んだ。緊張しすぎて、お腹が痛い。

何日も前から考えることといえば、プレゼンで失敗してる姿。

今までに何度も人前で恥をかいてきたから、失敗する姿しかイメージが出来ない。

結果は予想通りのものだった。

約20人が会議室に集まっている。会社の幹部、上司、先輩、みんなが揃う。その前に立つと足が震える。どこを見て話せばいいのかも分からない。

「あ、あの、え~、真島と、、申します。ふ~~、今日は、今日は」

あれ?言葉出てこない。

「今日は、ありがとうございます?宜しくお願いします?お忙しい中?」、あれ?最初の言葉から出てこない。頭が真っ白になっていた。

使い慣れないマイクから聴こえる自分の声が、いつもの自分の声ではないみたいだ。

誰を見て話せばいいか分からない、暗記したはずの言葉が出てこない。みんながこっちを見ている。

何秒くらい経ったか分からない。もしかしたら、何分か経っていたのだろうか。

先輩から声がかかった。

「真島、今日は体調が悪そうだな。またの機会にしようか。」

初めての社内プレゼンは、その言葉で全てが終わった。

コミュ力おばけ~ストーリーズ~あがり症克服編②朝比奈がコミュ力おばけを作ります


プレゼンの翌日。

会社に行きたくない。いや、もう会社を辞めてしまいたい。

「確かに自信はなかったけど、全く話せないとは思わなかった。練習が足りなかった?いや、暗記もしたし。何かが足りなかった?誰が悪い?あの会議室の雰囲気が悪かった?」

朝起きてから、ずっと犯人探しをしてるうちに、いつも出社する時間を少し過ぎていた。

行きたくないけど行くしかない。

家を出た。

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出発が遅れた分、少し早歩きで駅へ向かういつもの道。

うつむきながら。眉間にシワを寄せながら。駅へ急いだ。

駅が近づいてきて、いつもの景色の中に奇妙な看板が見えた。

【朝比奈がコミュ力おばけを作ります】

ん?コミュ力おばけ?

「気持ち悪!コミュ力おばけ?気持ち悪!・・・ん~、なんだろう。」

どうも気になってしまったが、会社に遅れるわけにもいかないので、足早に駅へ向かった。

会社に着くと昨日の先輩が気を使って声をかけてくれた。

先輩「まぁ、気にするな。また来月もあるからさ!」

気休めの言葉はもう響かない。もう誰も期待なんてしていないだろう。卑屈になっている自分も気に入らない。

いつまでこの会社にいれるのかな?まだ入って半年なのに。こんなすぐに会社を辞めたらどこも雇ってくれないんじゃないかな。

他の会社に行っても、結局人前で話さないといけないことはあるだろうし。

「もぉ~、あぁ~」

口から出るのは溜息だけになっていた。1日に何回溜息をつけばいいんだろう。

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気付けばすっかり夜。

帰るのは上司も先輩も帰ってからというのも、どうも納得がいかない。

とぼとぼと会社を後にし、電車に乗り、最寄の駅からはまたいつもの道。

【朝比奈がコミュ力おばけを作ります】

また、奇妙な看板が目に入った。

前からあったのかな?

足を止めた。そして、看板のほうに近づいてよく見ると、矢印で「↑奥に入ったカフェへどうぞ」と書かれてある。

気付かなかったけど、この建物の奥にカフェがあるようだ。

夜も何も食べてないし、何かちょっとしたものでも食べて帰ろうか。

店の中で、それらしき人がいたら、話しかけてみて、怪しかったら帰ればいいだけだし。

近づいてみたものの中は見えない。ドキドキしてきた。

どんな人がいるんだろう。お客さんはいるんだろうか?

怖くなってきて、帰ろうか入ろうか迷って立ち尽くしていると、扉が開き、中から40代と思われる男性が出てきた。

真島「あの、、表の看板を見たんですが、ここであっていますか?」

その男性は、少し微笑み、「合ってますよ、中へどうぞ。」と、店内へ入るよう促した。

店の中の時計では、夜21時を過ぎたところ。

カフェがこんな夜遅くまであいているなんて、ちょっと不思議だった。

男性は、外にぶら下がっていた「OPEN」の札をひっくり返し「CLOSE」にしてしまった。

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真島「あの、一つ聞いていいですか?コミュ力おばけってなんですか?」

一番最初の疑問。コミュ力おばけという言葉の意味。

まずはそれを知りたかった。

朝比奈「コミュニケーション能力がとんでもなく高い人のこと、と、今は言っておきます。」

少し間を置いてそう答えると、言葉を続けた。

朝比奈「このカフェで、コミュ力おばけを作っています。これはボランティアではありません。仕事として請け負っています。今度は私が質問します。あなたがここに来たということは、コミュ力をあげたいと思っているのでしょう。お金はかかりますが、私はあなたのコミュ力を上げることが出来ます。受けますか?受けませんか?」

真島「あ、あの、受けるとか受けないとか、内容も費用も何の説明もないまま受けるとは言えませんよ。」

朝比奈「いいでしょう、では、内容と費用をお伝えします。その前に、あなたが上げたいコミュ力は何でしょうか?というのも、コミュ力といっても幅が広いですからね。全部となると、かなりの期間と費用がかかります。もし、こういうったコミュ力を手に入れたい、というのがあれば、それを教えていただけますか。」

それなりの費用。それも気になったけど、まずは質問に答えることにした。

真島「僕は典型的なあがり症です。人前で話すのが苦手なんです。昨日も会社でプレゼンがあったんですが、本題に入る前に助け舟が入りました。人の前で話すのはもう無理かもしれません。こんな性格、治りますか?」

朝比奈「治るか治らないかは、あなたの努力が関係しますので、絶対に治るとは言えません。費用は1週間で5万円です。受けますか?受けませんか?」

またも急かされた。

絶対治るか分からない。その上、1週間で5万円。1週間?何日通う?1日何時間?それもどういう内容かにも答えていない。

普通ならありえない。

5万円が高額というのもあるが、それ以上に内容が分からないなら手の出しようがない。

当然断るつもりだった。

その男性を見ると、少し微笑んでいるように見える。笑っているわけではない。ほんの少し口角が上がっているように見える。

何だろう。何だろう。嫌な感じがしない。

ふと、昨日のプレゼンの場面を思い出した。

前に出た時に、少しだけ前列数人の顔を見ることが出来た。

怖かった。無表情で何を考えているのか分からない。

今、目の前にいる男性は、無表情ではない。何だろう、この安心感は。

どうせ、普段から誰かと遊びに行くわけでもないし、5万円は高い買い物だけど、他に無駄なものを買うくらいなら、ここで受けてみよう。無駄になっても、話のネタにはなるだろう。

真島「すみません、少し安くなりませんか?」

少し冗談っぽく、値切りの交渉をしてみた。

朝比奈「ダメです。では、今日はお帰り下さい。この価格は、私が提供するサービスの対価です。今までこのサービスを作るために費やした時間、これからあなたに提供する時間。それらを踏まえると、高くも安くもない、妥当な価格です。それで納得がいかないのであれば、受けていただく必要はありませんよ。」

言葉はきついが表情はさきほどからと同じ、少し微笑んでいるようにも見える。

そうか、妥当な価格か。

真島「分かりました。宜しくお願いします。」

もう迷うことはない。1週間で少しは人前で話せるようになったらそれでいいか。

朝比奈という男。

この男に賭けてみることにした。

半信半疑。それでいい。

その時は、そう思うしかなかった。

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心理カウンセラーハラサトシの公式サイトです。カウンセリングではなく、コミュ力を上げる方法をまとめています。コミュ力おばけとは言いますが、要するに、コミュニケーション能力の高い人にどうすればなれるか?そこをお伝えしています。
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