整形外科や病院でレントゲンを撮り、軟骨が擦り減っていて関節の隙間が無く変形している。変形性股関節症です。将来手術が必要です。とお医者さんから言われていませんか?
あなた自身も『軟骨がすり減っているから痛い、変形があるから痛い』と思っていませんか?お医者さんから言われたら、そう信じてしまいますよね。
からだ整骨院でも、骨の変形や擦り減った軟骨を修復出来る訳ではありません。構造的な修復は無理です。しかし、あなたの股関節の痛みの本当の原因は、本当に骨や軟骨の擦り減りによる変形だけでしょうか?
実際に同じ年齢の人で軟骨が擦り減っている方でも、痛みなく歩いているのは何故でしょう?
反対側の股関節も変形していると言われているのに、痛いのは片側だけという方もいます。
なぜでしょうか?そうです、軟骨のすり減りや骨の変形が痛み全ての原因ではないからです。
これは股関節についての大事なお話です。
まず股関節は、大きな運動が可能である点は肩関節と似ていますが、体重を支持する役割の有無で大きく異なり、股関節はその可動域を犠牲にして、非常に高い支持性を獲得しています。
通常の股関節では、寛骨臼と呼ばれる大腿骨の骨頭がはまり込む部分の、内面の上方部分が荷重時に大腿骨頭と接触する部分になり、月状面と呼ばれる関節軟骨が存在しています。
寛骨臼の発達が悪い股関節(臼蓋形成不全)では受け皿が浅くなり、十分に大腿骨頭を包み込むことができないため、体重の支持機能が低下します。
そして、包み込まれた少ない部分で体重を支持することになる為、月状面の関節軟骨に加わる荷重応力が増強し、軟骨の摩耗や破壊が生じます。
この大腿骨頭を包み込む比率を骨頭被覆率といい、被覆率は骨盤の傾き、つまり寛骨臼の傾きにより変化します。
寛骨臼の傾きは出生後から徐々に変化しますが、股関節はもともと前方被覆率が低い構造になっています。
ここまでお話した中で、気づかれた方も多いと思いますが、変形性股関節症(臼蓋形成不全)では骨盤の前傾といった代償で、その股関節の支持性を確保しています。
とは言いましても、勝手に骨盤が前傾する訳でもなく、筋肉がその働きを担っています。常に骨盤の前傾を保とうとしている訳ですから、筋肉への蓄積された疲労が大きくなるのは想像ができると思います。
つまり、そんな”筋肉の頑張り”こそが、あなたの股関節の痛みの一番の原因です。
股関節の被覆率は、骨盤の前傾を増強することで増すため、変形性股関節症など被覆率の低い場合は、その被覆率を骨盤の前傾により代償していることが多くあります。
つまり、、
骨盤前傾 → 被覆率が高い
骨盤後傾 → 被覆率が低い
骨盤が前傾すると腰椎の生理的前彎は増強します。 腰椎の前彎が増大すると、後方に存在する椎間関節への圧縮応力が増強することにより、椎間関節由来の疼痛が出現します。
椎間関節由来の疼痛は、臀部痛や下肢痛などの関連痛を生じることも多くあります。
股関節周辺の痛み、すべてが股関節由来の痛みではありませんが、痛み止めの服用が意外にも効果的な場合もあります。
この場合、筋肉の炎症が痛みの原因になっていることがあげられます。変形性股関節症の方は臼蓋の被覆率が低くて、その不安定性を補うため、どうしても腸腰筋への依存が高まります。
その依存度の高まりによって筋肉は疲労し、骨の付着部への負担が増え、結果として付着部付近の炎症を引き起こし、痛みを誘発してしまいます。
それこそ痛み止めの服薬も効果がありますが、服薬ではなんともならない痛みが残ります。
その痛みこそ、併発しているすべり症や狭窄症がなどが起因する痛みやしびれ感です。
『じゃあ…その痛みやしびれは諦めなくちゃいけないの?』
いえ、諦める必要は全くありません!すべり症や狭窄症が起因とはいえ、その根本たる原因は筋肉にある場合がほとんどです。またここで大切なことは、諦める諦めないではなく、痛みの症状をしっかり分けて見極めることです。
確かに変形性股関節症は、誰が何と言おうと股関節の隙間が狭くなり、股関節の構造体としては不安定さが増しているのは事実ですが、構造体そのものの痛みではなく、不安定性を補うための筋肉の痛みと捉えることが重要です。