1.はじめに
2.膝関節の疾患って?
3.膝関節の基礎知識
4.膝関節の役割
5.変形性膝関節症とは?
6.人工膝関節全置換術後(TKA)とは
7.膝の痛みに対するストレッチ
8.膝の痛みに対するトレーニング
9.まとめ
10.おわりに
最近、関節痛で悩む人がとても多くなっています。
そして関節症の人は年々増え続けている。
現在は約2500万人もの人が関節症で悩んでいるとも言われています。
なかでも、わたしたちリハビリスタッフが関わらせていただく機会の多い関節症のひとつが「膝」なんです。
ということで今回、膝関節の疾患、膝関節の怪我や痛みについてまとめてみました。
身体の関節のなかでも、とても複雑な構造になっている膝。
まずは膝の基礎知識をお伝えしつつ、膝関節の疾患(膝の怪我や痛み)について解説していきます。
そして終盤では、当院リハビリテーションセンターでも提供しているトレーニング方法についても、お伝えしていきますね。
2.膝関節の疾患って?
あなたは、「膝関節の疾患」に、どんなイメージがありますか?
じつは、「膝関節の疾患」とひとことで言っても、とても多くの疾患があるんです。
具体的には次のようなものが「膝関節の疾患」になります。
いかがですか?
さきほどあなたがイメージした「膝関節の疾患」は上のイラストの中に含まれていましたか?
今回はこれらのなかでも特に、当院でリハビリされている人の比較的多い以下の2つに絞って話しをしていきますね。
変形性膝関節症は、「膝OA」と略されることも多いです。
人工膝関節全置換術は、「TKA」と略されることが多いです。
TKAというのは手術の名前で、膝OAの人が手術の適応となった場合に、受けることのある手術になります。
膝OA・・・!?
TKA・・・!?
略語まででてきて、なんだか話がややこしくなってきましたね。
この辺りはまたのちほどお話ししますので、いまはそれほど深く考えすぎず、シンデレラの中で魔法使いのフェアリー・ゴッド・ファザーがシンデレラに魔法をかけるときの呪文のように思っておいてください。
ビビデバビデブー・・・。
ということで、まずは基礎知識として膝関節の内側(なか)はどうなっているのか、一緒に覗いていきましょう。
3.膝関節の基礎知識
じつは一言で「膝関節」と言っても、解剖学的には“ある2つの関節”を合わせて膝関節と言っています。
ある2つの関節とは、以下の2つです。
・大腿骨と脛骨で形成される“脛骨大腿関節”
・大腿骨と膝蓋骨で形成される“膝蓋大腿関節”
・大腿骨と脛骨で形成される“脛骨大腿関節”
大腿骨というのは、太ももの骨です。
脛骨とは、“弁慶の泣き所”で知られている脛(すね)の骨になります。
そんな大腿骨と脛骨とで作られている関節が脛骨大腿関節になるんです。
この脛骨大腿関節は、俗によく言われている“膝関節”に当たります。
・大腿骨と膝蓋骨で形成される“膝蓋大腿関節”
新しい用語として“膝蓋骨”というのがまた出てきましたね。
膝蓋骨というのは、俗に言われている“お皿”のことです。
お皿ってじつは、骨だったんですね・・・!
お皿、つまり膝蓋骨は、さきほども説明した大腿骨と接している部分で関節を構成しています。
そして、その関節の名前が膝蓋大腿関節と言われているのです。
今回特に解説していくのは、脛骨大腿関節になります。
脛骨大腿関節には以下のイラストのように、とてもたくさんの組織がギッシリと詰め込められているんです。
イラストを見てもたくさん組織のあるのがありますね。
ううう・・・めまいが・・・。
いますぐ全部覚えなくても大丈夫。
なぜなら、変形性膝関節症に関わりのある組織がある程度決まっているからです。
膝蓋大腿関節のなかにある組織で、比較的有名で、変形性膝関節症の人にも関わりのあるものは以下の3つです。
・内側半月板と外側半月板
・前十字靭帯と後十字靭帯
・関節軟骨
これらの組織の役割を簡単にまとめてみました。
・内側半月板と外側半月板
これら2つは関節にできている空間を埋めるかのように存在する柔らかい組織です。
骨と骨とでできているのが関節。
骨と骨が直接こすり合わされて削られてしまわないように半月板が存在するんです。
過去に半月板の損傷をしていて、そのまま放置をしてしまうと、変形性膝関節症につながる可能性があると言われています(公益社団法人日本整形外科学会より)。
・前十字靭帯、後十字靭帯
膝関節のなかにあって大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結ぶ強靭な紐です。
さきほども話しましたが、関節とは、骨と骨とをつないでできるもの。
であれば、骨と骨をつなぎとめるものがないと関節が不安定になりそうですよね?
関節がグラグラと不安定にならないように、前十字靭帯と後十字靭帯が大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結んでくれてここからリンクしているんです。
より自然な膝関節の動きを獲得するために、そして手術した膝関節がより長く健康でいられるように、これらの靭帯を人工膝関節全置換術などの手術で操作されることもあります。
・関節軟骨
「軟骨がすり減っている」という表現をどこかで聞いたことはありますか?
その軟骨が、関節軟骨なんです。
関節軟骨は関節のなかに位置している骨の、表面を覆っている弾力性のある組織になります。
加齢によって、弾力性がなくなってしまったり、遣い過ぎによりすり減ってしまう可能性もある組織です。
変形性関節症は、この関節軟骨がすり減って、関節の変形をきたしてしまう場合があります。
ここまでで、膝関節の内側にある組織と変形性膝関節症、人工膝関節全置換術との関係をお伝えしていきました。
かなり具体的な話だったので、たしかにいま膝に痛みのある人にとっては不安に思ってしまった人もいるかもしれません。
ですが、痛みの原因がなんなのかわからない状態の方が、不安にかられることも少なくありません。
実際、痛みの原因がわからなかった患者様が、先生から痛みの原因を診断してくださった段階でも、安心感を得られる人は多いです。
(もちろん、ご本人だけでなくご家族も安心されているお話をよく聞きます。)
ということで、ここまでで膝関節の内側の話をしました。
ですがそもそも、膝関節にはどんな役割があるのでしょうか?
4.膝関節の役割
膝関節の役割は大きく分けて2つです。
膝関節の役割その1.可動性
しゃがむ動きや正座、階段の昇り降りをするときに曲げ伸ばしをする役割です。
膝の曲げ伸ばしがどれだけできるか、という動く範囲、可動域が大きければ大きいほど生活のなかでの支障は当然、少なくなります。
膝関節の役割その2.支持性
支持性。
より簡単な言葉でいうと、「体重を支える能力」のことです。
体重を支えるという大切な役割のある膝。
そんな膝がなんと、階段を昇り降りするときには平地を歩いているときの2~3倍の体重が膝にかかっていることをご存知ですか?
変形性膝関節症の人のなかには、階段の昇り降りの不自由さがきっかけで診察を受けに来るという人もいます。
では、どうしたら階段の昇り降りのときでも痛みなく体重を支えられる膝になるのでしょうか?
ここはやはり、筋力強化がポイントになります。
具体的には大腿四頭筋が最も重要な筋肉です。
大腿四頭筋の筋力トレーニングについては、またのちほど解説させていただきますね。
5.変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症。略して膝OAと言われています。
上のまとめ画像をみてもわかるとおり、教科書にはとても難しく膝OAの説明がかかれています。
膝OAをひとことで表わすことは難しいですが、できるだけ簡単に説明をさせていただきます。
膝OAとは、簡単に言うと、関節が変形してしまい、痛みや生活に支障をきたしてしまうものです。
慢性的なもので、なにかしらの症状が現れてから膝の異常に気がつくので、明確な原因がわかりにくいのも特徴になります。
そんな膝OAですが、じつは女性と男性とで症状の出る確率が違うのです。
女性の方が、膝OAで悩む人が多いと言われています。
女性の場合、筋力や肥満のなりやすさ、生活様式、ホルモンバランスなどの影響で膝に負担のかかる可能性が高いのです。
ではいったい、膝OAになるとどのような症状が現れるのでしょうか。
膝OAの症状としては、膝の痛み、特に階段の昇り降りで痛みが現れるケースが比較的多いです。
また、痛みの場所としては膝のなかでも内側に現れやすい傾向があります。
他にも、膝の曲げ伸ばしがしにくくなったり、膝に力が入りにくくなって“ぐらぐら感”を感じるケースもあります。
これらのような症状が現れたときは、医師の診察を受けて、膝を診てもらった方がいいです。
とはいえ、なかには「診察はどのように行われるの?」と気になる人もいるはずです。
診察では以下のようなことが一般的に行われています。
もちろん、症状の重症度によって上記で挙げているものが減ったり増えたりはあります。
また一般的には膝の内側が痛くなることが多いですが、痛みの現れる場所は個人によって変わることもあります。
そして膝OAは、ときとして手術適応になることもありますので、次に説明するのは膝の手術の話です。
(※手術を行うかどうかは医師との相談の上、検討されます)
6.人工膝関節全置換術後(TKA)とは
膝OAでよく行われる手術が人工膝関節全置換術。
TKAとも言われています。
レントゲン画像をご覧いただくとわかる通り、TKAは人工関節で入れ替える手術です。
TKAによって、痛みや生活の動きを改善していきます。
TKAの適応となるケースやメリット、デメリットは以下の通りです。
これらの話に加え、個人的な現状も加味して、医師と相談のうえ、手術をするかどうかが検討されます。
わたしはリハビリのスタッフなので、手術に関しては、このあたりまでにさせてください。
次は、膝の痛みに対してリハビリはどのようなことを行っていくかを解説していきます。
解説させていただくのは、以下の2点についてです。
・ストレッチ編
・トレーニング編
具体的な方法もお伝えしますので、主治医や担当のリハビリスタッフに相談の上、よかったらぜひ実践してみてくださいね。
7.膝の痛みに対するストレッチ
まずはストレッチ編です。
ストレッチを安全に行うための注意点についてまとめさせていただきましたので、まずは以下をご確認をしてください。
痛みが出る場合は、すぐにストレッチをやめてください。
それでは、具体的なストレッチ方法についてお伝えしていきます。
足の伸ばして座った姿勢、長座位が難しい場合は、下方の写真にあるように、仰向けの状態でも行えます。
仰向けの場合は、ペアになってストレッチをすると心地よくできます。
うつぶせの姿勢が大変な方は、無理をしないでくださいね。
ふくらはぎは、「第二の心臓」とも言われています。
ふくらはぎをストレッチすると、足に溜まった老廃物も取り除きやすくなります。
殿部とは、お尻のこと。お尻には人体最大の大きさを誇る大殿筋という筋肉があります。
大殿筋は歩くときにとても大切なので、しっかりストレッチしておきましょう。
8.膝の痛みに対するトレーニング
ストレッチと同様、筋力トレーニングも、安全に行うための注意点をまずは確認していきましょう。
各トレーニングの解説時に、回数の目安もお伝えしますが、人によっては過負荷になりますので、無理のない範囲、息の止まらない範囲で行ってください。
ウォーキングは比較的取り入れやすいですね。
もしもできる環境のある方は、エルゴメーターもおすすめです。
パテラセッティングとは、簡単に言うと、膝を伸ばす筋肉、大腿四頭筋のトレーニングです。
膝の痛みが強い方でも比較的実践しやすいので、試してみてください。
膝の痛みが軽くて、スクワットをしても痛みの出ない方は、少し負荷を高めていきます。
ちなみに、ボールを膝に挟みながら行うと、筋肉のつながり上、前モモの筋肉、大腿四頭筋の筋力がつきやすいです。
寝ていてもできるトレーニングなので、朝起きた時、夜寝る前、にもトレーニングが簡単にできます。
このトレーニングも大腿四頭筋の筋力強化です。
ブリッジはお尻の筋肉、大殿筋のトレーニングになります。
ストレッチ編でも解説しましたが、大殿筋は人体最大の筋肉なので、歩くときや階段を昇り降りする時も大切な筋肉です。
股関節の外側にある筋肉、中殿筋といわれる筋肉を鍛えられます。
左右にゆらゆらと上半身が不安定になってしまうような歩きをしている方には、ぜひ実践してほしい運動です。
9.まとめ
10.おわりに
いかがでしたか?
今回は、膝の関節症のなかでも変形性膝関節症に焦点を当てて話をしていきました。
今回の内容があなたの生活、そしてあなたのご家族の役に少しでもなれれば幸いです。
リハビリテーションは医師の指示の下で行っています。
膝の痛みに悩まれている人は、まずは医師の診察を受けるよう、よろしくお願いいたします。
また、わたしたちリハビリテーションセンターは、地域の方々の健康を守っていくために、健康体操や介護育成セミナーなどの活動もしています。
活動の様子や内容は、以下のSNSでも発信していますので、よかったらぜひ、のぞいてみてくださいね。
ということで、今回の記事で、みなさんの膝に関する悩みが少しでも解消できたら幸いです。
さいごまでお読みいただき、ありがとうございました。
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