このように、スタジオの代わりにできた背景があるので、最初から映画業界と密接に結びついているというルーツがあります。
(森田)韓国では映画学校時代の卒業生がすでに活躍されていたりと、中国・韓国の映画界で働いている元留学生も多いんですよ。
今村監督の目標通り、本学園で映画を学んで、アジアに帰ったわけです。
戦略があったわけですね。
(木村)そうです、もう早かったですね。こんなに中国が伸びるとは、その当時誰も思っていなかったわけなので。
今でも留学生は多いのですか?
(森田)少し前まではそうでもなかったんですが、昨年の入試でかなり入学者が増えました。
すごいですね、何か理由などあるのでしょうか?
(森田)もともと、中国から渡日された方が近年増加していたんですよね。おそらく社会の発展で豊かになってきたからだと思います。あと中国で聞くところによると、映画ブームとまでは言わないですが、興味を持つ人が増えてきているといいます。
だから留学生をターゲットに、わかりやすい情報を出していくということも、いまは大事なことで、いろいろ考えながらやっています。
長くなりましたが、これが現在までの経緯ですかね。
これも特徴があるコースでして、他の学校では、ドキュメンタリーだけ独立して何か勉強するということは、ほぼないんですね。日本映画大学には、まず「人間」に興味を持って、良い面もそうでない面も知って撮っていくという方針が、今村監督時代からあるんです。
今村監督自身もドキュメンタリーは必ず撮ったほうがいいと言い、実際にいくつかの作品を残されています。そのルーツからして、ドキュメンタリーというのは、日本映画大学の根幹なんです。ドキュメンタリーといえば、一度ムーブメントが起こりまして、「セルフドキュメンタリー」という自分自身を撮る私小説のようなものが、90年代に流行ったことがあるんです。その発信地となったのが、実は日本映画学校だったんですね。話題になった作品の多くは卒業制作映画として生まれたものでした。
(木村)自分では自分のことはそんなに面白くないと思っていても、人が見ると面白いということがあります。それがけっこうネタになるんですね。
(森田)たとえば今年の卒業制作で、寺の住職の息子に産まれた男子学生が自分の生活を撮っていました。
自分だったら当たり前の生活が、他人から見たら全然当たり前じゃないことだってありますよね
(森田)まさにその通りで、物語があるんですよね。
(木村)またドキュメンタリーは、結論から言うと一番就職に強いんです。
(森田)企画から撮影、編集まで1人でできてしまうわけですから、数人雇うところを1人で済むので、売れるといった感じですね。
あとドキュメンタリーって、多くはメディアとか報道じゃないですか。だから映画以外にも道が広がっているので、人気があります。
映画を聴覚の側面から捉えなおし、音による表現の技術と方法を探求します。
撮影現場での録音から、編集、加工、最終ミックスまで、映画の音をつくるすべてのプロセスを実践的に学びます。
身体表現・俳優コースのところで声優業人気について触れましたが、いま、アフレコに興味を示す学生がけっこういます。録音コースでは、現場でマイクを向けるだけでなく、撮った映像に音を入れる、被せるということも行います。
たとえば、アニメーションに自分で考えたセリフや、画にあわせた効果音をあてて物語をつくるといった実習もあるんです。日本映画大学にはアニメの授業はないのですが、そういうことをやって、楽しんでいる学生はいますね。
(木村)昔の学生は、入学当初は監督になりたいというのがほとんどで、あとはせいぜいカメラマンぐらいしかイメージしていなかったのが、いまは最初から「編集をやりたい」とか「録音技師になりたい」とか、はっきりとした目的意識を持ってやってくる学生が少なからずいます。
なんでかなと思ったら、やっぱり就職をがっちり掴みたいところがあるんですよね。
現実的に映像業界を切り開いていこうと志すときに、具体的にイメージしやすいのかなと。気質が昔と変わってきていますね。そして実際に頑張って目的を果たしています。
(森田)あとよく受ける相談が、YouTubeつながりで、かっこいいコンテンツをつくりたいというものです。
だからユーチューバーが気になる人にも、本当は訴求していきたいところでありまして。映画よりも人気ユーチューバーの方が、耳目を集めている側面もありますよね。
(木村)昔の学生は、入学当初は監督になりたいというのがほとんどで、あとはせいぜいカメラマンぐらいしかイメージしていなかったのが、いまは最初から「編集をやりたい」とか「録音技師になりたい」とか、はっきりとした目的意識を持ってやってくる学生が少なからずいます。
なんでかなと思ったら、やっぱり就職をがっちり掴みたいところがあるんですよね。
現実的に映像業界を切り開いていこうと志すときに、具体的にイメージしやすいのかなと。気質が昔と変わってきていますね。そして実際に頑張って目的を果たしています。
(森田)あとよく受ける相談が、YouTubeつながりで、かっこいいコンテンツをつくりたいというものです。
だからユーチューバーが気になる人にも、本当は訴求していきたいところでありまして。映画よりも人気ユーチューバーの方が、耳目を集めている側面もありますよね。
(森田)これもPRしたいところがありまして、日本映画大学は脚本にも強みがあります。新人脚本家の登竜門とみられている「新人シナリオコンクール」で、毎年、在学生や卒業生が入賞しているんです。佳作、入選等いろいろありますが、その年の上位に必ず入っています。去年は、脚本コースで学んだ留学生が入賞したんですよ。
あれ相当厳しいですよね?
(森田)日本語を母語としていないのに、うちで一生懸命に脚本の勉強をしたら、獲得できたという。
それは日本語の勉強から始めたということでしょうか?
(森田)だいたい、留学生は日本語学校を経由してくるので、ある程度の日本語はできます。それでも入学時は脚本を書けるレベルではないんですよ。
だから4年間で書けるようになったわけですが、結果で示せるのが脚本コースと言えるでしょう。脚本で活躍している先輩も多いです。
『嘘を愛する女』(監督:中江和仁 主演:長澤まさみ、高橋一生 2018年公開)はご覧になりましたか? あの共同脚本を手がけたのは近藤希実さんといって、日本映画大学の卒業生なんですけど、2016年卒業なので、卒業して1年くらいですね。
(木村)映画業界では、大学卒業後に即脚本家デビューって普通は考えられないんですよ。それだけ実力社会なので、逆にいえば経験年数は関係ないのでしょうね。
(森田)これはコースとは関係ないのですが、脚本はそもそも全員に学ばせて、1年の後期、春休みに「200枚シナリオ」という課題を出します。どういうものかというと、文字通り200枚のシナリオを書かせるんですね。時間にして100分くらい、普通の映画館で上映される映画1本分を書きなさいということです。
この「200枚シナリオ」を経験するメリットは、オリジナルの脚本で勝負できるようになる、ということなんです。
TBSドラマ「アンナチュラル」や「逃げるは恥だが役に立つ」の脚本家である野木亜紀子さんも、この「200枚シナリオ」を経験した卒業生で、現在、オリジナル脚本でドラマを書きつづけています。
映画の方でも一例をあげれば、卒業生の中野量太さんが監督し、2016年の話題作となった『湯を沸かすほどの熱い愛』があります。いまの映画界ではオリジナルの企画はなかなか撮らせてもらえないと思うのですが、本作はオリジナル脚本で勝負した映画なんです。
(木村)だいたいの企画は「監督をどうしますか?」というところで上がってきて、監督を任されるのがほとんどなんですけど、自分の企画で映画を撮れるというのが、うちの学園ではわりと多いんですよ。そこは誇りとしているところです。
(森田)そのすべての元になっているのは、やはり脚本力ではないかと思うんです。「脚本コース」はそれに特化するので、なかでも1番強いという印象ですね。
実はこのコースはこれから動き始めます。現在、新しいカリキュラム編成を終えたばかりで、実際のところ文芸コースにどういう人が集まり、どういう授業をするかというのは、なかなか伝えづらいところがあって、小説をふくめた脚本以外の文章表現をカバーしていく予定になっています。それに近いところでは、かつて「映画・映像文化コース」というものがあったのですが、おもに映画の批評や研究をしてきました。
(木村)これらの売りとしては、映画を観ることが好きな人、作ることはちょっと敷居が高いなって人でも、映画を勉強できることですかね。その分野を学べば、仕事としては配給・宣伝や、映画周辺に広がるさまざまな職種が想定されます。
テレビの番組もそうですが、意外にデスクワークも多いんですよね。そういうところの供給源になると考えています。
(森田)以上が、8コース全ての概要です。
だいたい1クラス20人くらいにわかれ、そのクラスのなかでまた2班ほどにわかれます。つまりは1チーム10人程度。そこから人間総合研究という大きな実習に取り組んでもらいます。
まったくどこの出身かもわからない人たちが、一堂に会して、いろいろなスキルを身につけてゆく。
(木村)これには意味があって、いきなりカメラを持たせて映画を撮れといっても、ほぼつまらないものしか出てきません。だから最初はモノを作る気構えから理解し、そのために、友達ではない仲間とどう向き合うか、楽しさも苦しさもふくめて、精神的にもまれるところから始めるんです。
こうやってものをつくるのは、おそらく生まれて初めての経験でしょう。ですから、人間総合研究をすることによって、高校時代までの学習態度が1回リセットされるのですが、“人間研究ビフォーアフター”で、人間がまるで変ります。ものすごく成長します。
他にも、この実習を通して文献調査方法とかパソコンの使い方とか、そういう実務的なノウハウも修得します。もちろん、取材の過程で見ず知らずの人々と会話をしなければいけないとか、頭を下げなければいけないとか、そういう学びもありますね。
(森田)対人スキルという点では、これは就活にも関わることなのですが、学生だけの生活圏で生きていると、就活の段階でつまづく可能性があります。
つまり、社会人とあまり接したことがないので、いざとなったときに、どういう対応をすればいいのかわからないと。でも、日本映画大学の場合、1年次から自分たちのコミュニティの外に出ざるを得ないので、その辺はすぐに体得します。また保護者の視点からしても、クラスで動いてゆくというのは、安心な面があるのではないでしょうか。
教職員は当然のこと、クラス担任もいるので、一人ひとりに対して一丸となった支援ができる。こういった細かなフォロー体制は、他の大学にはあまりないと思うんですよね。決して規模が大きくないからこそ生じるメリットです。
友達ができなくて辞めてしまうなんてケースも、他の大学ではあるようですが、やはり寂しい思いはさせられないなと。日本映画大学では、人間総合研究という実習をベースにして、高校生から大学生に変化できるカリキュラムがあると言えるでしょう。
(木村)「平成31年度入試」で言いますと、いわゆる「AO入試」が主軸となります。
同時に学科試験を中心とした一般入試もありますが、AO入試では本学のアドミッションポリシーに沿った学生にいち早く受験してもらいます。なによりもまず「映画が好きだ」ということが条件になりますね。
また「他人と協力して問題解決できる人」であるとか、いわゆる普通の優等生だけではなく、本学に向いている学生さんにぜひ来てほしいというのがAO入試です。
これはますます次年度以降、力を入れていくと思います。倍率は、あまり高くないと思うのですが、お伝えしてきたように入った後が大変です。
でも安心してください。“映画大学”というと、映画のことを知らないと入れないし、難しそうだし、なんとなく専門的だろうとうイメージを生徒さんはお持ちになるんですけど、そんなことないんです。
普通の高校の、普通の生活をしていれば入学できますから、独自に映画の知識や技能を持ってる必要はないですね。
そこが一つ強調したいところなんです。映画研究会に入っていなければ、映画大学へは入れないということはまったくありません。みんな入ってから学ぶので、映画に詳しくなくて当然です。
(森田)むしろバスケ部や陸上部などの体育会系の人たちも来ますよ。
(木村)映画研究会に所属していた人も、来てねとは言っていますが、大半の学生は入学してから勉強します。そのために学費を払い大学に行くわけです。
まっさらな状態で入って、ここで力をつけられる。
(森田)それを強調したいですね、ただ映画が好きであることが条件です
(木村)「日本映画大学」になってからだと、まだそんなには目立っていません。3期生までしか世に出ていないので。脚本コースで紹介した近藤希実さんなど、シナリオ方面で活躍しはじめている卒業生がいます。
映画業界だと、10年くらい経たないとメインスタッフにはなかなか載らないので、もう少しすれば、映画大学卒業生が映画クレジットを賑わすことになると思います。
(森田)一方ですでに監督デビューを果たした映画大の卒業生もいますよ。卒業制作映画『ひいくんのあるく町』が劇場公開された青柳拓監督(3期生2017年卒)です。
劇場公開とは、全国公開して、お金を払って観る映画のことですが、在学中に監督デビューを飾った学生もいましたね。映画『3泊4日、5時の鐘』の脚本・監督を務めた三澤拓哉さんは、日本映画大学の1期生です。
(木村)在学中のデビューは専門学校時代を通して初めてで、三澤拓哉さんは大学のインターシップ制度を利用して、アシスタント先の制作会社から信頼を得たようです。「ちょっとやってみるか」と言われたらしく、1本撮らせてもらったと。夢みたいなストーリーですよね。もちろんキャストもプロの俳優を使っていますし、撮影スタッフもついています。そういう学生もいたんです。
すごいですね、それをドキュメンタリーにできそうです。
(森田)確かに記録しておけばよかったですね、インターンからデビューするまで。
まとめると、卒業制作でデビューをした人、在学中にデビューした人と、商業映画の脚本を書いた人が、映画大の卒業生にいますね。
就職はどうでしょうか?
(木村)就職ということになると、一般的にどこの業界でも学閥みたいなのがあります。現場で「君どこの出身?」と聞かれ「日本映画大学」と答えると、「おお、後輩じゃないか」ということが本当によくあるんです。
そういう先輩がいっぱいいるので、この広大なネットワークは映画業界での強みだと思います。
(森田)映画・映像業界へ行く割合でみれば、90%前後の数字をキープしています。学生たちがそれぞれ努力して就職活動をした結果ではありますが、広い意味でのコネクションに支えられている面もあり、希望する業界にどれくらいのOB・OGがいるかが、その学校の就業力をみる一つの指標にはなるでしょう。
それを示す、こんなエピソードがありました。
朝日新聞で大竹しのぶさんが連載しているエッセイの写真に、見慣れた卒業生たちの顔が。大竹しのぶさん主演のドラマに関わっている日本映画大学の2期生と3期生が、写真付きで紹介されていたんです。2人とも撮影のアシスタントで入っていて、おそらく数年後にはメインでやっていくことと思います。
(木村)こういう話は探せばたくさんあるはずです。
面白いですね。
(森田)面白いです。自分たちも発見するたびにうれしくなります。
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