隠れた傑作
ツェムリンスキーの「人魚姫」

(日本初演)
1989年10月20日
若杉弘×東京都交響楽団(日本初演)
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(2016年~)
2016年1月14日
ミヒャエル・ボーダー×読売日本交響楽団
2016年3月4日
山田和樹×マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団
2016年12月8日
寺岡清高×大阪交響楽団
2018年1月10日
大野和士×東京都交響楽団


1905年1月25日ウィーン音楽芸術創造家協会主催のコンサートで初演されたツェムリンスキーの「人魚姫」は、1986年リッカルド・シャイーに見い出されるまでの約80年間日の目を見る事は無かった。日本で初演されたのは1989年だが、ツェムリンスキーのこの名曲を近年取り上げるプロのオーケストラが増えつつある。


隠れた傑作「人魚姫」をここにまとめた。

アレクサンダー フォン ツェムリンスキー
Alexander von Zemlinsky

ツェムリンスキーの生い立ち

 アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー(1871~1942)は、ウィーンにて多文化的な家庭環境に生まれる。少年時代からピアノを弾き始め、次第にオルガンを弾くようになり、1884年にウィーン音楽院に入学。そしてその後にローベルト・フックスに作曲を師事し、1890年頃から作品を書き始める。

 20代の中半にヨハネス・ブラームスの後押しを受けて「クラリネット三重奏曲 ニ短調 作品3(1896年)」を出版、作曲家としての道を歩み出し、1900年にオペラ「昔あるとき」がマーラーの指揮で初演される。この演奏会で成功をおさめた結果、一躍注目の作曲家となり、その話題を聞きつけたにアルマ・シントラーがツェムリンスキーのもとに作曲を学びに来たのだった。

 2人の関係は師弟を越えて、 結婚を考えていたほどだったが、アルマ・シントラーが結婚相手として選んだのは、ウィーン宮廷歌劇場の監督としての地位と、名誉を持ったマーラーだった。

「人魚姫」の蘇演

 アルマがマーラーと結婚した頃に作曲が始められた「人魚姫」は1903年に完成され、初演はその2年後の1905年に「ウィーン音楽芸術創造家協会」主催のコンサートで初演される。
 
 このコンサートでは同年に完成されたシェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」も演奏され、「人魚姫」より多くの注目が集まる結果となった。

 その結果を受けてか、その後のツェムリンスキー自身が、もうひとつの楽章の追加による「人魚姫」の交響曲化を計画し、予定されていたベルリンでの再演はキャンセルされ、楽譜の出版も行われない運びとなってしまった。

 しかし実数には交響曲化は進められず、ツェムリンスキーは1938年にアメリカに亡命、楽譜の存在は歴史とともに流れてしまう。
 
 ツェムリンスキーが亡くなった、その約30年後の1970年代中半以降、ツェムリンスキーの再評価が持ち上がり、楽譜探索が進められる。その結果、1980年にウィーンで第1楽章が、ワシントンで第2楽章と第3楽章が発見された。

 そして1984年、音楽学者であり指揮者でもあるペーター・ギュルケが約80年ぶりに蘇演を行い、この曲の再評価が始まったのだった。

「人魚姫」のストーリー

 アンデルセン童話のおとぎ話「人魚姫」をツェムリンスキーは「管弦楽のための幻想曲《人魚姫》」として、3つの楽章でストーリーを表現している。このあらすじは曲を知る上で大切な要素だ。

「人魚姫」のあらすじ

 人魚の王の6人の娘たちの末っ子人魚姫は海の上で、船の上にいる美しい人間の王子を目にする。 ある日、嵐に遭い難破した船から溺死寸前の王子を救い出した人魚姫は、王子に恋心を抱く。 その時は偶然浜を通りがかった人間の娘が王子を見つけて介抱した為、人魚姫は出る幕が無くなってしまうが、彼女はどうしても自分が王子を助けたと伝えたかったのだった。

 王子に会う為、人魚姫は海の魔女の家を訪れ、 美しい声と引き換えに尻尾を人間の足に変える飲み薬を貰う。しかし魔女は「人間の足で歩く度にナイフで抉られるような痛みを感じ、もし王子が他の娘と結婚すれば、姫は海の泡となって消えてしまうだろう」と警告をする。 ほどなくして王子と一緒に御殿で暮らせるようになった人魚姫だったが、声を失った事で王子を救った出来事を話せず、王子は人魚姫が命の恩人だと気付きかない。

 思いが通じないまま、そのうちに事実は捻じ曲がり、 王子は偶然浜を通りかかった娘を命の恩人と勘違いをしてしまい、やがて王子とその娘との結婚が決まってしまう。

 結婚式の前夜、悲嘆に暮れる人魚姫の前に現れた人魚姫の姉達が、彼女達の髪と引き換えに海の魔女に貰った短剣を差し出しました。 そして王子の流した血で人魚の姿に戻れるという魔女の伝言を伝えました。

 しかし人魚姫は、愛する王子を殺さずに自らの死を選ぶ。 日が登るその時、人魚姫は海に身を投げ、そして泡に姿を変えて天に登ったのだった。


 ツェムリンスキーは「人魚姫」の心の揺れを見事に表現し、幻想曲としてまとめ上げました。

今後の演奏機会

ISP (Innovation in Sounds Philharmonic)

第2回 定期演奏会

ISP -Innovation in Sounds Philharmonic-
第2回定期演奏会
2016年11月19日(土)
開場 18:30 開演 19:00
杉並公会堂大ホール
(全席自由・入場無料 ※チケット無し)

ドヴォルザーク/ 「自然と生命と愛」より「謝肉祭」
ツェムリンスキー/「人魚姫」管弦楽のための幻想曲
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」

指揮: 田中 健

HP: http://isp-orchestra.jimdo.com
Facebook:https://www.facebook.com/I.S.Philharmonic/