創造の神イザナギを描きました。
イザナギはイザナミと共に天地開闢の際に産まれた「神世七代(かみのよななよ)」のうちの最後に生まれた神様です。
『古事記』によると、高天原の神々から神生みと国生みを命じられたイザナミとイザナギは、授かった天の沼矛(あめのぬぼこ)でオノゴロ島を生み出しました。その島に降り立った二人は、まず夫婦の契りを交わします。そして、高くそびえ立つ天の御柱を立て、お互いに反対方向に回る事にしました。
天の御柱を回りめぐってイザナギに再び出会ったイザナミは、イザナギを前にして溢れる想いを止められず、
「何て素敵な男神でしょう。」
と、女であるイザナミが先に告げてしまいます。
その結果、最初に産まれた子は不完全な姿のヒルコだったため、船に乗せて海に流しました。
これは流産を意味するのかもしれません。再び夫婦神は淡島(あわしま)を産みましたがこれも不完全でした。 なぜ不完全な神しか生まれないのか分からなかった夫婦神は、高天ヶ原の神々に相談します。
すると「女神であるイザナミから声をかけるのが原因だとして、男神であるイザナギから声をかけるとよい。」と忠告を授かると、その通りにした夫婦神は無事に多くの国々や御子神を産み成したとされています。
この逸話では女性から声をかけるのは良くないと記されていますが、これは自然界でもアピールするのは雄が多い為であり、人間もその自然の摂理に倣って行動した方がいいとお伝えしたかったのでしょう。
その後イザナミは、炎の神ヒノカグツチを産んだ時の火傷が原因で黄泉の国へ逝ってしまいます。イザナギは愛する妻を亡くし、嘆き悲しむと、怒りのあまりにヒノカグツチを切り伏せてしまいました。
それでも、イザナキは黄泉の国まで妻を迎えに行き、イザナミが籠る黄泉御殿まで辿り着くと、自分のもとへ戻ってくるよう声をかけます。
すると、そこには腐敗し、体中にウジが湧いき雷神が憑りついた変わり果てた妻の姿があったのでした。
その姿を見るなり、イザナキは慌てて逃げだしてしまいます。
醜い姿を見られ激怒したイザナミは黄泉の軍勢を放ち、逃げるイザナキを追いかけましたが、イザナギは黄泉の国の出口を大岩で塞いでしまうのでした。
イザナキに激怒したイザナミは、「愛しき我が夫よ。このような事をするなら、あなたの国の人間を1日1000人くびり殺します」と叫んだ。
イザナキは「愛しき我が妻よ。それならば、私は1日1500の産屋を建てよう」と言い返します。
憎しみや怒りに囚われてイザナギを追いかけていたイザナミですが、愛しく思う夫の事を忘れられず「愛しき我が夫よ」と声を掛けます。しかも「女性から声をかけると失敗する」と高天ヶ原の神々から忠告があったにも関わらず。
やはりどれだけ怒りに我を忘れようとも、愛する人に対する想いが抑えられることは無かったのです。
つまり、大岩を挟んでの夫婦の問答の結果は「失敗する」ということを暗示していると言えます。前述の高天ヶ原の神々の忠告通りであれば、女性から声をかけたので、イザナミは「1000人くびり殺す」ことも出来きなかったでしょう。
永遠の別れを告げた夫婦神ですが、最後の最後にはお互い自らの過ちを悔い、再び愛に目覚めたのでした。
◆イザナギを祀る神社
伊弉諾神宮 (兵庫県淡路市多賀)
おのころ島神社 (兵庫県南あわじ市)
多賀大社 (滋賀県犬上郡多賀町)
江田神社 (宮崎市阿波岐原町)
筑波山神社 (茨城県つくば市筑波)
佐太神社 (島根県松江市)
三峰神社 (埼玉県秩父市三峰)
英彦山神宮 (福岡県田川郡添田町英彦山)
白山比め神社 (石川県白山市三宮町)
玉置神社 (奈良県吉野郡十津川村)
雄山神社 (富山県中新川郡立山町)
丹生川上神社 (中社) (奈良県吉野郡東吉野村)