奉還町まるごとユースセンター構想とは

― 商店街全体を「ユースの居場所」にするという考え方 ―
「居場所をつくる」と聞くと、多くの人は一つの建物や施設を思い浮かべるかもしれません。しかし、私たちSGSGが構想する「奉還町まるごとユースセンター」は、そうした発想とは少し異なります。
この構想は、奉還町商店街全体を、ユース世代が安心して過ごせる“居場所の集合体”として捉える試みです。中心となるのは、商店街の一角にある奉還町ユースセンター。ここを「ポート(母港)」と位置づけ、若者がそこを起点に、商店街の中を物理的にも心理的にも回遊しながら時間を過ごすことを想定しています。
重要なのは、そこを訪れるユースには「目的の有無や関与の度合い」を問わないことです。何かに挑戦したい日もあれば、ただ過ごしたい日もある。そのどちらも受け止められる余白を、まちの中につくること。それが「まるごと」という言葉に込めた意味です。
この構想は、完成されたモデルではありません。商店街の人々、ユース世代、伴走する大人たちとの関係性の中で、少しずつ形を変えながら育っていく“進行形の居場所”です。

2026年1月 一般社団法人SGSG 理事長 野村泰介

なぜ「建物ひとつ」では足りなかったのか

― 奉還町ユースセンターを“母港”とする理由 ―
2022年12月、SGSGは奉還町3丁目にユース世代が安心して出入りできる拠点として民設民営「奉還町ユースセンター」を開設しました。しかし、運営を続ける中で次第に見えてきたのは、「居場所を一箇所に限定すること」の限界でした。 若者の関心や状態は日々変化します。静かに過ごしたい日もあれば、人と関わりたい日もある。一つの空間だけですべてを受け止めるのは難しいのです。

そこで私たちは、ユースセンターをゴールではなく「出入口」として捉え直しました。 港が船の行き来を支えるように、ユースセンターは若者が地域へ出ていくための母港です。安心して戻れる場所があるからこそ、外へ出ることができる。この発想が、商店街全体を居場所として捉える構想へとつながっていきました。

奉還町商店街というフィールド

― 若者が回遊できるまちの条件 ―
奉還町商店街は、JR岡山駅から徒歩圏内にあり、多様な人が行き交う場所です。近隣には岡山市立石井中学校、岡山県立岡山工業高校、岡山県立烏城高校、ノートルダム清心女子大学、朝日医療大学校といった学校が多い一方で、中高生が日常的に滞在する場所とは言い難い状況が続いていました。

しかし商店街には、若者を温かく見守ろうとする大人がいます。昔ながらの商店主や、新しくチャレンジしに来た若手経営者、空き店舗や余白のある空間もあります。SGSGではひとつ仮説を立てました。これらは、若者が回遊する居場所をつくる上で重要な条件にならないのか?
商店街の役割も変わりました。商業的に「消費の場」から生活的に「関係が生まれる場」へ。若者が立ち寄り、大人と顔見知りになり、少しずつ関係が編まれていく。その積み重ねが、居場所としての厚みを生んでいくのではないでしょうか。

この構想が生まれた背景

― #おかやまJKnote とユースセンターの積み重ね ―
奉還町まるごとユースセンター構想は、突然生まれたものではありません。
2018年に始まった中高生主体の活動 #おかやまJKnote では累計100名以上の中高生が奉還町商店街で様々なアクションを起こしました。また2022年以降は奉還町ユースセンター運営主体のひとつとして自分たちの場づくりを行っています。

しかし課題も浮き彫りになります。「ユースセンター」という自分たち唯一無二の場が「自分たちのもの」になり新しいメンバーにとって「敷居の高い」イメージを持たれるようになってしまったのです。そう、ちょうど「常連しかいない居酒屋に一見さんが入りにくい感じ」のように。

 中高生たちが地域と関わり、失敗し、学び、また挑戦する。伴走者たる大人はそのプロセスを支える中で、「活動」以前に開かれた「居られる場」が不可欠であることを実感してきました。「まるごとユースセンター」 構想は、現場での経験から自然に立ち上がったものなのです。

商店街で実際に起きていること

― 奉還町商店街×学生たち―
奉還町商店街では季節ごとのイベントに必ず若者たちの姿が見られます。若者は単なる参加者ではなく、企画や運営に関わる担い手として関係を築いています。商店街側も、若者を「お客さん」ではなく「仲間」として受け止め始めています。 「まるごとユースセンター」構想は、すでに自然発生的に動き始めています。
土曜夜市
毎年7月の土曜日は「土曜夜市」。中学生・高校生がイベントの担い手として大活躍しています。
ひゃっほう祭
11月に岡山市内各商店街で行われる「大誓文払い」でSGSGの中高生は独自の文化祭「ひゃっほう祭」を運営します。
商店街の会議に参加
中高生が商店街で何かやりたいときには商店街振興組合の会議に参加しプレゼンを行います。基本的に若者の提案は通ります。
奉還町クロストーク
商店街の大人と中高生が膝を交えてトークする「クロストーク」。世代を超えた大切な交流の機会です。
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誰のための居場所なのか

― ユニバーサルアプローチの視点で―
ユニバーサルアプローチとは、特定の属性や課題を持つ人だけを対象にするのではなく、すべてのユース世代を等しく対象とする設計を意味します。学校に通っているか、不登校か。家庭環境に困難があるかどうか。そうした条件で線を引かないことを、あらかじめ前提としています。SGSGがこの視点で動く理由を以下に示します。

第一に、「困ってから支援する」モデルには限界があるからです。 支援が必要になるほど状況が深刻化した時点では、若者自身が助けを求める余力を失っていることも少なくありません。誰にも相談できず、孤立が固定化してしまうケースもあります。だからこそ、困る前から自然に関われる場所が必要なのです。

第二に、「支援対象」というラベルが、若者を遠ざけてしまうことがあるからです。 「困っている人のための場所」「特別な事情がある人のための施設」と認識された瞬間、多くの若者はそこに近づかなくなります。一方で、「誰でもいていい場所」であれば、結果として困難を抱えた若者も無理なくそこに居ることができます。

第三に、混ざり合うこと自体に価値があると考えているからです。 背景の異なる若者が同じ空間で過ごし、同じ商店街を歩き、同じイベントに関わる。その中で生まれる関係性は、「支援する側/される側」という固定された役割を超えたものになります。誰かが誰かを一方的に助けるのではなく、互いに影響を与え合う関係が育っていきます。

奉還町まるごとユースセンター構想において、ユニバーサルアプローチは単なる理念ではありません。 商店街という日常的で開かれた場所をフィールドにすること、出入りの条件を設けないこと、関わり方の濃淡を本人に委ねること。これらすべてが、ユニバーサルであるための具体的な設計です。 「特別な支援」ではなく、「当たり前に居られる場所」をつくること。 その結果として、困難を抱える若者の予防的支援にもつながっていく。私たちは、この回り道のような方法こそが、もっとも持続可能なユース支援だと考えています。

これからの「奉還町まるごとユースセンター」

― 未完成であることを前提に ―
奉還町まるごとユースセンターは、まだ完成していません。だからこそ、関わる余地があります。 見学する、話を聞く、応援する。どんな関わり方でも構いません。このまちで、若者と大人が共に育つプロセスに、ぜひ加わってください。
【関わり方】
・中高生 / 大学生 毎週木曜日 17:30-20:00  奉還町ユースセンターに集まっています。「こんなことしてみたい」「仲間が欲しい」「ボランティアしてみたい」「中高生の伴走スタッフをしてみたい(大学生)」
・大人の方 視察希望、連携希望、寄付希望、お問合せください。原則木曜日に対応しますが、それ以外の日にも代表のスケジュールと調整の上、設定いたします。

本構想の社会的位置づけ

内閣府 令和7年度 地域における孤独・孤立対策に関するNPO等の取組モデル調査 採択事業

運営法人

一般社団法人SGSG
〒700-0026 岡山市北区奉還町3-1-30 電話086-897-2476
設立 2017年4月1日 法人化 2018年2月18日
代表理事理事長 野村 泰介