高校の時に男性でも保育ができることを知って、幼児教育への興味から幼稚園教諭を目指しました。食べてはいけないからヤメなさいとの反対を押し切ってまで就職した幼稚園は、自らの保育観を大きく揺さぶる出会いをもたらしました。
はじまり ~ ゴミ屋敷の悲しき親子との出会い
「ママ~、ママ~」夜の八時になろうかというとき、その少女は小学校五年生のお姉ちゃんに手を引かれ、泣きながら少女が通う幼稚園へとやってきました。お姉ちゃんの手を離すまいと懸命に握りながら、やっと辿り着いた様子の少女。
その手に握られた先の姉の目にも、泣くまいと堪える涙が園庭の外灯に照らされて光っていました。
その少女は、五歳になってから年長組に入ってきました。いつも、どこか遠いところを見つめる目と、お姉ちゃんからのお下がりと思われる少し薄汚れた服を着て、クラスの先生が声をかけても、子どもたちの輪の中には入ろうとはしない子どもでした。
続きを読む