~Lost story~ vol1.ふるさとの風景
ママは、いつもボクにいうんだ。
自分のことは、自分でしなさい。
いい子でしょって。
けれど、ボクにはむずかしいことばかり。
わからないことが多すぎる。
ママは、そんなボクに、いうんだ。
自分のことは、自分で考えないとね。
だからボクは、ほおづえをついて考える。
何が正しくて、何が悪いの?
誰が正しくて、誰がまちがっているの?
誰がきめたのでもない。
誰にきめられたのでもない。
誰が選んだのでもない。
誰に、選ばれたのでもない。
あの日、ボクは、そんなことを考えたんだ。
ほおづえをつくのを止めて、じっと手を見つめながら。
そう、生まれてはじめて、未来を、思ったんだ。
世の中は、わからないことばかり。
けれど、ボクは考えるんだ。
ボクの手の中にある、未来を。
誰のものでもない、ボクの未来を。
いい子ねって、ママがほめてくれるまで。