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河野和彦氏によって提唱された認知症に対する薬物療法です。
家庭介護が続けられるように、薬の量を調整して処方することをメインとしています。
コウノメソッドは常に進化しており、最近では認知症だけでなく、神経難病、発達障害にも大きな成果をあげはじめています。
認知症の中で一番多い型とされており、男性よりも女性に多く見られます。
他の認知症の患者数が横ばいであるのに対して、増加傾向にあります。
【主な症状】
記憶障害アルツハイマー型認知症に次いで多いと言われており、女性より男性の方が多く発症しています。
一進一退を繰り返しながら進行するのが特徴です。
【主な症状】
感情がコントロールできない男性に多く見られ、女性と比べて発症率が約2倍と言われています。
【主な症状】
幻視64歳以下では意外と多く、原因など解明出来ていないことが多いです。
【主な症状】
同じ行動を繰り返す集中力や自発性がなくなる言葉が出てこない万引き過食認知症の中で一番多い型とされており、男性よりも女性に多く見られます。
他の認知症の患者数が横ばいであるのに対して、増加傾向にあります。
【主な症状】
記憶障害脳の神経細胞が破壊されて起こる症状のこと。
主に以下の部分に問題が表れます。
1.記憶力判断力見当識(場所、時間、人物)今までに劇的に改善した疾患
愛知県名古屋市緑区に、認知症治療で名を馳せるクリニックがある。
名古屋フォレストクリニック。初診に訪れる人の数は年間で1200人以上。
来院者は県内だけではなく、関西や北陸、果ては海外から治療に訪れる人もいるほど、注目度の高いクリニックだ。
1回だけ遠方から来院するということはありえるだろう。
しかし、山梨から片道4時間娘さんの自家用車で年4回来る。博多から新幹線で年4回来る。
愛媛から飛行機で年4回来る。和歌山県から10年通っている。そんな患者も少なくない。
名古屋フォレストクリニックに多くの患者が訪れるのは、「コウノメソッド」と呼ばれる
独自に確立された認知症治療を受けるためだ。
なぜこうまでして患者さんは通院するのだろうか。
その理由ははっきりしている。河野の人間性、医療の確実性に絶対の信頼があるからだ。
「コウノメソッド」は、患者の体調に合わせて投薬量を加減し、
いままで軽視されてきたサプリメントを活用する薬物療法だ。
「『コウノメソッド』は、私の30年の経験の結晶から生み出された治療マニュアルなんですよ。
それがいつの間にかユニーク(独自)な方法になってしまった。私はそんなつもりなかったんですがね」
と、河野氏は語る。
いまでこそ「認知症治療の権威」として地位や手法を揺るぎないものにした河野和彦氏だが、
業界で「コウノメソッド」を展開させていく道のりは、決して平坦なものではなかった。
河野和彦氏の孤独な闘いは、「それまでの認知症医療の常識」を覆すところからはじまった。
すでに認知症治療の分野には「治療のスタンダード」があり、
河野氏自身も大学病院に勤務している時代は、その方針に基づいて治療を進めてきた。
その勝手知ったる業界に対して、「コウノメソッド」を旗印に反逆した彼を、
白い目で見る者は少なくなかったという。
周囲の冷たい視線を感じながらも河野氏を支え続けたのは、シンプルな信念だった。
彼の純粋な信念は、従来治療が掲げる「認知症症状の発現を遅らせる」という考え方と、そもそも一線を画していた。
「コウノメソッドは、認知症治療において、たったひとつの起死回生の一手になる」と公言する河野氏。
今回は、河野和彦氏に「コウノメソッド」を確立させるまでの軌跡を追った。
コウノメソッド確立は、ひとつの出会いがきっかけだった。
河野氏が名古屋フォレストクリニックを開院する前の海南病院時代、
介護者である娘さんに伴われてやってきた、とある男性患者の治療を担当した時のことである。
治療をはじめた当初、河野氏は男性患者の症状から、アルツハイマー型認知症だと考えていた。
河野氏はアルツハイマー型認知症に効果のある薬剤を、用量どおりに処方した。
しかし、その後である。河野氏のもとに男性患者の介護者である娘さんから連絡が入った。
「先生! 処方されたお薬をのませたら、父が歩けなくなってしまったんです……!」
河野氏は血の気が引いたという。即座に投薬を中止するように娘さんに伝えた。
通常、アルツハイマー型認知症の場合、歩行障害の症状は出ない。
河野氏は当初下した「アルツハイマー型認知症」の所見を、「レビー小体型認知症」だと診断し直したのだった。
けれども、河野氏の中にひとつの疑念が湧いた。
「なぜ処方した薬で、症状が悪化したのか?」
幸い、河野氏が処方した薬剤は、アルツハイマー型でもレビー小体型でも効果の期待できる薬剤だった。
しかし、いままでなかった歩行障害が表れた。河野氏はひとつの仮説に行き当たる。
「薬の反作用、あるいは副作用か?」
いままで治療において適量だと言われていた薬の使用量に、河野氏は疑問を抱くようになった。
とにかく一旦、薬物の影響をゼロの状態にしなくてはならない。河野氏は男性患者に7日間の休薬を指示することにした。
あらためて診療に訪れた男性患者と娘さんに河野は詫びるとともに、ある提案をした。
「この前の薬を、半量にしてもう一度試させてください」
普通、医者にかかれば良くなると期待して来院するのに、この男性患者については医師の指示に従ったのに、症状が悪化した。
本来なら、介護者である娘さんから痛烈な批判を浴びても仕方がない状況だった。
しかし、河野氏も引き下がれなかった。
「いままでと同じ治療では、この患者の症状を改善させることはできない」
投薬量の半減は、河野氏の切実な思いから提案されたことだった。
介護者である娘さんに、歩行障害は薬剤による副作用からの症状であった可能性が高いことを、できるだけわかりやすく説明した。
すると娘さんは、河野氏の提案を承諾してくれた。
「そんなにおっしゃるなら、やってみましょう」
河野氏のただならぬ気迫に、彼女は圧倒された。
河野氏が、父親の症状改善を自分と同じように親身になって考えてくれているということが彼女を動かしたのかもしれない。
医師と患者家族の間に信頼共助関係が生まれた瞬間だった。
河野氏は自身を奮い立たせ、誓う。
「絶対に、彼女たちの期待に答える」
薬剤の用量半減による効果は、すぐに表れた。
認知機能が劇的に改善されただけではなく、男性患者は
自転車を漕いで灯篭を見に行けるまでに快復したのだ。いままでの治療で類を見ない、劇的な改善だった。
こうして河野氏は、薬物の加減による症状改善の可能性の端緒を掴み、大きな自信を得た。そして思い至る。
「いままでの常識を疑って、正しい治療法を生み出さなければ」
この経験を期に河野氏は、
レビー小体型認知症患者に対して処方・調整すべき薬剤の量は平均的にいくら、
といった、ゼロコンマ単位まで具体的に算出できるようになってゆくのだった。
河野氏がこの男性患者との出会いで得た成果は、それだけではなかった。
介護者として父親に付き添っている娘さんに、ある悩みを打ち明けられた。
「実は30年間、線維筋痛症を患っています。つらい全身の痛みをどうにかできないでしょうか」
線維筋痛症とは、発症に至る原因と治療法が不明とされる病である。
全身を激しい痛みやこわばり、疲労感に苛まれ、生活が困難になるという。
疾患による痛みの度合を、「血流に乗ってガラス片がめぐるような感じ」と患者が形容するほどの激痛が走る。
また、自律神経が乱れた時に見られる胃腸の不調やドライアイ、ドライマウスのほか、
90%の患者の共通の症状として睡眠障害を併発する。
眠っても痛みで起きてしまう中途覚醒もストレスとなり、総じてうつ状態に陥る患者も多いという。
中高年以上の女性に発症しやすく、軽症例も含めると全国に約200万人もの患者がいる
と言われている線維筋痛症患者を取り巻く状況は過酷である。
血液検査やCTスキャン、MRI検査をしても、異状が具体的な数値として表れることはなく、
国内外の医療機関での認識が遅れていた。
そのため、線維筋痛症患者は、長きにわたり「詐病」や「サボリ病」という心無い非難と疾患と闘ってきたのだった。
河野氏は、この娘さんにグルタチオンを点滴して様子を見ることにした。
グルタチオンは3種類のアミノ酸から構成された分子である。
肝炎治療などに昔から使用されており、
そもそもグルタチオンは身体のほとんどの細胞に存在する物質であるため、副作用がきわめて少ない。
グルタチオンには、抗酸化作用や解毒作用がある。
河野氏はこのグルタチオンを、15分点滴した。
すると、慢性的に悩まされていた線維筋痛症の疼痛が、劇的に和らいだのである。
患者の実感としては、いままでの7割程度の痛みが緩和されたという。
彼女はもちろん喜んだ。河野氏は胸が熱くなった。
自分の理論を信じて、身をもって難病の治療法開発にひと役買ってくれた勇気に、頭が下がる思いだった。
このことをきっかけに、河野氏は薬剤だけに限らず、
グルタチオンなどの化合物による点滴での症状改善を試みるようになる。
近年、グルタチオン点滴は、線維筋痛症と同じくこわばりや手足の震えなどの
症状が出る「パーキンソン病」への有効性が認められるようになった。
ひと組の親子を救った経験が、後のコウノメソッドを体系づける契機となった。
河野氏は、「私にとって非常に大きな出会いだった」と述べた。
現在、彼女とはメールを通して交流が続いており、また実践医による点滴療法も継続している。
前述の経験をきっかけに、薬剤の加減とサプリメント点滴・注射の活用、そして介護者保護主義の3本の柱を掲げ、
理論を体系づけた河野氏。
「自ら生み出した有効な治療法をもっと広く知らしめたい」と、
河野氏は「認知症ハンドブックシリーズ2薬物療法」という著書を出版。
瞬く間に評判と実績が業界に広まり、「従来の治療法を見直そう」という医師が増えるほどの反響を呼んだ。
しかし、自分ひとりしか使えないメソッドでは、救える患者は限られてしまう。
河野氏は「自分の治療法をどんな医師でも使えるようにしよう」と、
2007年に治療法のネット公開に踏み切った。
その際、この治療法を「コウノメソッド」と名付けた。
河野氏の名を冠した「コウノメソッド」は、医療業界だけでなく一般社会にも知れわたるようになる。
とある大手出版社から著書出版の際、
「一般の認知症図鑑の薬物療法の部分は、すべて「コウノメソッド」という文言に定義します」と言われた。
河野氏はこの時、「『コウノメソッド』が認知症医療の新たなスタンダードになっていくのだと感じた」という。
河野氏が唱えた「コウノメソッド」の社会への浸透度合を知ったのは、それだけではない。
最近、神経内科や精神科の分野においても、「実は河野氏の著書を参考にしている」という医師に出くわすことが多くなった。
また、コウノメソッド実践医のもとに、とある大学病院の神経内科から「点滴療法で力を貸してほしい」と依頼があった旨を
メールで受けた。「コウノメソッド」は認知症医療分野の枠を超えて、あらゆる専門医療の現場で認められてきている。
端末の前で、河野氏は自身の道程を誇らしく思った。
「私のしてきたことは、なにひとつ間違いではなかった」
その想いが、いまも河野氏を動かしている。
「薬物投与の際、用法用量を守る」
↓
「患者の体調にあわせて投薬量を調整する」
投与する薬剤の量は、「成人の2/3くらい」でちょうどよい。
通常、老年の患者は、新陳代謝機能の低下によって薬物代謝が遅くなる。
この感覚は、数多くの患者を診てきたベテラン医師なら、誰しもが持っている皮膚感覚だという。
しかし実際に、薬物量を調整している医療機関は少ない。医療機関の収益に関わるからだ。
病院などの医療機関は、前月の診療行為をまとめた診療報酬明細書(レセプト)を、
審査支払機関や 国保団体連合会に提出して、医療費を請求している。
この時、薬剤を決められた用量より少なく処方していると、適応外・不適当と審査されてしまい、
請求した医療費の額面から減額されてしまう。
多くの医師は病院経営維持のために、薬物量の調整ができないのだ。
また、抗認知症薬の場合、定められた用法用量どおりに、
有効量まで一律に増量しなければならないという規定があった(2016年6月1日撤廃)。
増量してレセプト申請しなければ、医療費が減額されてしまう。
実際に河野氏も、抗認知症薬の増量をしていなかったので、「自腹治療」となり巨額の損失を出したという。
しかし、河野氏は「そんなことは関係ない」と強調する。
認知症治療は、段階や症状に個人差があり、投薬量によって副作用が強く出ることもある。
患者が快方に向かっていても、規定通りに薬剤を増量したために、悪化することも少なくない。
「コウノメソッド」では患者の体調と対話しながら、患者ひとりひとりの適正量を慎重にさぐるように指導している。
河野氏は、基礎研究者が膨大な年月を費やして懸命に開発した薬が、
画一的で遅れた規定のために、患者の幸福に結び付けられないのはおかしいと訴え続けてきた。
が、ついに
2016年6月1日、厚生労働省が抗認知症薬の少量処方を容認することが決まった。
規定に反した少量処方について、実名で有効性を訴えてきた医師は多くはない。
多くの実践例に基づいた実績と勇敢さが、認知症医療の臨床全体を進歩させたといえる。
「抗認知症薬のみでの治療」
↓
「抗認知症薬とともにサプリメントの併用」
先の線維筋痛症の女性に対する治療でも有効だったように、薬物以外の一部のサプリメントが保険薬より効果がある場合もある。
ではなぜ臨床でスタンダードになっていないのか?
河野氏は「サプリメント発売元の健康食品会社の広報が足りない」と解説する。
製薬会社は、権威性の高い医師を通して科学的根拠・信頼性を広報できるが、
健康食品会社は製薬会社と比較すると、資金不足のために充分な広報ができていない、と指摘。
そのため、社会的に「保険薬>サプリメント」となってしまっているという。
コウノメソッドで使用されるサプリメントの副作用は、
臨床試験をおこなっている会社のものなら心配するものではない、
と河野氏は現段階で把握している。
それに対して、認知症治療でも使用される抗精神病薬の副作用は激烈だ。
個々の患者に対して的確なサプリメントを使用すれば、不要な医療費を削減できるだけでなく、
副作用対策薬の医療費もかからなくなる。
認知症を「難病」であるときちんと認識し、
「保険薬だけで改善を目指すのではなく、多角的なアプローチで挑むべきだ」という基本スタンスの理解が重要だ。
「認知症患者の視点や立場を理解し、人権を尊重したケア」
↓
「介護者の生活や人権を重んじたケア」
コウノメソッドの特徴は「介護者ファースト」であることだ。
認知症治療において、「パーソンセンタードケア」という概念がある。
「パーソンセンタードケア」とは、治療・介護される患者の人権を尊重した「患者ファースト」のケアをすることである。
しかし、恒常的に患者をケアする介護者の人権は尊重されてきたとは言いがたい。
生産年齢にある介護者が介護のために疲れきり、うつ状態となり働けなくなった例は少なくない。
また、患者に対する虐待や介護殺人という不幸な事件も後を絶たず、2015年の毎日新聞の独自調査によれば、
44件の介護殺人のうち、20件が24時間の過酷な介護の果てのものだったという。
少子高齢化社会が急進している昨今、介護者に対するケアや対策を講じることが急務だ。
コウノメソッドでは、メソッドを打ち立てた当初から「介護者保護主義」を柱にしている。
介護者保護主義においては、介護者の負担になる患者の症状を優先的に緩和するための治療計画を立てていく。
認知症患者の約4割に 怒りやすい、徘徊、暴力、介護抵抗といった陽性症状と呼ばれる症状が発現する。
介護者は献身的な介護にもかかわらず、患者の陽性症状に追い詰められやすい。
こうした陽性症状に対して、抗精神病薬を使って衝動を抑え、穏やかな生活を遅れるように工夫する。
抗精神病薬についても、河野氏は30年におよぶ経験から、高齢の認知症に適合する用量を見いだした。
薬種の選択順、1日の最高用量まで詳細に公開している。
使用する薬は、特許がすでに切れておりこれまでに信頼性を確立したものばかりで、医療費も削減できる。
コウノメソッドは、患者と介護者の両者のQOLを重視し、なおかつコストカットも実現できる治療法なのだ。
いつの時代もそうだが、先駆者は白い目で見られがちだ。
たとえば、かつて近鉄バッファローズで活躍していた野茂投手が、メジャーリーグに挑戦すると決断した時、いったいどれだけの人が成功すると思っただろうか。
マスコミは「失敗するに決まっている」とバッシングしていた。
そのバッシングさえ糧にして野茂投手がアメリカで活躍し始めると、掌を返すように日本中が熱気に包まれた。
”異論を唱える者には結果で納得させるしかない。
いつの時代も、どんなフィールドであっても、それは変わらない。
河野氏も医師たちから白白とした視線を浴びながら、コウノメソッドの支持者を増やしてきた。
「認知症で悩む人々の希望の灯として、今後も精進していきたい」と語る。
コウノメソッド確立は、ひとつの出会いがきっかけだった。
河野氏が名古屋フォレストクリニックを開院する前の海南病院時代、
介護者である娘さんに伴われてやってきた、とある男性患者の治療を担当した時のことである。
治療をはじめた当初、河野氏は男性患者の症状から、アルツハイマー型認知症だと考えていた。
河野氏はアルツハイマー型認知症に効果のある薬剤を、用量どおりに処方した。
しかし、その後である。河野氏のもとに男性患者の介護者である娘さんから連絡が入った。
「先生! 処方されたお薬をのませたら、父が歩けなくなってしまったんです……!」
河野氏は血の気が引いたという。即座に投薬を中止するように娘さんに伝えた。
通常、アルツハイマー型認知症の場合、歩行障害の症状は出ない。
河野氏は当初下した「アルツハイマー型認知症」の所見を、「レビー小体型認知症」だと診断し直したのだった。
けれども、河野氏の中にひとつの疑念が湧いた。
「なぜ処方した薬で、症状が悪化したのか?」
幸い、河野氏が処方した薬剤は、アルツハイマー型でもレビー小体型でも効果の期待できる薬剤だった。
しかし、いままでなかった歩行障害が表れた。河野氏はひとつの仮説に行き当たる。
「薬の反作用、あるいは副作用か?」
いままで治療において適量だと言われていた薬の使用量に、河野氏は疑問を抱くようになった。
とにかく一旦、薬物の影響をゼロの状態にしなくてはならない。河野氏は男性患者に7日間の休薬を指示することにした。
あらためて診療に訪れた男性患者と娘さんに河野は詫びるとともに、ある提案をした。
「この前の薬を、半量にしてもう一度試させてください」
普通、医者にかかれば良くなると期待して来院するのに、この男性患者については医師の指示に従ったのに、症状が悪化した。
本来なら、介護者である娘さんから痛烈な批判を浴びても仕方がない状況だった。
しかし、河野氏も引き下がれなかった。
「いままでと同じ治療では、この患者の症状を改善させることはできない」
投薬量の半減は、河野氏の切実な思いから提案されたことだった。
介護者である娘さんに、歩行障害は薬剤による副作用からの症状であった可能性が高いことを、できるだけわかりやすく説明した。
すると娘さんは、河野氏の提案を承諾してくれた。
「そんなにおっしゃるなら、やってみましょう」
河野氏のただならぬ気迫に、彼女は圧倒された。
河野氏が、父親の症状改善を自分と同じように親身になって考えてくれているということが彼女を動かしたのかもしれない。
医師と患者家族の間に信頼共助関係が生まれた瞬間だった。
河野氏は自身を奮い立たせ、誓う。
「絶対に、彼女たちの期待に答える」
薬剤の用量半減による効果は、すぐに表れた。
認知機能が劇的に改善されただけではなく、男性患者は
自転車を漕いで灯篭を見に行けるまでに快復したのだ。いままでの治療で類を見ない、劇的な改善だった。
こうして河野氏は、薬物の加減による症状改善の可能性の端緒を掴み、大きな自信を得た。そして思い至る。
「いままでの常識を疑って、正しい治療法を生み出さなければ」
この経験を期に河野氏は、
レビー小体型認知症患者に対して処方・調整すべき薬剤の量は平均的にいくら、
といった、ゼロコンマ単位まで具体的に算出できるようになってゆくのだった。
河野氏がこの男性患者との出会いで得た成果は、それだけではなかった。
介護者として父親に付き添っている娘さんに、ある悩みを打ち明けられた。
「実は30年間、線維筋痛症を患っています。つらい全身の痛みをどうにかできないでしょうか」
線維筋痛症とは、発症に至る原因と治療法が不明とされる病である。
全身を激しい痛みやこわばり、疲労感に苛まれ、生活が困難になるという。
疾患による痛みの度合を、「血流に乗ってガラス片がめぐるような感じ」と患者が形容するほどの激痛が走る。
また、自律神経が乱れた時に見られる胃腸の不調やドライアイ、ドライマウスのほか、
90%の患者の共通の症状として睡眠障害を併発する。
眠っても痛みで起きてしまう中途覚醒もストレスとなり、総じてうつ状態に陥る患者も多いという。
中高年以上の女性に発症しやすく、軽症例も含めると全国に約200万人もの患者がいる
と言われている線維筋痛症患者を取り巻く状況は過酷である。
血液検査やCTスキャン、MRI検査をしても、異状が具体的な数値として表れることはなく、
国内外の医療機関での認識が遅れていた。
そのため、線維筋痛症患者は、長きにわたり「詐病」や「サボリ病」という心無い非難と疾患と闘ってきたのだった。
河野氏は、この娘さんにグルタチオンを点滴して様子を見ることにした。
グルタチオンは3種類のアミノ酸から構成された分子である。
肝炎治療などに昔から使用されており、
そもそもグルタチオンは身体のほとんどの細胞に存在する物質であるため、副作用がきわめて少ない。
グルタチオンには、抗酸化作用や解毒作用がある。
河野氏はこのグルタチオンを、15分点滴した。
すると、慢性的に悩まされていた線維筋痛症の疼痛が、劇的に和らいだのである。
患者の実感としては、いままでの7割程度の痛みが緩和されたという。
彼女はもちろん喜んだ。河野氏は胸が熱くなった。
自分の理論を信じて、身をもって難病の治療法開発にひと役買ってくれた勇気に、頭が下がる思いだった。
このことをきっかけに、河野氏は薬剤だけに限らず、
グルタチオンなどの化合物による点滴での症状改善を試みるようになる。
近年、グルタチオン点滴は、線維筋痛症と同じくこわばりや手足の震えなどの
症状が出る「パーキンソン病」への有効性が認められるようになった。
ひと組の親子を救った経験が、後のコウノメソッドを体系づける契機となった。
河野氏は、「私にとって非常に大きな出会いだった」と述べた。
現在、彼女とはメールを通して交流が続いており、また実践医による点滴療法も継続している。