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kyoto 長楽館 「貴婦人の間」
ポーセレンレースドール(磁器レースドール)は
一見柔らかいレースのドレスを
まとっているように見えますが
お顔やドレス、リボン、花びら1枚まですべてが
高温焼成のやきものでできた磁器人形です
18世紀のヨーロッパ貴族に愛され
今に受け継がれるレースドールに魅せられ、
そこに自分のこだわりや今の要素を加えながら
制作を続けています
昨年の東京アート工芸展(国立新美術館)
磁器レースドール部門賞受賞作品をはじめとした、
最近の作品を中心に、
過去の節目となった思い入れのある作品など、
レースドール作家山上真帆の
思いやこだわりを感じていただける展示だと思います
憧れの長楽館の美しい建物や調度品に
磁器レースドールが溶け込む優雅なひと時を
お楽しみいただければ嬉しいです
2018年6月18日7時58分、最大深度6弱の大阪北部地震が起こったあの日。
交通手段が絶たれて家族がばらばらで帰宅難民になってしまいました。
無事だとわかっていても、家で全員揃った顔を見るまでは不安で仕方がありませんでした。
夜遅くになって、やっと家で全員揃った時のほっとした気持ちを表現した作品です。
当時、地震に猫が驚いて家を飛び出して帰ってこなくなった、というニュースに情景を重ねました。
手袋をはずしてクラッチバッグと揃え、椅子に座って靴を脱ごうとしているところに、黒猫がやってきました。
猫ちゃんと目を合わせているこのシーンは、家族が自宅で顔を合わせてほっとした雰囲気
「やっと家に帰ってきたね」という場面です。
誰もが「誰か」にとって大切で、思い思われ生きている、その安心感を、「誰か」を黒猫に託して大切に制作しました。
刺繍入りチュールレースの美しさを生かしたシンプルなドレスで、いつも以上の要尺をとってたっぷりふんわりとした雰囲気に仕上げました。
【2018年 新院展(東京都美術館)入選】
2016年当時、新たな一歩を踏み出そう!と未来を見据える気持ちを込めた作品です。
風になびくのではなく
自分で風を起こし前に進んでいくジャンヌ・ダルクをイメージしました。
後ろ姿にはショールが浮いていて、風に吹かれているかのようなレースの動きがポイントです。
お気に入りの美しいレースの柄と同じ花をベースに描いて、ガラスの粉を焼き付けています。
ー 制作から5年が経過した今考える未来の形 ー
コロナ禍に翻弄される中でも、アトリエを通じ、みなさんが集う場を守りたいと強く感じました。
私も、作品にしたいと思える素敵なことに出会い、穏やかに制作を楽しむ時間が続いて欲しいと願っています。
【2016年 ニュークリエイティブ展(現代手工芸作家協会主催 東京都美術館) 入選】
会社勤めをしていた当時の上司を、かつての同僚と訪ねた夏の日の出来事。
奈良・室生寺の近くの龍鎮神社に足を伸ばしました。
拝殿から向こうに見える滝壺と神社は、雨乞いの龍神の鎮まる特別な聖地と言われている場所です。
しずかで神聖な感覚を肌で感じました。
青でもない、緑でもない水の色があまりにも美しくて、その荘厳な景観に佇む女神を表現しました。
一般的な焼きものでは表現しにくい水の透明感も、レースを使う陶芸なら可能かもと思って挑んだ作品です。
たっぷりのドレープとブルーのグラデーションで、透明な川の水しぶきをまとっている立体感を、
ガラスを一粒一粒ドレスに置くことで透明感を出しました。
本来薄衣の女神なので、着飾っている雰囲気が出ないようアクセサリーは廃し、装飾は白いバラのみとしました。
【2019年 国際公募東京アート工芸2019(新院工芸部展 国立新美術館) 入選・協賛賞受賞】
姪に赤ちゃんが生まれたことをきっかけに制作した作品です。
ベビーちゃんがお散歩の途中で眠ってしまいました。
お母さんもひと休み。
ベンチで本を読んでいるとベビーちゃんは風の音で目を開けたかな?と手を挙げた…
「大丈夫、いつも見ているよ」
そんな幸せなシーンです。
ベビーちゃんは守っていきたいものの象徴。
子どもが幼い頃だけでなく、成長して手がかからなくなっても、いつも気持ちはかけていて、
何かかあれば助けてあげられる親でありたい、という思いは変わらずいつも強くあるものです。
私の母もそうだったのでしょうか…
成人してもずっと見守っている、味方であるという「母の眼差し」を表現しました。
お母さんが読んでいる本は「あっという間に自分の世界に飛び込める」小説、
背後の木には鳥をつがいで配し、あたたかいファミリーの雰囲気を表現しました。
ドレスは、実際の子育て中に着ることはなかったけれど「こうありたかったな」と懐かしむ気持ちで選んだ白色です。
私にとって、娘たちの存在が、作品制作の想像力の源になっていると改めて振り返るきっかけになりました。
ハリウッド女優がレッドカーペットを歩いている姿をイメージした作品です。
宝塚歌劇専門チャンネル、タカラヅカ・スカイ・ステージの「夢みるチカラ」の番組撮影で、
制作途中のものを撮影したいという依頼を受け、準備を整えた時に制作したものです。
その時収録に来られた宝塚歌劇団のスターさんのお名前の一文字「紫」、そして宝塚といえばすみれの花…ということでパープルを基調としました。
スターさんにはレースを付けたり、バラを作ったりと実際の制作も体験いただきました。
「こういうものを作りたい!」とテーマを決め、デザイン画を描いてレースを決めるという
いつもの制作とは異なる工程でしたが、思わぬ機会をいただき、テレビの出演で私の転機になった思い入れのある作品です。
もともと色使いの美しいモネの絵が好きなこともあり、
絵画「草上の昼食」(1865〜1866)の2次元の世界を、3次元(立体)で表現しようと挑んだ作品です。
当時の流行のファッションでのピクニックランチは、心が満たされしあわせいっぱいの贅沢な時間。
現代のキャンプのように屋外での不便が楽しさを増すということは150年を経ても変わりませんね。
絵画にもある流行のストライプのドレスにも挑戦してみました。
全体の構成は、娘が3人いるので、ついつい3人にしてしまいます。
複数体だと互いが微笑みあっていたり、おしゃべりしていたり…
ストーリーや動きを演出できるので、単体とは異なる表現がひろがります。
ここから公募展に出品するようになり、現在の場所にアトリエを構えた年の思い出深い作品でもあります。
【2015年 20世紀ボーダーレス展(ニューヨークアート主催 東京都美術館)出展】
リヤドロの世界限定制作数2000体「テラスでお茶を」の構図を参考に、
爽やかな初夏のアフタヌーンティのシーンを表現しました。
あおあおとした緑が眩しい初夏の季節を随所に散りばめました。
ドレスの袖も短めに仕立てて、ピンクやベビーブルーなど爽やかな色味です。
レースを薄く夏の衣服のように自然に見せるため、
土も細心の注意を払って薄くつけています。
スカート部分は1枚仕立てで、風が抜けるような「薄さ」にこだわり一枚で仕上げました。
ドレス同様、扇子も帽子も光がほんのり通るように…とにかく夏の陽射しに透ける涼やかさを意識しました。
娘たち25才、22才、19才の頃。
成長とともに自分の世界ができ、お正月やお盆以外では家族全員が揃うことが減っていましたが、
2020年の4−5月、コロナ禍の緊急事態宣言中は、外出自粛で連日3食一緒に食べて過ごしました。
リビングのテレビ前で部屋着で「あつまれどうぶつの森」で盛り上がる娘たちを、
ロココ調のドレスを着て、ベルサイユのサロンコンサートにお呼ばれしたお嬢さんになぞらえました。
他のお客さんを見てヒソヒソ、きゃっきゃっとうわさ話で盛り上がる
娘時代特有の弾けるようなわちゃわちゃ感はいつの時代も変わらないもの。
当時一番華やかな場で溢れるような幸せ感を目指して、レースを細かくふわふわに…
ローブ・ア・ラ・フランセーズスタイルのドレスを仕立てました。
背中はヴァトープリーツ、マントのようで、ガウンと一体化したクラシックなデザイン。
この時代のドレスとして、技術的に今出来ることをやり尽くしたと思える作品です。
ー 3体作品、今昔 ー今回の展示では2013年「ブーゲンビリアの花咲くテラスで」、2015年「草上の昼食」も、3体で構成した作品です。
どちらも元のモデルとするものがあっての制作でしたが、特別な幸せのシーンを描いたものです。
時を経て、今は日常のなんでもない姿を作品にしようと思うことが増えました。
制作における大きなアプローチの変化です。
のんびり、ゴロゴロ…ただヒマをもてあましているような空気感は不思議なあたたかさも。
巣立ちと共に、もう二度とないような時間を過ごす娘たちの姿を残しておこうと制作しました。
【2020年 国際公募東京アート工芸2020(国立新美術館) 入選・磁器レースドール部門賞受賞】
ポンパドゥール夫人の言葉「Après nous le déluge (アプレ・モア・ル・デリュージュ) / 我が亡き後に洪水よ来たれ」、なるようになるの意。
レースドールを制作する方なら一度はチャレンジするであろう人物。
元は貴族でも王族でもない身分でしたが、美貌と才知でルイ15世の心をつかみ、
1745年以来宮廷政治に関与し、影で実権を握っていました。
モンテスキューやマリヴォーと文学を論じ、歌と踊りと芝居が得意で、楽器を弾き、絵も描き、様々な芸術家とも交流する芸術の熱心な愛好家、パトロンでもあります。
セーヴル焼の王立窯の出資も行いました。
当時の貴族の女性たちはこぞってポンパドゥール婦人のファッションを真似たため
「ロココの華」と呼ばれたそうです。
「美の象徴」にふさわしいきれいなドレスを着てはいますが、影の実力者らしく強い一面もあるという表情を意識しました。
「白いサテンのパニエ入りのドレスに身を包むマリー・アントワネット」- 1778年.ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン -
絵画のタイトルにもなるほど有名なマリーアントワネットのドレスがモチーフです。
13年前の作品で、
2008年11月14-16日「ポーセレンレースドール展 芦屋」に出品させていただきました。
マリーアントワネットはオペラ座の仮面舞踏会に遊びに行っていたという逸話に沿い、
「マスカレード」をテーマに6体制作したうちの1体。
古い作品ですが、ターコイズブルーとシェルピンクの色を合わせたロココのドレスは、今も変わらず大好きな雰囲気です。
作品づくりは自分の思いや好きなもの、こだわりをぎゅっと詰め込む作業。
ぶれずに、その時々の「好き」を追求していきたいと思います。
2020年6月頃に制作した作品です。
Masquarade(2008)と同じマリー・アントワネットをモデルにしています。
ドレスのデザインは、ミュージカル「マリーアントワネット」の舞台女優さんのお衣装を参考にしました。
パフのチェーンはとても目の細かいチュールを使用し、
とにかくレースを繊細に、ふわっふわに見せることを念頭に作った作品です。
ふんわり軽やかでありながら、王妃らしく威厳ある姿に見えることも大切です。
焼き物だけどふわり空気をはらんだ生地に見えるのがレースドールの極意。
風になびいていたり、ふんわり軽やかに見せるために
どのようなレースを選び、何度土に浸し、どれぐらいギャザーを寄せるのか…
レースの美しさを最も生かせる表現を求め、
実験を繰り返しながら布のようなやわらかさを表現することを大切にしています。
「1789〜バスティーユの恋人たち」(2015年宝塚月組)のマリー・アントワネット役の印象的なドレスを私なりに意識してデザインしました。
この小さなサイズ(18センチ、お顔が2センチ)の中に色んなものを入れ込み、
様々なテクニックを駆使した作品です。
宝塚といえばこのお衣装!
舞台風にアレンジされている当時の衣装はクラシックなロココではないけれど
可愛い色使いにいっぱいの薔薇飾りが華やかで、作りながら存分に楽しむことができました。
いつものデザイン工程ではなく、この衣装に近づけたいという見本に向かって
できるだけそのまま再現したいと思って制作しました。
小さな体に繊細なデザインを施すことはとても難しいけれど、
それもまた心弾む時間でした。
長楽館のあの部屋に私のお人形たちが並ぶなんて夢のような話です!
長年の憧れを実現させていただけたこの機会、ご高覧くださいました皆様、ありがとうございました。
20世紀はじめ、鹿鳴館時代に迎賓館として建てられた館には
バッスルスタイルの貴婦人が多数訪れ、
客人をもてなすホストがいたはず。
そんな光景を思い浮かべながら、
客人をお出迎えするイメージに合わせ、舞台「ポーの一族」に登場した素敵なドレスを参考に制作したウェルカムドールです。
ホテル日航茨木Master’s Collection Series16
茨木在住の巨匠展シリーズ レースドール展
(旧ホテル日航茨木)
「ポーセレンレースドール展」
第1回 Porcelain Art Studio Cosmosアトリエ展
(茨木市立ギャラリー)
「ポーセレンレースドール展」
第2回 Porcelain Art Studio Cosmosアトリエ展
(茨木市立ギャラリー)
茨木市内でアトリエ移転、現在に至る
「21世紀アートボーダレス展」
(ニューヨークアート主催 東京都美術館)
「ニュークリエイティブ展」 入選
(現代手工芸協会主催 東京都美術館)
「ポーセレンレースドール展」
第3回 Porcelain Art Studio Cosmosアトリエ展
(茨木市立ギャラリー)
「LUXE STYLE レースドール展」
(茶屋町画廊)
「新院展」入選
(新日本美術院主催 東京都美術館)
「新院工芸部展 国際公募東京アート工芸2019」入選・入賞
(新日本美術院主催 国立新美術館)
「ポーセレンレースドール展」
第4回 Porcelain Art Studio Cosmosアトリエ展
(茨木市立ギャラリー)
「国際公募東京アート工芸2020」入選・入賞
(東京アート工芸主催 国立新美術館)
「ポーセレンレースドール展」
第1回 Porcelain Art Studio Cosmosアトリエ展
(茨木市立ギャラリー)
「ポーセレンレースドール展」
第2回 Porcelain Art Studio Cosmosアトリエ展
(茨木市立ギャラリー)
「ニュークリエイティブ展」 入選
(現代手工芸協会主催 東京都美術館)
「ポーセレンレースドール展」
第3回 Porcelain Art Studio Cosmosアトリエ展
(茨木市立ギャラリー)
開催日 | 2021年6月20〜21日(日曜日、月曜日) |
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開催時間 | 10時〜18時 |
場所 | 〒605-0071 京都市東山区八坂鳥居前東入円山町 604 長楽館「貴婦人の間」 |
場所 | 〒605-0071 京都市東山区八坂鳥居前東入円山町 604 長楽館「貴婦人の間」 |