大法寺の「お薬師さん」は、元々はお寺の西方1キロメートルの山手に祀られていましたが、お堂が壊れたために当寺の門前(現在の石段の下)に移され、街道(現在の国道202号)に向かって安置されていました。
そのころから、この地域では原因不明の病、失明、手足のしびれなど病人が絶えませんでした。また、馬に乗った武士が街道を通るたび、急に馬が立ち止まり、動かそうとすると振り落とされるという事故が頻繁に起こりました。 以後、この場所(現在の冬切地蔵堂付近)では馬から降りて通る習慣が生まれました。
このような話を、時の住職が聞き、落馬する場所が「お薬師さん」の正面にあたることや、この周辺の病人騒動も「お薬師さん」がこの場所に移されてから起こり始めたことなどから、この仏像の祀り方が原因かもしれないと考え、村人に相談をして境内にお堂を新築し、丁重にお祀りをしました。それからというもの、病気や落馬事故がなくなりました。
人々はお薬師さんの霊験のあらたかさに驚き「落馬薬師」と呼ぶようになり、この霊験におすがりして、病を治す人々のお参りが絶えなかったといわれています。
今日では、本堂内部に安置し、本尊様格でお祀りをしております。
(平安末期の樟による一木造/仏像丈約150センチ)