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クレアHDに対立する大株主にインサイダー取引疑惑?

新型コロナウィルス感染症対策になるのではないかと期待されるダチョウ抗体の存在は、多くの日本人に勇気を与えました。このダチョウ抗体のニュースが出たことで、クレアホールディングス(1757)の株価が高騰しました。

この高騰に前後して、実に不可解な動きがありました。昨年、第三者割当を受けて株式を取得した株主が積極的に株式を売却していたのです。第三者割当はそもそも、その企業(今回で言えば、クレア)の今後の成長に期待して資金を投入するもので、決して短期的な利鞘を稼ぐ行動ではないはずです。

しかし、今回、本来であれば長期的な企業価値の向上を目指したはずの第三者割当を引き受けた3人は、株価高騰に乗じて利益を得ていたとしか解釈できない行為に出ていたのです。内部情報を承知の上で株式売買を行う、いわゆる「インサイダー取引」が疑われるのも致し方ないような動きです。

ダチョウ抗体のニュースは何をもたらしたか

※出典:会社HPより

2020年6月3日、クレアHDの子会社クレア株式会社と、株式会社ジールコスメティックスの間で、商品販売に関する売買基本契約書が締結されました。

ジールコスメティックスは新型コロナウィルス感染症に効果があると期待されるダチョウ抗体を用いた抗ウィルススプレーの開発に2020年3月に成功し、医療機関への提供を行っています。この商品販売契約をクレア株式会社が結んだというわけです。


これを受け、それまで株価が20円前後だったにもかかわらず、その後、約9倍の187円近まで一気に上昇を見せました。

そして、この製品の発売前後には、大株主であるMTキャピタルマネジメント(小田祐次社長)とオリオン1号投資有限責任組合(岡本武之社長)、株式会社SEED(猪俣秀明代表取締役)、松林 克美氏(2017年の実行された第6回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行先であり、当時、クレアHDが不動産情報交換を行っていた会社の社長から紹介された会社経営者)らが株式の売買を行い、コロコロと筆頭株主が変わる事態となります。

下の表をご覧いただきたい。上場企業としては異例の株主の異動が頻繁に行われるようになるのです。
(クレアHDの発表資料より抜粋)

リリース発表日 内容
2020/3/27 主要株主、及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
株式会社MTキャピタルマネジメント((第1位から第1位:持分の増加 、9.94%→11.40%)
オリオン1号投資事業有限会社(第2位から第2位:持分の増加、9.44→10.18%)
2020/4/8 主要株主の異動に関するお知らせ
オリオン1号投資事業有限会社(第2位から第2位:持分の減少、10.18%→7.85%)
2020/4/16 主要株主の異動に関するお知らせ
株式会社MTキャピタルマネジメント(第1位から第1位:持分の減少、11.40%→9.66%)
2020/4/24 主要株主の異動に関するお知らせ
株式会社MTキャピタルマネジメント(第1位から第1位:持分の増加、9.66%→11.07%)
2020/6/3 クレアHDの子会社クレア株式会社と、株式会社ジールコスメティックスの間で、商品販売に関する売買基本契約書が締結
2020/6/8 主要株主、及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
松林 克美 (第1位へ、0.00%→11.07%)
2020/9/8 主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
松林 克美 (第1位から第2位:持分の減少、11.07%→9.72%)
2020/10/5 主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
株式会社SEED (第1位へ:持分の増加、2.25%→10.69%)
2020/10/12 主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ
株式会社SEED(第1位から第1位:持分の減少、10.69%→9.86%)
2020/4/16 主要株主の異動に関するお知らせ
株式会社MTキャピタルマネジメント(第1位から第1位:持分の減少、11.40%→9.66%)

東京証券取引所の適時開示ルールでは、5%を超える株式保有社(者)は、持ち株比率が1%ポイントを超えて変動した場合には売却(購入)額や売却(購入)日を開示しなければなりません。

下の表は、そのルールに従って株式売買を記したものです。ご覧いただける通り、6月3日のダチョウ抗体に関する契約が公表されて以降、7月3日に187円をつけるまでMTキャピタルは継続的に株式を売却しています。

参考:図1
※株価が高値を付けていた頃のMTキャピタルマネジメントの株式売買の実績。大量保有報告書をベースに作成。6/9~7/3までに、MTキャピタルマネジメントは、新株予約権を16円で行使し、終値ベースで売却したと仮定すると総額、約9億600万円相当の株式売買利益があった計算となる。

参考:図2
※株価が高値を付けていた頃のセノーテキャピタルの株式売買の実績。大量保有報告書をベースに作成。6/9~6/11までに、セノーテキャピタルは、新株予約権を16円で行使し、終値ベースで売却したと仮定すると総額、約6000万円相当の株式売買利益があった計算となる。

なお、このセノーテキャピタルの社長は、岡本武之氏で、11月に開催されるクレアホールディングスの臨時株主総会(後述)のきっかけを作ったオリオン1号投資有限責任組合の代表を務めているのも同氏だ。
その後、ダチョウ抗体を使ったスプレーの情報はこれ以降出てきておらず、株価は現在60円台~80円台をうろうろしている状況です。ダチョウ抗体がそれまでの9倍近い株価まで上昇させた形ですが、これこそが問題をはらんでいました。

インサイダー取引とはどういうことか

東京証券取引のホームページによると、「インサイダー取引とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株等を売買することで、自己の利益を図ろうとするものです。そうした情報を知らされていない一般の投資者は、不利な立場で取引を行うこととなり、証券市場の信頼性が損なわれかねないため、金融商品取引法で禁止されており、違反者には証券取引等監視委員会による刑事告発や課徴金納付命令の勧告が行われます。」と記されています。

証券取引等監視委員会からの要請に応じ、クレアHDの社外取締役と監査役は、弁護士、公認会計士に調査を依頼しました。弁護士らは、インサイダー取引にあたる可能性が高いとの調査結果を同委員会に報告しています。

それは、オリオン1号投資有限責任組合で社長を務める岡本武之氏とジールコスメティックスの強い関係性が疑われるからです。(株主提案でもジールコスメメティックスとの関係性を強化しろと言っていたりすので、これぐらいであれば大丈夫ではないでしょうか)

ジールコスメティックスと契約を契機に、クレアHDの株価の高騰につながりました。。6月から8月にかけて、オリオン1号投資有限責任組合やオリオン投資有限責任組合と共に新株予約権を引き受けいたMTキャピタルマネジメントが度重なる株式売買を行っており、これらがインサイダー規制に抵触する可能性を疑われても不思議ではない状況です。

風説の流布、また株価操縦の疑惑も?

※ダチョウ抗体を使った抗ウィルススプレーの発表以降、クレアの株価は急激に上がった

インサイダー取引の可能性が疑われる状況にあるだけでなく、これとは別に風説の流布の可能性も取りざたされています。クレア株式会社は、2020年7月1日に、株式会社パースジャパンとダチョウ抗体に関する売買契約を結びました。クレア株式会社はジールコスメティックスからダチョウ抗体を仕入れており、これをパースジャパンに販売してもらうという内容です。

パースジャパンとの契約が発表されたことで、7月3日には187円という株価がつけられています。

一連の流れがすべて事実だとすれば、株価を上げることを目的にした風説の流布規制に抵触する可能性も考えられなくはありません。

11月20日に向けて動きが激化する

岡本氏率いるセノーテキャピタルは、今回、6人の取締役を選任するよう求める株主議案を提出、会社法に従い、クレアHDは、11月20日に、この提案を株主に図る臨時株主総会を開催します。クレアHD側は、この議案に対して反対するように求めています。提案されている取締役候補がふさわしくないこと、岡本氏が提案する中小企業ホールディングス事業は、イメージの領域を出ておらず、何ら具体性がないことなどを挙げています。この臨時株主総会をめぐっては、議決権行使助言会社のInstitutional Shareholder Services Inc.「ISS 社」が、クレアHD側の会社提案に賛成、すなわち取締役候補には反対推奨を出しています。多くの投資家は、こうした株主総会で提案議案に賛成・反対を投じるにあたり、ISS社に準拠する、少なくとも、参考にするケースが多いのが通例です。

ダチョウ抗体契約をめぐる岡本氏らの株式売買、その後の契約内容の履行がないこと、不可思議な株式売買を繰り返す岡本氏が主導する取締役6名の選任議案、それに対する会社側の反対、そして議決権助言会社の会社側支持、こうした事実をじっくりと見極めたうえで、株主の皆さんは議決権をどう行使するのが株主一人ひとりの利益に叶うのか、じっくりと考えるべきではないでしょうか。