海浜を利用する野生動植物の生息・生育場の保全 漂着ごみを除去することで、海浜を利用する動植物の生息・生育場を保全します。
海浜植物と砂浜の境界部分に堆積した漂着ゴミです。漂着ごみは、大きく以下の問題を引き起こします。
- 人工系ごみが動植物の生育・生息場を覆ってしまう
- プラスティックごみが微細化し、生物の体内に入り込む
遠州灘に産卵に訪れるアカウミガメに着目してみると、アカウミガメは産卵場を選定する際、海浜植物と砂浜の境界部分に産卵するといった研究データがあります(今村、2015)。アカウミガメが海浜植物の境界部分を産卵場として定めている場合、漂着ごみが覆いかぶさってしまことによって、海浜植物の生育が阻害され、アカウミガメの産卵場としての目印が失われる可能性があるとも言えます。
また、漂着ごみは海浜植物にトラップされ堆積します。堆積したごみにさらに漂着ごみがトラップされることで負のスパイラルが生じることになります。
回収した漂着ゴミを分析すると、その多くがペットボトルなどのプラスティック系であることが分かりました。プラスティックごみは自然界で分解されるのに非常に長い歳月が必要であり、時々刻々と微細化・拡散化します。そして、微生物の体内から食物連鎖を通して私たちの体内に蓄積されることになります。これらの問題はマイクロプラスティック問題と呼ばれており、近年世界的に注目されつつある環境問題です(Moore、2008)。また、プラスティックごみは微細化することにより、その表面積は大きくなります。プラスティックゴミはポリ塩化ビフェニル(PCBs)やジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)等の有害物質を吸着しやすいことから、これらの有害物質も私たち人間の体内に入ることとなります。マイクロプラスティックが野生生物と人間の健康に及ぼす影響は、科学的に十分に立証されていないものの予防原則として対処するべき問題と考えられます。
発生源対策に努めることが最も大切であることが分かります。
しかし、一度自然界に流出してしまった海洋ごみに対して、現在の私たちができることは、『早期回収』のみです。
Counterpartではこれらの問題点を
- 漂着ごみ回収による実践的活動、
- ワークショップによる学び、
の2段階で周知し、自然環境保全に尽力したいと考えています。
【参考文献】
今村和志:アカウミガメの繁殖活動に影響を与える砂浜環境に関する研究- 表浜海岸を対象として -、豊橋技術科学大学博士論文、147p、2015。
Moore, C J: "Synthetic polymers in the marine environment: A rapidly increasing, long-term threat", Environmental Research, 108(2), pp. 131-139, 2008.