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商工会職員35年/長坂祐輔

プロフィール

長坂祐輔です。35年間の地元商工会勤務で蓄えた「想い」と「考え」。

* * *

企業は安定と成長を求めるものです。安定のためには、安定性のある事業をビジネス・ポートフォリオの中に取り込んでいきたいと考えるのは当然です。

例えば石油化学メーカーであるならば、景気が上向き、工場の稼働率が上がると、どっと利益が出てきます。

しかし、稼働率が下がると、とたんに赤字転落となってしまいます。その体質を何とかして打破したいと考えるはずです。


新規事業

安定収益が欲しい。それが、多くの企業の切実な願いとなります。

同時に成長のためには将来性のある事業を取り込みたいとも考えます。

1980年代の流通業界の王者だった量販店であれば、当時台頭していた「コンビニエンスストア」や「ファストフード」のような新業態の育成を狙うでしょう。

鉄鋼メーカーであれば「現代の産業のコメ」と呼ばれた半導体事業に意欲を燃やすはずです。

いずれも本業の成長が見込めないため、新規事業に関心を持つのです。


石炭、繊維、海運の衰退

永久に繁栄する業界はないと言われます。石炭、繊維、海運など繁栄を誇った産業も衰退していきました。

時代とともに事業転換ができなかった企業が脱落していきました。

総資産ベースで1920年(大正9年)、トップ30社にランクされた企業で昭和末期にトップ30社に入っている企業はただの1社もありませんでした。

売上高ベースで1978年トップ30社にいた企業のうち、1988年に残ったのは23社でした。

10年間のうちに7社が脱落したのです。例えば鉄鋼メーカー、石油会社が脱落組でした。

オリックスが象徴する昭和の業界消長

1960年のトップ30社へは電力会社がニューフェースとして登場しました。

1970年には自動車会社、1980年には石油、バブル期にはオリエントファイナンス、オリックスのいわゆるノンバンク組が登場しました。

これも業界消長のあらわれだといえます。

中央指令型組織の限界 - 長坂祐輔

顧客のニーズが高度化すること、事業機会が多様化するという潮流は、21世紀も加速しています。

顧客ニーズが高度化していけばこれにこたえるべく供給側の工夫が必要となります。

供給者側の都合(論理)によってつくり出されたものを与えるだけでは、いずれ顧客は離れていってしまいます。

多角化・多様化

少々値段が高くても、自分の好みに合ったものを選択する顧客が増えたことは随所にみられる現象です。

事業機会が多様化していくことは、企業が多角化をせまられるということでもあります。

「製品・用途レベル」「事業レベル」「地域レベル」など、いろいろなレベルが考えられます。

要はひとつの製品、ひとつの事業、ひとつの地域だけにしがみついて事業を営むことはできなくなってきたということです。

自律的組織単位

市場の高度化、多様化に対応するためには企業組織の原理を変える必要があります。

中央指令型の量産品メーカーの原理では通用しないということです。

21世紀のグルーバル企業が目指す姿は、組織が事業の多様性に応じて細分化され、それぞれの組織単位には自律性が与えられ、組織単位間の連携プレーができていることでしょう。

自律性を与えることは権限を委譲することと、委譲された側が権限を正しく行使できることが前提となります。

自律的な組織単位をつくることが目的であるので、権限は全面的に委譲し、その後でどうしても委譲できない部分を吸い上げることを原則とします。

上司の自己権限「切り売り」はNG

上司が自己の権限を「切り売り」することは本旨ではありません。

各組織単位が自律的に動けるので、顧客との密度の高い、かつ迅速なコミュニケーションが可能となります。

自律的組織単位ができれば、多角化もやりやすくなります。

自律的な組織単位のひとつひとつに事業をまかせることが可能だからです。

このような組織形態は、実は弁護士、会計士、設計士等といったプロフェッショナルを組織化する場合の組織形態に相通ずるものです。

プロフェッショナル組織と実績主義

プロフェッショナル組織になぞらえると、あるべき組織像のその他の側面が考えやすくなります。

まず実績主義があります。組織を細分化して、自律的に運営するからには実績主義が徹底されなければなりません。

プロとしてのスキルをもって実績をあげれば、さらにやり甲斐のある仕事が与えられます。

実績をあげることができなければ脱落していきます。自律的に動ける体制になっているので責任の所在も明確です。責任の転嫁がなされ難いです。

実績主義だから社内からのプロモーションが原則です。

外部から人材を招へいする場合にも、まず社内での実績をみた上でしかるべきポジションを与えます。

キャリア・デベロップメント

プロフェッショナル組織は階級的上下関係を抑えようとします。

課題の前には経験のある者もない者もすべて平等であると考えます。

プロフェッショナル組織にも階級、ポジションはあることはあります。

しかし、これはキャリア・デベロップメント上の目標を示すものです。

また組織上の役割を示すものとして位置づけがなされています。

通常の会社組織における命令系統を示すものとしての階級という側面はトーン・ダウンされます。



長坂祐輔