『予防歯科医学』が現在の歯科医療の最先端の考え方であり、最も注目を浴びる花形的な分野である事は、疑いも有りません。予防歯科医学の発展に伴い、《人間が一生を通じて自分の歯で過ごす》事は単なる目標だけに留まらず、現実のものとして多くの人々に体現して戴けるようになってきました。本当に素晴らしい事ですよね❣
しかしながら、一方で、既に多くの(全ての)歯を失くされ、義歯を必要となさっておられる方も多くいらっしゃいます。
多くの方は、この『義歯(入れ歯)』に対して抵抗感をお持ちです。「噛めない」「はずれる」「気持ちわるい(違和感が有る)」「喋りにくい」「手入れが面倒」。
そして‥‥「年寄りくさい❣」。
歯科医師としての大きな使命は、①お口の中の病気(主にむし歯や歯槽膿漏)を失くし、その上で、②『咀嚼』という機能や『審美性』を回復させる事です。
残念ながら、進行した歯周病(=歯槽膿漏)等で、『抜歯という治療法』を選択せねばならない場合も有ります。お口の中の病気を無くし、その後に『咀嚼』という機能や自然で美しい歯並びを回復させる手段として、義歯(入れ歯)を作製します。
今は亡き私の母は、私が歯科医師となる以前から多くの歯を失っており、遂には、後年、総入れ歯となりました。母は、入れ歯を作製するにあたって、最も理解有る患者様であると同時に、最も要求の厳しい患者様でもあり、何度も作り直させられたものです。
『歯並びは綺麗に、しかも自然で個性的にしてや。歯の形は、もっと角が取れた形にして。上口唇は張った感じで、皺がよらんと顔に張りを保たせて欲しいねん。もうちょっと、もうちょっとだけ糸切り歯を八重歯っぽくしてみて。あん、もう、へたくそやなあ、それやったら鬼歯やないの。センス無いなあ。』
鬼コーチ?のお蔭で、入れ歯作りの研鑽に励めました(笑)。
入れ歯の作製はオーダーメイドで、お一人お一人の顎の形、上下の噛み合わせの位置関係、歯茎の土手の高さ、頬や口唇の圧、お顔立ち、年齢、性別、その他の諸々の条件を考慮に入れなければなりません。
それには、時間をかけ、場合によっては現行の入れ歯を修正し、改造しながら仮りの入れ歯として使用して戴き、新しく作製していく入れ歯の青写真を映し出していく事も有ります。型を採ったから、オートメーションの様に完成する訳ではないんです。時間をかけた手作りのものなんです。残念ながら、健康保険の入れ歯では、そこまでこだわれません。
全ての患者様に、鬼コーチ?いやいや、亡き母に作って上げた入れ歯のように、心を込めて作って差し上げたい。そう願っています。
コバルトクロムという素材は
実は航空機の開発に使用するために
用いられていた素材で、何と行っても
大きな特徴が強度と柔軟性です。
金属ではありますが、サビが出にくく
身体への生体親和性が高い素材です。
(チタンと比べると少し重く、
生体親和性もチタンの方が高いと言えます)
自費入れ歯の材料として、
広く利用されているスタンダードな金属材料です。
大きな特徴として柔軟性をあげましたが、
コバルトクロムはほとんどの症例で
使用することができます。
薄さは保険入れ歯の約3分の1程度であるため、
言葉を発しやすくなるのもポイントです。
熱伝導率も高いため、食事をした際の温度感覚が
自然に近いようになります。