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2月21日(木)、中野区主催、任意団体ALT企画協力のもと開催した『つまずきを「働く」につなげる~ソーシャルキャリアという生き方~』。当日は平日夜にもかかわらず、満席での開催となった。
トークとワークショップの2部構成で行われた本イベント。前半のトークでは、さまざまな「つまづき」を仕事につなげてきた3人のゲストが、その経験やソーシャルキャリアについて語った。


任意団体ALTとは

任意団体 ALT(オルト)は、経済的/精神的に自立した女性を増やすことをミッションとするNPO。
ジェンダーにまつわる課題、女性に関する課題や女性が活動したり働いたりする上での課題を、ソーシャルセクターで働く女性たちが組織を超えて協働し、事業を通じて解決する試みです。将来的には、男性やLGBTQに関する課題も対象としていきます。

【団体名の「ALT」の由来】
他のキーと併せると操作の切り替え、新機能の追加、特殊動作の実行ができるPCキーボードの「Altキー」に由来します。
事業を通じた課題解決により、社会における既存の価値観や社会通念に新たな価値を付加することをめざしています。
【コーディネーター】
海野 千尋(左)
ALT、NPO 法人二枚目の名刺、NPO 法人 Arrow Arrow

#家族って作る必要ある? #女性のライフイベントと「働く」の疑問 #1 つの場所で働かないといけないの?
1981 年静岡県生まれ。NPO スタッフ/キュレーター/編集・ライター。家族・女性の働く・ 働き方の固定観念を壊す活動中。
 
【ゲスト】
佐藤 祥子(中)
ALT、NPO サポートセンターN 女プロジェクト

#不登校経験者あるある #第二新卒の転職万歳 #「いい子」やめました
1992 年兵庫県生まれタイ育ち。NPO スタッフ/プランナー。企業から NPO へ。生きづらさとコミュニティをテーマに活動中。

【ゲスト】
杉原 志保(右)
ALT、NPO サポートセンターN 女プロジェクト

#女らしさという幻想 #自分らしさでいいじゃないか問題 #N 女の起源
1975 年東京都生まれ。NPO スタッフ/フリーランス/大学講師。行政から NPO へ。ソーシ ャル分野の川上から川下までを経験し、ジェンダー問題に対峙しながら活動中。

ALTは2018年10月、自分の価値観や考え方を再構築し私らしい生き方・働き方をデザインする「CLASH」というイベントを開催。CLASHとは「破壊」の意味で、登壇するスピーカーがモヤモヤに直面し、文字通り”破壊”しながら、キャリアを構築してきたストーリーを語る。それを聞いた参加者がワークショップを通じてそれぞれの生き方を振り返り、自分らしい一歩を踏み出せるような内容だ。

 

今回はこのCLASHを、中野区役所 政策室企画分野 人権・男女共同参画担当の皆さんと一緒に企画化。女性のキャリア選択や、経済的・精神的自立は、重要な政策課題のひとつとして位置づけられていることから、中野区の特性なども踏まえてブラッシュアップし協働での開催に至った。

1. 海野千尋さんのトーク

海野さんは、固定観念を壊すということを軸に、現在5つの所属・肩書きを持って働いている。自身が働いたり生活したりする中で感じた”モヤモヤ”から、それを解決する観点で仕事をつくっている。
「中小企業で働く女性たちの声」
1つ目のモヤモヤは、女性のキャリアについて。中小企業の広告代理店/編集プロダクションからキャリアをスタートし、その後ITベンチャーなどを経てきた海野さん。
その過程で、ほとんどの女性が結婚・出産・子育てなどのライフイベントが理由でやめていく現状を目の当たりにする。

仕事かライフイベントか二者択一でしか選べないような状況を見て「ライフイベントは捨てて仕事に生きよう」と走ってきた20代だった。しかし、本当にそれで良いのか?と疑問を感じていた海野さんは、ある数値に出会う。

それは、日本において「第一子出産後の多くの女性が仕事を退職している」という状況が30年間変わっていないというデータだった。そのデータを教えてくれ、そんな状況を解決していこうとするNPO法人ArrowArrowにジョイン。特に中小企業において、女性が辞めずに働き続けられる環境や価値観をつくるべく、活動している。

「仕事は一つじゃなきゃいけないの?」
2つ目のモヤモヤは働き方について。
「仕事は一つじゃなきゃいけないの?」――働く人のうちどれほどが、この質問に自信を持って答えられるだろうか。最近では、企業で働く人のパラレルキャリアが話題になっているが、まだまだ1つの仕事をするのが当たり前という価値観もある。

ひとつのスキルが短命化されている現状や、そもそも仕事を世代間で継承できないという問題意識もある時代で、スキルを何度も付加して再構築する必要性が高まっている。この変化の速さでは、40代になったときに、新しいスキルを取得できる機会がないというのはリスクになる。複数の場所で働くということはそのような機会を自ら取得することにもつながる。

「東京で1ヶ月あたりの生活費として30万円欲しい場合、6万円の仕事を5つやるという方法もある」と海野さん。もっと多様な働き方が選択できるようになれば――そうした思いで、自身も複数の所属を持って活動を行っている。

「家族ってなに?」
3つ目は、家族に関するモヤモヤ。家庭の事情から、祖父母の家で数年間育てられたことがある海野さん。そうしたなか、家族の形について常に疑問があったそう。

家族とは同じ家に住んでいることや一緒にご飯を食べていること、血がつながっていることのみを指すのだろうか…その疑問を解消すべく、海野さんは表参道にある学びの場「自由大学」で、家族に関する固定観念を壊し、自分のつくりたい家族の形について考える「ネオ・ファミリースタイル学」という講義を企画。

この講義を通じて納得したのは、家族の形に”こうでなければならない”というものはないということ。家族の形は多様で、どんな形を望むかということも人によって異なる。そのような家族に対する固定化されたイメージをそれぞれで考えていく学びを作っている。

このようにして、海野さんは3つのモヤモヤと対峙しながら、自らの働き方や価値観をアップデートし続けている。

2. 佐藤祥子さんのトーク

続いては佐藤さん。彼女も、ソーシャルキャリアという軸で3つの顔をもつ。

 NPO法人NPOサポートセンターでは、社会課題解決を行うNPOなどの組織を対象とした研修や、中央区内のソーシャルな活動や協働を支援する協働ステーション中央の運営に関わるほか、都市で暮らす人たちのご近所づきあいをつくる株式会社HITOTOWA、そして任意団体ALTで活動している。

「自分に合う環境は自分でつくる」
佐藤さんは小学校の間をタイで暮らした。中学校で日本に帰国した時、満員電車に乗ったこともないなど、文化や環境の変化から困難に直面した。そうした中、勉強や友達づきあいに満点を求める「親の理想」を演じきれなくなり、不登校に。一方、地域の料理教室などで居場所を見つけ、卒業後は自分のペースで通える通信制高校に進学。その後大学に入った。

通信制高校は、人数が少なく先生や生徒の距離が近い。また、不登校経験者も多いため、そうしたバックグラウンドや心の傷を理解したうえでコミュニケーションを図ることができる。しかし、大学はそうではない。何百人という生徒がいる教室で、誰に何を話せばいいのかも分からず、孤立した。初めの頃は「便所飯」(トイレでご飯をたべること)をしたこともあったとか。そのような中、大学2年生の時に東日本大震災が起こる。

そこで、自分もできることをしたいと、被災地の災害ボランティアに参加。「友達もいなかったし、挨拶の仕方もあやしかった(笑)」というが、そこでは泥かきなど共通の作業を通じて自然と会話ができた。
現地で活動するNPOの人や、一緒に参加した学生との出会いを通じて、「自分に合う環境は自分でつくればいい」と気づき、災害ボランティアの学生団体を設立。社会や人とのつながりを取り戻していった。
「生きづらさを仕事にする」
その後災害支援を軸に地図サービスを提供する企業へと就職したが、いつかは自身が中学、大学時代に抱えていたような生きづらさの課題解決を仕事にしたいと考えていた。

そこで、最初は働きながらフリースクールのボランティアにチャレンジ。活動をするうちに、「不登校になる前に、子ども達が地域で学校や家以外の居場所を持てたら」「子育てに悩む親も助けを求められる場所があれば、子どもと親の関係性が変わるかもしれない」と、子どもを取り巻く環境や、親同士が助け合える仕組みづくりへと問題意識が変化。
同時に、当時NPOの経営課題を一緒に考えるプロボノ活動(スキルを活かしたボランティアのこと)をしていたNPOサポートセンターに転職。

現在はソーシャルな活動の支援やコミュニティづくりという観点から、地域というフィールドを軸に課題解決に取り組んでいる。

「何のために働くか?」
「不登校になったときから、かかりつけのカウンセラーがいるんです」と佐藤さん。カウンセラーというと、馴染みのない人もいるかもしれないが、佐藤さんにとっては「なんでも相談できる友人」のような感覚なのだという。これまでも、会話を通じて自分のモヤモヤを客観的に整理し、本当にしたいことは何かを考えて来たそうだ。先日も、カウンセラーと「”働く目的は色々あるけれど、その根底は自分が幸せになるためだよね”と」話していたそう。

「社会の課題を解決することはもちろん大切なこと。でも、それをしている自分がハッピーでいられることも、同じくらい大切だと思うんです――」。キャリアに悩む人は、まず自分が何のために働きたいのか?ということから考えてみるのもいいかもしれない。

3.杉原志保さんのトーク

佐藤さんも所属するNPO法人NPOサポートセンターで、協働ステーション中央の統括責任者や自治体の制度設計、改善などを行う杉原さん。

大学院時代からフリーランスで働き、複業歴は15年。
卒業後は川崎市役所、かわさき市民活動センター、川崎市男女共同参画センターを経て、現在はNPOに勤めながらフリーランスで自治体からの委託業務や大学の兼任講師をしている。
「"なんなん?"の連続」
杉原さんの関心テーマは「ジェンダー(文化的、社会的につくられた「らしさ」)」。発言の機会やチャンスは、男女関係なく対等だと考えていたが、社会には必ずしもそうではない局面がある。そうした場面に出くわすたび理不尽だと思ってきた。

「私はただ、あったらいいなと思う社会や両性のあり方を、自分の人生で実践したかった。職業もその観点で選択してきた」と言う。しかし周囲は「大学院で研究して市役所で政策立案をしてきたのに現場に“降りちゃった”んだ」「なんで“そんな所”にいるの?」と表現する。初めて聞いた時、その見方に素直に驚いた。

一方、杉原さんは幼い頃から個性を大事にした教育を受けてきた。学生時代は男子と喧嘩をしたり学校運営でリーダーシップを発揮したりしてきた。「女だからってできないことはない」と思ってきたが、そういう姿勢を周囲は「女じゃない」と言った。大学院に入る時に知人の親から「女の子が学つけてどうするの」と言われたこと。とある用事で男友だちの下宿先に行ったら、後日大学のゼミの先輩に『それは同意したのと同じだ』と言われて衝撃を受けたこと――。「自分にはそんな観念が全くないから“なんなん?”と思った。私は私を生きているのだから勝手に決めつけないで。」――世間からこうしたまなざしを向けられる人生は、モヤモヤの連続だった。

「女性学との出会い」
このモヤモヤは何なのか。最初は分からなかったが大学の授業で「女性学」と出会い、その正体が「ジェンダー」だと知る。自分の人生を生きていいと知ってだいぶ楽になった。その後、大学院で自治体のジェンダー政策を研究するうちに、関連する仕事につきたいと思うようになった。

そんなある日、指導教授に自治体の男女共同参画に関する調査と行動計画づくりの仕事を与えられた。これが転機となる。「仕事を丸投げされ、がむしゃらにやったらノウハウになった」。自分の居場所を得た気がした。大学院に行かず100万円ほどの案件を複数受けた。

「川崎市役所でのNPOとの出会い」
その仕事が高じて川崎市役所の専門調査員に。そこで民間DVシェルターを運営するNPOに出会う。被害者を逃がすハイリスクな仕事をほぼボランティアで運営、市は資金を補助していたが経営は厳しい。その実情に衝撃を受けた。大切な活動なのに資金調達が行政頼みなのももどかしかった。そこで杉原さんは、資金調達ノウハウを身につけようとNPO支援(中間支援)を行うかわさき市民活動センターに転職。助成事業をはじめ、のべ200の団体設立や事業展開をサポートした。

現職には「資金調達、とりわけ事業収入の獲得ノウハウを得たい」と入職。30代後半から「男女共同参画」と「NPO支援」の2本柱が自分のキャリアになってきた。それをベースに「ジェンダー課題を組織を越え事業で解決していきたい」と、N女プロジェクトを設立。活動趣旨を発信したら仲間ができ、さらに事業を始めたら支援者が増えた。ジェンダーに起因する固定観念を壊して、自分らしい生き方・働き方をデザインする任意団体ALT(オルト)も立ち上げた。

「働き方の方向性は、自分の意思を伝えることで見えてくる」
杉原さんにとって働くとは「“なぜ”と思うこと、“おかしい”と憤ること、納得できないことの答えを追求すること」だという。理想的とするものが自分の中にあるのに、ジェンダーという固定観念(枠)に当てはめ自分を縛る人生はつらい。だからそれを捨てようと思った。そうして自分の人生を納得して生きると、おのずと他者の生き方も尊重できるようになった。

そんな生き方を実践するために、現時点での自分には複業がベストと思っているが、必ずしもそれが全てではないとも思っている。
自分が課題とすることを解決するのに適した働き方は何か。そうした観点で決めていければいい。その前提として「嫌なことは嫌、したいことはしたいとはっきり伝え続けること。自分に忠実であることが何より大切」だと考えている。

3名のトークのあと、会場では「どうしたら好きなことを見つけられるのか」「団体を立ち上げるタイミングはどうやって決めたのか」「ソーシャルな仕事、複業で食べていけるのか」など、率直な質問が投げかけられ、ディスカッションが盛り上がりました。

また、終了後は「いろんな働き方があることを知れてよかった」「同じような悩みや不安を共有できてよかった」「自分はどうしたいのかを考えるきっかけにしたい」などの意見が聞かれました。ゲストのさまざまな"つまづき"をキャリアにつなげてきたエピソードから、参加者の方々自身の生き方やキャリアを考えるきっかけを持ち帰っていただけたようでした。

ALTでは今後も、自治体・企業などと協働で本プログラムを開催したいと考えています。
ご関心をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。

トーク内容を可視化する「グラフィック・レコーディング」

今回のイベントでは、グラフィック・レコーダーの市村さんに、グラフィックレコーディングをしていただきました。

グラフィック・レコーディングとは、議論の内容をイラストと文字で構造化し、わかりやすく整理して伝える技法のこと。今回、3名のトーク内容を1つの模造紙にまとめていただきました!SNSなどでシェアしたり、参加できなかった方にも内容を伝えられたりする良さがあります。市村さん、ありがとうございました。

関連イベントのご案内

2020年2月、本イベントを府中市と協働開催することが決定しました!今回は、3名のトークはもちろん、クロストークも織り交ぜながら、さらにブラッシュアップした内容でお届けする予定です。
皆様のご参加をお待ちしております。

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先行き不透明な今の時代。「このまま働き続けていいのか」「今のスキルで転職できるのか」将来のキャリアが見通せず悩んでいる女性は少なくありません。
今の状況から一歩を踏み出したいーー。

そんな女性を対象に、自身の生きづらさをソーシャルな仕事につなげてきた女性3人のトークから、自分の中の「ふつう」を壊し、自分らしい生き方・働き方に近づくために必要なことを考えるワークショップを開催します。

日 時:2020年2月18日(火)19:00-21:00

会 場:府中市男女共同参画センター 第1会議室

対 象:市内在住、在勤、在学の20-40代の女性、その他関心ある女性 

定 員:15 人

参加費:無 料

■イベントWEBサイト:http://bit.ly/fuchu200218
■Facebookイベントページ:https://www.facebook.com/events/469130063766505/

主催・お問合せ

任意団体ALT(オルト) CLASH事業担当:佐藤、海野
Email:clash.info.89@gmail.com

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