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今回はこのCLASHを、中野区役所 政策室企画分野 人権・男女共同参画担当の皆さんと一緒に企画化。女性のキャリア選択や、経済的・精神的自立は、重要な政策課題のひとつとして位置づけられていることから、中野区の特性なども踏まえてブラッシュアップし協働での開催に至った。
「仕事は一つじゃなきゃいけないの?」
2つ目のモヤモヤは働き方について。
「仕事は一つじゃなきゃいけないの?」――働く人のうちどれほどが、この質問に自信を持って答えられるだろうか。最近では、企業で働く人のパラレルキャリアが話題になっているが、まだまだ1つの仕事をするのが当たり前という価値観もある。
ひとつのスキルが短命化されている現状や、そもそも仕事を世代間で継承できないという問題意識もある時代で、スキルを何度も付加して再構築する必要性が高まっている。この変化の速さでは、40代になったときに、新しいスキルを取得できる機会がないというのはリスクになる。複数の場所で働くということはそのような機会を自ら取得することにもつながる。
「東京で1ヶ月あたりの生活費として30万円欲しい場合、6万円の仕事を5つやるという方法もある」と海野さん。もっと多様な働き方が選択できるようになれば――そうした思いで、自身も複数の所属を持って活動を行っている。「家族ってなに?」
3つ目は、家族に関するモヤモヤ。家庭の事情から、祖父母の家で数年間育てられたことがある海野さん。そうしたなか、家族の形について常に疑問があったそう。
家族とは同じ家に住んでいることや一緒にご飯を食べていること、血がつながっていることのみを指すのだろうか…その疑問を解消すべく、海野さんは表参道にある学びの場「自由大学」で、家族に関する固定観念を壊し、自分のつくりたい家族の形について考える「ネオ・ファミリースタイル学」という講義を企画。
この講義を通じて納得したのは、家族の形に”こうでなければならない”というものはないということ。家族の形は多様で、どんな形を望むかということも人によって異なる。そのような家族に対する固定化されたイメージをそれぞれで考えていく学びを作っている。
このようにして、海野さんは3つのモヤモヤと対峙しながら、自らの働き方や価値観をアップデートし続けている。
NPO法人NPOサポートセンターでは、社会課題解決を行うNPOなどの組織を対象とした研修や、中央区内のソーシャルな活動や協働を支援する協働ステーション中央の運営に関わるほか、都市で暮らす人たちのご近所づきあいをつくる株式会社HITOTOWA、そして任意団体ALTで活動している。
「何のために働くか?」
「不登校になったときから、かかりつけのカウンセラーがいるんです」と佐藤さん。カウンセラーというと、馴染みのない人もいるかもしれないが、佐藤さんにとっては「なんでも相談できる友人」のような感覚なのだという。これまでも、会話を通じて自分のモヤモヤを客観的に整理し、本当にしたいことは何かを考えて来たそうだ。先日も、カウンセラーと「”働く目的は色々あるけれど、その根底は自分が幸せになるためだよね”と」話していたそう。
「社会の課題を解決することはもちろん大切なこと。でも、それをしている自分がハッピーでいられることも、同じくらい大切だと思うんです――」。キャリアに悩む人は、まず自分が何のために働きたいのか?ということから考えてみるのもいいかもしれない。
佐藤さんも所属するNPO法人NPOサポートセンターで、協働ステーション中央の統括責任者や自治体の制度設計、改善などを行う杉原さん。
大学院時代からフリーランスで働き、複業歴は15年。「女性学との出会い」
このモヤモヤは何なのか。最初は分からなかったが大学の授業で「女性学」と出会い、その正体が「ジェンダー」だと知る。自分の人生を生きていいと知ってだいぶ楽になった。その後、大学院で自治体のジェンダー政策を研究するうちに、関連する仕事につきたいと思うようになった。
そんなある日、指導教授に自治体の男女共同参画に関する調査と行動計画づくりの仕事を与えられた。これが転機となる。「仕事を丸投げされ、がむしゃらにやったらノウハウになった」。自分の居場所を得た気がした。大学院に行かず100万円ほどの案件を複数受けた。
「川崎市役所でのNPOとの出会い」
その仕事が高じて川崎市役所の専門調査員に。そこで民間DVシェルターを運営するNPOに出会う。被害者を逃がすハイリスクな仕事をほぼボランティアで運営、市は資金を補助していたが経営は厳しい。その実情に衝撃を受けた。大切な活動なのに資金調達が行政頼みなのももどかしかった。そこで杉原さんは、資金調達ノウハウを身につけようとNPO支援(中間支援)を行うかわさき市民活動センターに転職。助成事業をはじめ、のべ200の団体設立や事業展開をサポートした。
現職には「資金調達、とりわけ事業収入の獲得ノウハウを得たい」と入職。30代後半から「男女共同参画」と「NPO支援」の2本柱が自分のキャリアになってきた。それをベースに「ジェンダー課題を組織を越え事業で解決していきたい」と、N女プロジェクトを設立。活動趣旨を発信したら仲間ができ、さらに事業を始めたら支援者が増えた。ジェンダーに起因する固定観念を壊して、自分らしい生き方・働き方をデザインする任意団体ALT(オルト)も立ち上げた。
「働き方の方向性は、自分の意思を伝えることで見えてくる」
杉原さんにとって働くとは「“なぜ”と思うこと、“おかしい”と憤ること、納得できないことの答えを追求すること」だという。理想的とするものが自分の中にあるのに、ジェンダーという固定観念(枠)に当てはめ自分を縛る人生はつらい。だからそれを捨てようと思った。そうして自分の人生を納得して生きると、おのずと他者の生き方も尊重できるようになった。
そんな生き方を実践するために、現時点での自分には複業がベストと思っているが、必ずしもそれが全てではないとも思っている。
自分が課題とすることを解決するのに適した働き方は何か。そうした観点で決めていければいい。その前提として「嫌なことは嫌、したいことはしたいとはっきり伝え続けること。自分に忠実であることが何より大切」だと考えている。