1990年代後半、地下鉄サリン事件、阪神大震災、渋谷は子ギャルで溢れ、どことなく世の中が浮き足立っていた時代、惰性で大学を出、就職もせずに「夢に生きる」とごまかしながら、東京でブラブラ自堕落な生活をしている僕がいた。
何もかもがつまらなく退屈だった。夢を叶えても売れず食えず、求人誌をコンビニで買っては短期のバイトを繰り返す生活、何の努力もせずプライドだけは高い、そんな僕に整体師という資格はすごく魅力的にうつった。そして整体学校を出て始めた整体の職場でも腐った、整体でも売れない。
そんなときにサロンに流れてきたのが師匠だった。人として最低の人で、嘘を言う、ずるい、金に汚い、卑怯、人に嫌われる全ての要素を持った師匠は、当然スタッフの総スカンをくらった。そんな身持ちを崩した年寄りが店にいれたのは、手技の天才だったからだ。